四半期開示が廃止された、という説明を見かけます。しかし正確ではありません。廃止されたのは第1・第3四半期の四半期報告書という法定開示であって、東京証券取引所の四半期決算短信は2026年9月時点でも義務づけられたままです。
この記事では、法律、会計基準、取引所規則、監査の基準という4つの層に分けて、何がどう変わったのかを条文で整理します。半期報告書の提出期限が3つに分かれること、中間監査がなくなっていないことなど、実務で取り違えやすい点も扱います。
- 廃止されたのは第1・第3四半期の四半期報告書であること
- 四半期決算短信は義務づけられたままであること
- 半期報告書の提出期限は45日・60日・3月の3区分であること(金商法24条の5第1項)
- 第一種は期中レビュー、第二種は中間監査であること(監査証明府令3条)
- 企業会計基準第12号は第37号の適用により適用終了となること
- 新規上場申請での取扱い
この記事の見出し
📌 結論 廃止されたのは四半期報告書。決算短信は残っている
先に結論を書きます。2024年4月1日以後に開始する四半期会計期間から、第1・第3四半期の四半期報告書が廃止されました。根拠は金融商品取引法等の一部を改正する法律(令和5年法律第79号)で、四半期開示関係の施行日は令和6年4月1日です。
第2四半期については、四半期報告書に代えて半期報告書を提出します。金融商品取引法24条の5がこれを定めています。
一方、東京証券取引所の四半期決算短信は残りました。2024年3月28日に有価証券上場規程等が改正され(2024年4月1日施行)、第1・第3四半期についても決算短信の開示が求められています。将来的な任意化は継続的に検討するとされていますが、2026年9月時点で任意化はされていません。
🧭 4つの層に分けて整理する
「四半期開示が廃止された」という言い方は正確ではありません。廃止されたのは第1・第3四半期の四半期報告書で、決算短信は残っています。
法律、会計基準、取引所規則、監査の基準が別々のスケジュールで動きました。どの層の話をしているのかを意識してください。
この論点が分かりにくいのは、法律、会計基準、取引所規則、監査の基準が別々のスケジュールで動いたからです。どの層の話をしているのかを意識すると、整理がつきます。
導入時のこと
四半期報告制度が導入されたのは、証券取引法等の一部を改正する法律(平成18年法律第65号)によるものです。平成18年6月14日に公布され、四半期報告制度の適用は平成20年4月1日以後に開始する事業年度からでした。提出期限は各四半期終了後45日以内の政令で定める期間内で、銀行や保険会社等の第2四半期については60日以内とされていました。
金融商品取引法という名称で覚えている方が多いのですが、制度を作ったのは平成18年の証券取引法等の改正法です。制定年と適用開始年を混同しないでください。
廃止に至る議論
廃止の方向を打ち出したのは、令和4年12月27日の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告です。第1・第3四半期の法定開示義務を廃止して取引所規則の四半期決算短信に一本化すること、第2四半期については半期報告書として提出すること、提出期限を45日以内とすること、監査人のレビューを求めること、四半期決算短信は当面一律に義務づけることが整理されました。
令和4年6月13日にも同ワーキング・グループの報告が出ていますが、四半期開示の一本化を打ち出したのは12月27日の報告のほうです。
自社がどの区分に当たるのか、提出期限は何日なのか、監査人の関与は期中レビューか中間監査か。まずここを確定させたうえで、決算のスケジュール表を組み直します。上場準備会社の申請書類の設計にも対応します。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
📅 半期報告書の提出期限は3つに分かれる
金融商品取引法24条の5第1項の表に、この3区分が置かれています。45日と書くだけでは足りません。
金融商品取引法24条の5第1項は、有価証券報告書提出会社について、事業年度開始の日から6月経過時に、表の区分に応じた期間内に半期報告書を提出するとしています。表は3つの号に分かれています。
第1号が上場会社等(第2号に掲げるものを除く)で、経過日から起算して45日以内の政令で定める期間内。第2号が上場会社等のうち金融システムの安定を図るため業務の健全性の確保が必要な事業を行う会社で、60日以内の政令で定める期間内。第3号が上場会社等以外の会社で、3月以内です。
「半期報告書の提出期限は45日」とだけ書いている解説がありますが、それは第1号の話です。自社がどの区分に当たるのかを確認してください。
🔍 期中レビューと中間監査
中間監査がなくなったわけではありません。第二種中間財務諸表については中間監査報告書です。
