宗教法人の区分経理|共通経費の配賦の考え方

宗教法人が収益事業を行うとき、収益事業とそれ以外の事業とで経理を区分することが法令で求められています。分けていなければ、収益事業の所得を計算することができません。

難しいのは、どちらの事業のためとも言い切れない費用です。建物の減価償却費、職員の人件費、水道光熱費。これらをどの基準で配るかで、所得の金額が変わります。

この記事では、区分経理の範囲と共通経費の配賦の考え方を、施行令と通達にそって整理します。

この記事でわかること

  • 区分経理が義務である根拠と範囲
  • 損益だけでなく資産と負債も分ける理由
  • 共用資産は資産ではなく費用の側で按分すること
  • 共通経費の配賦基準の選び方
  • 内部の賃借料や利息を費用にできない理由

📌 区分経理は法令が求めている

公益法人等および人格のない社団等は、収益事業から生ずる所得に関する経理と、収益事業以外の事業から生ずる所得に関する経理とを区分して行わなければなりません(法人税法施行令6条)。任意ではなく、義務として定められています。

宗教法人が駐車場の貸付けや物品の販売などの収益事業を始めたら、その日から帳簿を分ける必要があります。分けていないと、そもそも収益事業の所得が計算できませんので、申告のしようがありません。

区分の仕方を毎年変えると、所得の金額が動いてしまいます。基準を決めたら継続して用いることが、税務上も運営上も基本になります。

📌 分けるのは損益だけではない

法人税基本通達15-2-1は、施行令6条の所得に関する経理とは、単に収益および費用に関する経理だけでなく、資産および負債に関する経理を含むことに留意する、としています。収支の帳簿を2つに分ければ足りるわけではなく、貸借対照表も分ける必要があります。

ここで問題になるのが、収益事業と本来の事業の両方に使っている資産です。同通達の注は、一の資産が収益事業の用と収益事業以外の事業の用とに共用されている場合には、それぞれの事業ごとに専用されている部分が明らかな場合を除き、その資産については収益事業に属する資産としての区分経理はしないで、その償却費その他その資産について生ずる費用の額のうち収益事業に係る部分の金額を収益事業に係る費用として経理することになる、としています。

つまり、共用の建物は貸借対照表を割るのではなく、減価償却費や修繕費といった費用の側で按分する、という整理です。資産そのものを分けるのは、専用されている部分が明らかな場合に限られます。

📌 費用は直接費と共通費の2段構え

費用の区分経理の方法は、法人税基本通達15-2-5が2つに分けて示しています。

1つ目は、収益事業について直接要した費用の額または収益事業について直接生じた損失の額です。これは収益事業に係る費用または損失の額として経理します。駐車場の舗装工事費や、販売する品物の仕入代金がこれにあたります。

2つ目は、収益事業と収益事業以外の事業とに共通する費用または損失の額です。こちらは、継続的に、資産の使用割合、従業員の従事割合、資産の帳簿価額の比、収入金額の比その他その費用または損失の性質に応ずる合理的な基準により配賦し、これに基づいて経理します。

費用または損失の区分経理の考え方費用または損失直接要した費用共通する費用その事業の費用として経理合理的な基準で配賦配賦の基準は継続して用いることが求められます

費用は、直接要したものと共通するものに分けたうえで処理します。

通達が挙げている基準は例示です。大切なのは、その費用の性質に応じた基準であること、そして継続して用いることの2点です。

📌 何をどの基準で配るか

実務では、費用の種類ごとに基準をあらかじめ決めておき、その表を毎年使い回す形にすると迷いがなくなります。よく用いられる組み合わせは次のとおりです。

共通する費用の例 用いられることが多い基準
建物の減価償却費や修繕費 資産の使用割合(床面積の比など)
職員の人件費 従業員の従事割合(従事時間の比など)
水道光熱費 使用量または資産の使用割合
事務用品費や通信費 収入金額の比
損害保険料 資産の帳簿価額の比

表に当てはまらない費用が出てきたときは、その費用がなぜ発生しているかをたどって基準を選んでください。人が動いたから生じた費用なら従事割合、場所を使ったから生じた費用なら面積、という考え方です。

決めた基準と、その根拠になる数値(床面積、従事時間、収入金額など)は、毎期の記録として残してください。基準そのものより、根拠の数値が残っていないことのほうが後で困ります。

