事業譲渡と会社分割はどちらを選ぶか|労働契約と消費税

事業譲渡と会社分割の違いは、労働契約の扱いにいちばん出ます。

事業譲渡では、民法第625条第1項が、使用者は労働者の承諾を得なければその権利を第三者に譲り渡すことができない、としています。一人ずつ同意が要ります。

会社分割では、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律の第3条により、分割契約等に定めがあれば効力発生日に当然に承継されます。かわりに、通知と異議申出の手続が法律で決まっています。

この記事でわかること

  • 労働契約の承継のしかたの違い
  • 個別の同意が要るかどうか
  • 労働契約承継法の通知期限日
  • 少なくとも13日間という期間
  • 異議を申し出たときの効果
  • 消費税の扱い

📌 結論 同意が要るかどうか

図1 労働契約の承継のしかたが違う会社分割事業譲渡根拠会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律民法第625条第1項承継のしかた分割契約等に定めがあれば、効力発生日に当然に承継(第3条)使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない個別の同意不要必要通知通知期限日までに書面で通知(第2条第1項)法律上の定めは確認できず異議申出主として従事するが承継の定めがない労働者は異議を申し出られる(第4条第1項)

会社分割では個別の同意が要りません。そのかわり、通知と異議申出の手続が法律で決まっています。

民法第625条第1項の見出しは、使用者の権利の譲渡の制限等です。使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない、と定めています。

事業譲渡では、この規定により従業員一人ずつの同意が必要になります。同意しない従業員は移りません。

会社分割では、労働契約承継法の第3条が、承継される事業に主として従事する労働者について、分割契約等に定めがあれば当然に承継されるとしています。個別の同意は不要です。

🧭 会社分割には期限がある

図2 労働契約承継法の期限論点内容通知期限日(株主総会の承認を要する場合)当該株主総会の日の二週間前の日の前日(第2条第3項)通知期限日(承認を要しない場合等)吸収分割契約の締結日または新設分割計画の作成日から二週間を経過する日異議申出の期間通知がされた日から異議申出期限日までの間。通知日と異議申出期限日との間に少なくとも十三日間を置く(第4条第1項・第2項)異議を申し出た場合主として従事する労働者が異議を申し出たときは、効力発生日に承継会社等に承継される(第4条第4項)それ以外の労働者承継の定めがある労働者が異議を申し出たときは、承継会社等に承継されないものとする(第5条第1項・第3項)

少なくとも13日間です。株主総会の2週間前の日の前日という起点とあわせて、逆算するとスケジュールが決まります。

労働契約承継法第2条第1項が、通知期限日までに書面で通知することを求めています。対象は、第1号が承継事業に主として従事する労働者、第2号がそれ以外で分割契約等に承継の定めがある労働者です。

第2条第3項が通知期限日を定めています。株主総会の承認を要する場合は当該株主総会の日の二週間前の日の前日、要しない場合等は吸収分割契約の締結日または新設分割計画の作成日から二週間を経過する日です。

第4条第1項が異議申出です。主として従事するが承継の定めがない労働者は、通知がされた日から異議申出期限日までの間に書面で異議を申し出られます。第2項が、通知日と異議申出期限日との間に少なくとも十三日間を置くことを求めています。

第4条第4項により、異議を申し出たときは効力発生日に承継会社等に承継されます。逆に第5条は、承継の定めがあるがその事業に主として従事していない労働者が異議を申し出たときに、承継会社等に承継されないものとする、としています。

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従業員の移し方、消費税の負担、適格要件、そしてスケジュール。この4つを並べて比較しないと結論が出ません。会社分割を選ぶ場合は労働契約承継法の逆算スケジュールを作り、事業譲渡を選ぶ場合は消費税の資金繰りへの影響を試算します。労務の手続は社会保険労務士や弁護士と連携して進めます。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。

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🧾 消費税の負担

図3 消費税の扱い論点内容資産の譲渡等の定義事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(消費税法第2条第1項第8号)課税の対象国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する(第4条第1項)事業譲渡個別の資産の譲渡として、上記に当たる会社分割包括承継として課税対象外とされていますが、その直接の根拠となる条文または通達は今回確認できませんでした

事業譲渡では、譲渡する棚卸資産や固定資産に消費税がかかります。資金繰りに効きますので、譲渡対価の設計時に織り込んでください。

消費税法第2条第1項第8号が資産の譲渡等を定義しています。事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供です。第4条第1項が、国内において事業者が行つた資産の譲渡等には消費税を課する、としています。

事業譲渡は個別の資産の譲渡ですから、譲渡する棚卸資産や固定資産に消費税がかかります。土地は非課税ですが、建物や機械にはかかります。

会社分割は包括承継として課税対象外とされていますが、その直接の根拠となる条文または通達を今回は確認できませんでした。この点は個別に確認してください。

消費税は最終的には仕入税額控除で調整されますが、支払の時点では資金が出ます。譲渡対価が大きいほど、資金繰りへの影響が大きくなります。

📅 許認可はどうなるか

図4 選ぶ順番従業員を確実に移したいかを確認する(同意が取れるかどうか)移したくない負債や契約があるかを確認する許認可の承継が必要かを確認する消費税の負担を試算する組織再編税制の適格要件を満たすかを確認する会社分割なら労働契約承継法のスケジュールを引く

従業員が多いなら会社分割、切り分けたい負債があるなら事業譲渡。ただし消費税の負担で結論が変わることがあります。

許認可の承継については、公的資料での記載を今回確認できませんでした。中小企業庁の中小M&Aガイドラインおよび事業承継ガイドラインにも記載が見当たりません。

実務では、許認可の根拠法令ごとに承継の可否が異なります。事業に必要な許認可を先に洗い出し、それぞれの所管に確認してください。

組織再編税制の適格要件は欠損金の繰越控除とはとあわせてご確認ください。会社分割は組織再編税制の対象ですが、事業譲渡は対象外です。

❓ よくある質問

Q. 事業譲渡で従業員の同意は要りますか。

A. 要ります。民法第625条第1項が、労働者の承諾を得なければ譲り渡すことができないとしています。

Q. 会社分割では同意が不要ですか。

A. 主として従事する労働者は、分割契約等に定めがあれば当然に承継されます(労働契約承継法第3条)。

Q. 通知はいつまでですか。

A. 株主総会の承認を要する場合は、当該株主総会の日の二週間前の日の前日までです。

Q. 異議申出の期間は。

A. 通知日と異議申出期限日との間に少なくとも十三日間を置きます(第4条第2項)。

Q. 異議を申し出るとどうなりますか。

A. 主として従事する労働者が異議を申し出たときは、効力発生日に承継会社等に承継されます(第4条第4項)。

Q. 事業譲渡に消費税はかかりますか。

A. 個別の資産の譲渡として、資産の譲渡等に当たります(消費税法第2条第1項第8号、第4条第1項)。

Q. 会社分割は課税対象外ですか。

A. 包括承継として課税対象外とされていますが、直接の根拠となる条文または通達を今回確認できていません。

Q. 許認可は引き継げますか。

A. 公的資料での記載を確認できませんでした。根拠法令ごとに所管へ確認してください。

📄 まとめ

事業譲渡は個別の同意が要り、会社分割は当然に承継されます。

会社分割では通知と異議申出の期限が法律で決まっています。少なくとも13日間です。

事業譲渡には消費税がかかります。譲渡対価が大きいほど資金繰りに効きます。

従業員の数、切り分けたい負債、消費税の負担。この3つを並べてから手法を決めてください。

📚 参考(公的な一次情報)

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