上場会社の株式は100株単位で売買されています。この100株という数は、会社法が決めているものではありません。有価証券上場規程が、上場会社の単元株式数を100株とすることを原則としているためです。
会社法の側にあるのは上限の定めです。会社法188条2項と会社法施行規則34条により、1単元の株式数は1000および発行済株式の総数の200分の1を超えることができません。
この記事では、単元株式数を100株にするための手続を、会社法の条文にそって整理します。株式分割と同時に行えば株主総会の決議がいらないという特則があり、上場準備ではここが効いてきます。
- 100株という数の根拠が会社法ではないこと
- 会社法が定める1単元の上限が2つあること
- 単元株式数を増やすときと減らすときで決議が違うこと
- 株式分割と同時なら株主総会の決議がいらない仕組み
- 単元未満株式が生じたときに株主に残る権利
この記事の見出し
📌 100株の根拠は上場規程、上限の根拠は会社法
まず、2つの規範を分けて考えます。上場会社の単元株式数を100株とするのは有価証券上場規程の要請であり、会社法にはこの数を求める条文はありません。
会社法188条1項は、一定の数の株式をもって1個の議決権を行使することができる1単元の株式とする旨を定款で定めることができる、としています。数は会社が決められますが、同条2項が法務省令で定める数を超えられないとし、会社法施行規則34条が、その数を千および発行済株式の総数の200分の1に当たる数と定めています。
つまり会社法が用意しているのは上限だけで、100という具体的な数は市場のルールから来ています。定款に書くのは会社法上の定めですが、いくつにするかの判断材料は上場規程にある、という二階建ての構造です。
| 論点 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 100株にすること | 有価証券上場規程 | 上場会社の単元株式数は100株を原則とする |
| 1単元の上限 | 会社法188条2項、施行規則34条 | 千、かつ発行済株式の総数の200分の1 |
| 種類株式があるとき | 会社法188条3項 | 単元株式数は株式の種類ごとに定める |
📌 増やすときは特別決議、減らすときは取締役会
単元株式数の定めは定款事項ですから、原則として会社法466条により株主総会の決議で変更します。決議要件は309条2項11号の特別決議です。
ところが、減らす方向には特則があります。会社法195条1項は、466条の規定にかかわらず、取締役の決定、取締役会設置会社では取締役会の決議によって、定款を変更して単元株式数を減少し、または単元株式数についての定款の定めを廃止することができるとしています。
理由は明快で、単元株式数が小さくなることは株主の議決権を増やす方向に働くからです。株主に不利益がないため、株主総会を経なくてよいとされています。逆に増やす方向は株主の議決権を減らしますので、原則どおり株主総会が要ります。
株主の議決権が減る方向には株主総会、増える方向には取締役会。会社法の考え方はここで一貫しています。
📌 株式分割と同時なら株主総会がいらない
上場準備で使われるのが会社法191条の特則です。同条は、次のいずれにも該当する場合には466条の規定にかかわらず、株主総会の決議によらないで単元株式数を増加し、または単元株式数についての定款の定めを設ける定款の変更をすることができる、としています。
条件は2つあります。1つは、株式の分割と同時に単元株式数を増加し、または定めを設けるものであること。もう1つは、定款変更後において各株主が有する株式の数を単元株式数で除して得た数が、変更前において各株主が有する株式の数を変更前の単元株式数で除して得た数を下回らないことです。
言い換えると、分割の割合と単元株式数の増加の割合を合わせて、株主が持つ単元の数が減らないようにすれば、株主総会を経なくてよいということです。たとえば1株を100株に分割すると同時に単元株式数を100株にすれば、株主の持つ単元の数は変わりません。
上場準備では、株価を売買しやすい水準に下げるために株式分割を行うことが多くあります。同じ機会に単元株式数を設定できれば、株主総会の議案を1つ減らせます。株式の分割自体、取締役会設置会社では会社法183条2項により取締役会の決議で行えますので、全体を取締役会だけで完結させることも可能です。
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📌 単元未満株式が生じたらどうなるか
単元株式数を設定すると、それに満たない株式を持つ株主が生じます。会社法189条1項は、単元未満株主はその単元未満株式について株主総会および種類株主総会において議決権を行使することができない、と定めています。
同条2項は、単元未満株主が一定の権利以外の権利の全部または一部を行使することができない旨を定款で定めることができるとしていますが、同項各号に掲げられた権利は制限できません。剰余金の配当を受ける権利などがこれに当たります。上場会社の定款では、この2項に沿った定めを置くのが一般的です。
あわせて、単元未満株式の買取請求と、定款で定めた場合の買増請求への対応も設計しておく必要があります。株主名簿管理人となる信託銀行の事務と直結しますので、単元株式数の設定と株主名簿管理人の選定はセットで進めてください。
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❓ よくある質問
A. 会社法上は任意です。188条1項は定款で定めることができるとしているだけで、義務ではありません。ただし上場会社は上場規程により100株とすることが原則とされていますので、上場を目指すなら設定することになります。
A. 発行済株式が少ない会社では、こちらの上限が先に効きます。たとえば発行済株式が1万株の会社では、200分の1は50株ですから、単元株式数を100株にすることはできません。株式分割で発行済株式を増やしてから設定する必要があります。
A. 単元株式数は登記事項ですので、定款変更の効力が生じたら変更の登記が必要です。会社法915条1項により、本店の所在地において2週間以内に行います。株式の分割による発行済株式の総数の変更も同時に登記します。
A. 会社法192条以下に手続が定められています。上場後は株主名簿管理人が事務を担いますが、請求の受付から代金の支払いまでの流れは定款と株式取扱規程で定めることになります。設計は信託銀行と詰めてください。
A. 会社法上は可能です。上場規程が100株を原則としているため上場会社では見られませんが、非上場会社が10株や50株を単元とすることは妨げられていません。上場を目指す場合は、申請までに100株にそろえることになります。
📄 まとめ
単元株式数を100株にするのは有価証券上場規程の要請です。会社法にこの数を求める条文はありません。
会社法が定めているのは上限だけで、188条2項と施行規則34条により、千および発行済株式の総数の200分の1が上限です。
増やすときは株主総会の特別決議、減らすときと廃止するときは取締役会の決議です。株主の議決権が減る方向かどうかで分かれます。
株式分割と同時に行い、株主が持つ単元の数が減らないようにすれば、会社法191条により株主総会の決議はいりません。上場準備ではこの組み合わせが使われます。
⚖ 本記事の根拠
- 会社法188条(単元株式数は定款で定めることができる)
- 会社法施行規則34条
- 会社法191条
- 会社法195条1項
- 会社法189条1項・2項(単元未満株式の議決権の制限と、定款で制限できない権利)、同183条2項(株式の分割は取締役会の決議)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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