監査人の関与も区分によって変わります。財務諸表等規則1条1項2号が第一種中間財務諸表を、同項3号が第二種中間財務諸表を定義しています。第一種は24条の5第1項の表の第1号の中欄に掲げる事項を記載した半期報告書に含まれる中間財務諸表、第二種は第2号または第3号の中欄に掲げる事項を記載した半期報告書に含まれる中間財務諸表です。
財務諸表等の監査証明に関する内閣府令3条が、第一種中間財務諸表等の監査証明は期中レビュー報告書により、第二種中間財務諸表等の監査証明は中間監査報告書により行うとしています。
つまり中間監査は廃止されていません。上場会社であれば期中レビューですが、上場会社等以外の会社が半期報告書を提出する場合は中間監査報告書です。「四半期レビューが期中レビューになった」という説明だけでは、この区分が抜けます。
期中レビュー基準への改訂
企業会計審議会は令和6年3月27日に「四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂に係る意見書」を公表しました。同じ日に「監査に関する品質管理基準の改訂に係る意見書」も公表されています。
名称に注意してください。「期中レビュー基準の設定に関する意見書」ではありません。四半期レビュー基準からの改訂です。日本公認会計士協会も、期中レビュー基準報告書第1号「独立監査人が実施する中間財務諸表に対するレビュー」と第2号「独立監査人が実施する期中財務諸表に対するレビュー」を整備しました。第2号には、東京証券取引所の有価証券上場規程に定める四半期財務諸表等に対する期中レビューに関するQ&A(実務ガイダンス第1号)が置かれています。
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🏛️ 四半期決算短信はどうなったか
東京証券取引所は2024年3月28日に有価証券上場規程等を改正し、2024年4月1日から施行しました。適用は施行日以後に開始する四半期会計期間を含む四半期累計期間または中間会計期間からです。
根拠条文は有価証券上場規程404条ほかで、訂正等は416条、四半期財務諸表等の内容は施行規則405条とされています。第1・第3四半期については、各四半期終了後45日以内に開示することを原則とするとされています。
期中レビューは原則任意
四半期決算短信に対する期中レビューは、原則として任意です。ただし施行規則に定める例外要件に該当する場合には義務づけられます。直近の有価証券報告書または半期報告書に無限定適正意見以外が付されている場合、内部統制監査報告書に無限定適正意見以外が付されている場合、内部統制の開示すべき重要な不備がある場合、有価証券報告書または半期報告書を当初の提出期限内に提出しなかった場合、当期の半期報告書の訂正でレビュー報告書が添付される場合などです。
開示内容は、サマリー情報に加えて、四半期連結貸借対照表、四半期連結損益計算書および包括利益計算書、継続企業の前提に関する注記、セグメント情報等の注記などとされています。
任意化はされていない
金融審議会のワーキング・グループ報告は、四半期決算短信について当面は一律に義務づけ、将来的な任意化は継続的に検討するとしていました。しかし2026年9月時点で、東京証券取引所が四半期決算短信を任意化したという規則改正は確認できません。決算短信・四半期決算短信の作成要領は2026年7月版が最新で、四半期決算短信の作成・開示が引き続き前提になっています。
📗 会計基準は2段階で動いた
第33号は第12号を廃止したわけではありません。第12号も第33号も、第37号の適用により適用が終わります(第37号 第36項)。
会計基準の側も動いています。まず2024年3月22日に、企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」と適用指針第32号が公表されました。第37項が、改正後の金商法24条の5第1項による半期報告書の提出が求められる最初の中間会計期間から適用するとしています。第38項が、適用初年度は開示対象期間の中間財務諸表等について遡及適用するとしています。第39項は、既存の基準等の「四半期会計期間」「四半期財務諸表」といった用語を「中間会計期間」「中間財務諸表」等と読み替える定めです。
次に2025年10月16日、企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」が公表されました。同時に適用指針第34号、企業会計基準第38号、第39号、第40号、改正適用指針第6号も公表されています。第34項が、2026年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の最初の期中会計期間から適用するとしています。
第12号はいつ終わるのか
ここも取り違えが多い点です。企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」は、第33号によって廃止されたわけではありません。第37号の第36項が、本会計基準の適用により、企業会計基準第12号、適用指針第14号、企業会計基準第33号、適用指針第32号の適用を終了するとしています。第12号と第33号は、いずれも第37号の適用によって役割を終える構造です。
