会計帳簿の閲覧請求|3パーセントの要件と拒絶できる場合

株主から会計帳簿を見せてほしいと言われた。相続で株式を取得した親族、退任した役員、資本業務提携の相手。非上場の会社では、こうした請求が実際に届きます。

会社法433条は、この請求に応じるかどうかの基準をかなり細かく定めています。持株の要件、理由を明らかにする義務、そして会社が拒める5つの場合です。この記事では、請求を受け取った会社が何をどう確認するのかを整理します。

この記事でわかること

  • 3パーセントという要件と、保有期間の要件がないこと(会社法433条1項)
  • 理由を明らかにしてしなければならない意味
  • 会社が拒める5つの場合(同条2項)
  • 計算書類や株主名簿の閲覧請求との違い

要件は3パーセント。保有期間はない

会社法433条1項は、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主、または発行済株式の100分の3以上の数の株式を有する株主は、会社の営業時間内はいつでも請求をすることができると定めています。総株主のかっこ書きで、株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主が除かれ、発行済株式のかっこ書きで自己株式が除かれています。

基準が2つ並んでいることに意味があります。議決権の3パーセントか、発行済株式の3パーセントか、どちらか一方を満たせば足ります。無議決権の種類株式を持つ株主は議決権の基準では届きませんが、発行済株式の基準では請求できるということです。

そして、保有期間の要件がありません。会社法854条の解任の訴えは6か月前から、303条の株主提案権も取締役会設置会社では6か月前からという要件がありますが、433条にはそれがありません。株式を取得した翌日でも、3パーセントあれば請求できます。相続で株式を取得した直後の親族からの請求も、要件を満たせば有効です。

いずれの3パーセントも、定款でこれを下回る割合を定めることができます。引き下げはできますが、引き上げはできません。

理由を明らかにしてしなければならない

同項の後段は、この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならないと定めています。請求書に理由を書かせるということです。

理由は具体的である必要があると解されています。会社の経営状況を調査したい、という程度では足りず、どの取引について何を確かめたいのかが分かる記載が求められます。理由が具体的でなければ、会社は請求に応じる義務を負いません。

会社の側から見れば、まず理由の記載を確認することになります。理由が抽象的であれば、具体化を求めるところから始めるのが実務です。

対象は会計帳簿とこれに関する資料

433条1項1号は、会計帳簿またはこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧または謄写の請求としています。2号は電磁的記録の場合です。

会計帳簿については会社法432条1項が、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならないと定めています。総勘定元帳や仕訳帳、各種の補助簿がこれに当たります。同条2項により、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿およびその事業に関する重要な資料を保存しなければなりません。

これに関する資料の範囲は条文に定義がなく、解釈に委ねられています。伝票や契約書、領収書など、会計帳簿の記載の基礎となった資料が含まれると考えられていますが、どこまでかは事案により争いになります。請求を受けたときは、どの範囲を対象とするかを最初に整理してください。

拒めるのは5つの場合だけ(433条2項)1号 権利の確保または行使に関する調査以外の目的で請求したとき2号 会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求したとき3号 会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、またはこれに従事するとき4号 知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき5号 過去2年以内に、知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるとき

これ以外の理由では拒めません。拒めないのが原則で、拒めるのが例外です

拒める5つの場合

会社法433条2項は、前項の請求があったときは、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができないと定めています。書き方に注意してください。拒めないのが原則で、5つに当たる場合だけが例外です。

1号は、請求者がその権利の確保または行使に関する調査以外の目的で請求を行ったときです。株主としての権利と関係のない目的、たとえば個人的な嫌がらせや、取引上の交渉材料を得るための請求がこれに当たりえます。

2号は、請求者が会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったときです。

3号は、請求者が会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、またはこれに従事するものであるときです。目的を問わず、競争関係にあるという事実だけで拒めるという構造になっています。ただし、実質的に競争関係にあるかどうかの判断は慎重にしてください。同じ業界というだけで当然に当たるわけではありません。

4号は、閲覧または謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したときです。5号は、過去2年以内に、知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるときです。5号だけが過去の行為を理由とするもので、2年という期間が置かれています。

他の書類と比べる

会計帳簿は、会社法の書類の中でもっとも保護が厚い部類です。他の書類と比べると違いがはっきりします。

書類 請求できる者 持株の要件 根拠
会計帳簿とこれに関する資料 株主のみ 3パーセント。理由の記載も必要 433条1項
計算書類等 株主および債権者 なし 442条3項
株主名簿 株主および債権者 なし。理由の記載は必要 125条2項
株主総会議事録 株主および債権者 なし 318条4項
取締役会議事録 株主。監査役設置会社等では裁判所の許可 なし 371条2項・3項

計算書類は債権者でも見られますが、会計帳簿は株主だけです。しかも3パーセントという壁があり、理由も書かせ、5つの拒絶事由まで用意されています。会計帳簿には取引先や仕入価格といった営業上の秘密が並びますので、そこまで開かないという整理です。

