オフィスの一部を関係会社に転貸している、借りた倉庫の空きスペースを他社に貸している――こうした「借りたものを、さらに貸す」取引は、新リース会計基準ではサブリース取引と整理されます。
グループ内転貸や不動産の一括借上げを抱えるIPO準備会社・上場会社の経理部門向けに、原則の処理、日本基準独自の2つの例外、分類の落とし穴を数値例で確認します。
図 サブリースの処理の判定
この記事の見出し
結論:原則は「借手」と「貸手」の二重処理、例外は2つだけ
サブリース取引とは、原資産が借手から第三者にさらにリースされ、当初の貸手と借手との間のリースが依然として有効である取引をいい、当初のリースをヘッドリース、その借手を中間的な貸手といいます(指針4項(12))。
中間的な貸手は、ヘッドリースについて借手のリースの会計処理を行い、サブリースについてはファイナンス・リースとオペレーティング・リースのいずれに該当するかにより会計処理を行います(指針89項)。原則として2つの別個の契約として処理する趣旨です(指針BC124項)。
ただし日本基準は、中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合(指針92項)と転リース取引(指針93項)の2つの例外を設けています(指針BC125項)。いずれも適用は任意です(指針BC135項)。この2つに当てはまらない転貸は、すべて原則どおり二重に処理します。
図1 サブリース取引の会計処理を決める分岐(本文の指針89項・91項・92項・93項の関係を整理)
原則の処理:使用権資産を「消滅」させるかどうかが分かれ目
サブリースの分類は、原資産ではなく使用権資産を参照する
中間的な貸手のサブリースは、次のいずれかに該当する場合にファイナンス・リースと判定されます(指針91項)。現在価値基準は、サブリースにおける貸手のリース料の現在価値が独立第三者間取引における使用権資産のリース料の概ね90パーセント以上であること(指針91項(1))、経済的耐用年数基準は、サブリースにおける貸手のリース期間がヘッドリースにおける残りの借手のリース期間の概ね75パーセント以上であることです(指針91項(2))。
ここが最も間違えやすい点です。中間的な貸手は原資産の経済的耐用年数ではなくヘッドリースの残存期間と比べます。使用権資産のリスクと経済価値の移転度合いで分類するためです(指針BC123項(1))。建物の耐用年数が40年でも、残りが4年なら分母は4年です。
なお、ヘッドリースに短期リース又は少額リースの簡便的な取扱いを適用して使用権資産及びリース負債を計上していない場合、サブリースはオペレーティング・リースに分類されます(指針91項なお書き)。この適用自体は妨げられていません(指針BC136項)。
ファイナンス・リースなら、使用権資産の消滅を認識する
ファイナンス・リースに該当する場合、リース開始日に、サブリースした使用権資産の消滅を認識し(指針89項(1)①)、サブリースにおける貸手のリース料の現在価値と使用権資産の見積残存価額の現在価値の合計額でリース投資資産又はリース債権を計上します(指針89項(1)②)。これに伴う損益は原則として純額です(指針89項(1)③、BC127項)。
現在価値の算定には、上記②の合計額が「独立第三者間取引における使用権資産のリース料」(リース開始日に現金で全額が支払われるものと仮定した場合のリース料)と等しくなる利率を用います(指針90項(1)(2))。当該利率の算出が容易でない場合、ヘッドリースに用いた割引率を用いることができます(指針90項ただし書き)。
一方、オペレーティング・リースの場合は、受け取る貸手のリース料についてオペレーティング・リースの会計処理を行います(指針89項(2))。使用権資産は残り、減価償却も続きます。
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日本基準が独自に設けた2つの例外
例外① 中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合
次の要件をいずれも満たす取引について、中間的な貸手は、ヘッドリースにおける使用権資産及びリース負債を計上せず、受け取るリース料の発生時又は受領時のいずれか遅い時点で、受け取るリース料と支払うリース料の差額を損益に計上することができます(指針92項)。
