常勤監査役を置かなければならないのか。上場準備の初期に必ず出てくる質問です。
答えは機関設計によります。会社法が常勤監査役の選定を求めているのは監査役会の職務としてであって、監査役会を置かない会社について同じ義務を課す規定は、条文上は見当たりません。監査等委員会設置会社では、常勤を置かないことも制度上想定されています。
この記事では、条文の所在を確認したうえで、上場準備で実際にどう決めるかを整理します。
- 常勤監査役の選定義務は会社法第390条第3項にあり、名宛人が監査役会であること
- 監査役会設置会社は監査役3人以上、そのうち半数以上が社外監査役であること(第335条第3項)
- 社外監査役は「過半数」ではなく「半数以上」であること
- 監査等委員会設置会社に常勤の監査等委員を置く義務がないこと
- ただし事業報告で選定の有無とその理由を記載すること(施行規則第121条第10号)
- 会社法に「常勤」の定義が見当たらないこと
📌 結論 義務があるのは監査役会設置会社
この義務は監査役会の職務として置かれています。条文の名宛人は監査役会です。監査役会を設置していない会社について、常勤監査役の選定を義務づける規定は、会社法の条文上は見当たりませんでした。
会社法の第390条は監査役会の権限等を定めた条文です。第1項が、監査役会はすべての監査役で組織すると定め、第2項第2号が監査役会の職務として常勤の監査役の選定および解職を掲げています。
そして第3項が、監査役会は監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならない、としています。
ここで押さえておきたいのは、この義務が監査役会の職務として置かれているという点です。条文の名宛人は監査役会です。したがって、監査役会を設置していない会社について、常勤監査役の選定を義務づける規定は、会社法の条文上は見当たりませんでした。
もっとも、義務がないことと、置かなくてよいことは別です。上場審査や監査法人との関係で、実質的に常勤者が必要になる場面はあります。
👥 監査役会を置くときの構成
社外監査役は「過半数」ではなく「半数以上」です。監査役が3人であれば、社外監査役は2人以上ということになります。
監査役会を設置する場合の構成要件は、会社法第335条第3項にあります。監査役会設置会社においては、監査役は3人以上で、そのうち半数以上は社外監査役でなければならない、とされています。
ここを「過半数」と覚えている人がいますが、条文は「半数以上」です。監査役が3人であれば、社外監査役は2人以上ということになります。人数が4人なら2人以上です。
実務上の意味は小さくありません。過半数と半数以上では、探すべき人数が変わることがあります。
監査役会設置会社と監査等委員会設置会社のどちらを選ぶか、監査役を何人置くか、常勤をどう決めるか。上場審査で説明できる形に組み立てます。監査役監査基準と監査計画の作成、監査調書の様式づくりまで対応します。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
🔀 監査等委員会設置会社ならどうか
監査等委員会設置会社では、常勤を置かないことも制度上想定されています。だからこそ「選定の有無およびその理由」が開示事項になっているわけです。
監査等委員会設置会社については、会社法の第399条の2以下に監査等委員会の規定が置かれています。第1項が監査等委員会はすべての監査等委員で組織すると定め、第2項が監査等委員は取締役でなければならないとし、第3項が監査等委員会の職務を掲げています。
この一連の条文に、常勤に関する定めはありません。
その一方で、会社法施行規則の第121条第10号イが、事業報告の記載事項として「常勤の監査等委員の選定の有無およびその理由」を掲げています。同号ロが、指名委員会等設置会社における常勤の監査委員について同様の記載を求めています。
選定しないことも制度上想定されているからこそ、選定の有無とその理由が開示事項になっている、という構造です。
実務での判断
監査等委員会設置会社を選び、常勤を置かないという判断はあり得ます。ただし、事業報告でその理由を説明することになります。常勤者がいない状態でどのように監査の実効性を確保しているのかを、書ける状態にしておく必要があります。
実務では、内部監査部門との連携や、監査等委員会への定期的な報告体制がその説明になります。内部監査の報告経路については内部監査の報告先は社長だけでよいのかで扱っています。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
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❓ 常勤とは何か
会社法の条文に「常勤」の定義は見当たりませんでした。会社法第390条第3項ほかの条文に定義規定は置かれておらず、法務省の資料でも、この記事の作成時点で定義を特定できませんでした。
したがって、週何日以上といった数値基準を条文の根拠として説明することはできません。実務では、他に常勤の職を持たず、会社の営業時間中は原則としてその会社の監査役の職務に従事する、という理解で運用されることが多いのですが、これは条文にもとづく定義ではありません。
他社の役員を兼務している人を常勤とする場合や、非常勤役員としての報酬水準との関係が問題になる場合は、個別に検討が必要です。
🏢 上場準備での進め方
人を探すところがいちばん時間がかかります。監査役会設置会社なら社外監査役を含めて3人です。決算期の直前に動いても間に合いません。
実務上のボトルネックは、人を探すところです。監査役会設置会社を選ぶなら、監査役3人以上で、そのうち半数以上が社外監査役という構成になります。社外監査役の要件を満たし、かつ引き受けてくれる人を複数見つけるのは、思っているより時間がかかります。
あわせて確認しておきたいのが、責任限定契約を締結できる定款になっているかです。外部から監査役を招く場合、この定款の定めがないと引き受けてもらいにくくなります。監査役の責任の範囲は監査役の責任はどこまで及ぶかで扱っています。
そして、置いただけでは足りません。監査役監査基準を作り、監査計画を立て、実際に往査をして、記録を残す。この一巡がN-2期から回っている状態を作ってください。
なお、上場後の独立役員の確保については、有価証券上場規程の第436条の2に定めがあります。独立役員を1名以上確保する義務で、独立役員は一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役または社外監査役です。社外取締役に限られるものではありません。
❓ よくある質問
A. 会社法第390条第3項です。監査役会は監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならない、とされています。
A. 会社法の条文上、監査役会を設置しない会社について常勤監査役の選定を義務づける規定は見当たりませんでした。
A. 3人以上です(第335条第3項)。
A. 半数以上です。過半数ではありません。監査役3人なら社外監査役は2人以上になります。
A. 会社法第399条の2以下に常勤の定めはありません。ただし事業報告で常勤の監査等委員の選定の有無およびその理由を記載します(施行規則第121条第10号イ)。
A. 会社法の条文に定義は見当たりませんでした。週何日以上といった数値基準を条文の根拠として示すことはできません。
A. 有価証券上場規程第436条の2により1名以上です。独立役員は社外取締役または社外監査役で、社外取締役に限られません。
A. 人を探す時間を考えると、N-3期のうちに動き出すのが現実的です。実際に監査を回した記録はN-2期から必要になります。
📄 まとめ
常勤監査役の選定義務は会社法第390条第3項にあり、名宛人は監査役会です。監査役会を設置しない会社について、同じ義務を課す規定は条文上見当たりませんでした。
監査役会設置会社の構成は、監査役3人以上で、そのうち半数以上が社外監査役です(第335条第3項)。過半数ではありません。
監査等委員会設置会社には常勤の監査等委員を置く義務がありません。ただし事業報告で選定の有無とその理由を記載します(施行規則第121条第10号)。
会社法に「常勤」の定義は見当たりません。数値基準を条文の根拠として説明することはできない点に注意してください。
📚 参考(公的な一次情報)
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