持分法の未実現利益はどこまで消去するか
持分法適用会社との取引で生じた未実現利益は、原則として持分相当額を消去します(移管指針第7号 第11項)。ただし、連結会社から非連結子会社へ売った場合は全額を消去し、関連会社へ売った場合でも、状況から判断して他の株主の持分についても実質的に実現していないと判断されるときは全額を消去します。
- ダウンストリームは「売上高等」と「投資の額」、アップストリームは「持分法による投資損益」と「資産の額」で消去します(同 第12項・第13項)
- 売手側の帳簿価額のうち回収不能と認められる未実現損失は消去しません
- 重要性が乏しい場合は消去しないことができます(企業会計基準第16号 第26項、移管指針第7号 第11項)
2026年10月12日更新
持分法適用会社との取引で出た未実現利益を、どこまで消すのか。全額か、持分相当額か。
結論から言えば、原則は持分相当額です。ただし例外があります。連結会社から非連結子会社へ売った場合は全額です。関連会社へ売った場合でも、他の株主の持分についても実質的に実現していないと判断されるときは全額です。
そして、この分岐を定めているのは会計基準ではなく実務指針です。企業会計基準第16号の第13項は、未実現損益を消去するための修正を行う、としか書いていません。
- 原則は持分相当額の消去であること
- 買手が非連結子会社なら全額であること
- ダウンストリームとアップストリームで相手勘定が違うこと
- 未実現損失には消さない場合があること
- 重要性が乏しければ消さなくてよいこと
- 定めが移管指針第7号にあること
📌 結論 原則は持分相当額
アップストリームを全額消去と書いている解説がありますが、持分相当額です。ダウンストリームも買手が関連会社か非連結子会社かで分かれます。
移管指針第7号の第11項が消去の範囲を定めています。売手側である投資会社に生じた未実現損益は、買手側が非連結子会社である場合には全額消去し、関連会社である場合には原則として当該関連会社に対する投資会社の持分相当額を消去します。
持分法適用会社から連結会社に売却した場合、つまりアップストリームでは、持分法適用会社に対する連結会社の持分相当額を消去します。
アップストリームは全額消去、と書いている解説を見かけますが、それは連結子会社の話です。持分法では持分相当額です。
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🔁 相手勘定
移管指針第7号の第12項と第13項です。ここを逆に覚えている例が多いので、表で持っておくことをおすすめします。
ダウンストリームでは、消去額を売手側である連結会社の売上高等の損益項目と、買手側である持分法適用会社に対する投資の額に加減します(第12項)。
アップストリームでは、持分法による投資損益と、買手側である連結会社の未実現損益が含まれている資産の額に加減します(第13項)。
損益側が売上高等なのか持分法による投資損益なのか。ここが向きによって入れ替わります。表にして手元に置いておくのが確実です。
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🧭 判断の順番
向きと相手を先に決めれば、金額と勘定は自動的に決まります。
取引の向きと買手の属性を先に確認します。この2つが決まれば、消す金額も相手勘定も自動的に決まります。
未実現損失については扱いが違います。売手側の帳簿価額のうち回収不能と認められる部分は消去しません(第11項)。損失を消してしまうと、回収できない事実が消えるからです。
そして重要性です。第11項は、未実現損益の金額に重要性が乏しい場合にはこれを消去しないことができる、としています。企業会計基準第16号の第26項も、未実現損益の消去等について重要性が乏しいものは処理を行わないことができるとしています。
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🚫 まちがえやすいところ
1つめが最も多い誤りです。第16号の項番号を挙げて向きごとの処理を説明している記事は、出典を確かめてください。
いちばん多いのは、企業会計基準第16号の項番号を挙げて向きごとの処理を説明してしまうことです。第16号の第13項は、連結会社と持分法の適用会社との間の取引に係る未実現損益を消去するための修正を行う、とだけ定めています。
向きごとの処理、消去額、相手勘定を定めているのは移管指針第7号の第11項から第13項です。出典を間違えると、監査法人との議論で足元をすくわれます。
名称も変わっています。この実務指針は2024年7月に日本公認会計士協会から企業会計基準委員会に移管されました。会計制度委員会報告第9号は現在の名称ではありません。
🧮 仕訳例(持分30%の関連会社と非連結子会社)
