調査の場で「これは売上除外ではないですか」と言われると、その一言で話の性質が変わります。期ズレであれば所得は翌期から当期へ移るだけですが、売上除外とされると加算税の割合が上がり、遡られる年数も延びます。同じ計上漏れでも、会社に残る負担はまったく違います。
ただし、売上除外という言葉は法律の条文には出てきません。条文が使っているのは隠蔽または仮装という言葉です。ここを取り違えると、「漏れていた、だから売上除外、だから重加算税」という筋道のまま話が進んでしまいます。
この記事では、重加算税の条文が何を求めているのかを確認したうえで、国税庁が公表している事務運営指針が挙げる型と、該当しないとされる場合に付いている条件を整理します。現金売上の一部が漏れていたときに、何を示せばよいのかが分かるようにします。指摘項目の全体像は税務調査で指摘される項目 別冊にまとめています。
金額の帰属だけでなく、どのような事実があったかが問われています。
この記事の見出し
🧭 売上除外と言われたとき、問われているのは2つです
調査官が売上の計上漏れを見つけたとき、そこから先で確かめているのは2つです。ひとつはその売上がいつの事業年度のものか、もうひとつは漏れた原因に隠蔽または仮装があったかです。前者だけの話であれば、計上時期の誤り、いわゆる期ズレです。後者が加わると、重加算税の話になります。
この2つは、指摘される場面ではひとまとまりで語られがちです。「3月末の売上が4月に入っている、しかもこの得意先だけ請求書の控えがない」といった言い方になるからです。しかし条文の建て付けでは、金額の帰属と、隠蔽または仮装の有無は別の問題です。前者で争えないとしても、後者は事実関係の問題として別に説明できます。
計上時期そのものの考え方は売上の期ズレを指摘されたらで扱っています。この記事は、そこから一歩進んで、隠蔽または仮装があったとされる場面に絞ります。
⚖️ 重加算税の条文は、2つのことを同時に求めています
重加算税の根拠は国税通則法第68条です。第1項は、過少申告加算税の規定に該当する場合において、納税者が課税標準等または税額等の計算の基礎となるべき事実の全部または一部を隠蔽し、または仮装し、かつ、その隠蔽し、または仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときに、過少申告加算税に代えて重加算税を課すと定めています。
納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、かつ、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書……を提出していたときは……当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。(国税通則法第68条第1項)
読み落とされやすいのは、隠蔽または仮装という行為と、それに基づいて申告書を提出したという結びつきの両方が必要であるという点です。単に金額が漏れていたという結果だけでは、条文の文言に届きません。反対に、意図的に隠したのであれば、金額の大小にかかわらず条文に当てはまります。
無申告の場合には同条第2項が適用され、割合は100分の40になります。さらに同条第4項は、一定の場合に基礎となるべき税額の100分の10に相当する金額を加算するとしています。第1号は、その申告や更正、決定などがあった日の前日から起算して5年前の日までの間に、その国税の属する税目について無申告加算税等を課され、または徴収されたことがある場合です。繰り返しは重くなる、という構造になっています。
2と3は、条文で「かつ」でつながれています。片方だけでは足りません。
📌 隠蔽または仮装に当たるとされる型
では、どのような事実があると隠蔽または仮装とされるのか。国税庁は「法人税の重加算税の取扱いについて」という事務運営指針を公表しており、その第1の1で、原則として隠蔽または仮装に該当するとされる場合を6つ挙げています。
| 事務運営指針が挙げる型 | 内容 |
|---|---|
| 二重帳簿 | いわゆる二重帳簿を作成していること |
| 帳簿書類の隠匿、虚偽記載等 | 帳簿や原始記録、証ひょう書類の破棄または隠匿、改ざんや虚偽記載による仮装の経理、帳簿への記録をせずに売上げその他の収入の脱ろうや棚卸資産の除外をしていること |
| 要件書類の改ざん等 | 特定の損金算入や税額控除の要件とされる書類を改ざんし、または虚偽の申請にもとづき交付を受けていること |
| 簿外資産の果実 | 簿外資産に係る利息収入や賃貸料収入等の果実を計上していないこと |
| 簿外資金による支出 | 簿外資金をもって役員賞与その他の費用を支出していること |
| 非同族会社を装う行為 | 同族会社であるにもかかわらず、判定の基礎となる株主等の所有株式等を架空の者や単なる名義人に分割するなどして非同族会社としていること |
2つ目の型は、指針の中で「帳簿書類の隠匿、虚偽記載等」と定義され、破棄または隠匿、仮装の経理、記録をしないことの3つに分けて書かれています。
売上の計上漏れが売上除外とされるときに持ち出されるのは、ほとんどがこの2つ目の型です。とくに、帳簿に記録をせずに売上げその他の収入を脱ろうしているという部分です。現金で受け取った売上をレジにも通さず、入金記録も残していない、といった場面が想定されています。
