調査で最初に見られるのが、期末前後の売上です。3月決算なら3月末の数日と4月初めの数日、この十数日分の請求書と納品書がまとめて確認されます。そこで「この売上は当期ではないか」と言われるのが、いわゆる売上の期ズレの指摘です。
期ズレは、金額そのものを否定されているわけではありません。翌期に計上されているなら、その分は翌期の所得から落ちます。それでも軽視できないのは、この指摘が重加算税の話に発展することがあるからです。同じ1件の売上でも、加算税が10パーセントで終わるか35パーセントになるかで、会社に残る負担はまったく違います。
この記事では、収益をいつ計上すべきかを定めた条文と通達を確認したうえで、期ズレの指摘を受けたときに何を示せばよいのか、そして重加算税との分かれ目がどこにあるのかを整理します。
条文は、原則の日と、それに近接する日の2つを用意しています。
この記事の見出し
🧭 期ズレの指摘は、いつの売上かだけを問うています
まず全体像を押さえます。法人税法は、資産の販売もしくは譲渡または役務の提供に係る収益の額について、次のように定めています。
内国法人の資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供に係る収益の額は、別段の定めがあるものを除き、その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。(法人税法第22条の2第1項。括弧書きを省略しています)
つまり、原則は引渡しの日または役務の提供の日です。請求書を出した日でも、入金があった日でもありません。ここが、実務の運用とずれやすい第一の点です。
| 条文 | 定めている内容 |
|---|---|
| 第22条の2第1項 | 目的物の引渡しの日、または役務の提供の日の属する事業年度の益金に算入する |
| 第22条の2第2項 | 一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って、契約の効力が生ずる日その他の第1項の日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合は、その事業年度の益金に算入する |
| 第22条の2第3項 | 確定した決算で経理していない場合でも、近接する日の属する事業年度の確定申告書に益金算入に関する申告の記載があるときは、経理したものとみなして第2項を適用する |
| 第22条の2第4項 | 益金に算入する金額は、引渡しの時における価額または通常得べき対価の額に相当する金額とする |
| 第22条の2第5項 | その価額は、貸倒れや買戻しが生ずる可能性がある場合でも、その可能性がないものとした場合における価額とする |
第2項が置かれているおかげで、会計基準に従って引渡しの日に近接する日で計上している限り、税務上もその日でよいことになります。逆に言えば、会計上の処理に一貫性がないと、この第2項の後ろ盾を失います。
📌 引渡しの日は、継続して適用している日で決まります
では、引渡しの日はいつなのか。棚卸資産については、国税庁の法人税基本通達に具体的な定めがあります。
棚卸資産の販売に係る収益の額は、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、その引渡しの日がいつであるかについては、例えば出荷した日、船積みをした日、相手方に着荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日等当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるものとする。(法人税基本通達2-1-2)
ここに書かれていることは3つあります。合理的であると認められる日であること。棚卸資産の種類・性質や契約の内容に応じた日であること。そして、法人が継続してその日で計上していること。この3つがそろっていれば、出荷日でも検収日でも構いません。
調査で問題になるのは、たいてい3つめです。ふだんは出荷日で計上しているのに、期末の数件だけ検収日で計上していれば、継続していないことになります。基準を選べるのは会社ですが、選んだあとで揺らすことはできません。
| 取引の型 | 通達が定めている計上時期 |
|---|---|
| 棚卸資産の販売 | 出荷日、船積日、着荷日、検収日、使用収益ができることとなった日等のうち、合理的で継続して適用している日(2-1-2) |
| 土地・土地の上に存する権利で引渡日が明らかでないとき | 代金の相当部分(おおむね50パーセント以上)を収受するに至った日と、所有権移転登記の申請をした日のいずれか早い日にできる(2-1-2) |
| 委託販売 | 受託者が販売をした日。売上計算書が売上の都度作成され送付されている場合に、継続して到達した日で計上しているときは、その日を近接する日として扱う(2-1-3) |
| ガス・水道・電気等 | 規則的な検針に基づき料金が算定され、継続して検針日で計上しているときは、その日を近接する日として扱う(2-1-4) |
| 固定資産の譲渡 | 引渡しがあった日。土地建物等で契約の効力発生の日に計上しているときは、その日を近接する日として扱う(2-1-14) |
