事前通知の11項目とは?通知内容から調査の狙いを読む

税務署から電話があり、実地の調査を行いたいと告げられた。日時と場所は書き取ったものの、そのあとに続いた説明が長く、何をどこまで通知されたのかが手元のメモから読み取れない。顧問税理士に伝えようとして、はじめて抜けに気づく。中規模の法人でも、この場面はよく起こります。

事前通知として伝えられる事項は、国税通則法第74条の9第1項と国税通則法施行令第30条の4第1項が定めています。担当者が思いつきで決めているわけではなく、伝える中身はあらかじめ決まっています。そして通知の中身は、調査官がどこを見ようとしているのかを推し量る手がかりでもあります。

この記事では、通知される11の事項を条文の順に並べ、電話の場で書き取っておくべきことと、そこから読み取れることを整理します。あわせて、日時の変更を求められる範囲と、通知された範囲の外側で何が起こりうるのかまで扱います。

🧭 事前通知は「調査を行う旨」と11の事項でできている

まず条文を確認します。国税通則法第74条の9第1項は、実地の調査において質問検査等を行わせる場合には、あらかじめ、納税義務者(税務代理人があるときはその税務代理人を含みます)に対して、その旨と次に掲げる事項を通知するものとする、と定めています。

税務署長等は、…当該職員に納税義務者に対し実地の調査において…質問、検査又は提示若しくは提出の要求…を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者…に対し、その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする。(国税通則法第74条の9第1項)

ここでいう「その旨」とは、実地の調査において質問検査等を行うということ自体を指します。そのうえで第1号から第6号までの6つの事項が続き、第7号が「その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項」として、残りを政令に委ねています。委ねられた先が国税通則法施行令第30条の4第1項で、そこに4つの事項が並びます。

整理すると、調査を行う旨が1つ、法律が定める事項が6つ、政令が定める事項が4つで、合わせて11になります。第7号そのものは政令への委任であって、独立した通知事項ではありません。

事前通知として伝えられる11の事項実地の調査において質問検査等を行う旨(第74条の9第1項 柱書)法律が定める6つの事項1 調査を開始する日時 2 調査を行う場所3 調査の目的 4 調査の対象となる税目5 調査の対象となる期間6 対象となる帳簿書類その他の物件政令が定める4つの事項1 納税義務者の氏名及び住所又は居所2 調査を行う職員の氏名及び所属官署3 日時又は場所の変更に関する事項4 法第74条の9第4項の規定の趣旨調査を行う旨1つ+法律の6つ+政令の4つ=合計11の事項

図1 事前通知の構成。第7号は政令への委任であり、独立した通知事項ではありません。

📋 条文が並べる10の事項

法律が定める6つの事項

第1号から第6号までの内容と、電話口で確かめておきたいことを並べます。

通知される事項 電話で確かめておくこと
第1号 調査を開始する日時 年月日と開始時刻。複数日にわたる予定かどうか
第2号 調査を行う場所 本店か、工場や店舗か、税理士事務所か
第3号 調査の目的 申告内容の確認か、それ以外か
第4号 調査の対象となる税目 法人税だけか、消費税や源泉所得税も入るか
第5号 調査の対象となる期間 何事業年度分か。期首と期末の年月
第6号 調査の対象となる帳簿書類その他の物件 物件の名称と、根拠となる法令が示されたかどうか

このうち第2号、第3号、第6号については、施行令第30条の4第2項が、何を通知するのかをもう一段具体的に定めています。

法第74条の9第1項各号に掲げる事項のうち、同項第2号に掲げる事項については調査を開始する日時において質問検査等を行おうとする場所を、同項第3号に掲げる事項については納税申告書の記載内容の確認又は納税申告書の提出がない場合における納税義務の有無の確認その他これらに類する調査の目的を、それぞれ通知するものとし、同項第6号に掲げる事項については、同号に掲げる物件が国税に関する法令の規定により備付け又は保存をしなければならないこととされているものである場合にはその旨を併せて通知するものとする。(国税通則法施行令第30条の4第2項)