逆にいえば、原始記録が残っていて、集計の過程も追える状態であれば、この型に当てはめるのは簡単ではありません。日報、レジのジャーナル、予約表、納品書の控えといった記録が当時のまま残っているかどうかが、最初の分かれ目になります。
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🔁 該当しないとされる場合には、条件が2つそろう必要があります
同じ事務運営指針の第1の3は、帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合を挙げています。ここは会社側にとって有利な定めですが、読み方に注意が要ります。柱書に限定が付いているためです。
指針は、その行為が相手方との通謀、または証ひょう書類等の破棄、隠匿もしくは改ざんによるもの等でないときという条件を置いたうえで、4つの場合を掲げています。そのひとつが、売上げ等の収入の計上を繰り延べている場合において、その売上げ等の収入が翌事業年度の収益に計上されていることが確認されたときです。
| そろえる必要がある条件 | 確かめられること |
|---|---|
| 条件1 行為の性質 | 相手方との通謀や、証ひょう書類等の破棄・隠匿・改ざんによるものでないこと |
| 条件2 翌期の計上 | 繰り延べた売上げ等の収入が、翌事業年度の収益に計上されていることが確認されること |
2つの条件は、どちらか一方では足りません。翌期に計上されていても、得意先と話を合わせて請求書の日付を動かしていれば条件1を満たしませんし、書類に手を入れていなくても翌期にも計上されていなければ条件2を満たしません。調査の場で示すべきものは、この2つに対応しています。翌期の総勘定元帳の該当行と、当時の証ひょうがそのまま残っていることの2点です。
🧮 数字で見ると、差がはっきりします
3月決算の会社で、現金売上のうち1,200万円が帳簿に載っていなかったとします。この指摘により追加で納付すべき法人税額が300万円になったとして、加算税を比べます。
| 前提 | 加算税の計算 |
|---|---|
| 隠蔽または仮装がないとされ、期限内申告税額が900万円のとき | 300万円×10パーセント=30万円。300万円は900万円を超えないため、加重される部分はありません |
| 隠蔽または仮装がないとされ、期限内申告税額が40万円のとき | 300万円×10パーセント=30万円に、50万円を超える250万円×5パーセント=12万5千円を加えて42万5千円 |
| 隠蔽または仮装があるとされたとき | 300万円×35パーセント=105万円 |
| さらに第68条第4項第1号に当たるとき | 105万円に、300万円×10パーセント=30万円を加えて135万円 |
2行目は、期限内申告税額に相当する金額と50万円とのいずれか多い金額を超える部分に5パーセントを加算するという国税通則法第65条第2項の定めによります。いずれも延滞税は含めていません。
1行目と3行目の差は75万円、4行目までいくと105万円です。所得の金額は同じなのに、事実関係の評価だけでこれだけ動きます。売上除外の場面で守るべきものは、金額の主張ではなく、記録の状態です。
調査の前に自分で気づいて修正申告をした場合の扱いも、条文で分かれています。国税通則法第65条第1項は、修正申告書の提出が調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでないときは100分の5とし、同条第6項は、予知前の修正申告であって、かつ調査通知がある前に行われたものであるときは第1項を適用しないとしています。ただし第68条第1項の括弧書きにも同じ除外があり、予知しないでされた修正申告は重加算税の対象から外れます。気づいた時期が、そのまま結論を分けます。
🗂️ 現金売上の漏れが出たとき、最初にそろえるもの
漏れが見つかった時点で用意しておきたいものは、次の4つに整理できます。いずれも、あとから作った説明ではなく、当時の記録であることに意味があります。
| そろえるもの | 何を示すためのものか |
|---|---|
| 原始記録 | 日報、レジのジャーナル、予約表、注文伝票など。売上の事実が当時から記録されていたこと |
| 集計の過程 | 日次の集計表から総勘定元帳までのつながり。どの段階で漏れたのかを示せること |
| 入金の経路 | 入金先の口座、金庫の受払記録。代金がどこへ入ったのかを説明できること |
| 翌期の計上 | 翌事業年度の総勘定元帳の該当行。繰り延べであれば翌期に載っていること |
3つ目の入金の経路が、実務ではとくに重いところです。計上していない売上代金がどこへ行ったかによって、課税される場所が変わるからです。会社の口座に入っていれば法人税と消費税の話にとどまりますが、個人の手元に流れていれば、そこから先の課税が加わります。
代金の行き先は、法人税だけの問題では終わらないことがあります。
真ん中の道について補足します。法人税法第34条第4項は、役員給与について定める同条第1項から第3項までの給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益を含むとしています。簿外の資金を役員が個人的に費消していれば、その利益は役員給与として扱われることになり、定期同額給与などの類型に当たらない限り損金になりません。なお、簿外資金をもって役員賞与その他の費用を支出していることは、先に見た事務運営指針で隠蔽または仮装に該当する型として挙げられているものでもあります。