なお、請負については、一の契約により同種の建設工事等を多量に請け負い引渡量に従い工事代金を収入する特約または慣習がある場合などに、全部が完成しないときでも引き渡した量や完成した部分に区分して収益を計上する定めがあります(法人税基本通達2-1-1の4)。工事や開発の案件で期末をまたぐときは、契約書の記載が計上時期を左右します。
⚖️ 期ズレと売上除外の分かれ目は、隠蔽または仮装の有無です
ここが本題です。重加算税は、課税標準等または税額等の計算の基礎となるべき事実の全部または一部を隠蔽し、または仮装し、かつ、その隠蔽し、または仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときに課されます(国税通則法第68条第1項)。割合は100分の35です。
国税庁は法人税の重加算税について事務運営指針を公表しており、そこに該当しない場合が明記されています。
次に掲げる場合で、当該行為が相手方との通謀又は証ひょう書類等の破棄、隠匿若しくは改ざんによるもの等でないときは、帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない。(1) 売上げ等の収入の計上を繰り延べている場合において、その売上げ等の収入が翌事業年度の収益に計上されていることが確認されたとき。(法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)第1の3)
読み方を間違えないようにしてください。この定めが効くには、2つの条件が同時に必要です。ひとつは、その売上が翌事業年度の収益に計上されていることが確認できること。もうひとつは、その行為が相手方との通謀や、証ひょう書類等の破棄・隠匿・改ざんによるものでないことです。翌期に載っていても、日付を書き換えた納品書があれば話は変わります。
逆に、同じ事務運営指針の第1の1は、不正事実の例示として、帳簿書類の改ざん、帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、帳簿書類の作成または記録をせずに売上げその他の収入を脱ろうすることなどを挙げています。
期末の売上を翌期に回すために、取引先に頼んで検収日を後ろにずらした書類を作ってもらう。この一手間が、期ズレを売上除外に変えます。
2つの条件がそろって初めて、隠匿・虚偽記載等に該当しないとされます。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。
初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら
🧮 数字で見ると、差がはっきりします
3月決算の会社で、当期に計上すべき売上1,000万円が翌期に回っていたとします。この指摘により追加で納付すべき法人税額が250万円になったとして、加算税を計算してみます。
| 前提 | 加算税の計算 |
|---|---|
| 期ズレとして扱われ、期限内申告税額が800万円のとき | 250万円×10パーセント=25万円。250万円は800万円を超えないため、加重される部分はありません |
| 期ズレとして扱われ、期限内申告税額が30万円のとき | 250万円×10パーセント=25万円に、50万円を超える200万円×5パーセント=10万円を加算して35万円 |
| 隠蔽または仮装があるとされたとき | 250万円×35パーセント=87万5千円 |
2行目は、期限内申告税額に相当する金額と50万円とのいずれか多い金額を超える部分に5パーセントを加算するという国税通則法第65条第2項の定めによります。いずれも延滞税は含めていません。
1行目と3行目の差は62万5千円です。所得そのものは翌期に戻るのに、この差だけが残ります。期ズレの場面で守るべきものは、翌期に計上されている事実と、書類に手が入っていないことの2点だと言えます。
なお、当期に売上を加算した場合、翌期側では同じ金額が二重に計上されている状態になります。翌事業年度の是正をあわせて行わないと、同じ売上に2回課税されたままになります。当期の修正だけで終わらせないよう、翌期側の手当てまでを1組で考えてください。所得が動くことで欠損金の使い方にも影響が出るため、繰越欠損金がある会社では欠損金の繰越控除との関係も確認しておくと安心です。
事前準備から当日の立会い、指摘への反論、修正申告の要否判断まで対応します。顧問税理士がいらっしゃる場合も、この調査だけのスポットのご依頼を承ります。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。法人の税務顧問と申告業務、新しい会計基準の導入支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
🗂️ 期末の締めで残しておく資料
期ズレの指摘に対して有効なのは、あとから作った説明ではなく、当時の記録です。3月決算で、3月25日に出荷し4月2日に相手方が検収した取引を例にすると、どちらの期の売上になるかは、その会社が継続して適用している基準で決まります。
同じ取引でも、継続して適用している基準によって属する期が変わります。
問題になるのは、この会社がふだんは出荷日で計上しているのに、この1件だけ検収日にした場合です。期末の締めのときに、次の4点だけは残しておいてください。
