役員社宅の家賃はいくら取ればいい?小規模住宅と豪華社宅の分岐

社長の住まいを会社名義で借りて社宅として貸している。あるいは会社が持っている物件に役員が住んでいる。このとき役員からいくら家賃を取ればよいのかというご質問を、顧問のご相談でもセカンドオピニオンのご相談でも繰り返しいただきます。

実務では「家賃の半分を取っておけば大丈夫」という説明が広く出回っていますが、その扱いが認められているのは使用人に貸した社宅です。役員に貸した社宅には、そのままでは当てはまりません。取り違えたまま運用していると、税務調査で毎月の差額が給与とされ、源泉所得税の追徴につながります。

この記事では、国税庁が示している賃貸料相当額の求め方を、判定の順序どおりに整理します。連載の全体像は役員給与の税務 完全ガイドにまとめています。

🧭 結論|役員社宅の家賃は3つの型のどれかで決まる

役員に社宅を貸したときに受け取るべき家賃のことを、国税庁は賃貸料相当額と呼んでいます。この額を受け取っていれば給与として課税されず、これより低い家賃しか受け取っていなければ、その差額が給与として課税されます。無償で貸していれば賃貸料相当額の全額が給与です。

賃貸料相当額の求め方は一つではありません。次の順序で分岐します。

役員社宅の賃貸料相当額を決める判定の順序 役員に住宅等を貸している Q1 いわゆる豪華社宅に当たるか 240平方メートル超などを総合勘案 当たる場合は算式を使わない 通常支払うべき使用料に相当する額 Q2 小規模な住宅に当たるか 床面積132または99平方メートル以下 当たらない場合 自社所有か借上げかで計算が変わる 当たる場合は小規模の算式で計算

豪華社宅かどうかを先に見て、次に小規模な住宅かどうかを見る。この順序を逆にすると計算を誤る。

順序が大切です。豪華社宅に当たるものには算式の適用がなく、通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額になります。豪華社宅でないことを確かめたうえで、小規模な住宅かどうかを判定します。

📐 小規模な住宅かどうかを床面積で判定する

小規模な住宅とは、国税庁の説明では、法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99平方メートル以下である住宅をいいます。区分所有の建物は、共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。

通達では、この30年という区切りを木造家屋かどうかという言い方で示しています。所得税基本通達36-40の注は、木造家屋以外の家屋とは耐用年数省令別表第1に規定する耐用年数が30年を超える住宅用の建物をいい、木造家屋とは当該耐用年数が30年以下の住宅用の建物をいうとしています。鉄筋コンクリート造のマンションは通常この30年を超えますので、99平方メートル以下かどうかで判定することになります。

建物の区分 小規模な住宅となる床面積
法定耐用年数が30年以下(通達のいう木造家屋) 132平方メートル以下
法定耐用年数が30年超(通達のいう木造家屋以外) 99平方メートル以下
区分所有の建物 共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定する
2以上の世帯を収容する構造の家屋 通達では、1世帯として使用する部分の床面積で判定するとされている

床面積は登記事項証明書や間取図で確認します。基準の線に近い物件ほど、根拠資料を残しておく価値があります。

💴 小規模な住宅に当たる場合の計算

小規模な住宅に当たる場合、賃貸料相当額は次の3つの合計額です。国税庁のタックスアンサーが示している算式です。

(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント
(2)12円×(その建物の総床面積(平方メートル)÷3.3平方メートル)
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント

使うのは固定資産税の課税標準額であって、実際に会社が家主に支払っている家賃ではありません。ここが実務でいちばん誤解されるところです。相場家賃が高い都心の物件でも、課税標準額から計算した賃貸料相当額は月数万円にとどまることが少なくありません。

数値で見てみます。法定耐用年数が30年以下の建物で、総床面積99平方メートル、その年度の建物の固定資産税の課税標準額が800万円、敷地の課税標準額が1,200万円だとします。

項目 金額
(1)建物 800万円×0.2パーセント 16,000円
(2)12円×(99平方メートル÷3.3平方メートル) 360円
(3)敷地 1,200万円×0.22パーセント 26,400円
賃貸料相当額(月額) 42,760円
役員から月20,000円を徴収した場合に給与とされる額 22,760円(毎月)

この物件を会社が月30万円で借りていたとしても、役員から42,760円を受け取っていれば、社宅の貸与による給与課税は生じません。差額の25万円あまりは、会社の地代家賃として処理されることになります。役員社宅が手取りに効くと言われるのは、この差が生まれるからです。

小規模な住宅については、会社が家主に支払う家賃の50パーセントと比べるという手順は出てきません。50パーセントとの比較が出てくるのは、次に説明する小規模な住宅に当たらない場合の借上げ物件です。

🏢 小規模でない場合|自社所有と借上げで計算が変わる

床面積が基準を超えて小規模な住宅に当たらない場合は、自社が所有している社宅か、他から借り受けて役員に貸しているかで、賃貸料相当額の求め方が分かれます。

自社所有の社宅は、次のイとロの合計額の12分の1が賃貸料相当額です。

イ(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12パーセント(法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12パーセントではなく10パーセント)
ロ(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6パーセント

他から借り受けた住宅等を貸与する場合は、会社が家主に支払う家賃の50パーセントの金額と、上のイとロで算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。所得税基本通達36-40も、使用者が他から借り受けて貸与した住宅等で、その支払う賃借料の額の50パーセントに相当する金額が算式により計算した金額を超えるものについては、その50パーセントに相当する金額とする、という書き方をしています。