右の道は、租税特別措置法第62条の使途秘匿金です。同条第2項は、相当の理由がなく、その相手方の氏名または名称および住所または所在地ならびにその事由を帳簿書類に記載していない金銭の支出を使途秘匿金の支出と定義し、同条第1項は、その支出額に100分の40の割合を乗じて計算した金額を法人税の額に加算するとしています。支出が損金にならないうえに、さらに上乗せされる形です。
| 更正や決定ができる期間 | 国税通則法の定め |
|---|---|
| 原則 | 法定申告期限から5年を経過した日以後はできない(第70条第1項第1号) |
| 偽りその他不正の行為があるとき | 法定申告期限から7年を経過する日までできる(同条第5項第1号) |
| 法人税に係る純損失等の金額を増減させる更正 | 法定申告期限から10年を経過する日までできる(同条第2項) |
遡られる年数が延びるのは、隠蔽または仮装があったからではなく、条文の文言としては偽りその他不正の行為によって税額を免れた場合です。重加算税の要件とは別の条文ですが、実際の場面では同じ事実関係が両方の判断材料になります。5年が7年になれば、追加の税額も加算税も、単純に見て年数分だけ増えます。
事前準備から当日の立会い、指摘への反論、修正申告の要否判断まで対応します。顧問税理士がいらっしゃる場合も、この調査だけのスポットのご依頼を承ります。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。法人の税務顧問と申告業務、新しい会計基準の導入支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
❓ よくある質問
金額が大きければ、それだけで重加算税になりますか
国税通則法第68条第1項が求めているのは、事実の隠蔽または仮装があり、かつ、それにもとづいて申告書を提出していたことです。金額の大小を要件とする文言は、確認した範囲では見当たりません。ただし、金額が大きいほど、なぜ気づかなかったのかという説明の重さは増します。
担当者が独断でやっていた場合はどうなりますか
条文は納税者が隠蔽し、または仮装したときと書いています。従業員の行為をどこまで会社の行為とみるかは事実関係によって判断が分かれるところで、一律の基準を示した規定は確認できませんでした。会社としての管理がどう行われていたか、発覚後にどう対応したかを、記録で示せるようにしておくことが現実的な備えになります。
翌期にきちんと計上していれば、重加算税にはならないのですか
事務運営指針は、相手方との通謀や証ひょう書類等の破棄・隠匿・改ざんによるもの等でないときで、かつ翌事業年度の収益に計上されていることが確認されたときに、帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しないとしています。2つの条件がそろうことが前提です。翌期の計上だけを示しても足りません。
消費税はどうなりますか
計上が漏れていた売上が課税売上であれば、消費税の課税標準にも影響します。重加算税を定める国税通則法第68条は特定の税目に限った規定ではないため、消費税についても同じ枠組みで判断されます。法人税だけを見て納得しないよう、税目ごとの影響をあわせて確認してください。
調査官から重加算税だと言われたら、その場で認めるしかないのですか
調査結果の説明を受けた段階では、まだ賦課決定が行われたわけではありません。どの事実を隠蔽または仮装と評価しているのかを具体的に確認し、こちらの記録と突き合わせる時間を取ることはできます。税務調査 完全ガイドで、終わり方の選択肢を整理しています。
📄 まとめ
売上除外という言葉は条文にはなく、条文が求めているのは隠蔽または仮装と、それにもとづく申告という2つの事実です。国税庁の事務運営指針は隠蔽または仮装に当たる型を6つ挙げる一方で、該当しないとされる場合には、相手方との通謀や証ひょう書類等の破棄・隠匿・改ざんによるものでないことと、翌事業年度に計上されていることが確認されることという2つの条件を置いています。
だからこそ、そろえるべきものは決まっています。原始記録、集計の過程、入金の経路、翌期の計上の4点です。加算税の割合は10パーセントと35パーセントで、繰り返しがあればさらに10パーセントが加わります。遡られる年数も5年と7年で分かれます。金額の話ではなく、記録の話として準備するのが近道です。
すでに指摘を受けている場合でも、どの事実をどう評価されているのかを分けて確認すれば、主張できる余地が残っていることがあります。修正申告に応じる前に、一度整理してみることをおすすめします。
🔗 参考(公的な一次情報)
- 国税通則法(e-Gov法令検索) 第65条、第68条、第70条
- 国税庁 法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針) 第1の1、第1の3
- 法人税法(e-Gov法令検索) 第22条、第34条
- 租税特別措置法(e-Gov法令検索) 第62条
- 消費税法(e-Gov法令検索) 第2条、第30条
本記事は公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所・東京都台東区)が、法令・通達および国税庁の公表資料に基づいて作成しています。本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度は改正される可能性があり、個別の事実関係により結論が異なります。実際の判断にあたっては、専門家にご確認ください。