出向役員の給与負担金は損金になる?出向先・出向元それぞれの処理

グループ会社に社員を出向させたとき、あるいは親会社から役員を受け入れたとき、お金の流れは「出向先が出向元に負担金を払い、出向元が本人に給与を払う」という形になることが多いはずです。この負担金を、出向先はどの科目で、どこまで損金にできるのか。出向元が上乗せで払っている手当は損金になるのか。

出向の税務は、契約書に何が書いてあるかで結論が変わる分野です。しかも、本人が出向先で役員になっているかどうかで扱いが大きく分かれます。法人税基本通達は、この場面の取扱いを第9章第2節第9款にまとめて置いています。

この記事では、出向先と出向元それぞれの処理を、通達の並びに沿って整理します。あわせて、実務でつまずきやすい消費税の扱いにも触れます。役員給与の全体像は役員給与の税務 完全ガイドにまとめています。

🧭 出向・転籍・労働者派遣は税務上どう違うか

出向は、出向元との関係を残したまま、出向先の指揮命令のもとで働く形態です。法人税基本通達9-2-45も、出向者に対する給与を出向元法人が支給することとしている場合を前提に書かれています。これに対し労働者派遣は、消費税法基本通達5-5-11が、自己の雇用する労働者を、その雇用関係の下に、かつ他の者の指揮命令を受けて、その他の者のために労働に従事させるもので、その他の者と労働者との間に雇用関係のない場合と定義しています。雇用関係がどこにあるかが、両者を分ける軸です。

この違いは消費税の扱いに直結します。消費税法基本通達5-5-11は、労働者の派遣を行った事業者が収受する派遣料等の金銭は資産の譲渡等の対価に該当する、と定めています。一方で出向の給与負担金は、後述するとおり給与として取り扱われます。同じように人を出しているように見えても、課税か不課税かが変わります。

形態 雇用関係 受け入れ側が払う金銭の性格
出向 出向元との関係が続いたまま、出向先の指揮命令のもとで働く 給与負担金。出向先におけるその出向者に対する給与として取り扱われる(法人税基本通達9-2-45)
転籍 雇用関係が転籍先に移る 本記事では扱いません。法人税基本通達は第9章第2節第9款で転籍と出向をまとめて扱っています
労働者派遣 派遣を受ける側と労働者のあいだに雇用関係がない 派遣料等の金銭は資産の譲渡等の対価に該当する(消費税法基本通達5-5-11)
出向におけるお金と指揮命令の流れ 出向元法人 本人に給与を支給する 出向先法人 指揮命令を行う 給与負担金の支出 出向先の給与として扱う 出向者 両社と関係が続く 給与の支払 指揮命令

給与を支払うのは出向元、指揮命令をするのは出向先。この二重構造が、出向の税務を複雑にしています。

💴 出向先が払う給与負担金は、出向先の給与になる

出発点になるのが法人税基本通達9-2-45です。出向者に対する給与を出向元法人が支給することとしているため、出向先法人が自己の負担すべき給与(退職給与を除きます)に相当する金額を出向元法人に支出したときは、その給与負担金の額は、出向先法人におけるその出向者に対する給与として取り扱われます。

ここで大事なのは、出向先の帳簿上の科目名ではなく、支出の実質で判断されるという点です。同通達の注1は、出向先法人が実質的に給与負担金の性質を有する金額を経営指導料等の名義で支出する場合にも、この取扱いの適用がある、と明記しています。名義を変えても性格は変わりません。

グループ会社間で、実質は出向者の人件費なのに「経営指導料」「業務委託料」として請求している例をよく見ます。名義を変えると消費税の課税区分を誤りやすく、仕入税額控除の否認につながります。契約書と請求書の記載を、実際の中身に合わせておいてください。

👔 出向者が出向先で役員になっている場合

出向者が出向先で取締役などに就任している場合は、話が一段複雑になります。法人税基本通達9-2-46は、次のいずれにも該当するときは、出向先法人が支出する給与負担金の支出を、出向先法人における当該役員に対する給与の支給として、法人税法第34条の規定が適用される、としています。

(1) 当該役員に係る給与負担金の額につき当該役員に対する給与として出向先法人の株主総会、社員総会又はこれらに準ずるものの決議がされていること。(2) 出向契約等において当該出向者に係る出向期間及び給与負担金の額があらかじめ定められていること。(法人税基本通達9-2-46)

2つの要件は「いずれにも該当するとき」ですから、片方だけでは足りません。出向契約書に期間と金額を書いていても、出向先の株主総会等で役員給与としての決議をしていなければ、この取扱いは受けられないことになります。

出向者が出向先で役員になっているときの2要件(9-2-46) 出向者が出向先で役員になっている 要件1 出向先での決議 給与負担金の額について、その役員 に対する給与として決議している 要件2 出向契約等での事前の定め 出向期間と給与負担金の額が あらかじめ定められている いずれにも該当すれば法人税法第34条を適用

