計算書類は5年間置いておく。そう覚えている方は多いのですが、いつから5年なのかを即答できる方は多くありません。作成した日でも、総会の日でもありません。
そして会社法には、保存と備置きという別の言葉が出てきます。年数も起算点も違います。この記事では、計算書類まわりの期間をひととおり整理します。
- 備置きの5年がいつから始まるのか(会社法442条1項1号)
- 保存(435条4項の10年)と備置き(442条の5年)の違い
- 支店に写しを置かなくてよくなる場合(442条2項ただし書)
- 株主と債権者、親会社社員が請求できること
保存と備置きは別の話
会社法435条4項は、株式会社は計算書類を作成した時から10年間、当該計算書類およびその附属明細書を保存しなければならないと定めています。これが保存です。起算点は作成した時、期間は10年です。
一方、会社法442条1項は、計算書類等を一定の期間その本店に備え置かなければならないとしています。これが備置きです。誰かに見せるために置いておく、という趣旨で、保存とは目的が違います。
会計帳簿はまた別です。会社法432条2項は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿およびその事業に関する重要な資料を保存しなければならないと定めています。起算点は帳簿の閉鎖の時です。
この3つを混ぜないでください。実務で問われるのはたいてい442条の備置きのほうです。
5年の起算点は総会の2週間前の日
会社法442条1項1号は、各事業年度に係る計算書類および事業報告、これらの附属明細書、監査報告や会計監査報告について、定時株主総会の日の1週間、取締役会設置会社にあっては2週間前の日から5年間、本店に備え置かなければならないとしています。
起算点は総会の日ではありません。その1週間前または2週間前の日です。取締役会を置いている会社なら2週間前、置いていない会社なら1週間前です。
そしてかっこ書きに、319条1項の場合にあっては同項の提案があった日、とあります。決議の省略を使って定時株主総会を書面で済ませた場合は、総会の日という基準がありませんので、提案があった日から5年になります。決議の省略を使う会社は、提案書の日付を記録に残してください。
同項2号は臨時計算書類について、これを作成した日から5年間としています。臨時計算書類には総会の日という基準がないためです。
支店には写しを3年間
会社法442条2項1号は、1項1号の計算書類等の写しを、同じ日から3年間、支店に備え置かなければならないとしています。同項2号は臨時計算書類について、作成した日から3年間です。
本店が5年で支店が3年です。株主総会議事録が本店10年で支店5年(318条2項・3項)ですので、数字が違います。取締役会議事録は本店10年で支店の定めなし(371条1項)です。3つを並べた表を作っておくと迷いません。
同条2項にはただし書があります。計算書類等が電磁的記録で作成されている場合であって、支店における3項3号および4号の請求に応じることを可能とするための措置として法務省令で定めるものをとっているときは、支店に写しを置く必要がありません。
3項3号は電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求、4号はその事項の提供または書面の交付の請求です。つまり、計算書類を電子データで作り、支店の端末からその内容を表示できるようにしておけば、紙の写しを置かなくてよいということです。支店の多い会社では実益があります。
| 書類 | 本店 | 支店 | 起算点 |
|---|---|---|---|
| 計算書類等(442条) | 5年 | 写しを3年 | 総会の2週間前の日 |
| 株主総会議事録(318条) | 10年 | 写しを5年 | 株主総会の日 |
| 取締役会議事録(371条) | 10年 | 定めなし | 取締役会の日 |
| 委任状と議決権行使書面(310条・311条) | 3か月 | 定めなし | 株主総会の日 |
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誰が何を請求できるか
会社法442条3項は、株主および債権者は、会社の営業時間内はいつでも、4つの請求をすることができると定めています。書面で作成されているときはその書面または写しの閲覧、その謄本または抄本の交付、電磁的記録で作成されているときは表示したものの閲覧、その事項の提供または書面の交付です。
ただし書により、謄本や抄本の交付、電磁的方法による提供や書面の交付を求めるには、会社が定めた費用を支払わなければなりません。閲覧は無償、交付は有償という整理です。会社は費用の額をあらかじめ決めておいてください。
注目したいのは、請求できるのが株主だけでないことです。債権者も請求できます。しかも、会計帳簿の閲覧請求(433条1項)のような持株の要件がありません。1株の株主でも、取引先である債権者でも、計算書類等の閲覧を求めることができます。
同条4項は、親会社社員について、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て3項各号の請求をすることができるとしています。子会社の計算書類を親会社の株主が見る場合の規定です。
実務でどう回すか
やることは3つです。ひとつめは、備置きの開始日を毎年の日程表に書き込むことです。招集通知の発送日と同じ日になることが多いので、同じ行に並べておくと漏れません。
ふたつめは、置く場所を決めることです。本店に備え置く、という条文ですので、誰かの机の引き出しでは足りません。求められたときに直ちに出せる状態にしておきます。電子データで管理している場合は、442条2項ただし書の措置をとっているかを確認してください。
みっつめは、費用を決めることです。謄本の交付を求められたときに、いくら請求するのかを社内で決めておきます。決めていないと、請求を受けてから慌てることになります。
そして、5年を過ぎたら備置きの義務は終わりますが、435条4項の保存の義務は10年続きます。備置きの棚から外した後も、計算書類そのものは捨てられません。会計帳簿は432条2項により閉鎖の時から10年です。書類の廃棄ルールを作るときは、この3つの期間を並べて考えてください。
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❓ よくある質問
A. 会社法442条1項1号により、定時株主総会の日の2週間前の日からです。取締役会を置いていない会社は1週間前の日から。決議の省略を使った場合は、提案があった日からになります。
A. あります。会社法442条2項ただし書により、計算書類等を電磁的記録で作成し、支店で表示や提供の請求に応じられる措置をとっていれば不要です。
A. 見られます。会社法442条3項は株主および債権者による請求を認めており、持株や債権額の要件はありません。ただし謄本の交付などには会社が定めた費用がかかります。
📄 まとめ
計算書類の備置きは、定時株主総会の日の2週間前の日から本店で5年間、支店では同じ日から写しを3年間です。総会の日でも作成日でもありません。決議の省略を使った場合は提案があった日から起算します。
これとは別に、435条4項の保存が作成した時から10年、432条2項の会計帳簿の保存が閉鎖の時から10年あります。備置きが終わっても保存は続きますので、廃棄のルールを作るときは3つの期間を並べてください。
⚖ 本記事の根拠
- 会社法442条1項1号(本店における5年間の備置きと、総会の2週間前の日という起算点)、同項2号(臨時計算書類)
- 会社法442条2項1号・2号およびただし書(支店における3年間の備置きと、電磁的記録による場合の免除)
- 会社法442条3項(株主および債権者による4つの請求と、費用の負担)、同条4項(親会社社員と裁判所の許可)
- 会社法435条2項・4項(計算書類等の作成と、作成した時から10年間の保存)
- 会社法432条2項(会計帳簿および事業に関する重要な資料の10年間の保存)
- 会社法318条2項・3項、371条1項、310条6項、311条3項(他の書類の備置期間との対比)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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