- 中間的な貸手は、サブリースの借手からリース料の支払を受けない限り、ヘッドリースの貸手に対してリース料を支払う義務を負わない(指針92項(1))
- ヘッドリースにおける支払額は、サブリースにおいて受け取る金額にあらかじめ定められた料率を乗じた金額である(指針92項(2))
- サブリースの契約条件(借手の決定を含む。)を決定する権利を有さない(指針92項(3)①)
- サブリースの借手が存在しない期間における原資産の使用方法を決定する権利を有さない(指針92項(3)②)
資産及び負債の計上が取引の実態を反映しない場合があるとの意見を背景に(指針BC128項)、上記要件をいずれも満たす取引のみが対象とされました(指針BC129項)。実務では不動産の一括借上げが該当するかが論点ですが、空室でもオーナーに賃料を保証する形態は指針92項(1)を、転借人の選定権を持つ形態は指針92項(3)①を満たしません。
例外② 転リース取引
サブリース取引のうち、ヘッドリースの原資産の所有者から当該原資産のリースを受け、さらに同一資産を概ね同一の条件で第三者にリースする取引を転リース取引といいます(指針93項)。貸手としてのリースがヘッドリースの原資産を基礎として分類する場合にファイナンス・リースに該当するとき、貸借対照表上はリース債権又はリース投資資産とリース負債の双方を計上し(指針93項(1))、損益計算書上は支払利息、売上高、売上原価等を計上せずに、受け取るリース料と支払うリース料との差額を手数料収入として各期に配分できます(指針93項(2))。実務に浸透していた取扱いの踏襲です(指針BC132項)。
注意したいのは分類の参照先が「原資産」である点です(指針93項)。原則の指針91項と逆向きで、社内マニュアル作成時に取り違えやすいところです。なお、リース債権等とリース負債は利息相当額控除前の金額で計上することもでき(指針93項なお書き)、例外①と②の両方に該当することは想定されていません(指針BC126項)。
| 比較の切り口 | 原則(指針89項) | 例外①(指針92項) | 例外②(指針93項) |
|---|---|---|---|
| 貸借対照表 | 使用権資産・リース負債を計上。FLならその分は消滅 | 使用権資産・リース負債を計上しない | リース債権等とリース負債を両建て計上 |
| 損益計算書 | 借手・貸手の両方を計上。取崩損益は原則純額 | 受取と支払の差額を損益に計上 | 差額を手数料収入として各期に配分 |
| 分類の参照先 | ヘッドリースに係る使用権資産 | ― | ヘッドリースの原資産 |
| 適用 | 原則的な取扱い | 任意(指針BC135項) | 任意(指針BC135項) |
自作の数値例:サブリース期間が2年違うと、損益はこう変わる
以下は筆者が設定した数値例です(千円単位、端数四捨五入)。
前提 オフィス1フロアのヘッドリースは、期間6年・年額30,000千円(期末年払)・割引率年2.0%。当初の使用権資産及びリース負債は168,043千円、減価償却費は年28,007千円、2年経過時点の使用権資産は112,029千円です。
3年目の期首にフロアの40%(使用権資産44,811千円相当)を関係会社へサブリースします。独立第三者間取引における使用権資産のリース料は55,000千円、利率の算出が容易でないためヘッドリースの割引率2.0%を用います(指針90項ただし書き)。サブリース料は年額14,000千円、見積残存価額はゼロとします。
ケースA(サブリース期間4年=残存期間と同じ) 現在価値53,308千円は55,000千円の96.9%で現在価値基準を満たし(指針91項(1))、期間の比率も100%で経済的耐用年数基準を満たします(指針91項(2))。使用権資産44,811千円の消滅を認識し(指針89項(1)①)、リース債権53,308千円を計上して(指針89項(1)②)、差額8,497千円を純額で損益に計上します(指針89項(1)③)。以後の減価償却費は16,804千円です。
ケースB(サブリース期間2年) 現在価値は27,182千円で49.4%、期間の比率は50%と、いずれの基準も満たさずオペレーティング・リースになります(指針91項)。使用権資産の取崩しはなく、減価償却費28,007千円を全額計上し、受取リース料14,000千円を収益計上します(指針89項(2))。
| 項目 | ケースA(4年) | ケースB(2年) |
|---|---|---|
