新リース会計基準の貸手の会計処理は?分類と売上高の計上を解説

「新リース会計基準は借手の話で、貸手はほとんど変わらない」——実務でよく聞く整理です。大枠としては誤りではありませんが、そのまま受け取ると決算期に入ってから慌てる論点が残ります。

この記事は、リース会社・不動産賃貸業・自社製品をリースで提供する事業会社の経理担当者、子会社に設備を貸している親会社の管理部門を想定しています。「貸手だから対応不要」で止めてよいのかを、条項に当たりながら整理します。

貸手としてどう分類するか貸手としての取引の内容を確かめる所有権が移転する取引か所有権移転ファイナンス・リーはいいいえ移転しないがファイナンスの要件を満たすか所有権移転外ファイナンス・リースはいいいえいずれの要件にも当たらないかオペレーティング・リースはいいいえ分類に応じて収益の計上方法を決める

図 貸手の分類の判定

結論:枠組みは維持、ただし入口と出口が変わる

貸手の会計処理については、収益認識会計基準との整合性を図る点並びにリースの定義及びリースの識別を除き、基本的に企業会計基準第13号の定めを踏襲するとされています(基準BC53項)。分類の枠組みも、企業会計基準第13号の方法を基本的に変更していないとされています(基準BC54項)。

したがって、リース債権・リース投資資産を立てて利息法で配分する中核部分は、これまでと同じ景色です。変わるのは、その手前の「何をリースとして拾うか」「どの期間で測るか」と、その先の「いつ・いくらを収益に計上するか」です。

図1 貸手の会計処理の流れと、新基準で変わる位置 STEP1 リースの識別 定義・識別は借手と共通 STEP2 貸手のリース期間 2つの方法から選択 STEP3 リースの分類 FL/OLの2区分 ファイナンス・リース 売買に準じた処理 オペレーティング 賃貸借に準じた処理 所有権移転 リース債権 所有権移転外 リース投資資産 STEP4 収益の計上方法 選べる方法が絞り込まれた 赤枠=新基準で影響を受ける工程/青枠=企業会計基準第13号から維持された工程 中核の測定(リース債権・リース投資資産と利息法)は維持されている

図1 貸手の処理は4工程。変化は前後の工程に集中する

維持された部分──分類の枠組みと売買に準じた処理

2段階の分類

貸手は、リースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースとに分類し(基準43項)、さらにファイナンス・リースを所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースとに分類します(基準44項)。

ファイナンス・リースとは、解約不能のリースであり、かつ、借手が原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、当該原資産の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース(フルペイアウトのリース)をいいます(指針59項)。法的形式上は解約可能でも、解約時に未経過の契約期間に係るリース料の概ね全額を規定損害金として支払うこととされているリースは、事実上解約不能と認められるリースとして取り扱います(指針60項)。

2つの具体的な判定基準

経済的実質による判断が原則ですが、次のいずれかに該当する場合にはファイナンス・リースと判定されます(指針62項)。

判定基準 しきい値と留意点
現在価値基準 貸手のリース料の現在価値が、原資産の現金購入価額の概ね90パーセント以上であること(指針62項(1))。割引率は貸手の計算利子率です(指針66項)。製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース等では、現金購入価額に代えて借手に対する現金販売価額を用います(指針65項)。
経済的耐用年数基準 貸手のリース期間が、原資産の経済的耐用年数の概ね75パーセント以上であること(指針62項(2))。75パーセント以上でも借手がほとんどすべてのコストを負担しないことが明らかな場合は、現在価値基準のみにより判定します(指針63項)。
所有権移転の判定 ファイナンス・リースのうち、①所有権移転条項があるもの、②割安購入選択権が与えられその行使が確実に予想されるもの、③特別仕様で借手によってのみ使用されることが明らかなもの、のいずれかに該当する場合に所有権移転ファイナンス・リースに分類します(指針70項(1)(2)(3))。

不動産では、土地は所有権移転の3類型に該当する場合を除きオペレーティング・リースに該当するものと推定します(指針68項)。土地と建物等を一括したリースは、原則として貸手のリース料を合理的な方法で分割したうえで、建物等について現在価値基準の判定を行います(指針69項)。

会計処理も、ファイナンス・リースは通常の売買取引に係る方法に準じた処理を行い(基準45項)、リース開始日に所有権移転ファイナンス・リースはリース債権、所有権移転外ファイナンス・リースはリース投資資産として計上します(基準46項)。利息相当額の総額は、貸手のリース料及び見積残存価額の合計額から、これに対応する原資産の取得価額を控除して算定し、貸手のリース期間にわたり原則として利息法により配分します(基準47項)。オペレーティング・リースは通常の賃貸借取引に係る方法に準じた処理です(基準48項)。ここまでは従来の実務を継続できる領域です。