第2号の場所は、調査を開始する日時に質問検査等を行おうとする場所です。第3号の目的は、申告書の記載内容の確認や、申告書の提出がない場合の納税義務の有無の確認といった類型で示されます。第6号は、その物件が国税に関する法令によって備付けまたは保存を義務づけられているものであるときは、その旨も併せて通知されます。

第6号の伝え方は、国税庁の法令解釈通達(手続通達)5-3がさらに具体化しています。備付けや保存が法令で義務づけられている物件は、名称に併せて根拠となる法令を示すものとし、義務づけられていない物件は、一般的な名称または内容を例示するものとする、という書き方です。この区別を意識して聞き取っておくと、当日までに何を最優先で揃えるべきかが決まります。

政令が定める4つの事項

残りの4つは、国税通則法施行令第30条の4第1項に置かれています。条文の文言のまま並べます。

通知される事項
第1号 調査の相手方である納税義務者の氏名及び住所又は居所
第2号 調査を行う当該職員の氏名及び所属官署(当該職員が複数であるときは、当該職員を代表する者の氏名及び所属官署)
第3号 法第74条の9第1項第1号又は第2号に掲げる事項の変更に関する事項
第4号 法第74条の9第4項の規定の趣旨

第2号の担当者名と所属官署は、当日に誰が来るのかの確認だけでなく、その後の連絡先にもなります。複数で臨場する場合は代表する者の氏名と所属官署が通知されますが、国税庁のFAQでは、臨場予定人数も併せて連絡することとしていると説明されています。人数が分かれば、部屋と席の手配ができます。

第3号は、日時と場所については変更を求めることができるという案内です。第4号は、通知した範囲の外側でも非違が疑われれば質問検査等ができるという第4項の趣旨の案内で、これも通知事項として政令に書かれています。範囲の外に及ぶ可能性があることは、はじめに伝えられる建て付けになっているわけです。

🔍 通知の内容から読み取れること

通知された事項から読み取れること調査の目的(第3号)申告内容の確認か、それ以外か調査の対象となる税目(第4号)消費税や源泉所得税まで入るか調査の対象となる期間(第5号)何事業年度分を用意するか帳簿書類その他の物件(第6号)根拠法令が示されたかどうかなぜ自社が調査されるのかという理由は、通知される事項ではありません

図2 通知された4つの事項と、そこから決まる準備の範囲。

調査の目的(第3号)が申告内容の確認であれば、一般的な調査だと受け止めてよいでしょう。ただし国税庁のFAQは、実地の調査を行う理由については法令上事前通知すべき事項とはされていないため、これを説明することはありません、と明記しています。「なぜ当社なのか」を尋ねても答えは返ってきません。読み取れるのは目的の類型までです。

税目(第4号)は、準備の量を大きく左右します。法人税だけでなく消費税や源泉所得税が入っていれば、請求書等の保存の状況や、外注先への支払の区分まで見られると考えて用意します。期間(第5号)は、何事業年度分の資料を出すのかを決めます。物件(第6号)は、前述のとおり根拠法令が示されるかどうかで、法定の帳簿書類なのか、それ以外の資料なのかが分かります。

法人税が対象に入っていれば、役員給与の処理は高い確率で確認されます。定期同額給与の改定時期の考え方は定期同額給与とは?改定できる時期と3か月ルールをわかりやすく解説で扱っていますので、通知を受けた段階で自社の改定時期をたどり直しておくと、当日に落ち着いて説明できます。

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⏱ 日時と場所は変更を協議できる

通知された日時が決算の直前だった、担当役員が出張で不在だった。そうしたときに動かせるのは、第1号の日時と第2号の場所です。

税務署長等は、前項の規定による通知を受けた納税義務者から合理的な理由を付して同項第1号又は第2号に掲げる事項について変更するよう求めがあった場合には、当該事項について協議するよう努めるものとする。(国税通則法第74条の9第2項)