| 現在価値基準 | 96.9%(満たす) | 49.4%(満たさない) |
| 期間の比率 | 100%(満たす) | 50%(満たさない) |
| 分類 | ファイナンス・リース | オペレーティング・リース |
| 使用権資産 | 44,811千円を取崩し | 取崩しなし |
| 計上する資産 | リース債権53,308千円 | なし |
| 開始日の損益 | 8,497千円(純額) | なし |
| 翌期の減価償却費 | 16,804千円 | 28,007千円 |
図2 サブリース期間の違いが財務諸表に与える影響(本文の数値例に基づく)
実務上の留意点
- グループ内の転貸を含めサブリース取引を漏れなく洗い出せているか(親会社が一括で借りて子会社へ配賦する形態は見落としやすい)
- 指針101項(2)の注記データを集計できる体制になっているか
- 分類の分母を「ヘッドリースにおける残りの借手のリース期間」としているか(指針91項(2))
- 独立第三者間取引における使用権資産のリース料の見積根拠が文書化されているか(指針90項(2))
- 指針92項の3要件を、契約書のどの条項で満たすと判断したかが特定できるか(指針92項(1)(2)(3))
- 転リース取引の分類を、例外的に原資産を基礎として行っているか(指針93項)
- リース期間の見直しが必要な事象がないか(借手のリース期間の終了後の期間に係る原資産のサブリースの契約締結は、その例とされています(基準BC51項(3)))
負担が大きいのは契約書のローラー確認と、見積りの裏づけづくりです。転貸は営業部門や総務部門が個別に締結していることが多く、経理に契約書が集まっていない例が少なくありません。
注記は、使用権資産のサブリースによる収益(指針101項(2)①)、指針92項を適用して計上した損益(指針101項(2)②)、指針93項なお書きを適用したリース債権等及びリース負債(指針101項(2)③)について、区分表示していない場合の科目及び金額が求められます。
契約書の洗い出しから要件該当性の検討、注記データの整備まで、公認会計士・税理士が実務目線でご支援します。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
よくある質問
契約名称ではなく、指針92項(1)(2)(3)の要件を実際に満たしているかで判断します(指針92項)。空室でも中間的な貸手が賃料を保証する形態や、転借人を自ら選定できる形態は、要件を満たさないと考えられます。
中間的な貸手は、サブリースにおける貸手のリース期間がヘッドリースにおける残りの借手のリース期間の概ね75パーセント以上かで判定します(指針91項(2))。使用権資産を参照して分類するためです(指針BC123項(1))。
妨げられていません(指針BC136項)。この場合、使用権資産及びリース負債を計上していないため、サブリースはオペレーティング・リースに分類されます(指針91項なお書き)。
まとめ
サブリース取引は、原則としてヘッドリースとサブリースを2つの別個の契約として処理します(指針89項、BC124項)。分類の参照先が使用権資産であること(指針BC123項(1))、2つの例外が任意適用であること(指針BC135項)を押さえ、契約条項レベルで要件を確認することが出発点です。
連載の全体像は新リース会計基準の連載目次に、前回はセール・アンド・リースバック、分類の考え方は貸手の会計処理でまとめています。次回は「使用権資産の減損」です。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の適否は契約条件により異なります。最終的な会計処理の判断にあたっては、監査人又は専門家にご相談ください。
参考:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」BC51項/企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」4項(12)、89項、90項、91項、92項、93項、101項(2)、BC123項、BC124項、BC125項、BC126項、BC127項、BC128項、BC129項、BC132項、BC135項、BC136項、BC150項
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