宿坊は旅館業になるか|宗教法人の宿泊施設

宿坊に泊まってもらい、宿泊料を受け取る。この収入に法人税がかかるかどうかは、旅館業に当たるかで決まります。

通達は、旅館業法の許可を受けずに宿泊させて宿泊料を受ける事業も旅館業に含まれるとしたうえで、宗教法人が信者や参詣人を宿泊させて宿泊料を受ける行為も旅館業に該当すると明記しています。例外は、低廉な宿泊施設に当たる場合だけです。

この記事では、宿坊の課税判定を通達にそって整理し、例外の3要件と実務での注意点を説明します。

この記事でわかること

  • 旅館業の判定が許可の有無で決まらない理由
  • 宿坊が原則として旅館業に当たること
  • 例外となる低廉な宿泊施設の3要件
  • 会議のための席貸しや食事の扱い
  • 消費税と区分経理で気をつけること

📌 許可の有無で決まるのではない

収益事業の34業種のうち、旅館業を定めるのは法人税法施行令5条1項15号です。ここでいう旅館業は、旅館業法の許可を受けているかどうかとは切り離して考えます。

法人税基本通達15-1-39は、令第5条第1項第15号の旅館業には、下宿営業のほか、旅館業法による旅館業の許可を受けないで宿泊させ、宿泊料を受ける事業が含まれる、としています。宿泊料には、その実質が宿泊料であると認められるものも含まれます。

そのうえで同通達は、例えば宗教法人が宿泊施設を有し、信者または参詣人を宿泊させて宿泊料を受けるような行為も、15-1-42に該当するものを除き、旅館業に該当する、と明記しています。宿坊がここで名指しに近い形で扱われている点は押さえておいてください。

📌 宿坊は原則として旅館業に当たる

つまり出発点は、宿坊は旅館業に当たる、です。参籠や修行の場であることは、それだけでは判定を変えません。

名目にも注意が必要です。宿泊料ではなく志納金や参籠冥加金として受け取っていても、その実質が宿泊料であると認められるものは含まれるとされています。金額が定められ、支払わなければ宿泊できないのであれば、実質は宿泊料です。

食事を出すかどうか、部屋に鍵があるかどうかも、それ自体では結論を分けません。判定の枠組みは、次に見る例外に当てはまるかどうかに絞られます。

📌 例外は低廉な宿泊施設だけ

法人税基本通達15-1-42は、公益法人等が専ら会員の研修その他その主たる目的とする事業を遂行するために必要な施設として設置した宿泊施設で、次の要件のすべてを満たすものの経営は、旅館業に該当しないものとする、としています。ここでいう主たる目的とする事業からは、収益事業に該当する事業が除かれます。

1つ目は、その宿泊施設の利用が専らその公益法人等の主たる目的とする事業の遂行に関連してなされるものであること。2つ目は、その宿泊施設が多人数で共用する構造および設備を主とするものであること。3つ目は、利用者から受ける宿泊料の額がすべての利用者につき1泊1,000円、食事を提供するものについては2食付きで1,500円以下であることです。

3つのうち1つでも外れれば、この例外は使えません。とくに3つ目の金額は、現在の宿坊の実勢とかけ離れています。1泊2食付きで数千円を受け取っているのであれば、この例外に当てはまることはありません。

宿坊が旅館業に当たるかの判定宿泊料を受けて信者や参詣人を宿泊させている通達15-1-42の3つの要件をすべて満たすか要件1利用が主たる目的の事業の遂行に関連要件2多人数で共用する構造と設備が主要件31泊1,000円以下2食付きは1,500円すべて満たす旅館業に該当しない1つでも欠ける旅館業に該当する

宿坊が旅館業に当たるかの判定。例外の3要件はすべてを満たす必要があります。

📌 学生寮や寄宿舎の取扱いとの違い

同じ第16款には、学生寮と寄宿舎についての定めもあります。学生または生徒の就学を援助することを目的とする公益法人等の経営する学生寮は、地方税法施行令51条の8各号に掲げる要件のすべてに該当するものに限り、旅館業に該当しないものとされています(法人税基本通達15-1-40)。

