重要な会計上の見積りの注記と、監査報告書のKAM。同じ論点が並ぶことが多いため、同じものだと思われがちです。
違います。注記は会社が書き、財務諸表に載ります。KAMは監査人が書き、監査報告書に載ります。根拠も別です。
会社が書く注記の根拠は財務諸表等規則の第8条の2の4です。第8条の2の2ではありません。ここは条番号を取り違えている資料が多いので注意してください。
- 注記は会社、KAMは監査人が書くこと
- 注記の根拠が財規第8条の2の4であること
- 連結では連結財務諸表規則第13条の2で準用されること
- KAMが3段階で絞り込まれること(監基報701 第8項から第10項)
- KAMには記載しないことができる場合があること
- 両者の記載を社内で突き合わせておくこと
📌 結論 書く人が違う
同じ話題を扱うことが多いので混同されますが、書く人も載る場所も違います。まずここを分けてください。
重要な会計上の見積りの注記は、会社が作る財務諸表の注記です。財務諸表等規則の第8条の2の4に定めがあります。
KAMは監査人が監査報告書に書くものです。監査基準報告書701が定めています。会社が文案を作るものではありません。
もっとも、実務では両者が同じ論点を扱うことが多くなります。のれんの評価、繰延税金資産の回収可能性、収益認識の見積り。だからこそ、注記とKAMの記述が食い違っていないかを、会社の側で確かめておくことになります。
📝 会社が書く注記
3つの号です。項目名、金額、そして中身の説明という順番になっています。
財規第8条の2の4第1項は、当事業年度の翌事業年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある会計上の見積りを識別した場合に、3つの号を注記するとしています。
一号が項目名、二号が当事業年度に計上した金額、三号が算出方法と主要な仮定と翌事業年度に与える影響その他の情報です。
連結財務諸表では、連結財務諸表規則の第13条の2が第8条の2の4を準用しています。ただし第3項と第4項は準用の対象から外れています。連結側と個別側で省略の考え方が違う点に注意してください。
識別する項目の選定、主要な仮定の書き方、金額の対応づけ、そして監査人との議論の整理まで通してお受けします。注記とKAMの記述が食い違わないよう、社内の説明資料もあわせて整えます。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
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🔍 監査人がKAMを決める順番
3段階で絞り込みます。監査役等との議論が出発点になっている点が実務では効いてきます。
監基報701の第8項は、監査役等とコミュニケーションを行った事項の中から、監査を実施する上で特に注意を払った事項を決定するとしています。
そのときに考慮するのは、特別な検討を必要とするリスクなどの領域、見積りの不確実性が高い会計上の見積りを含む経営者の重要な判断を伴う領域、そして当年度に発生した重要な事象または取引の影響です。
第9項で、そこからさらに職業的専門家として特に重要と判断した事項を絞り込みます。そして第10項により、監査報告書に区分を設け、小見出しを付して記載されます。
出発点が監査役等との議論であることは、会社の側にも意味があります。監査役等との議論の記録が薄いと、そもそもの母集団が細くなります。KAMが記載されない場合についてはKAMが記載されない監査報告書とはで扱っています。
⚖️ KAMの対象
上場会社だけの制度ではありません。逆に、非上場でも一定の規模を超えれば対象になります。自社がどちらかを確かめてください。
KAMは上場会社だけの制度ではありません。金融商品取引法にもとづく監査に広く及びます。
一方で、財務諸表等の監査証明に関する内閣府令の第4条第10項と第3条第5項により、非上場の有価証券報告書提出会社のうち小規模なものについては記載しないことができるとされています。
自社が対象かどうかは、監査法人に確認してください。上場申請の前後で扱いが変わることもあります。
❓ よくある質問
A. 財務諸表等規則 第8条の2の4です。第8条の2の2は比較情報の規定なので、取り違えないでください。
A. 連結財務諸表規則 第13条の2が第8条の2の4を準用しています。第3項と第4項は準用の対象外です。
A. 項目名、当事業年度に計上した金額、算出方法と主要な仮定と翌事業年度に与える影響その他の情報です。
A. 書きません。監査人が監査報告書に記載します。
A. 監査役等とコミュニケーションを行った事項から、特に注意を払った事項を経て、特に重要と判断した事項に絞り込まれます。
A. 非上場の有価証券報告書提出会社のうち小規模なものについては記載しないことができる場合があります。また意見を表明しない場合は記載しないものとされています。
A. 一致させる制度ではありません。ただし食い違いが目立つと説明を求められます。突き合わせておいてください。
A. 主要な仮定の根拠資料と、監査役等との議論の記録です。この2つが薄いと、どちらの記載も詰まります。
📄 まとめ
重要な会計上の見積りの注記は会社が書き、KAMは監査人が書きます。載る場所も根拠も違います。
注記の根拠は財規第8条の2の4です。連結は連結財規第13条の2の準用です。
KAMは監査役等との議論を出発点に3段階で絞り込まれます。議論の記録が母集団になります。
主要な仮定の根拠資料を先に整えるのか、監査役会の議事の記録を厚くするのか。どちらを先にするかは自社の弱いほうから決めてください。
📚 参考(公的な一次情報)
- 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(e-Gov法令検索) 第8条の2の4
- 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(e-Gov法令検索) 第13条の2
- 財務諸表等の監査証明に関する内閣府令(e-Gov法令検索) 第3条第5項、第4条第10項
- 監査基準報告書701(日本公認会計士協会) 第8項から第10項
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