グループ通算制度で注記は何が変わるか|実務対応報告第42号の3点

グループ通算制度を採っている会社の税効果の注記は、何が普通と違うのか。

押さえどころは3つです。適用している旨を注記すること、税金を区分せず全体で注記すること、そして連帯納付義務は偶発債務として注記しないこと。実務対応報告第42号の第28項から第30項です。

会計処理そのものは、繰延税金資産の回収可能性を含めて、原則として企業会計基準適用指針第26号に従います。第42号は通算制度に特有の部分を上乗せしているだけです。

この記事でわかること

  • 適用している旨を注記すること(第28項)
  • 対象税金と対象外の税金を区分せず注記すること(第29項)
  • 連帯納付義務は偶発債務として注記しないこと(第30項)
  • 連結では通算グループ全体で相殺表示すること(第27項)
  • 回収可能性は原則として適用指針第26号によること(第10項)
  • 通算税効果額の授受を行わない場合は対象外であること(第3項)

📌 結論 注記は3点

図1 注記まわりで押さえる3つ論点結論適用している旨本実務対応報告に従って会計処理を行っている旨を注記する第28項税効果の注記の単位グループ通算制度の対象とされている税金と対象外の税金を区分せず、全体で注記する第29項連帯納付義務偶発債務としての注記は要しない第30項

この3つを取り違えている資料をよく見ます。とくに区分するかどうかと、連帯納付義務の扱いです。

第28項は、本実務対応報告に従って会計処理を行っている場合に、その旨を注記するとしています。

第29項は、税効果会計基準等が定める注記について、グループ通算制度の対象とされている税金と対象とされていない税金を区分せず、これらの税金全体で注記するとしています。ここを区分して書いてしまう例があります。

第30項は、通算会社が負っている連帯納付義務について、偶発債務としての注記を要しないとしています。注記が必要だと誤解している資料が出回っていますので、確かめてください。

🧭 考える順番

図2 考える順番通算税効果額の授受を行うかを確認する(行わない場合は本実務対応報告の対象外)個別財務諸表で通算税効果額をどう計上するかを決める(第7項)繰延税金資産の回収可能性を判断する(原則は適用指針第26号)繰延税金資産と繰延税金負債の表示を決める(第26項、第27項)注記を書く(第28項から第30項)

出発点は、通算税効果額の授受を行うかどうかです。ここが違うと、その先の話がかみ合いません。

最初に確認するのは、通算税効果額の授受を行うかどうかです。第3項により、本実務対応報告は授受を行うことを前提としています。授受を行わない場合の取扱いは定めていません。

授受を行う場合、個別財務諸表では、通算税効果額を当事業年度の課税対象利益を基礎として課される税金に準ずるものとして取り扱います(第7項)。

そのうえで回収可能性の判断に進み、表示を決め、最後に注記を書く、という順番になります。

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📊 表示のルール

図3 表示のルール場面扱い通算会社の繰延税金資産・負債の表示税効果会計基準等の定めに従う第26項連結貸借対照表通算グループ全体の繰延税金資産の合計と繰延税金負債の合計を相殺して、投資その他の資産または固定負債に表示する第27項通算税効果額を損益に計上する場合法人税などを示す科目に含めて個別損益計算書に表示する第25項通算税効果額に係る債権・債務未収入金や未払金などに含めて個別貸借対照表に表示する第25項

連結の相殺表示は通算グループ全体で行う点が特徴です。会社ごとに相殺するのではありません。

連結貸借対照表では、通算グループ全体の繰延税金資産の合計と繰延税金負債の合計を相殺して表示します(第27項)。会社ごとに相殺してから合算するのではありません。

個別では、通算税効果額を損益に計上する場合は法人税などを示す科目に含め、通算税効果額に係る債権や債務は未収入金や未払金などに含めて表示します(第25項)。

集計の仕組みとしては、通算会社ごとの数値を持ったうえで、グループ全体で相殺する段階を分けておくことになります。

🔍 回収可能性

図4 回収可能性はどこを見るか論点考え方原則本実務対応報告に定めのあるものを除き、企業会計基準適用指針第26号 第6項から第34項の定めに従います(第10項)個別財務諸表第10項から第13項に定めがあります。企業の分類の判定は第13項です連結財務諸表第14項から第17項に定めがあります。企業の分類の判定は第17項です用語スケジューリング不能な一時差異などの用語は、適用指針第26号と同様とされています(第4項)

第42号が独自の回収可能性の基準を作ったわけではありません。適用指針第26号が原則で、通算制度に特有の部分だけを上乗せする構造です。

第10項は、本実務対応報告に定めのあるものを除き、個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断について、企業会計基準適用指針第26号の第6項から第34項の定めに従うとしています。

つまり、企業の分類の考え方そのものは適用指針第26号のままです。第42号は通算制度に特有の論点を上乗せしています。個別は第10項から第13項、連結は第14項から第17項です。

分類の判定そのものは繰延税金資産の分類は過去3年か過去5年かで扱っていますので、あわせてご覧ください。

❓ よくある質問

Q. 何を注記しますか。

A. 本実務対応報告に従って会計処理を行っている旨です(第28項)。

Q. 対象税金と対象外の税金は区分しますか。

A. 区分せず、これらの税金全体で注記します(第29項)。

Q. 連帯納付義務は注記しますか。

A. 偶発債務としての注記は要しないとされています(第30項)。

Q. 連結の表示はどうなりますか。

A. 通算グループ全体の繰延税金資産の合計と繰延税金負債の合計を相殺して表示します(第27項)。

Q. 回収可能性の判断はどの基準ですか。

A. 本実務対応報告に定めのあるものを除き、企業会計基準適用指針第26号の第6項から第34項に従います(第10項)。

Q. 通算税効果額の授受を行わない場合は。

A. 本実務対応報告は授受を行うことを前提としており、行わない場合の取扱いは定めていません(第3項)。

Q. 通算税効果額は損益計算書のどこに出ますか。

A. 法人税などを示す科目に含めて個別損益計算書に表示します(第25項)。

Q. 上場準備中に何を整えますか。

A. 通算会社ごとの数値を持ち、グループ全体で相殺する段階を分けた集計の仕組みです。決算の直前には作れません。

📄 まとめ

グループ通算制度の注記は、適用している旨、区分せず全体で注記すること、連帯納付義務は注記しないことの3点です。

連結の表示は通算グループ全体での相殺です。会社ごとの相殺ではありません。

回収可能性は原則として適用指針第26号に従います。第42号が独自の基準を作ったわけではありません。

いま整えるべきは、集計の仕組みか、監査法人との論点整理か。どちらも必要ですが、決算まで時間がないなら集計の仕組みから手をつけてください。

📚 参考(公的な一次情報)

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