子会社株式を買い増した。あるいは少し売った。非支配株主持分をどの時点の比率で計算すればよいのか。
まず確認するのは、支配が続いているかどうかです。続いているなら、差額は損益ではなく資本剰余金になります。企業会計基準第22号の第28項から第30項です。
比率については、追加取得は追加取得日における非支配株主持分の額、一部売却は売却した株式に対応する部分として計算します。支配獲得日の比率ではありません。
- 支配継続なら差額は資本剰余金であること
- 追加取得は追加取得日の非支配株主持分の額で計算すること
- 一部売却の法人税等は資本剰余金から控除すること
- のれんの未償却額は減額しないこと
- 資本剰余金が負になったときの処理
- 支配を喪失したら別の道筋になること
📌 結論 まず支配が続くかを見る
支配が続いているかどうかが最初の分岐です。第29項の資本剰余金の処理は、支配関係が継続している場合に限ると条文に明記されています。
第28項は、子会社株式を追加取得した場合に、追加取得した株式に対応する持分を非支配株主持分から減額し、追加取得により増加した親会社の持分を追加投資額と相殺消去し、その差額を資本剰余金とするとしています。
第29項は、子会社株式を一部売却した場合について、親会社と子会社の支配関係が継続している場合に限ると明記したうえで、売却持分と売却価額との差額を資本剰余金とするとしています。
この限定を見落とすと、支配を喪失したケースにまで資本剰余金の処理を当てはめてしまいます。第29項には、被投資会社が子会社及び関連会社に該当しなくなった場合の定めがなお書きとして続いています。
📐 どの時点の比率か
追加取得は取得日の非支配株主持分の額、一部売却は売却した株式に対応する部分。どちらも支配獲得日の比率ではありません。
注8は、追加取得持分及び減額する非支配株主持分は追加取得日における非支配株主持分の額により計算する、としています。
注9は、売却持分及び増額する非支配株主持分について、親会社の持分のうち売却した株式に対応する部分として計算する、としています。
支配獲得日の数字を使い回すと、その間の利益の積み上がりが反映されません。取得日、売却日それぞれの時点で計算してください。
追加取得や一部売却の仕訳、資本剰余金の計算、法人税等の取扱い、のれんの扱い、そして支配喪失時の持分法への移行まで通してお受けします。グループ再編を予定している会社では、実行前に連結上の影響を試算するところからご一緒します。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。
初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら
🔍 見落としやすい定め
この5つは論点として必ず出ます。とくに法人税等を損益に入れてしまう誤りと、のれんを按分減額してしまう誤りが多い箇所です。
一部売却に関連する法人税等は、注9の(2)により資本剰余金から控除します。損益に計上する処理ではありません。子会社への投資に係る税効果の調整を含みます。
のれんの未償却額は、移管指針第4号の第44項により、子会社株式を一部売却した場合等において減額しません。売った持分に応じてのれんを按分して落とす処理ではないということです。
そして第30-2項です。第28項から第30項の処理の結果として資本剰余金が負の値となる場合には、連結会計年度末において資本剰余金を零とし、当該負の値を利益剰余金から減額します。都度ではなく年度末という点に注意してください。
🚪 支配を喪失したら
支配を喪失したら資本剰余金の話ではなくなります。ここで第29項の前段を使うのは誤りです。
支配を喪失して関連会社になる場合は、移管指針第4号の第45項に従って持分法による投資評価額に修正します。個別で計上した子会社株式売却損益の修正という形をとります。
子会社にも関連会社にも該当しなくなった場合は、第46項です。残存する投資は個別貸借対照表上の帳簿価額で評価します。
ここまで来ると資本剰余金の話ではありません。第29項の前段を使ってしまう誤りが多い場面です。
❓ よくある質問
A. 資本剰余金です(第28項)。損益ではありません。
A. 支配関係が継続している場合に限り、資本剰余金です(第29項)。
A. 追加取得は追加取得日における非支配株主持分の額、一部売却は売却した株式に対応する部分として計算します。
A. 資本剰余金から控除します(注9(2))。
A. 落としません。移管指針第4号 第44項が減額しないとしています。
A. 連結会計年度末において資本剰余金を零とし、負の値を利益剰余金から減額します(第30-2項)。
A. 関連会社になる場合は持分法による投資評価額に修正し、いずれにも該当しなくなる場合は個別の帳簿価額で評価します。
A. 含めません。売却時の費用として処理します(移管指針第4号 第42項)。
📄 まとめ
最初の分岐は支配が続いているかどうかです。続いていれば差額は資本剰余金、続かなければ別の道筋になります。
比率は取得日、売却日それぞれの時点で計算します。支配獲得日の数字ではありません。
法人税等は資本剰余金から控除し、のれんは減額しません。この2つが実務でいちばん間違えられています。
グループ再編を予定しているなら、実行してから処理を考えるのではなく、実行前に連結上の影響を試算してください。資本剰余金が負になる可能性があるなら、なおさらです。
📚 参考(公的な一次情報)
- 企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準委員会) 第26項から第30-2項、注8、注9
- 移管指針第4号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(企業会計基準委員会) 第42項、第44項、第45項、第46項
あわせて読みたい