| 残すもの | 何を示せるか |
|---|---|
| 自社の収益計上基準を書いたもの | 出荷日か検収日か、どの日で計上しているかを継続して適用していること |
| 期末前後の出荷・検収の記録 | 個々の取引の引渡しの日がいつかということ |
| 期末をまたぐ案件の一覧 | どの取引が判断の対象になったのかと、その結論の理由 |
| 翌期の売上計上の記録 | 翌事業年度の収益に計上されていることが確認できること |
4つめは、指摘を受けてから探すことになりがちです。期末をまたぐ案件の一覧に、翌期のどの伝票で計上したかまで書き込んでおくと、調査の場でそのまま示せます。
❓ よくある質問
請求書を発行した日で売上を計上していますが、問題になりますか
条文が原則としているのは引渡しの日または役務の提供の日で、第2項が認めているのはそれに近接する日です。請求書の発行日がその会社の取引実態からみて引渡しの日に近接する日といえるかどうかは、取引の内容によります。出荷や検収と請求のタイミングが常にそろっているのであれば説明できますが、月末一括請求で出荷から日数が空く場合は、出荷や検収の記録で確認する運用に切り替えるほうが安全です。
途中で計上基準を変えることはできますか
通達は、合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるとしています。変更そのものを禁じる文言は見当たりませんが、継続性が前提である以上、変更するのであれば時期と理由をはっきりさせ、以後は新しい基準で一貫させる必要があります。期末の数件だけ扱いを変えるのは、継続していないと見られます。
翌期に計上していれば、必ず重加算税にならないのですか
事務運営指針は、翌事業年度の収益に計上されていることが確認されたときで、かつ、その行為が相手方との通謀や証ひょう書類等の破棄・隠匿・改ざんによるものでないときは、帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しないとしています。2つの条件がそろうことが前提です。
調査の前に自分で気づいて修正申告をした場合はどうなりますか
国税通則法第65条第1項は、修正申告書の提出が調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでないときは100分の5とし、同条第6項は、予知前の修正申告で、かつ調査通知がある前に行われたものであるときは第1項を適用しないとしています。調査の連絡を受けた時点で調査通知が済んでいることが多いため、気づいた時期が結論を分けます。
何年分まで見られますか
更正または決定は、原則として法定申告期限から5年を経過した日以後はすることができません(国税通則法第70条第1項)。ただし、偽りその他不正の行為により税額を免れた国税については7年を経過する日まですることができます(同条第5項)。法人税に係る純損失等の金額を増減させる更正などは10年とされています(同条第2項)。
役務の提供の場合はどう考えますか
第22条の2第1項は、役務の提供については役務の提供の日を原則としています。作業完了報告や検収の記録が、その日を示す資料になります。期間にわたって提供する契約では、契約書の定めと実際の提供の進み方をあわせて確認してください。
📄 まとめ
売上の期ズレは、法人税法第22条の2が定める引渡しの日または役務の提供の日と、実際の計上日がずれていることの指摘です。棚卸資産については、法人税基本通達2-1-2が、合理的と認められる日のうち継続して適用している日によるとしています。基準を選ぶのは会社ですが、選んだあとは動かせません。
そして、重加算税との分かれ目は、翌事業年度の収益に計上されていることが確認できるかどうかと、相手方との通謀や証憑の破棄・隠匿・改ざんがないかどうかの2点です。期末の締めのときに、計上基準・出荷検収の記録・またぎ案件の一覧・翌期の計上記録の4点を残しておけば、調査の場で示すものは足ります。
すでに指摘を受けている場合でも、どの型の主張ができるかは事実関係によって変わります。修正申告に応じる前に、一度整理してみることをおすすめします。
🔗 参考(公的な一次情報)
- 法人税法(e-Gov法令検索) 第22条、第22条の2
- 国税通則法(e-Gov法令検索) 第65条、第68条、第70条
- 国税庁 法人税基本通達 第1款の2 棚卸資産の販売に係る収益 2-1-2から2-1-4
- 国税庁 法人税基本通達 第1款 収益の計上の単位 2-1-1、2-1-1の4
- 国税庁 法人税基本通達 第2款 固定資産の譲渡等に係る収益 2-1-14
- 国税庁 法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針) 第1 賦課基準
本記事は公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所・東京都台東区)が、法令・通達および国税庁の公表資料に基づいて作成しています。本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度は改正される可能性があり、個別の事実関係により結論が異なります。実際の判断にあたっては、専門家にご確認ください。