新しいリースの会計基準では、借手はオペレーティング・リースも含めてすべてのリースをオンバランスします。使用権資産とリース負債が貸借対照表に並ぶことになります。
ここで混同されやすいのが消費税です。会計処理が変わったのだから、仕入税額控除の時期も変わるのではないかという質問をよく受けます。結論としては変わりません。消費税は取引の性質で判断するためです。
この記事では、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースそれぞれの仕入税額控除の時期を整理し、会計と法人税と消費税の判断の軸の違いを確かめます。
- 新しいリース会計基準を適用しても消費税の課税関係は変わらないこと
- ファイナンス・リースの原則(引渡し時の一括控除)と分割控除の取扱い
- オペレーティング・リースは法人税でも賃貸借のまま扱われること
- 会計上のリース期間が税務上のリース期間として取り扱われること
図 リース取引の仕入税額控除の時期の判定
この記事の見出し
📌 会計は変わるが消費税は変わらない
新しいリースの会計基準では、借手はオペレーティング・リースを含めてすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上します。貸借対照表の見え方は大きく変わります。
一方で、消費税の取扱いはこれに連動しません。リース事業協会が公表しているリース税制に関する質疑応答でも、新しい会計基準の適用により取引の性質や内容が変わるものではなく、従来の消費税の課税関係が変わるものではないと整理されています。
つまり、使用権資産を計上したからといって、その金額をもとに仕入税額控除を行うわけではありません。消費税は、あくまで取引の性質、すなわち税務上の売買にあたるかどうかで判断します。
📌 ファイナンス・リースの仕入税額控除
所得税法または法人税法の規定により売買があったものとされるリース取引については、賃貸人が賃借人に資産の引渡しを行った日に資産の譲渡があったことになります。賃借人の側でも、課税仕入れを行った日はリース資産の引渡しを受けた日です。原則はリース料の総額について引渡し時に一括して控除するということになります。
ただし実務では、所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃貸借として経理している場合、支払うべきリース料に対応する消費税額を分割して控除することが認められています。経理実務の簡便性の観点から、支払うべき日の属する課税期間の課税仕入れとして申告しているときは、これによって差し支えないという取扱いです。
分割控除を選んでいる場合に注意が必要なのが中途解約です。解約時の残存リース料は、リース契約を解約した日の属する課税期間の仕入税額控除の対象として取り扱われます。
表 国税庁および業界団体の公表資料をもとに作成
📌 法人税では賃貸借のまま
借手のオペレーティング・リースについては、会計上は使用権資産を計上しても、税務上は引き続き賃貸借取引として支払賃借料を損金の額に算入することとされました。令和7年度の税制改正で法人税法に規定が置かれ、令和7年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。
あわせて、リース期間定額法の見直しも行われました。リース資産の取得価額に含まれている残価保証額を控除しないこととし、リース期間の経過時点で1円まで償却できるようになります。こちらは令和9年4月1日以後に締結された所有権移転外リース取引に係る契約が対象で、それ以前に締結した契約には経過措置が置かれています。貸手については、延払基準の特例が廃止されました。
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📌 会計のリース期間は税務でもリース期間になる
新しい会計基準では、リース期間は解約不能期間に、延長または解約のオプションのうち行使が合理的に確実な期間を加えて決めます。従来より長くなる契約が出てきます。
この点について、国税庁は法人税基本通達を新設し、賃借人が会計上のリース期間を用いて経理を行っているリース資産については、その会計上のリース期間を税務上のリース期間として取り扱うこととしました。会計と税務でリース期間を二重に管理する必要はないという整理です。
一方で、消費税の課税仕入れの時期は、このリース期間の長さに左右されません。売買とされる取引なら引渡し時、賃貸借なら支払うべき日です。会計のリース期間、法人税のリース期間、消費税の控除の時期は、それぞれ別の軸で決まると理解しておくと混乱がありません。
図 会計と法人税と消費税で判断の軸が違う
📌 実務で確かめること
第一に、いま分割控除を採用している契約があるかどうかです。所有権移転外ファイナンス・リースを賃貸借として経理してきた会社では、分割控除を続けているはずです。新しい会計基準を適用して経理の方法が変わるとき、消費税の申告をどう続けるかを決めておく必要があります。
第二に、システムの対応です。新しい会計基準では、これまで注記だけで済んでいたオペレーティング・リースについても、契約ごとに期間と支払額を管理することになります。その管理表に消費税の控除の時期の情報を持たせておくと、申告の際の作業が楽になります。
第三に、上場準備の会社では、監査法人との協議の記録を残すことです。リース期間の判断は見積りの要素を含みます。延長のオプションを行使することが合理的に確実かどうかは、契約書だけでは決まりません。判断の根拠を文書にしておくと、申請書類の作成時に説明しやすくなります。
会計と法人税と消費税で判断の軸が違うため、契約の棚卸しの段階から整理しておくと後戻りがありません。管理表の設計から対応できます。上場準備会社の会計と税務の実務に携わっている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。
❓ よくある質問
A. 行いません。消費税は取引の性質で判断します。税務上の売買とされるリース取引であれば引渡しを受けた日、賃貸借であれば支払うべき日が課税仕入れの時期です。会計上の使用権資産の計上額とは連動しません。
A. 所有権移転外ファイナンス・リース取引を賃貸借として経理している場合に、支払うべき日の属する課税期間の課税仕入れとして申告しているときは、これによって差し支えないとされています。継続して適用することが前提になりますので、変更する場合は税理士と確認してください。
A. 分割控除をしている場合、解約時の残存リース料は、リース契約を解約した日の属する課税期間における仕入税額控除の対象として取り扱われます。
A. 賃借人が会計上のリース期間を用いて経理を行っているリース資産については、その会計上のリース期間を税務上のリース期間として取り扱うこととされています。会計と税務で別々に期間を管理する必要はありません。
📄 まとめ
新しいリース会計基準の適用によって、消費税の課税関係が変わることはありません。取引の性質が変わるわけではないためです。
ファイナンス・リースは引渡しを受けた日に一括して控除するのが原則ですが、賃貸借として経理している場合は支払うべき日に分割して控除することが認められています。オペレーティング・リースは支払うべき日に控除します。
会計のリース期間、法人税の取扱い、消費税の控除の時期は、それぞれ別の軸で決まります。契約の棚卸しをする段階で、この3つを1枚の管理表に整理しておくと実務が楽になります。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
📚 参考(公的な一次情報)
- 国税庁 リース取引についての消費税の取扱いの概要
- 消費税法(e-Gov法令検索)
- 法人税法(e-Gov法令検索)
- 企業会計基準委員会(ASBJ) 収益認識に関する会計基準および適用指針
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