法人税等に関する会計基準の改正|2029年3月期から何が変わるか

企業会計基準第27号が2026年7月7日に改正され、基準の名称が「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」から「法人税等に関する会計基準」に変わりました。

名前が短くなっただけには見えますが、中身の考え方が入れ替わっています。これまで税金の名前を並べて適用対象を決めていたものを、課税対象利益を基礎とする税金という原則的な定めに置き換えました。

この記事では、何がどう変わったのか、損益計算書のどこが動くのか、そして3月決算の会社がいつの決算から備えるべきかを整理します。

この記事でわかること

  • 基準の名称と、適用対象の決め方が変わったこと
  • 課税対象利益を基礎とする税金という新しい物差し
  • 住民税の均等割と事業税の外形標準部分が法人税等から外れること
  • 原則適用は2029年3月期、早期適用は2028年3月期からであること
  • 適用初年度の経過措置と、比較情報の取扱い
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記入式・いま法人税等に入れている税金の棚卸し表
外れる税金の置き先を決める6つのチェックと影響額の記入欄
源泉所得税の分岐と、法定実効税率への波及
適用初年度の選択と、比較情報の取扱い

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📌 名称が変わり、決め方が変わった

企業会計基準第27号は2017年3月16日に制定され、2022年10月28日、2025年3月11日と改正を重ねてきました。2026年7月7日が4回目の改正です。この改正で、基準の題名が「法人税等に関する会計基準」になりました。

基準の名前そのものが変わった2026年改正前法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準2026年7月7日改正後法人税等に関する会計基準税金の名前を並べた題名から、まとめて呼ぶ題名へ

図 税金の名前を並べた題名から、まとめて呼ぶ題名になりました。題名の変更は、中身の考え方が変わったことの表れです。

結論の背景には、これまでの決め方が説明されています。2026年改正前の会計基準は、具体的な税金を挙げて、その税金について規定する税法を参照することにより適用対象となる税金を特定していた。そのため、個別の税金の創設を受けて、そのつど改正を行ってきた、という趣旨です。

実際、直前には防衛特別法人税の創設がありました。新しい税金ができるたびに会計基準に一行を足すやり方では、税制改正から適用までの短い期間で基準を直さなければならなくなります。

これまでの決め方2026年改正後の決め方具体的な税金を名指しで挙げる課税対象利益を基礎とする税金新しい税金ができるたびに基準を改正する新しい税金ができても基準は改正しない税制改正から適用まで短い期間で改正が必要になる該当するかどうかを補足文書の改訂で示す

図 列挙をやめて原則を置いたことで、新しい税金ができても基準本体を改正せずに済む構えになりました。

📌 課税対象利益を基礎とする税金

新しい物差しは、課税対象利益を基礎とする税金という言い方です。第4項では、課税対象利益を、課税当局の定めに従って算定された特定の事業年度の利益であり、当該利益を対象として税金が課されるもの、と定義しています。

課税対象利益とは何か課税当局の定めに従って算定された特定の事業年度の利益であり、当該利益を対象として税金が課されるもの条件1課税当局の定めに従って算定された利益であること条件2その利益を対象として税金が課されることこの二つを満たす税金が、法人税等として扱われる

図 定義は二つの条件に分かれます。当局の定めに従って算定された利益であること、そしてその利益を対象として税金が課されることです。

では日本のどの税金が該当するのか。これが基準本体には書かれていません。同じ日に公表された補足文書「我が国における課税対象利益を基礎とする税金及び税効果会計における税率に関する取扱いについて」に示されています。基準は原則を置き、個別の当てはめは補足文書が受け持つ、という役割分担です。

区分 税金
課税対象利益を基礎とする税金 法人税、地方法人税、防衛特別法人税、特別法人事業税(基準法人所得割)、住民税(法人税割)、事業税(所得割)
法人税等に含めないもの 住民税(均等割)、事業税(付加価値割)、事業税(資本割)

表 補足文書が示している振り分け。税制改正があった場合は、基準ではなく補足文書の改訂で対応する方針が示されています。

補足文書が示している振り分け課税対象利益を基礎とする税金含めないもの法人税地方法人税防衛特別法人税特別法人事業税(基準法人所得割)住民税(法人税割)事業税(所得割)住民税(均等割)事業税(付加価値割)事業税(資本割)右側は法人税等に含めず、その内容に応じた適切な表示区分に表示する