条文は「協議するよう努めるものとする」と書いています。求めれば必ず変更される、とは書かれていません。合理的な理由を付すことが前提です。

合理的な理由の例は手続通達5-6にあります。納税義務者や税務代理人の病気・怪我等による一時的な入院、親族の葬儀等の一身上のやむを得ない事情、業務上やむを得ない事情がある場合は、合理的な理由があるものとして取り扱うこととされています。国税庁のFAQも、例示した場合以外でも理由が合理的と考えられれば変更を協議すると説明しています。決算業務や申告業務の繁忙は、事前通知に先立つ都合の聴取の段階で伝えておくのが順当です。

日程を後ろにずらしても、調査そのものがなくなるわけではありません。合理的な理由があれば遠慮なく申し出てよい一方で、引き延ばしそのものが目的になると、協力が得られないという心証につながります。

そして、日程を相談した時点で、次に述べる調査通知はすでに済んでいると考えてください。

⚠ 通知された範囲の外側と「調査通知」

事前通知で範囲が示されると、そこから外には出ないのだと受け止めがちですが、条文はそうなっていません。

第1項の規定は、当該職員が、当該調査により当該調査に係る同項第3号から第6号までに掲げる事項以外の事項について非違が疑われることとなった場合において、当該事項に関し質問検査等を行うことを妨げるものではない。この場合において、同項の規定は、当該事項に関する質問検査等については、適用しない。(国税通則法第74条の9第4項)

目的・税目・期間・物件として通知した以外の事項について非違が疑われることとなった場合には、その事項について質問検査等を行うことができ、その部分については事前通知の規定は適用しない、という組み立てです。改めて通知をやり直してから、という手順は求められていません。

期間についても近いことが起こります。手続通達5-5は、事前通知した課税期間の調査について必要があるときは、通知した課税期間以外の課税期間(進行年分を含む)に係る帳簿書類その他の物件も質問検査等の対象となる、としています。注では、通知した課税期間より前または後の経理処理を確認する必要があるときは、第4項によることなく必要な範囲で質問検査等を行うことが可能である、とも書かれています。減価償却資産の取得価額を確かめるために取得した年度の資料を求められる、といった場面がこれにあたります。

もうひとつ、事前通知と混同しやすいものに「調査通知」があります。国税通則法第65条第6項は、更正があるべきことを予知する前にされた修正申告のうち、調査通知がある前に行われたものについては過少申告加算税を課さないことを定めています。裏を返せば、調査通知のあとに自主的に修正申告をしても、賦課そのものは避けられません。その調査通知の中身は、第74条の9第1項第4号(税目)および第5号(期間)に掲げる事項と、政令で定める事項です。政令で定める事項は、施行令第27条第4項により、実地の調査において質問検査等を行わせる旨とされています。

つまり調査通知は、実地の調査を行う旨・税目・期間の3点で成り立ちます。そして国税庁の事務運営指針は、納税義務者に対して都合を聴取する際に、この調査通知を併せて行うとしています。日程の相談を受けた最初の電話の時点で、加算税の面ではすでに時計が動いているということです。

最初の電話から調査開始までの流れ1都合の聴取。このときに調査通知(法第65条第6項)が併せて行われる2日程の調整。開始する日時と調査を行う場所が決まる3事前通知。調査を行う旨と11の事項が電話で伝えられる4調査開始日。臨場して質問検査等が行われる調査通知の中身は、実地の調査を行う旨・税目・期間の3点です

図3 事務運営指針は、都合を聴取する際に調査通知を併せて行うとしています。

比べる点 調査通知 事前通知
根拠 法第65条第6項、施行令第27条第4項 法第74条の9第1項、施行令第30条の4
伝えられる中身 実地の調査を行う旨、税目、期間 調査を行う旨と11の事項
行われる時点 都合を聴取する際に併せて行う 日程が決まったあと
主な意味 加算税の取扱いの分かれ目になる 準備すべき範囲が決まる

