受託会社の保証報告書はIPOで要るか|実務指針3402とタイプ1・タイプ2

給与計算や決済処理を外部に委託している。上場準備で、受託会社の内部統制はどこまで確かめればよいのか。

財務報告に係る内部統制の実施基準は、外部に委託した業務の内部統制についても評価範囲に含めるとしています。委託しているから対象外、にはなりません。

確かめる手段の1つが、受託会社が入手する保証報告書です。現行の指針は保証業務実務指針3402です。かつての監査・保証実務委員会実務指針第86号は2022年10月13日に廃止されています。

この記事でわかること

  • 委託業務も評価範囲に含まれること
  • 現行の指針が保証業務実務指針3402であること
  • 実務指針第86号が廃止されていること
  • タイプ1とタイプ2の違い
  • 対象期間と範囲を確かめる必要があること
  • 往査か報告書の利用かを選ぶこと

📌 結論 委託しても評価範囲から外れない

図1 タイプ1とタイプ2の違いタイプ1の報告書タイプ2の報告書対象受託会社のシステムに関する記述書と内部統制のデザイン記述書と内部統制のデザイン及び運用状況時点・期間基準日現在特定の期間にわたる意見の範囲記述の適正性とデザインの適切性記述の適正性、デザインの適切性、運用状況の有効性保証業務実務指針3402 第8項(14)同 第8項(15)

運用状況の有効性まで意見をもらえるのがタイプ2です。委託元が内部統制の評価に使えるのは、基本的にタイプ2になります。

タイプ1の報告書は、受託会社のシステムに関する記述書と内部統制のデザインを対象とし、基準日現在の記述の適正性とデザインの適切性について意見が表明されます(保証業務実務指針3402 第8項(14))。

タイプ2の報告書は、そこに運用状況が加わります。特定の期間にわたる記述の適正性、デザインの適切性、そして運用状況の有効性について意見が表明されます(同 第8項(15))。

委託元が内部統制の評価に使うことを考えると、基本的に必要になるのはタイプ2です。タイプ1は運用状況までカバーしていません。

🧭 委託元の考える順番

図2 委託元の考える順番委託している業務が財務報告に影響するかを確かめるその業務に係る内部統制を評価範囲に含めるかを決める受託会社の内部統制をどう確かめるかを決める受託会社に往査するか、保証報告書を利用するかを選ぶ保証報告書を使うなら、対象期間と範囲が自社の決算期に合うかを確かめる

報告書をもらえば終わり、ではありません。対象期間と範囲が自社に合っているかが最後の関門です。

まず、委託している業務が財務報告に影響するかを確かめます。給与計算、売上の請求と回収、決済、データセンターの運用など、影響が及ぶ業務は少なくありません。

次に、その業務に係る内部統制を評価範囲に含めるかを決めます。実施基準は、外部に委託した業務の内部統制についても評価範囲に含めるとしています。

そのうえで、受託会社に往査するのか、保証報告書を利用するのかを選びます。委託先が多い場合や、共通の基盤サービスを使っている場合は、報告書の利用が現実的です。

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⚖️ 手段の選び方

図3 どちらの手段を選ぶか手段向いている場面留意受託会社への往査委託先が少ない、または受け入れてくれる場相手の協力が要ります。契約に定めがないと断られます保証報告書の利用委託先が多い、共通の基盤サービスを使っている場合対象期間と範囲、そして相補的な統制の記載を確かめます自社での代替手続委託業務が限定的な場合何をもって有効と判断したのかを説明できるようにします

どれを選んでも、なぜその方法で足りると判断したのかを記録に残すことになります。

往査は確実ですが、相手の協力が要ります。委託契約に監査への協力の定めがないと、断られることがあります。契約の段階で入れておくのが本来です。

保証報告書を利用する場合は、対象期間が自社の決算期をどこまでカバーしているかを確かめてください。期ずれがあると、残りの期間について別の手続が要ります。

そして相補的な統制の記載です。受託会社の内部統制が有効に機能する前提として、委託元の側で行うべき統制が示されていることがあります。そこを読み落とすと、評価が成り立ちません。

🚫 まちがえやすいところ

図4 まちがえやすいところよくある誤解実際実務指針第86号が現行の指針である第86号は2022年10月13日に廃止されています。現行は保証業務実務指針3402です保証報告書があれば評価は不要になる対象期間、範囲、相補的な統制を確かめる作業が残りますタイプ1で運用状況まで確かめられるタイプ1は基準日現在のデザインまでです委託業務は評価範囲の外である財務報告に係る内部統制の実施基準は、外部に委託した業務の内部統制も評価範囲に含めるとしています

とくに1つめは、古い解説記事がそのまま残っている影響で誤りが広がっています。

いちばん多いのは、監査・保証実務委員会実務指針第86号を現行の指針として引用してしまうことです。第86号は2022年10月13日に廃止されており、現行は保証業務実務指針3402です。

次に多いのが、保証報告書をもらえば評価が終わると考えることです。対象期間、範囲、相補的な統制を確かめる作業が必ず残ります。

評価範囲そのものの決め方はIPO審査の社内規程とはとあわせて整理しておくと、社内の説明がしやすくなります。

❓ よくある質問

Q. 委託業務は評価範囲に入りますか。

A. 入ります。実施基準は、外部に委託した業務の内部統制についても評価範囲に含めるとしています。

Q. 現行の指針は何ですか。

A. 保証業務実務指針3402です。実務指針第86号は2022年10月13日に廃止されています。

Q. タイプ1とタイプ2はどう違いますか。

A. タイプ1は基準日現在の記述の適正性とデザインの適切性まで、タイプ2は特定の期間にわたる運用状況の有効性も対象です。

Q. どちらが必要ですか。

A. 委託元が内部統制の評価に使うなら、基本的にタイプ2です。

Q. 対象期間が決算期と合わない場合は。

A. カバーされていない期間について、別の手続を検討することになります。

Q. 相補的な統制とは何ですか。

A. 受託会社の内部統制が有効に機能する前提として、委託元の側で行うことが想定されている統制です。報告書の記載を確かめてください。

Q. 往査は必ず必要ですか。

A. 必ずではありません。保証報告書の利用や代替手続という選択肢があります。

Q. 契約で気をつけることは。

A. 監査への協力や、保証報告書の提供について、委託契約に定めておくことです。

📄 まとめ

外部に委託した業務の内部統制も、評価範囲に含めます。委託しているから対象外にはなりません。

受託会社の保証報告書は現行では保証業務実務指針3402にもとづくものです。実務指針第86号は廃止されています。

タイプ2でなければ運用状況の有効性はカバーされません。対象期間と範囲、相補的な統制の記載を必ず確かめてください。

いま委託先に報告書があるかを確かめるのか、委託契約から見直すのか。報告書が出ない委託先を抱えているなら、契約の見直しが先になります。

📚 参考(公的な一次情報)

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