2つは並列の要件です。片方だけでは9-2-46本文の取扱いを受けられません。

第34条が適用されるということは、出向先での役員給与としての形式を満たす必要があるということでもあります。同通達の注1は、この取扱いの適用を受ける給与負担金についての事前確定届出給与の届出は、出向先法人がその納税地の所轄税務署長に、出向契約等に基づき支出する給与負担金に係る定めの内容について行うこととなる、としています。届出をするのは出向元ではなく出向先です。届出の期限については事前確定届出給与の届出期限はいつ?1日でも遅れたらどうなるかで整理しています。

もうひとつ、注2に注意してください。出向先法人が給与負担金として支出した金額が、出向元法人がその出向者に支給する給与の額を超える場合、その超える部分の金額については、出向先法人にとって給与負担金としての性格はないとされています。本人が受け取る額を超えて負担金を払っていれば、その超過部分は別の性格の支出として整理し直すことになります。

場面 出向先の取扱い
出向者が出向先で使用人のとき 給与負担金の額は出向先におけるその出向者に対する給与として取り扱われる(9-2-45)
出向者が出向先で役員のとき 9-2-46の2要件を満たせば、給与負担金の支出が役員に対する給与の支給として法人税法第34条の適用を受ける
経営指導料等の名義で支出したとき 実質的に給与負担金の性質を有する金額であれば同じ取扱いになる(9-2-45注1)
本人への支給額を超えて負担したとき その超える部分には出向先にとって給与負担金としての性格はない(9-2-46注2)

実務では、出向者が出向先の役員になっているのに、出向先での決議を取らないまま負担金だけを払い続けている例が少なくありません。グループ内の人事異動として処理してしまい、出向先の株主総会等での手続が抜けるのです。要件1が欠けたまま期が進むと、後から決議を取り直しても、すでに支出した分の説明が難しくなります。出向者が出向先で役員に就任するときは、就任の決議とあわせて給与負担金の額の決議まで一続きで行っておくのが安全です。

🏢 出向元が上乗せで払う分は較差補塡になるか

出向先の給与水準が出向元より低いために、出向元が差額を本人に払い続けることがあります。この取扱いを定めているのが法人税基本通達9-2-47です。

出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補塡するため出向者に対して支給した給与の額(出向先法人を経て支給した金額を含む。)は、当該出向元法人の損金の額に算入する。(法人税基本通達9-2-47)

同通達の注は、次の2つをいずれも較差を補塡するために支給したものとする、としています。

支給の場面 通達が較差補塡とするもの
出向先が賞与を出せないとき 出向先法人が経営不振等で出向者に賞与を支給することができないため、出向元法人がその出向者に対して支給する賞与の額
出向先が海外にあるとき 出向先法人が海外にあるため出向元法人が支給する、いわゆる留守宅手当の額

注意したいのは、この通達が損金算入を認めているのは較差を補塡するための支給だ、という点です。出向元が負担する理由を説明できないまま支給を続けていると、実質的に出向先が負担すべき費用を肩代わりしているとみられ、寄附金として整理される余地が生まれます。給与規程と出向契約で、どちらが何をいくら負担するのかを対応づけておくことが要になります。

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。

初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら

🧾 退職給与の負担金は3つの通達で整理する

退職給与は、9-2-45の給与負担金の対象から外れています。代わりに、9-2-48から9-2-50までが場面ごとの取扱いを定めています。

退職給与の負担金をめぐる3つの通達 9-2-48 出向期間中に定期的に負担する あらかじめ定めた負担区分にもとづき合理的に計算した額を定期的に支出する場合 9-2-49 出向者が出向元を退職したときに負担する 出向元が支給する退職給与のうち出向期間に係る部分を出向先が支出した場合 9-2-50 出向先が負担しない 負担しないことにつき相当な理由があるときは、負担しないことを認める

出向先が負担する場合も、負担しない場合も、通達に受け皿が用意されています。

通達 定めの内容
9-2-48 出向元が支給すべき退職給与の額に充てるため、あらかじめ定めた負担区分にもとづき、出向期間に対応する退職給与の額として合理的に計算された金額を定期的に出向元に支出している場合、その支出する金額は、たとえ出向者が出向先において役員となっているときであっても、その支出をする日の属する事業年度の損金の額に算入する
9-2-49 出向者が出向元を退職した場合に、出向先が出向元の支給する退職給与のうち出向期間に係る部分の金額を出向元に支出したときは、たとえ出向者が出向先で引き続き役員または使用人として勤務するときであっても、その支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入する
9-2-50 出向先が出向期間に係る退職給与の額の全部または一部を負担しない場合でも、負担しないことにつき相当な理由があるときは、これを認める

9-2-48と9-2-49には、いずれも「たとえ出向先において役員となっているときであっても」という文言が置かれています。在任中の報酬については9-2-46で第34条の枠がかかるのに対し、退職給与の負担金については、支出した日の属する事業年度で損金になるという形で整理されています。両者を混同しないでください。

また、出向者が出向先で役員に就任している場合でも、退職給与の負担金については9-2-48が明示的に損金算入を認めています。役員給与の3類型の枠組みと、退職給与の負担金の枠組みは、別々に動くと理解しておくと迷いません。負担区分をあらかじめ定めておくこと、そして計算方法が合理的であることが、この通達を使う前提になります。