❓ よくある質問

事前通知は調査の何日くらい前に行われますか

国税庁のFAQは、事前通知の時期について法令に特段の規定はなく、何日程度前に通知するかを一律に示すことは困難としたうえで、調査開始日までに調査を受ける準備等ができるよう、相当の時間的余裕を置いて行うこととしている、と説明しています。日数の決まりはありません。

事前通知を書面でもらえますか

できません。FAQは、事前通知の方法は法令上規定されておらず原則として電話により口頭で行うとしたうえで、納税者からの要望に応じて事前通知内容を記載した書面を交付することはありません、としています。電話を受ける側が書き取るほかありません。日時・場所・目的・税目・期間・物件・担当者名と所属官署を、その場で読み上げて確認するとよいでしょう。

なぜ当社が選ばれたのか、理由は教えてもらえますか

教えてもらえません。FAQは、調査の目的については事前通知すべきこととされているが、実地の調査を行う理由については法令上事前通知すべき事項とはされていないので、これを説明することはありません、としています。

顧問税理士にだけ通知してもらうことはできますか

できます。法第74条の9第5項は、税務代理人がある場合に、納税義務者の同意がある場合として財務省令で定める場合に該当するときは、納税義務者への通知は税務代理人に対してすれば足りると定めています。第6項は、税務代理人が数人あるときに代表する税務代理人を定めた場合の規定です。FAQによれば、いずれも税務代理権限証書にその旨を記載しておく必要があります。同意の記載がない場合は、納税者と税務代理人の双方に通知されます。

通知された税目や期間の外は調べられないのですか

そうとは言えません。第74条の9第4項により、通知した目的・税目・期間・物件以外の事項について非違が疑われることとなった場合には、その事項について質問検査等を行うことができます。また手続通達5-5により、通知した課税期間の調査に必要があるときは、その前後の課税期間の帳簿書類等も対象になります。

🗂 通知を受けたあとに動くこと

通知の内容が正確に取れていれば、あとの準備は順番の問題になります。開始日までの動きを時期で分けて並べます。

時期 やること
電話を切る前 日時・場所・目的・税目・期間・物件・担当者の氏名と所属官署を読み上げて確認する。日程に無理があればその場で伝える
当日中 顧問税理士に通知の内容をそのまま共有する。立会いを依頼するかどうかを決める
開始日の2週間前まで 通知された税目と期間に対応する帳簿書類を集め、欠けているものを洗い出す
開始日の1週間前まで 説明が要る取引を洗い出し、経緯の分かる資料を添える。担当者と応対の役割を決める
前日 調査に使う部屋と、当日に出す資料の置き場所を決める
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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。法人の税務顧問と申告業務、新しい会計基準の導入支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

📄 まとめ

事前通知として伝えられるのは、実地の調査において質問検査等を行う旨と、法律が定める6つの事項、政令が定める4つの事項の、合わせて11です。根拠は国税通則法第74条の9第1項と国税通則法施行令第30条の4第1項にあり、第7号は政令への委任なので、独立した通知事項としては数えません。

通知は原則として電話で口頭により行われ、要望に応じた書面の交付はありません。日時と場所は、合理的な理由を付せば変更の協議を求められます。一方で、なぜ自社が選ばれたのかという理由は通知事項ではなく、説明されません。

そして、通知された目的・税目・期間・物件の外側であっても、非違が疑われることとなれば質問検査等の対象になります(第74条の9第4項)。通知された範囲は、準備の出発点ではありますが、当日に触れられる範囲の上限ではありません。日程の相談を受けた最初の電話の時点で、加算税の関係では調査通知が済んでいる点も押さえておいてください。

🔗 参考(公的な一次情報)

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所・東京都台東区)が、法令・通達および国税庁の公表資料に基づいて作成しています。本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度は改正される可能性があり、個別の事実関係により結論が異なります。実際の判断にあたっては、専門家にご確認ください。

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