税制適格ストックオプションの年間限度額が2,400万円に引き上げられた、という説明をよく見ます。ただ、条文はそう書いていません。
租税特別措置法第29条の2第1項第2号の限度額は、千二百万円のままです。引上げは、同項ただし書が定める換算方式で実現されています。設立5年未満なら権利行使価額を2で除して計算した金額で判定する、という書き方です。
結果として使える枠は2,400万円相当になりますが、条文の作りが違います。契約書や社内規程に2,400万円と書いてしまうと、条文と対応しません。
- 限度額が条文上1,200万円のままであること
- 2で除する・3で除するという換算方式
- 3,600万円相当が使える会社の要件
- 各号の要件と号番号の対応
- 大口株主の線が10分の1と3分の1に分かれること
- 無償要件が条文の各号にないこと
📌 結論 限度額は1,200万円のままで、割って判定する
第2号の限度額は千二百万円のままです。引上げは第1項ただし書の、2で除して計算した金額・3で除して計算した金額という換算で実現されています。
第29条の2第1項第2号は、当該新株予約権の行使に係る権利行使価額の年間の合計額が千二百万円を超えないこと、としています。号の本文はこの一文だけで、括弧書きもありません。
そのうえで第1項ただし書が、付与決議の日において会社の設立の日以後の期間が5年未満である場合には権利行使価額を2で除して計算した金額とし、5年以上20年未満で財務省令の要件を満たす場合には3で除して計算した金額とする、と定めています。
3で除する場合の財務省令要件は、租税特別措置法施行規則第11条の3第1項です。設立の日以後の期間が5年以上20年未満であることに加え、非上場の会社であること、上場後5年未満の会社であること、店頭売買登録銘柄の登録後5年未満であることのいずれかを満たすこととされています。
この取扱いは令和6年分以後の所得税について適用され、令和5年分以前は従前どおりです。
🧭 落ちやすいのは第3号と第6号
無償であることは条文の各号にはありません。柱書の括弧書きが政令に委ね、租税特別措置法施行令第19条の3第1項が金銭の払込みをさせないで発行された新株予約権と定義しています。
第3号は、1株当たりの権利行使価額が契約の締結の時における1株当たりの価額に相当する金額以上であること、としています。この1株当たりの価額の算定方法は、令和5年7月に新設された措置法通達29の2-1にあります。
原則は所得税基本通達23から35共-9の例によります。取引相場のない株式については、財産評価基本通達178から189-7までの例により算定することもできるとされ、その場合は中心的な同族株主に該当するときも常に小会社として扱い、土地と上場有価証券は契約時の価額で評価し、評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しない、という条件が付きます。
第6号は保管委託等です。令和6年度改正でロが追加され、金融商品取引業者等への保管委託に代えて、譲渡制限株式について発行会社が管理する方法が認められました。細目は施行令第19条の3第9項と施行規則第11条の3第4項にあります。
付与対象者の適格性の確認、権利行使価額の算定と算定書の作成、年間限度額の判定方法の決定、そして契約書と社内規程の条文の突き合わせまで通してお受けします。すでに発行済みのものについて、要件を満たしているかの点検もお受けします。外れていた場合の影響額の試算まで含めてご相談ください。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
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🧾 大口株主の線は2つある
創業者や大株主本人には税制適格を使えません。上場前の未公開株では3分の1超が線です。上場株の10分の1超と混同しないでください。
柱書の括弧書きが、大口株主およびその特別関係者を対象から除いています。大口株主の定義は施行令第19条の3第3項です。
第1号が上場株式および店頭売買登録銘柄について発行済株式の総数の10分の1を超える数、第2号がそれ以外の株式について3分の1を超える数です。
上場準備中の会社は未上場ですから、3分の1が線になります。創業者が3分の1超を持っているなら、その創業者に税制適格は使えません。
そして無償であることは、条文の各号には出てきません。柱書が新株予約権について政令で定めるものに限る、としており、施行令第19条の3第1項が金銭の払込み(金銭以外の資産の給付を含む)をさせないで発行された新株予約権と定義しています。
📅 権利行使期間の15年特例
1株当たりの価額の算定は、措置法通達29の2-1が原則と特例を定めています。ここを外すと全部が崩れます。
第1号の原則は、付与決議の日後2年を経過した日から、付与決議の日後10年を経過する日までです。
括弧書きの特例により、財務省令の要件を満たす会社は15年を経過する日までになります。要件は施行規則第11条の3第2項で、付与決議日において設立の日以後の期間が5年未満であること、かつ上場株式・店頭売買登録銘柄を発行する会社以外であることです。
設立5年未満で非上場、という条件は年間限度額の2で除する場合と同じ入口です。ただし条文は別に置かれています。
なお、この特例は権利行使期間の話です。年間限度額の判定を2で除する場合の要件とは条文が別に置かれています。設立5年未満で非上場という入口が同じなので、まとめて考えないでください。
❓ よくある質問
A. 条文上の限度額は1,200万円のままです。設立5年未満の会社は権利行使価額を2で除して判定するため、実質2,400万円相当になります。
A. 設立5年以上20年未満で、非上場、上場後5年未満、または店頭売買登録銘柄の登録後5年未満のいずれかに当たる会社です。
A. 令和6年分以後の所得税についてです。令和5年分以前は従前どおりです。
A. 大口株主は除かれます。未上場の株式では3分の1を超える数を有する個人が大口株主です。
A. 契約締結時の1株当たりの価額以上です。算定方法は措置法通達29の2-1にあります。
A. 第6号ロにより、譲渡制限株式について発行会社が管理する方法が認められています。
A. 原則は付与決議の日後2年から10年です。設立5年未満で非上場等の会社は15年まで延びます。
A. なりません。施行令第19条の3第1項が、金銭の払込みをさせないで発行された新株予約権と定義しています。
📄 まとめ
年間限度額の条文は1,200万円のままです。2で除する、3で除するという換算で枠が広がります。
令和6年分以後の所得税から適用されます。令和5年分以前は従前どおりです。
大口株主の線は、上場等が10分の1超、それ以外が3分の1超です。未上場の準備会社は後者です。
契約書に2,400万円と書かないでください。条文の判定方法に合わせた書き方にしておくと、後で説明が要りません。
📚 参考(公的な一次情報)
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