🗂 出向契約書に書いておきたいこと

ここまで見てきたとおり、出向の税務は契約の内容に依存します。出向を始めるときに、次の項目を契約書に落としておくと、後の説明が楽になります。

項目 書いておく理由
出向期間 出向者が役員になる場合の9-2-46の要件2に直結する
給与負担金の額と支払方法 同じく要件2。金額があらかじめ定まっていることが前提になる
出向元と出向先の負担区分 較差補塡の説明と、退職給与の負担区分(9-2-48)の前提になる
退職給与の取扱い 出向期間に対応する部分を誰がいつ負担するのかを明記する
出向先での役職と職務 役員就任の有無で適用される通達が変わるため

🧮 消費税は課税か不課税か

消費税法基本通達5-5-10は、出向先事業者が自己の負担すべき給与に相当する金額を出向元事業者に支出したときは、その給与負担金の額を、出向先事業者におけるその出向者に対する給与として取り扱う、と定めています。給与として扱われる以上、課税仕入れにはなりません。法人税と同じく、注で、実質的に給与負担金の性質を有する金額を経営指導料等の名義で支出する場合にも適用するとされています。

一方、5-5-11は労働者の派遣を行った事業者が収受する派遣料等の金銭は資産の譲渡等の対価に該当するとしています。人を出す契約が出向なのか派遣なのかで、消費税の結論が反対になります。

グループ会社間の人件費のやりとりを、請求書に消費税を上乗せして処理しているケースがあります。実態が出向であれば給与負担金として不課税であり、仕入税額控除は認められません。法人税の調査で同時に指摘されやすい論点です。

法人税務の顧問をお探しですか?

月次の記帳チェックから決算・申告、税務調査への備えまで、公認会計士・税理士が一貫して対応します。今の処理が正しいかどうかの確認だけでも承ります。

税務顧問サービスを見るお問い合わせ料金の目安を見る

❓ よくある質問

給与負担金は出向先でどの科目に計上すればよいですか

法人税基本通達9-2-45は、給与負担金の額を出向先におけるその出向者に対する給与として取り扱う、としています。科目名そのものを定めた規定ではありませんが、給与として扱われる性格に合わせた科目で処理し、消費税の課税区分を不課税にしておくのが整合的です。

出向先で役員になった人の給与負担金を、期の途中で増額できますか

9-2-46の要件を満たす場合、その支出は出向先における役員に対する給与の支給として法人税法第34条の規定が適用されます。したがって定期同額給与などの枠の中で考える必要があり、期中の増額は同条第1項の要件を外れる可能性があります。増額を検討する段階で、改定できる時期に当たるかを確認してください。

出向先が負担金を払わず、出向元がすべて負担してもよいですか

退職給与については、9-2-50が、負担しないことにつき相当な理由があるときはこれを認める、としています。在任中の給与について出向元がすべて負担する場合は、9-2-47の較差補塡として説明できるかどうかが問われます。理由を説明できないまま負担を続けると、寄附金として整理される余地が生じます。

出向元が払っている留守宅手当は損金になりますか

9-2-47の注2は、出向先法人が海外にあるため出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額を、給与条件の較差を補塡するために支給したものとする、としています。したがって出向元の損金として整理されます。

経営指導料としてまとめて請求している場合はどうなりますか

9-2-45の注1により、実質的に給与負担金の性質を有する金額であれば、名義が経営指導料等であっても給与負担金の取扱いが適用されます。消費税法基本通達5-5-10にも同趣旨の注が置かれています。実態に合わせて請求内容を分けておくことをおすすめします。

📄 まとめ

出向の税務は、まず本人が出向先で役員かどうかで分岐します。使用人であれば9-2-45で給与負担金は出向先の給与として扱われ、役員であれば9-2-46の2要件を満たすことで法人税法第34条の枠の中に入ります。出向元側は9-2-47の較差補塡、退職給与は9-2-48から9-2-50が受け皿になります。

そして、どの通達を使うにしても前提になるのが出向契約書です。出向期間、負担金の額、負担区分、退職給与の扱い。この4点が書かれていない契約書は、後から説明を組み立て直す手間が生じます。出向を始める前に一度、契約書と決議の形を点検しておくことをおすすめします。

すでに出向が始まっている場合でも、契約書の補正と決議の整備は今期から着手できます。とくに、実質は人件費なのに経営指導料等の名義で請求している取引は、法人税と消費税の両方で指摘を受けやすい形です。請求の内訳を実態に合わせて分ける作業から始めてください。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

🔗 参考(公的な一次情報)

本記事は公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所・東京都台東区)が、法令・通達および国税庁の公表資料に基づいて作成しています。本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度は改正される可能性があり、個別の事実関係により結論が異なります。実際の判断にあたっては、専門家にご確認ください。

IPO支援に強い、公認会計士 IPO支援に強い、公認会計士

ベンチャー・スタートアップ企業の
経営管理支援・IPO支援

お問い合わせ

書くより話すほうが早いときは、お電話でも承ります TEL 03-6820-0406