変わる部分──4つの入口

①リースの定義と識別は貸手にも適用される

13号の踏襲から除かれているのは、収益認識会計基準との整合を図る点と、リースの定義及びリースの識別です(基準BC53項)。借手及び貸手は、リースを含む契約について、原則としてリースを構成する部分とリースを構成しない部分とに分けて会計処理を行います(基準28項)。保守・運用サービス込みの契約では、対価の配分という論点が貸手側にも生じます。

②貸手のリース期間は2つの方法から選ぶ

貸手は、貸手のリース期間について、借手のリース期間と同様に決定する方法と、解約不能期間に借手が再リースする意思が明らかな場合の再リース期間を加えて決定する方法の、いずれかを選択して決定します(基準32項(1)(2))。両方が認められたのは、本会計基準が主として借手の会計処理の改正であり、貸手が借手のオプション行使可能性を評価することは困難と考えられること等が理由とされています(基準BC38項)。この選択は経済的耐用年数基準の分子を動かすため、分類の結論を左右し得ます。

③収益の計上方法が絞り込まれた

企業会計基準適用指針第16号では、①リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法、②リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法、③売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法、の3つが定められていました(指針BC112項)。このうち②は、収益認識会計基準において対価の受取時にその受取額で収益を計上することが認められなくなったことを契機として廃止されました(指針BC117項)。

製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリースでは、リース開始日に、貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除した金額で売上高を計上し、同額でリース投資資産を計上するとともに、原資産の帳簿価額により売上原価を計上します(指針71項(1)①)。販売益相当額を繰り延べる方法は踏襲されていません(指針BC114項)。ただし販売益相当額が貸手のリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、原資産の帳簿価額をもって売上高及び売上原価とし、販売益相当額を利息相当額に含めて処理できます(指針71項(1)①ただし書き)。

④オペレーティング・リースは原則として定額計上

貸手は、オペレーティング・リースによる貸手のリース料について、貸手のリース期間にわたり原則として定額法で計上します(指針82項)。企業会計基準適用指針第16号はオペレーティング・リース取引の会計処理を示していなかったため、新たに明示された定めです(指針BC120項)。

あわせて、貸手が基準32項(2)の方法を選択し、貸手のリース期間に無償賃貸期間が含まれるときは、契約期間における使用料の総額について契約期間にわたり計上します(指針82項ただし書き)。フリーレントやレントホリデーの処理に多様性が生じていたことが背景に挙げられており(指針BC121項)、該当契約を多く持つ不動産賃貸業では収益計上パターンの見直しが必要になり得ます。

図2 ファイナンス・リースの収益計上方法の整理 企業会計基準適用指針第16号の3方法 新しい適用指針での取扱い ①開始日に売上高と売上原価を計上 製造・販売を事業とする貸手の方法 維持(指針71項(1)①) 販売益の繰延べは踏襲せず ②リース料受取時に売上高と売上原価 受取額で収益を計上する方法 廃止(指針BC117項) 収益認識会計基準との整合が契機 ③売上高を計上せず利息相当額を配分 製造・販売以外を事業とする貸手 維持(指針71項(2)) 現金購入価額でリース投資資産 ②を採用していた企業は、収益計上のタイミングそのものを組み替える必要がある

図2 3方法のうち1つが廃止された(指針BC112項の整理に基づく)

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数値例で確認する

産業用ロボットの製造業を営むA社が、自社製品を顧客にリースで提供したとします(架空の設例です)。

原資産の借手に対する現金販売価額 40,000千円/A社での帳簿価額 32,000千円/経済的耐用年数 7年
貸手のリース期間 5年、リース料 年額8,800千円(期末年1回払、総額44,000千円)
リース期間終了時の見積残存価額 2,000千円(残価保証なし)

貸手の計算利子率は、貸手のリース料の現在価値と見積残存価額の現在価値の合計が現金販売価額と等しくなる利率ですから(指針66項)、年約4.7%となります。この利率による貸手のリース料の現在価値は38,411千円、現金販売価額に対する割合は96.0%で、90パーセント以上ですからファイナンス・リースと判定されます(指針62項(1))。なおリース期間5年は経済的耐用年数7年の71.4%にとどまり、経済的耐用年数基準だけを見ると該当しません(指針62項(2))。一方の基準を満たせば足りる点が結論を分けます。

所有権移転条項も割安購入選択権もなく特別仕様でもないため、所有権移転外ファイナンス・リースに分類され(指針70項)、リース投資資産を計上します(基準46項)。A社は製造を事業とする貸手ですから、リース開始日に売上高38,411千円、売上原価32,000千円と、同額のリース投資資産38,411千円を計上します(指針71項(1)①)。販売益相当額6,411千円は貸手のリース料44,000千円の14.6%を占め、簡便的な取扱いは想定しにくい水準です。

その後は、受取リース料8,800千円を利息相当額とリース投資資産の元本回収とに区分し(指針71項(1)②)、原則として利息法により配分します(指針73項)。

年度 受取リース料 利息相当額 元本回収額 期末残高
1年度 8,800 1,808 6,992 31,419
2年度 8,800 1,479 7,321 24,097
3年度 8,800 1,134 7,666 16,431
4年度 8,800 773 8,027 8,404
5年度 8,800 396 8,404 0