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📌 内部の賃借料や利息は費用にならない

法人税基本通達15-2-5の注は、公益法人等が収益事業以外の事業に属する金銭その他の資産を収益事業のために使用した場合においても、収益事業から収益事業以外の事業へ賃借料や支払利子等を支払うこととしてその額を収益事業に係る費用または損失として経理することはできない、としています。

同じ法人の中での資金や資産の融通に、自分で家賃や利息を付けて収益事業の費用にすることは認められません。収益事業の所得を減らす手段として使えないよう、この点は明記されています。

一方で、外部からの借入金については別の扱いがあります。法人税基本通達15-2-6は、法令の規定や主務官庁の指導等により収益事業以外の事業に係る資金の運用方法等が規制されているため、収益事業の遂行上必要な資金の全部または一部を外部からの借入金等により賄うこととしている場合には、その借入金等に係る利子の額のうち収益事業の遂行上通常必要と認められる部分の金額を、収益事業について直接要した費用の額とすることができる、としています。

📌 資産を収益事業に移すときの決まりごと

収益事業以外の事業の用に供していた固定資産を収益事業の用に供することにしたため、収益事業に属する資産として区分経理をする場合には、その収益事業の用に供することとなった時における帳簿価額によって経理します(法人税基本通達15-2-2)。

この区分経理にあたって、あらかじめその固定資産の評価換えを行い帳簿価額を増額したとしても、その増額はなかったものとされます。時価に引き直して減価償却費を大きくする、という処理はできません。

なお、収益事業を開始した日に資産と外部負債を収益事業に属するものとして区分経理し、その差額を元入金として経理したとしても、その金額は資本金等の額にも利益積立金額にも該当しません(法人税基本通達15-2-3)。帳簿の中の整理科目であって、税務上の資本や利益ではない、ということです。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。宗教法人の税務顧問と会計体制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 帳簿を2つに分ける必要がありますか

A. 1つの帳簿の中で科目や部門を分ける方法でもかまいません。求められているのは、収益事業から生ずる所得に関する経理と収益事業以外の事業から生ずる所得に関する経理を区分することです(法人税法施行令6条)。

Q. 収益事業と本来事業で共用している建物はどう扱いますか

A. 専用されている部分が明らかな場合を除き、資産としては区分経理をせず、減価償却費などの費用の額のうち収益事業に係る部分を収益事業の費用として経理します(法人税基本通達15-2-1の注)。

Q. 配賦の基準は毎年変えてもよいですか

A. 継続的に用いることが求められています(法人税基本通達15-2-5(2))。所得が有利になる年だけ基準を変えるような運用は認められません。基準を変える必要が生じたときは、その理由を記録に残してください。

Q. 本来事業の資金を収益事業で使ったとき、利息を付けられますか

A. 付けられません。法人税基本通達15-2-5の注は、収益事業から収益事業以外の事業へ賃借料や支払利子等を支払うこととして収益事業の費用に経理することはできない、としています。

Q. 本来事業で使っていた建物を収益事業に回すときの価額は

A. その収益事業の用に供することとなった時における帳簿価額です(法人税基本通達15-2-2)。あらかじめ評価換えをして帳簿価額を増額しても、その増額はなかったものとされます。

📄 まとめ

公益法人等は、収益事業から生ずる所得に関する経理と、収益事業以外の事業から生ずる所得に関する経理とを区分して行わなければなりません(法人税法施行令6条)。

所得に関する経理には、収益と費用だけでなく資産と負債に関する経理も含まれます(法人税基本通達15-2-1)。ただし共用資産は、資産としては分けず、費用の側で按分します。

費用は、直接要したものと共通するものに分けます。共通するものは、資産の使用割合、従業員の従事割合、資産の帳簿価額の比、収入金額の比などの合理的な基準により、継続的に配賦します(法人税基本通達15-2-5)。

同じ法人の中での資金や資産の融通に賃借料や利息を付けて収益事業の費用にすることはできません。外部からの借入金の利子には、法人税基本通達15-2-6の取扱いがあります。

⚖ 本記事の根拠法令

記載内容の根拠

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

このテーマの全体像は宗教法人の税務|収益事業の判定と区分経理の実務にまとめています。

📚 参考(公的な一次情報)

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