期中の切放し法はいつ注記が要るか|適用指針第34号の第4項と第7項

期中の財務諸表で、有価証券の減損や棚卸資産の簿価切下げをどう扱うか。切放し法を使うなら注記が要ると聞いたが、どこに書いてあるのか。

探しても見つからないのは、会計基準の本体ではなく適用指針に置かれているからです。企業会計基準適用指針第34号の第4項と第7項です。

そして原則は期中洗替え法です。切放し法は、従前から適用していた場合に継続できるという位置づけになっています。

この記事でわかること

  • 切放し法の注記が適用指針第34号にあること
  • 有価証券の減損が第4項、棚卸資産の簿価切下げが第7項であること
  • 原則は期中洗替え法であること
  • 期中切放し法を適用する場合はその旨を注記すること
  • 税金費用は切放しか洗替えかという論点ではないこと
  • 期中財務諸表の枠組みが企業会計基準第37号であること
切放し法で注記が要るか棚卸資産の評価の方法を確かめる期中に切放し法を適用しているか注記の要否を確かめるはいいいえ洗替え法から変更したか会計方針の変更に当たるかを検討はいいいえ損益への影響に重要性があるか注記して内容を説明するはいいいえ選んだ方法を継続して適用する

図 期中の切放し法の注記の判定

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📌 結論 定めは適用指針にある

図1 切放し法の注記はどこに書いてあるか論点定めのある場所期中財務諸表の作成の枠組み企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」有価証券の減損処理企業会計基準適用指針第34号 第4項棚卸資産の簿価切下げ企業会計基準適用指針第34号 第7項期中切放し法を適用する場合の注記適用指針第34号 第4項および第7項の末尾

切放し法と注記の話は、会計基準の本体ではなく適用指針に置かれています。基準だけを読んでも見つかりません。ここが探しにくいところです。

期中財務諸表の枠組みそのものは企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」が定めています。しかし、切放し法と注記の話は本体にはありません。

企業会計基準適用指針第34号「期中財務諸表に関する会計基準の適用指針」の第4項が有価証券の減損処理を、第7項が棚卸資産の簿価切下げを扱っています。

いずれも原則は期中洗替え法です。そして両方の項の末尾に、期中切放し法を適用する場合には、その旨を注記するという定めが置かれています。

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🧭 判断の順番

図2 判断の順番有価証券の減損か、棚卸資産の簿価切下げかを分ける原則は期中洗替え法であることを確認する従前から期中切放し法を適用していたかを確認する継続して切放し法を適用するなら、その旨を注記する翌期以降も同じ方法を続ける

原則が洗替え法である点を先に押さえてください。切放し法は、従前からの継続という位置づけです。

まず、有価証券の減損の話なのか、棚卸資産の簿価切下げの話なのかを分けてください。根拠となる項が違います。

次に、原則が洗替え法であることを確認します。ここを飛ばして切放し法を選ぶ議論から入ると、話がずれます。

従前から期中切放し法を適用していた場合には、継続して適用することができます。その場合に、その旨を注記することになります。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

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⚖️ 2つの項目の書き分け

図3 2つの項目の書き分け項目原則切放し法を使うとき有価証券の減損処理期中洗替え法(適用指針第34号 第4項)期中切放し法を適用する場合は、その旨を注記する棚卸資産の簿価切下げ期中洗替え法(同 第7項)期中切放し法を適用する場合は、その旨を注記する

両方とも同じ構造です。原則は洗替え、切放しを使うならその旨を書く。並べて覚えてください。

有価証券の減損処理と棚卸資産の簿価切下げは、同じ構造で定められています。原則は洗替え、切放しを使うならその旨を注記する、です。

ですから社内の会計方針では、この2つを並べて書いておくと運用が揃います。片方だけ切放し、もう片方は洗替え、という状態を放置しないでください。

方針を変えるかどうかは、監査法人と早めに相談してください。期中に入ってからでは、比較可能性の説明が難しくなります。

四半期報告書の廃止から期中財務諸表への流れは四半期開示の見直しはどこまで進んだかに、期中に誤りが見つかった場合は期中に誤りが見つかったときにまとめています。

🚫 まちがえやすいところ

図4 まちがえやすいところよくある誤解実際切放し法の注記は会計基準の本体にある適用指針第34号にあります税金費用にも切放し法と洗替え法がある税金費用は見積実効税率にもとづく計算の話で、切放しか洗替えかという論点ではありません切放し法は自由に選べる原則は洗替え法です。従前から切放し法を適用していた場合の継続適用という位置づけです注記は任意切放し法を適用する場合は、その旨を注記します

この4つを押さえておけば、社内の議論が空転しません。

いちばん多い誤解は、税金費用にも切放し法と洗替え法があるという理解です。期中の税金費用は見積実効税率にもとづいて計算するもので、切放しか洗替えかという論点ではありません。

もう1つは、切放し法を自由に選べるという理解です。原則は洗替え法で、切放し法は従前からの継続適用という位置づけです。

そして、注記は任意ではありません。切放し法を適用する場合には、その旨を注記することになります。

❓ よくある質問

Q. 切放し法の注記はどこに定めがありますか。

A. 企業会計基準適用指針第34号の第4項(有価証券の減損処理)と第7項(棚卸資産の簿価切下げ)です。

Q. 原則はどちらですか。

A. 期中洗替え法です。

Q. 切放し法は使えますか。

A. 従前から期中切放し法を適用していた場合は、継続して適用することができます。その場合は、その旨を注記します。

Q. 税金費用にも切放し法がありますか。

A. ありません。期中の税金費用は見積実効税率にもとづいて計算するもので、別の論点です。

Q. 期中財務諸表の枠組みはどの基準ですか。

A. 企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」です。

Q. 有価証券と棚卸資産で扱いは違いますか。

A. 定めの構造は同じです。原則は洗替え、切放しを使うならその旨を注記します。

Q. 方針は途中で変えられますか。

A. 変更にあたるかどうかを含めて、監査法人と事前に相談してください。

Q. 社内で何を整えますか。

A. 会計方針に2つの項目を並べて書き、どちらの方法を採るのかを明記してください。

📄 まとめ

期中の切放し法と注記は、企業会計基準適用指針第34号の第4項と第7項にあります。会計基準の本体を探しても見つかりません。

原則は期中洗替え法です。切放し法は従前からの継続適用で、適用する場合はその旨を注記します。

税金費用は別の論点です。切放しか洗替えかという話ではありません。

いま切放し法を続けるのか、洗替え法に揃えるのか。会計方針として決めて、社内に書き残してください。判断を先送りすると、期中決算の現場で毎回もめます。

📚 参考(公的な一次情報)

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