図 左側が法人税等として扱われる税金、右側は法人税等に含めず、内容に応じた適切な表示区分に表示することになります。

📌 動くのは表示区分

実務でいちばん目に見える変化は、損益計算書の表示区分です。これまで法人税等の中にまとめて入っていた住民税の均等割と、事業税の付加価値割・資本割が、法人税等から外れます。

外れたものがどこへ行くかは、その内容に応じた適切な表示区分に表示する、という書き方になっています。実務上は販売費及び一般管理費などに乗ることになりますが、どの行に置くかは会社の判断が入ります。

損益計算書のどこに乗るかが変わるこれまで2026年改正後法人税等法人税・地方法人税・住民税事業税(均等割も外形標準部分も含めて)法人税等課税対象利益を基礎とする税金だけ別の表示区分均等割・付加価値割・資本割税引前当期純利益は変わらない。変わるのは、どの行に乗せるか

図 税引前当期純利益より下の合計は変わりません。変わるのは、どの行に乗せるかです。営業利益の水準は動きます。

もうひとつ、受取利息と受取配当金に係る源泉所得税の扱いも整理されました。税額控除を選択する場合は法人税等に含め、そうでない場合は含めません。同じ税金でも、会社の選択によって乗る行が変わります。

受取利息・受取配当金に係る源泉所得税税額控除を選択するか選択する選択しない法人税等に含める法人税等に含めない同じ源泉所得税でも、選択によって乗る行が変わる

図 源泉所得税は、税額控除を選ぶかどうかで表示区分が分かれます。選択は申告の話ですが、財務諸表の見え方に直結します。

法定実効税率の定義も、個別の税金名を並べる形から、課税対象利益に対する法令上規定された税率に基づく税負担の比率という考え方に変わっています。税効果会計の注記にも波及する部分です。

📌 適用時期は2029年3月期から

第20-7項は、2026年改正会計基準は2028年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する、ただし2026年改正会計基準を公表した日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる、と定めています。

ここで見落としやすいのが早期適用の起点です。2026年4月1日ではなく、公表日である2026年7月7日以後に開始する事業年度です。3月決算の会社の場合、2027年3月期は2026年4月1日に始まっているため早期適用の要件を満たしません。

事業年度 決算期 2026年改正基準の適用
2026年4月1日から2027年3月31日 2027年3月期 適用できない
2027年4月1日から2028年3月31日 2028年3月期 早期適用ができる最初の事業年度
2028年4月1日から2029年3月31日 2029年3月期 原則適用が始まる

表 3月決算の会社の場合の適用時期。12月決算の場合は、原則適用が2029年12月期、早期適用の最初の機会が2027年12月期になります。

3月決算の会社は、いつから2027年3月期適用できない2028年3月期早期適用ができる最初の事業年度2029年3月期原則適用(強制適用)早期適用の起点は公表日。2026年7月7日以後に開始する事業年度から

図 2027年3月期は早期適用ができません。公表日より前に事業年度が始まっているためです。

なお2027年3月期については、防衛特別法人税の会計処理を実務対応報告第48号が当面の取扱いとして定めています。第27号の改正が最終化されたあとは、その基準に準拠することになる旨が記載されています。

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📌 適用初年度にすること

第20-8項は、適用によりこれまでの会計処理と異なることとなる場合は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用すると定めています。ただし、適用初年度の期首より前に遡及適用した場合の累積的影響額を期首の利益剰余金に加減し、当該期首から新たな会計方針を適用することもできます。

そして第20-9項が、適用初年度の比較情報については、企業会計基準第24号第14項の定めにかかわらず、新たな表示方法に従い組替えを行うことを要しない、としています。要しない、という書き方です。

適用初年度にすること会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として扱う原則新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する認められる方法累積的影響額を期首の利益剰余金に加減するいずれの場合も、適用初年度の比較情報の組替えは要しない第24号の原則にかかわらず、と書かれている