架空の数字で、向きと買手によって消去額と相手勘定がどう変わるかを並べます。P社(連結会社)は関連会社B社の株式の30%を持ち、持分法を適用しています。また、P社が100%を持つ非連結子会社C社にも持分法を適用しています。いずれも、原価800の商品を1,000で販売し、買手が期末に全部を在庫として持っているものとします。未実現利益は200です。説明を簡単にするため税効果は考えません。
| ケース | 消去額 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|---|
| ダウンストリーム(P社→関連会社B社) | 60(200×30%) | 売上高 60 | B社株式(投資の額) 60 |
| アップストリーム(関連会社B社→P社) | 60(200×30%) | 持分法による投資損益 60 | 商品(P社の在庫) 60 |
| ダウンストリーム(P社→非連結子会社C社) | 200(全額) | 売上高 200 | C社株式(投資の額) 200 |
ダウンストリームでは、売手であるP社の売上高を減らし、相手側は持分法適用会社に対する投資の額を減らします(移管指針第7号 第12項)。P社の帳簿にある在庫ではないので、商品は減らしません。アップストリームでは、未実現利益はB社の利益に含まれ、それをP社が持分法で取り込んでいますから、持分法による投資損益を減らし、P社の在庫を減らします(同 第13項)。
関連会社B社への販売でも、状況から判断して他の株主の持分についても実質的に実現していないと判断される場合は、持分相当額の60ではなく全額の200を消去します(同 第11項)。この判断は取引の実態によりますので、全額消去にする場合は判断の理由を残してください。
ダウンストリームで消去額が投資の額を超える場合は、まず持分法適用会社への貸付金を減らし、なお超える部分は「持分法適用に伴う負債」など適切な科目で負債に計上します(同 第12項)。投資の額がマイナスになるまで減らすのではありません。
💡 税効果はどちらの会社で考えるか
未実現利益を消去すると、一時差異が生じます。その一時差異がどちらの会社に帰属するかは、売手で決まります。
| 売手 | 一時差異の帰属 | 根拠 |
|---|---|---|
| 持分法適用会社(アップストリーム) | 持分法適用会社に帰属するものとして税効果を考える | 移管指針第7号 第25項 |
| 連結会社(ダウンストリーム) | 連結会社に帰属するものとして税効果を認識する | 同 第26項 |
税効果を考えると、損益への影響は消去額から税効果額を差し引いた純額になります。繰延税金資産の回収可能性の判断も、帰属する会社の側で行います。回収可能性の考え方は繰延税金資産の分類は過去3年か過去5年かで扱っています。
❓ よくある質問
A. 原則は持分相当額です。買手が非連結子会社である場合と、他の株主の持分についても実質的に実現していないと判断される場合には全額です。
A. 持分法適用会社に対する連結会社の持分相当額を消去します。
A. 売手側である連結会社の売上高等の損益項目と、持分法適用会社に対する投資の額です。
A. 持分法による投資損益と、買手側である連結会社の資産の額です。
A. 売手側の帳簿価額のうち回収不能と認められる部分は消去しません。
A. 重要性が乏しい場合には消去しないことができます。
A. 会計基準は企業会計基準第16号 第13項、具体的な処理は移管指針第7号 第11項から第13項です。
A. 2024年7月にASBJへ移管され、移管指針第7号になりました。旧称は会計制度委員会報告第9号です。
A. あります。状況から判断して他の株主の持分についても実質的に実現していないと判断される場合は、全額を消去します(移管指針第7号 第11項)。
A. まず持分法適用会社への貸付金を減らし、なお超える部分は「持分法適用に伴う負債」など適切な科目で負債に計上します(移管指針第7号 第12項)。
📄 まとめ
持分法の未実現損益は原則として持分相当額を消去します。買手が非連結子会社である場合と、他の株主の持分も実質的に実現していないと判断される場合は全額です。
相手勘定は向きで入れ替わります。ダウンストリームは売上高等と投資の額、アップストリームは持分法による投資損益と資産の額です。
未実現損失は、回収不能と認められる部分を消しません。重要性が乏しければ消さないという判断もできます。
社内の手順書に向きと買手の属性を書く欄を作るか、毎期その都度判断するか。関連会社が2社を超えたら、様式にしてしまうほうが早いと思います。
📚 参考(公的な一次情報)
- 企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」(企業会計基準委員会) 第6項、第11項、第12項、第13項、第26項
- 移管指針第7号「持分法会計に関する実務指針」(企業会計基準委員会) 第9項、第11項、第12項、第13項、第25項、第26項
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