🏢 新規上場での取扱い
上場準備会社にとっては、申請書類への影響があります。東京証券取引所の提出書類に関する資料で確認できることを整理します。
Ⅰの部については、上場申請日や上場承認日の時点で記載対象となる直近の半期情報が確定していない場合、Ⅰの部の半期情報の記載内容はドラフト(たとえば項目のみの記載)でもよいとされています。確定後に更新版を提出することになります。
上場承認までに提出する「新規上場申請のための半期報告書」には、中間監査報告書または期中レビュー報告書を添付します。また、提出書類には基準事業年度の翌事業年度の第1・第3四半期決算短信が含まれます。
有価証券届出書との同日開示
有価証券届出書のために四半期財務諸表に期中レビューを受ける場合、期中レビュー報告書を添付した四半期決算短信の開示が義務づけられます。レビューを受けずに先に開示していた場合でも、レビュー完了後に改めて開示することになります。
有価証券届出書と同日に開示することを想定する場合には、届出前勧誘に該当しないよう、先に有価証券届出書を提出し、その後に四半期決算短信を開示するよう留意が必要とされています。順序の問題ですが、間違えると影響が大きい論点です。
関連する論点はIPO準備 完全ガイドと上場申請の流れで扱っています。
❓ よくある質問
A. なくなっていません。廃止されたのは第1・第3四半期の四半期報告書という法定開示で、東京証券取引所の四半期決算短信は義務づけられたままです。
A. 2026年9月時点で、任意化する規則改正は確認できません。金融審議会の報告は当面一律に義務づけ、将来的な任意化を継続的に検討するとしていました。
A. 上場会社等については45日以内の政令で定める期間内です。金融システムの安定に関する事業を行う会社は60日以内、上場会社等以外の会社は3月以内です(金商法24条の5第1項の表)。
A. 第一種中間財務諸表は期中レビュー報告書、第二種中間財務諸表は中間監査報告書によります(監査証明府令3条)。中間監査は廃止されていません。
A. 原則として任意です。ただし有価証券上場規程施行規則に定める例外要件に該当する場合は義務づけられます。
A. 第33号によって廃止されたのではありません。企業会計基準第37号の第36項により、第37号の適用によって第12号と第33号の適用が終了します。
A. 第34項により、2026年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の最初の期中会計期間からです。
A. 新規上場申請のための半期報告書には、中間監査報告書または期中レビュー報告書を添付します。
A. 証券取引法等の一部を改正する法律(平成18年法律第65号、平成18年6月14日公布)によるもので、適用は平成20年4月1日以後に開始する事業年度からでした。
📄 まとめ
2024年4月1日以後に開始する四半期会計期間から、第1・第3四半期の四半期報告書が廃止されました。第2四半期については半期報告書を提出します。ただし東京証券取引所の四半期決算短信は残っており、2026年9月時点で任意化されていません。
半期報告書の提出期限は、金商法24条の5第1項の表により45日・60日・3月の3区分です。監査人の関与も、第一種中間財務諸表は期中レビュー報告書、第二種中間財務諸表は中間監査報告書と分かれます。
会計基準は、企業会計基準第33号を経て、2026年4月1日以後に開始する年度の最初の期中会計期間から企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」が適用されます。第12号と第33号は、第37号の適用によって適用が終了します。
📚 参考(公的な一次情報)
- 金融商品取引法 24条の5、金融商品取引法等の一部を改正する法律(令和5年法律第79号)
- 金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(令和4年12月27日)
- 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 1条1項2号・3号、財務諸表等の監査証明に関する内閣府令 3条
- 企業会計審議会「四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂に係る意見書」(令和6年3月27日)
- 東京証券取引所 有価証券上場規程 404条・416条、同施行規則 405条(2024年3月28日改正、2024年4月1日施行)
- 企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」、企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」第34項・第36項
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