図 遡及適用が原則で、累積的影響額を期首の利益剰余金に加減する方法も認められます。比較情報の組替えは、いずれの場合も要しません。

📌 一緒に出たものも見ておく

同じ2026年7月7日に、適用指針第28号、実務対応報告第42号、移管指針第6号が改正され、企業会計基準第43号と第44号が新たに公表されました。適用指針第28号の適用時期は第27号と同様と定められています。

2026年7月7日に一緒に出たもの企業会計基準第27号適用指針第28号税効果会計の適用指針実務対応報告第42号グループ通算制度移管指針第6号キャッシュ・フロー計算書企業会計基準第43号税効果会計基準の一部改正企業会計基準第44号連結CF作成基準の一部改正補足文書どの税金が該当するか適用指針第28号の適用時期は、第27号と同じ

図 第27号だけを見ていると足りません。税効果会計の適用指針とグループ通算制度の実務対応報告も同時に動いています。

IPO準備会社の場合、申請時期が2028年から2029年にかかると、Ⅰの部に並ぶ比較年度をまたいで表示区分が変わることになります。比較情報の組替えは要しないものの、会計方針の変更としての注記は必要です。監査法人との協議は早めに始めておくほうが安全です。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. グローバル・ミニマム課税への対応が入ったのですか

A. 入っていません。2026年改正は、適用対象となる税金の特定方法を原則的な定めに変えるものです。グローバル・ミニマム課税は実務対応報告第44号と第46号という別の文書で扱われており、今回の公表物には含まれていません。

Q. その他の包括利益に対する課税の話はどこへ行きましたか

A. それは2022年10月28日の改正で扱われた論点です。2026年改正の論点ではありません。

Q. 税引前当期純利益は変わりますか

A. 変わりません。法人税等から外れる税金は別の表示区分に移るだけで、費用としては同じように計上されます。ただし移った先が販売費及び一般管理費であれば、営業利益の水準は変わります。

Q. 2027年3月期から早期適用できますか

A. できません。早期適用の起点は公表日である2026年7月7日以後に開始する事業年度です。3月決算の場合、2027年3月期は2026年4月1日に始まっているため要件を満たしません。最初の機会は2028年3月期です。

Q. 比較情報は組み替える必要がありますか

A. 第20-9項により、適用初年度の比較情報については新たな表示方法に従い組替えを行うことを要しません。組み替えてはいけないという意味ではなく、要しないという定めです。

📄 まとめ

2026年7月7日の改正で、企業会計基準第27号は「法人税等に関する会計基準」になりました。適用対象となる税金を、具体的な税金の列挙ではなく、課税対象利益を基礎とする税金という原則で決める形に変わっています。

日本のどの税金が該当するかは、基準ではなく補足文書が示します。法人税、地方法人税、防衛特別法人税、特別法人事業税の基準法人所得割、住民税の法人税割、事業税の所得割が該当し、住民税の均等割と事業税の付加価値割・資本割は法人税等に含めないことになります。

適用は2028年4月1日以後開始する事業年度の期首からが原則で、早期適用は公表日である2026年7月7日以後に開始する事業年度からです。3月決算なら2029年3月期が強制適用、早期適用の最初の機会は2028年3月期になります。

適用初年度は会計方針の変更として遡及適用するのが原則ですが、累積的影響額を期首の利益剰余金に加減する方法も認められ、比較情報の組替えは要しません。実務としては、いま使っている勘定科目のうちどれが法人税等から外れるのかを洗い出すところから始めることになります。

⚖ 本記事の根拠

参照した資料

  • 改正企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」(2026年7月7日) 第4項・第20-7項・第20-8項・第20-9項・結論の背景第25-6項
  • 補足文書「我が国における課税対象利益を基礎とする税金及び税効果会計における税率に関する取扱いについて」(2026年7月7日)
  • 改正企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(2026年7月7日) 第65-6項
  • 企業会計基準第43号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(その3)」(2026年7月7日)
  • 実務対応報告第48号「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」(2026年2月27日)
  • 企業会計基準公開草案第94号(2026年1月9日、コメント期限2026年3月9日)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の会計処理および税務上の判断は、監査人および顧問税理士にご確認ください。

📚 参考(公的な一次情報)

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