単位:千円。年約4.7%で計算し、端数処理の関係で内訳の合計が一致しない箇所があります。

押さえておきたいのは、開始日に6,411千円の販売益が立ち、以後5年間は利息相当額5,589千円が逓減しながら計上されるという損益の形です。リース料受取時に売上高を計上する方法を採っていた企業では、期間損益の見え方が大きく変わります。

自社で対応するときに負担が大きい箇所

監査法人との議論で問われやすいのは、分類の結論そのものより、分類に至る前提の置き方です。現金販売価額の把握方法、経済的耐用年数の見積根拠、貸手のリース期間の決定方法をどちらに統一し継続適用しているか——いずれも判定表の数字の背後にあり、後から資料を作り直すのが最も手間のかかる部分です。

  • 貸手のリース期間の決定方法(基準32項(1)か(2)か)を選び、選択の理由と適用範囲を文書化したか
  • サービスを含む契約について、リースを構成する部分と構成しない部分の区分方針を定めたか
  • 現在価値基準に用いる現金販売価額の算定根拠を、契約類型ごとに整理したか
  • 経済的耐用年数の見積根拠(社内実績・中古市場等)を判定表とひも付けて保存しているか
  • 現在採用している収益計上方法が、廃止された「リース料受取時に売上高を計上する方法」に該当していないか
  • フリーレントやレントホリデーを含む契約を洗い出し、収益計上パターンを確認したか
  • 利息相当額の定額配分を採っている場合、10パーセント未満という重要性の要件を毎期判定しているか
  • リース債権とリース投資資産の区分表示、または合算表示の可否を判断したか
  • 損益計算書での区分表示・注記の対象となる3項目を、システムから抽出できるか

最後の2点は表示に直結します。リース債権及びリース投資資産は、それぞれ貸借対照表において区分して表示するか、それぞれが含まれる科目及び金額を注記しますが、リース債権の期末残高が両者の期末残高の合計額に占める割合に重要性が乏しい場合は合算できます(基準52項)。損益計算書では、ファイナンス・リースに係る販売損益、リース債権及びリース投資資産に対する受取利息相当額、オペレーティング・リースに係る収益の3項目を区分して表示するか注記します(基準53項(1)(2)(3))。会計システムがこの粒度で切り出せるかは、早めに確認しておきたい点です。

よくある質問

Q. 貸手は本当に何も対応しなくてよいのですか。

中核は企業会計基準第13号の定めを基本的に踏襲するとされていますが、リースの定義及びリースの識別は踏襲の対象から除かれています(基準BC53項)。加えて貸手のリース期間の決定方法の選択(基準32項)、収益計上方法の整理(指針BC117項)、オペレーティング・リースの定額計上(指針82項)が残ります。

Q. 貸手のリース期間は、どちらの方法を選ぶべきですか。

基準はいずれかを選択して決定するとしています(基準32項)。借手のオプション行使可能性を評価できるだけの情報があるかが、実務上の分かれ目になると考えられます。子会社への貸付けと多数の外部顧客向け取引とで事情が異なる点にも留意が必要です。

Q. 利息相当額を定額で配分している場合はどうなりますか。

貸手としてのリースに重要性が乏しいと認められる場合は、利息法によらず定額で配分できますが、リースを主たる事業としている企業は適用できません(指針74項)。「重要性が乏しい」とは、未経過の貸手のリース料及び見積残存価額の合計額の期末残高が、当該期末残高と営業債権の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合をいいます(指針75項)。

Q. 借手と貸手で、同じ契約の判定結果が食い違うことはありますか。

貸手はファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し(基準43項)、貸手のリース期間は借手と同様に決定する方法以外も選べます(基準32項(2))。仕組みが異なる以上、期間や区分の結論が一致しないことは起こり得ます。連結グループ内の取引では、この差異が相殺消去の作業に影響します。

まとめ

貸手の会計処理は、分類と売買に準じた測定という骨格が維持される一方で、リースの識別、貸手のリース期間の決定方法、収益計上方法、オペレーティング・リースの定額計上の4か所で見直しが入っています。借手ほどの作業量ではありませんが、契約の洗い出しと方針の文書化は、着手が遅れるほど負担が増える性質の作業です。

連載の全体像は新リース会計基準の連載目次にまとめています。前回は短期リース・少額リースの簡便的取扱い、その前はリースの条件変更と再評価を扱いました。次回は「セール・アンド・リースバック」を取り上げます。

貸手側の影響評価から、方針の文書化まで

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の契約や事実関係により結論が異なる場合がありますので、最終的な会計処理の判断にあたっては専門家にご相談ください。

参考

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第23項、第28項、第32項、第43項、第44項、第45項、第46項、第47項、第48項、第52項、第53項、BC38項、BC53項、BC54項/企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第59項、第60項、第62項、第63項、第65項、第66項、第68項、第69項、第70項、第71項、第73項、第74項、第75項、第82項、BC112項、BC114項、BC117項、BC120項、BC121項

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