取締役を解任するには|株主総会の決議と30日以内の解任の訴え

共同創業者と方針が合わなくなった。役員が不正に関与していた。非上場の会社では、取締役を辞めさせるという判断が現実の問題になることがあります。

会社法は、株主総会の決議によっていつでも解任できるという立て付けを取っています。ただし、決議の要件、損害賠償のリスク、否決されたときの手段が、それぞれ別の条文に置かれています。この記事では、順に確かめていきます。

この記事でわかること

  • いつでも解任できるという原則(会社法339条1項)
  • 解任の決議で定足数を3分の1未満にできないこと(341条)
  • 正当な理由がないときの損害賠償(339条2項)
  • 解任議案が否決されたあとの30日以内の訴え(854条1項)

いつでも解任できる

会社法339条1項は、役員および会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができると定めています。役員とは、329条1項により取締役、会計参与、監査役を指します。

いつでも、という言葉が置かれているのは、任期の途中でも構わないという意味です。理由も条文上は求められていません。会社の所有者である株主が、経営を委ねる相手を選び直せるという考え方です。

ただし、理由がいらないことと、責任が生じないことは別です。それが同条2項です。

決議の要件は普通決議より硬い

解任の決議は普通決議です。ただし、会社法341条が309条1項の特則を置いています。役員を選任し、または解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数をもって行わなければならない、というものです。

ポイントは定足数のかっこ書きです。3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあってはその割合以上、とされています。通常の普通決議は309条1項により定款で定足数を完全に排除できますが、役員の選解任については3分の1未満にすることができません。可決要件のほうは、定款でこれを上回る割合を定めることができます。

自社の定款を確認してください。普通決議の定足数を排除する条項があっても、役員の選解任には適用されない、あるいは3分の1以上と別に書かれているはずです。

例外もあります。会社法309条2項7号により、342条3項から5項までの規定によって選任された取締役、つまり累積投票で選任された取締役を解任する場合と、監査等委員である取締役または監査役を解任する場合は、特別決議です。議決権の3分の2以上が必要になります。監査役の地位を安定させるための規定です。

解任の決議要件と、否決されたあと取締役(原則)定足数は議決権の過半数定款で3分の1未満にはできない会社法341条監査役・監査等委員など出席株主の議決権の3分の2以上累積投票で選任された取締役も同じ会社法309条2項7号否決されたとき不正の行為または法令定款違反の重大な事実があるなら、解任の訴え株主総会の日から30日以内。議決権または株式の3パーセント以上(会社法854条1項)

30日は短い期間です。否決されると分かった時点で準備を始めます

正当な理由がなければ損害賠償

会社法339条2項は、解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができると定めています。

解任そのものは有効です。会社に残ることを求められるわけではありません。しかし、正当な理由がなければ金銭で賠償することになります。損害として一般に想定されるのは、残任期間に受け取るはずだった報酬相当額です。任期を10年にしている非公開会社で、就任から間もない取締役を解任すると、その額は小さくありません。

正当な理由に当たるかどうかは、個別の事情によります。職務の遂行に支障が生じる健康上の理由、著しい能力の不足、法令や定款に違反する行為などが挙げられます。他方、経営方針をめぐる見解の相違だけでは正当な理由と認められにくいとされています。

実務では、解任に踏み切る前に辞任の合意を目指すのが通例です。辞任であれば339条2項の問題は生じません。退職慰労金の支給や、業務委託への切り替えを含めて条件を詰めることになります。取締役の報酬に関する事項は会社法361条1項の枠内で処理しますので、退職慰労金を出すのであれば株主総会の決議が必要です。

否決されたときの解任の訴え

解任議案を出したが、当の取締役が大株主で否決された。非上場の会社ではありうる話です。そのための規定が会社法854条1項です。

要件は3つあります。ひとつめは実体の要件で、役員の職務の執行に関し不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実があったことです。単に方針が合わないというだけでは足りません。ふたつめは、その役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたことです。総会に諮ることが先に必要だということです。

みっつめが期間です。当該株主総会の日から30日以内に、訴えをもって解任を請求しなければなりません。1か月ありませんので、否決が見込まれる段階から証拠と準備を進めておく必要があります。