もうひとつ対比しておきたいのが監査役です。会社法389条4項は、監査の範囲を会計に関するものに限定する定款の定めがある会社の監査役は、いつでも会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧および謄写をし、または会計に関する報告を求めることができるとしています。持株の要件も理由の記載も要りません。株主と監査役では、会計帳簿への接し方がまったく違います。

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親会社社員からの請求

会社法433条3項は、株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、会計帳簿またはこれに関する資料について1項各号の請求をすることができると定めています。この場合も理由を明らかにする必要があります。

同条4項は、その親会社社員について2項各号のいずれかに規定する事由があるときは、裁判所は許可をすることができないとしています。裁判所の段階で拒絶事由が審査されるということです。

グループ会社を持つ会社では、子会社の会計帳簿について親会社の株主から請求が来る可能性があります。ただし裁判所の許可という関門がありますので、直接に届くことはありません。

拒んだ場合

会社法976条4号は、この法律の規定に違反して、正当な理由がないのに、書類もしくは電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧もしくは謄写、または書類の謄本もしくは抄本の交付などを拒んだときは、100万円以下の過料に処すると定めています。過料は取締役等の個人に科されます。

2項の拒絶事由に当たると判断して拒む場合は、その判断の根拠を記録に残してください。後から正当な理由の有無が問題になったときに、判断の過程を示せるかどうかが分かれ目になります。

請求を受けたときの手順

会計帳簿の閲覧請求を受け取ったら

  • 受領した日を記録し、請求書の原本を保管する
  • 株主名簿で持株を確認する。議決権の3パーセントか、発行済株式の3パーセントか
  • 定款に3パーセントを下回る割合の定めがないかを確認する
  • 請求の理由が具体的に書かれているかを確認する。抽象的であれば具体化を求める
  • 対象となる書類の範囲を整理する。会計帳簿そのものと、これに関する資料をどこまでとするか
  • 433条2項の5つの拒絶事由に当たるかを検討する。特に3号は慎重に
  • 取締役会(取締役会がなければ取締役)で対応方針を決議し、議事録に残す
  • 応じる場合は、日時と場所、立会いの方法、謄写の可否と費用を決めて通知する

閲覧に応じる場合、会社の担当者が立ち会うのが通例です。会計帳簿は会社の外に持ち出させるものではありませんので、会社内で閲覧してもらいます。謄写を認める範囲と費用も、あらかじめ決めておいてください。

非上場の会社で起きる場面

この請求が届くのは、株主のあいだで信頼が失われたときです。相続で株式を取得した親族が経営に関与していない、共同創業者が経営から外れた、退任した役員が株主のまま残っている。いずれも非上場の会社でよくある構図です。

請求が来てから慌てないために、平時からできることが2つあります。ひとつは株主名簿を最新に保つことです。持株の要件を確かめるには正確な名簿が要ります。もうひとつは、会計帳簿とこれに関する資料が整理された状態にあることです。請求に応じることになったとき、どこに何があるか分からない状態では対応できません。

そしてもうひとつ。株主が経営状況を知る手段は会計帳簿だけではありません。計算書類等は442条3項により持株の要件なしで閲覧できますし、事業報告もあります。定時株主総会で十分な説明をしていれば、会計帳簿まで求められる場面は減ります。請求を拒むことばかりを考えるより、日常の情報提供を整えるほうが結果として実務は楽になります。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 株式を取得したばかりの株主でも請求できますか。

A. できます。会社法433条1項には保有期間の要件がありません。854条の解任の訴えや303条の株主提案権と違う点です。3パーセントを満たしていれば、取得の直後でも請求できます。

Q. 同じ業界の会社の株主なら拒めますか。

A. 会社法433条2項3号は、会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、またはこれに従事するものであるときとしています。同じ業界というだけで当然に当たるわけではありませんので、実質的な競争関係があるかを個別に検討してください。

Q. 計算書類は3パーセントがなくても見られるのですか。

A. 見られます。会社法442条3項は株主および債権者による請求を認めており、持株の要件はありません。会計帳簿だけが433条1項の3パーセントという要件を置いています。

📄 まとめ

会計帳簿の閲覧請求は、議決権または発行済株式の3パーセント以上を持つ株主が、理由を明らかにして行います。保有期間の要件がありませんので、株式を取得した直後でも請求できます。

会社が拒めるのは433条2項の5つの場合だけで、拒めないのが原則です。計算書類や株主名簿が持株の要件なしで見られるのと対照的に、会計帳簿は保護が厚く設計されています。請求を受けたら、持株、理由、対象範囲、拒絶事由の順に確認し、方針を議事録に残してください。

⚖ 本記事の根拠

記載内容の根拠

  • 会社法433条1項
  • 会社法433条2項1号から5号(会社が拒める5つの場合)
  • 会社法433条3項・4項(親会社社員による請求と、裁判所の許可)
  • 会社法432条1項・2項(会計帳簿の作成と、閉鎖の時から10年間の保存)
  • 会社法442条3項、125条2項、318条4項、371条2項・3項(他の書類の閲覧請求との対比)
  • 会社法389条4項(会計に限定された監査役の閲覧謄写権)
  • 会社法976条4号(正当な理由がないのに拒んだ場合の100万円以下の過料)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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