また、学校法人等が専らその学校に在学する者を宿泊させるために行う寄宿舎の経営も、旅館業に該当しないものとされています(法人税基本通達15-1-41)。ただし、技芸教授業を行う公益法人等がその技芸教授業に付随して行う寄宿舎の経営については、この限りでないとされています。

これらは学校法人等を想定した取扱いです。宗教法人が運営する宿泊施設については、15-1-42の低廉な宿泊施設に当たるかどうかが実質的な分かれ目になります。

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📌 席貸しや食事はどう扱うか

宿坊で会議や研修のために部屋を貸す場合、席貸業(法人税法施行令5条1項14号)に当たるかが問題になりそうですが、旅館業を行っている場合には付随行為として整理されます。

法人税基本通達15-1-6は、その性質上その事業に附随して行われる行為の例として、旅館業または料理店業を行う公益法人等がその旅館等において行う会議等のための席貸しを挙げています(同通達(3))。旅館業の収益事業の中に取り込まれる、という整理です。

精進料理の提供も、宿泊とあわせて行うのであれば旅館業の一部として扱うのが自然です。宿泊を伴わずに料理だけを提供して対価を受けるのであれば、料理店業その他の飲食店業(同項16号)の判定になります。

📌 実務で押さえておくこと

まず、税務上の判定と旅館業法の許可は別だということです。許可を取っていないから旅館業ではない、という説明は通達によって明確に否定されています。逆に、税務上旅館業に当たるからといって、そのまま無許可営業が許されるわけでもありません。両方を別々に確認してください。

次に、消費税です。宿泊料は課税売上げになります。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えれば課税事業者となり、申告と納付が必要です。

最後に、区分経理です。宿坊の建物は宗教活動にも使われていることが多く、減価償却費や光熱費は共通費になります。資産の使用割合など合理的な基準を継続して用いて配賦してください(法人税基本通達15-2-5)。収益事業を開始した日以後2か月以内の届出も忘れないでください(法人税法150条1項)。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。宗教法人の税務顧問と会計体制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 旅館業法の許可を取っていなければ旅館業ではありませんか

A. 違います。法人税基本通達15-1-39は、旅館業法による旅館業の許可を受けないで宿泊させ、宿泊料を受ける事業も旅館業に含まれるとしています。税務上の判定と業法の許可は別です。

Q. 志納金として受け取れば宿泊料になりませんか

A. なりません。同通達は、宿泊料にはその実質が宿泊料であると認められるものを含むとしています。金額が定められ、支払わなければ宿泊できないのであれば実質は宿泊料です。

Q. 低廉な宿泊施設の例外は使えますか

A. 要件は3つあり、すべてを満たす必要があります。宿泊料が1泊1,000円、食事を提供するものについては2食付きで1,500円以下という水準ですので、現在の宿坊で当てはまることはまれです。

Q. 宿坊で会議室を貸したら別の収益事業になりますか

A. 旅館業を行っている場合、その旅館等において行う会議等のための席貸しは付随行為として整理されます(法人税基本通達15-1-6(3))。旅館業の収益事業の中に含めて計算します。

Q. 宿坊の建物の減価償却費はどう分けますか

A. 宗教活動にも使っている建物であれば共通費になります。資産の使用割合など合理的な基準を継続して用いて配賦してください(法人税基本通達15-2-5(2))。

📄 まとめ

法人税法施行令5条1項15号の旅館業には、旅館業法の許可を受けないで宿泊させ宿泊料を受ける事業が含まれます(法人税基本通達15-1-39)。

同通達は、宗教法人が宿泊施設を有し、信者または参詣人を宿泊させて宿泊料を受ける行為も、15-1-42に該当するものを除き旅館業に該当するとしています。

例外の要件は3つです。利用が主たる目的とする事業の遂行に関連していること、多人数で共用する構造および設備を主とすること、宿泊料が1泊1,000円(2食付きは1,500円)以下であること。すべてを満たす必要があります。

宿泊料は消費税の課税売上げになります。建物の減価償却費など共通する費用は、合理的な基準で継続的に配賦してください。

⚖ 本記事の根拠法令

記載内容の根拠

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

このテーマの全体像は宗教法人の税務|収益事業の判定と区分経理の実務にまとめています。

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