内部通報体制は上場審査でどこまで見られるか|第11条と運用実績

内部通報制度は、上場審査でどこまで見られるのか。規程を作れば足りるのか。

足りません。東証の上場審査では、企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性が実質基準として置かれており、そのなかで内部通報制度の整備と運用の状況が確認されます。整備だけでなく運用です。

そして法令の側では、公益通報者保護法の第11条が、従事者を定めることと、体制の整備その他の必要な措置をとることを求めています。常時使用する労働者の数が300人以下の事業者は、第11条第3項の読み替えにより努力義務となります。

この記事でわかること

  • 法令、コード、上場審査の3つから見られること
  • 従事者を定める義務が第11条第1項にあること
  • 体制の整備が第11条第2項にあること
  • 300人以下は第11条第3項で努力義務になること
  • 整備だけでなく運用実績が問われること
  • 2026年12月1日施行の改正で規律が強まること

📌 結論 規程だけでは通らない

図1 3つの立場から見られるどこから何が問われるか公益通報者保護法従事者を定めること(第11条第1項)と、体制の整備その他の必要な措置をとること(同第2項)コーポレートガバナンス・コード内部通報に係る適切な体制整備と、取締役会による運用状況の監督東証の上場審査企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性の一部として、整備と運用の状況

法令、コード、審査。3つは別の枠組みですが、見られているのは同じ実態です。制度を作っただけでは足りません。

東証の上場審査では、企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性が実質基準の1つとして置かれています。市場区分によって根拠となる条は異なりますが、この観点が置かれていることは共通です。

内部通報制度は、その内部管理体制の一部として確認されます。新規上場ガイドブックでは、独立役員に対する面談の確認事項としても内部通報制度の整備と運用の状況が挙げられています。

ですから、規程を作って終わりにはなりません。誰が受け付け、どう調査し、どう是正したのか。その記録が残っている状態を作ることになります。

👥 義務か努力義務か

図2 義務か努力義務かは人数で分かれる常時使用する労働者の数扱い300人を超える従事者を定めること、体制の整備その他の必要な措置をとることが義務です300人以下第11条第3項の読み替えにより、いずれも努力義務となります

上場を目指す会社は、いま300人以下でも上場までに超えることが多くあります。早い段階で義務の水準に合わせておくほうが手戻りがありません。

公益通報者保護法の第11条第1項が従事者を定めることを、第2項が体制の整備その他の必要な措置をとることを求めています。

そして第3項が、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者について、いずれも努力義務に読み替えるとしています。

上場を目指す会社では、審査の時点で300人以下でも、上場後に超えることが少なくありません。早めに義務の水準に合わせておくほうが、あとで作り直さずにすみます。

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🧭 整える順番

図3 整える順番従事者を定める(誰が公益通報対応業務を担うのかを書面で明確にする)窓口を設ける。経営陣から独立した経路も用意する通報者が不利益な取扱いを受けない旨を規程に書く受付から調査、是正までの手順を決める従業員に周知する。周知していない制度は運用実績が残りません運用状況を取締役会に報告する

順番を飛ばして規程だけ作ると、審査で運用実績を示せません。周知と報告まで作りきってください。

従事者を定めるところから始めます。誰が公益通報対応業務を担うのかを明確にすることです。

次に窓口です。社内窓口だけでなく、経営陣から独立した経路を用意することが求められる考え方になっています。社外の弁護士事務所を窓口にする例が多くあります。

そして周知です。ここを飛ばす会社が多いのですが、周知していない制度には通報が来ません。通報が来ない制度は、審査で運用実績を示せません。研修や掲示の記録を残してください。

最後に、運用状況を取締役会に報告する経路を作ります。報告経路の作り方はIPO審査の社内規程とはと同じ考え方です。

🔎 審査で見られる実態

図4 審査で見られる実態観点確認されること窓口の実在誰が受け付けるのか。社外窓口があるか独立性経営陣から独立した経路があるか秘密の保持通報者が特定されない運用になっているか不利益取扱いの禁止規程に定めがあり、実際に守られているか周知従業員が制度を知っているか。研修や掲示の記録があるか運用実績通報の受付、調査、是正の記録が残っているか

件数が少ないこと自体は問題になりません。問われるのは、通報があったときに機能する状態かどうかです。

通報の件数が少ないこと自体は問題になりません。問われるのは、通報があったときに機能する状態かどうかです。

コーポレートガバナンス・コードは内部通報について1つの原則を置いており、適切な体制整備と、取締役会による運用状況の監督を求めています。コードの原則の番号は改訂で動くことがありますので、最新版で確かめてください。

なお、公益通報者保護法は令和7年に改正され、2026年12月1日に施行されます。体制整備に関する行政の関与や罰則の整備が含まれます。施行前に体制を整えておくことをおすすめします。

❓ よくある質問

Q. 従事者を定める義務はどこにありますか。

A. 公益通報者保護法 第11条第1項です。

Q. 体制整備の義務はどこですか。

A. 同法 第11条第2項です。

Q. 300人以下でも義務ですか。

A. 第11条第3項の読み替えにより努力義務となります。ただし上場を目指すなら早めに義務の水準に合わせるほうが実務的です。

Q. 上場審査ではどこで見られますか。

A. 企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性という実質基準のなかで確認されます。

Q. 社外窓口は必要ですか。

A. 経営陣から独立した経路を用意する考え方が示されています。社外の弁護士事務所を窓口にする例が多くあります。

Q. 通報がゼロだと不利ですか。

A. 件数そのものが問題になるのではありません。機能する状態かどうかが問われます。

Q. 周知はどうしますか。

A. 研修、掲示、社内ポータルへの掲載など。記録を残してください。

Q. 改正法はいつ施行されますか。

A. 令和7年改正は2026年12月1日に施行されます。

📄 まとめ

内部通報体制は、公益通報者保護法、コーポレートガバナンス・コード、東証の上場審査という3つの立場から見られます。

法令上は、従事者を定めること(第11条第1項)と体制の整備(同第2項)です。300人以下は第11条第3項で努力義務になります。

審査で問われるのは運用です。窓口、独立性、秘密の保持、不利益取扱いの禁止、周知、そして運用実績。この6つを記録の残る形にしてください。

いま規程がないなら規程から、規程はあるが周知していないなら周知から。自社がどちらの状態かを先に見極めてください。

📚 参考(公的な一次情報)

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