提訴できる株主も限られます。同項1号は総株主の議決権の100分の3以上を6か月前から引き続き有する株主、2号は発行済株式の100分の3以上の数の株式を6か月前から引き続き有する株主です。いずれも定款でこれを下回る割合や期間を定めることができます。そして同条2項により、公開会社でない株式会社では6か月という保有期間の要件が適用されません。非上場の会社では、3パーセント以上を持っていれば足りるということです。

被告は会社法855条により、当該株式会社と当該役員の両方です。会社だけを相手にすることはできません。

項目 内容 根拠
解任の決議 いつでも株主総会の決議で可能 339条1項
定足数 議決権の過半数。定款で3分の1未満にはできない 341条
特別決議になる場合 監査役、監査等委員である取締役、累積投票で選任された取締役 309条2項7号
損害賠償 正当な理由がなければ会社が賠償 339条2項
解任の訴え 否決から30日以内。3パーセント以上の株主 854条1項・2項、855条

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解任した後にすること

解任によって法律または定款で定めた取締役の員数を欠くことになる場合は、会社法346条1項が働きます。ただし同項が対象とするのは、任期の満了または辞任により退任した役員です。解任された役員には適用されません。員数を欠いたままになりますので、同じ総会で後任を選任するか、同条2項により裁判所に一時役員の職務を行うべき者の選任を申し立てることになります。

登記も必要です。取締役の氏名は会社法911条3項13号の登記事項ですので、915条1項により本店の所在地において2週間以内に変更の登記をします。解任された取締役が代表取締役であった場合は、代表取締役の登記も同時に動きます。

議事録には、解任の議案、審議の経過、賛否の結果を残します。解任された取締役が総会に出席していた場合、その場で述べた意見も議事の経過の要領として記載しておくと、後日の紛争で事実関係を示せます。

その前に考えること

解任は関係の断絶です。手続が終わっても、取引先との関係、従業員の動揺、株主としての立場の継続といった問題が残ります。特に非上場の会社では、解任された取締役が株主のまま残ることがほとんどです。会社法433条1項により、議決権または発行済株式の100分の3以上を持つ株主は会計帳簿の閲覧を請求できますし、125条2項により株主名簿の閲覧も請求できます。

したがって、辞任の合意、株式の買取り、競業避止の取り決めまで含めて、一続きの交渉として設計するのが実務です。解任の決議は最後の手段として用意しておき、まずは合意による退任を目指してください。手続だけを急ぐと、あとから損害賠償と株主としての権利行使という二重の負担を抱えることになります。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 理由がなくても取締役を解任できますか。

A. 会社法339条1項により、いつでも株主総会の決議で解任できます。ただし同条2項により、正当な理由がなければ解任によって生じた損害を賠償することになります。

Q. 定款で解任の定足数をなくせますか。

A. できません。会社法341条は、定足数を定款で軽減する場合でも3分の1以上の割合までとしています。普通決議一般とは扱いが違います。

Q. 大株主である取締役を解任したいのですが、議案が否決されそうです。

A. 会社法854条1項により、職務の執行に関し不正の行為または法令定款違反の重大な事実があった場合には、株主総会の日から30日以内に解任の訴えを提起できます。まず総会に議案を諮ることが前提になりますので、証拠の準備を先に進めてください。

📄 まとめ

取締役は株主総会の決議でいつでも解任できますが、決議の定足数は定款で3分の1未満にできず、監査役や監査等委員である取締役の解任は特別決議です。正当な理由がなければ、会社が損害賠償を負います。

議案が否決された場合には、不正の行為または法令定款違反の重大な事実があることを前提に、株主総会の日から30日以内に解任の訴えを提起する道があります。期間が短いので、否決が見込まれる段階から準備してください。

⚖ 本記事の根拠

記載内容の根拠

  • 会社法339条1項(いつでも株主総会の決議で解任できること)、同条2項(正当な理由がない場合の損害賠償)
  • 会社法341条(役員の選任および解任の決議要件と、3分の1という定足数の下限)
  • 会社法309条2項7号
  • 会社法854条1項(解任の訴えの要件と、株主総会の日から30日以内という期間)、同条2項(公開会社でない株式会社では保有期間の要件がないこと)
  • 会社法855条(被告は会社と当該役員)
  • 会社法346条1項・2項(員数を欠く場合の措置と一時役員)、911条3項13号、915条1項(2週間以内の変更登記)
  • 会社法433条1項、125条2項(退任後も株主として行使できる権利)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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