3つの型で賃貸料相当額の求め方が違う 小規模な住宅 建物課税標準額×0.2% +12円×総床面積÷3.3 +敷地課税標準額×0.22% その合計額が月額 支払家賃の50%との 比較はしない 小規模以外・自社所有 建物課税標準額×12% (30年超の建物は10%) +敷地課税標準額×6% その合計額の12分の1 が月額 小規模以外・借上げ 中央の算式で出した額 会社が払う家賃の50% いずれか多い金額

同じ社宅でも、床面積と所有形態で使う算式が変わる。まず床面積で分け、それから所有形態で分ける。

床面積150平方メートル、法定耐用年数30年超の自社所有マンションで、建物の課税標準額1,500万円、敷地の課税標準額2,000万円という前提で計算してみます。イは1,500万円×10パーセントで150万円、ロは2,000万円×6パーセントで120万円、合計270万円です。これを12で割ると月額225,000円になります。小規模な住宅であれば数万円で済むところが、床面積が基準を超えるだけで一桁変わることがあります。

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🚫 豪華社宅に当たると算式は使えない

いわゆる豪華社宅に当たる場合、これまでの算式の適用はなく、通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額になります。実質的には、相場の家賃をそのまま受け取らないと給与課税が生じるということです。

豪華社宅であるかどうかについて、国税庁は、床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定するとしています。さらに、床面積が240平方メートル以下のものであっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなるとしています。

240平方メートルは、それを超えれば直ちに豪華社宅になるという線ではありません。超えるもののうち、各種の要素を総合勘案して判定するという書き方です。逆に240平方メートル以下でも該当することがあります。床面積だけで安心しないでください。

⚖️ 使用人の社宅との違い|50パーセントで足りるのは使用人

冒頭で触れた「半分取れば大丈夫」という説明の出どころは、使用人に貸した社宅の取扱いです。国税庁は、使用人に対して社宅や寮などを貸与する場合には、使用人から1か月当たり一定額の家賃(賃貸料相当額の50パーセント以上)を受け取っていれば給与として課税されないとしています。所得税基本通達36-47も、使用人から実際に徴収している賃貸料の額が通常の賃貸料の額の50パーセント相当額以上である場合には、経済的利益はないものとするとしています。

この50パーセントの取扱いは、通達上、使用人について定められたものです。役員について同じ定めは置かれていません。

項目 役員に貸す場合 使用人に貸す場合
床面積による区分 小規模・小規模以外・豪華社宅の3つに分かれる 区分せず一つの算式
賃貸料相当額の算式 区分ごとに異なる 建物0.2パーセント、12円の按分、敷地0.22パーセントの合計
50パーセント以上を徴収すれば課税なしという扱い 通達に定めがない ある(36-47)
他から借り受けて貸す場合 小規模以外は支払家賃の50パーセントとのいずれか多い金額 他から借りて貸す場合も同じ算式で計算する

使用人兼務役員は税務上の役員ですので、社宅については役員としての取扱いになります。

📋 会社側の法人税ではどう扱われるか

賃貸料相当額に足りない家賃しか受け取っていない場合、その差額は役員に対する経済的な利益です。法人税法第34条第4項は、役員給与の規定にいう給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益を含むものとすると定めています。

法人税基本通達9-2-9は、この経済的な利益に当たるものの一つとして、役員等に対してその居住の用に供する土地又は家屋を無償又は低い価額で提供した場合における通常取得すべき賃貸料の額と実際徴収した賃貸料の額との差額に相当する金額を挙げています。

では、この差額は損金になるのでしょうか。法人税法施行令第69条第1項第2号は、定期同額給与に当たるものとして、継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものを挙げています。そして法人税基本通達9-2-11は、9-2-9の(6)に掲げる金額(その額が毎月著しく変動するものを除く)がこれに該当することに留意するとしています。つまり、社宅の差額は毎月の額が著しく変動しないかぎり定期同額給与に当たり、その意味では損金算入されます。

家賃を低く設定したときに両側で起きること 会社の側(法人税) 通常取得すべき賃貸料と 実際徴収額との差額は 経済的な利益に当たる 毎月著しく変動しなければ 定期同額給与として 損金に算入される 役員の側(所得税) 同じ差額が給与として 課税される 会社には源泉徴収義務 があり、徴収の日の属する 月の翌月10日までに納付 (所得税法第183条第1項)

法人税で損金になっても、所得税の課税と源泉徴収は別に生じる。会社の税額が動かないから問題ないとは言えない。

損金になるなら気にしなくてよい、とはなりません。役員の側では給与所得として所得税と住民税が増え、社会保険料の算定にも影響します。会社には源泉徴収義務があり、所得税法第183条第1項は、給与等の支払をする者はその支払の際に所得税を徴収し、徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないと定めています。過去にさかのぼって差額が認定されれば、源泉所得税の納付漏れとして扱われます。

なお法人税基本通達9-2-10は、9-2-9に掲げる経済的な利益の供与が所得税法上課税されないものであり、かつ、法人が給与として経理しなかったものであるときは、給与として取り扱わないものとするとしています。

🗂️ 実務で押さえる手続と記録

計算そのものより、根拠資料を揃えて毎年見直す運用のほうが崩れやすいところです。次の資料は、調査で必ず求められます。

目的 用意しておくもの
床面積と構造の確認 建物の登記事項証明書、間取図、賃貸借契約書
固定資産税の課税標準額の確認 固定資産評価証明書、固定資産課税台帳の記載事項証明など
徴収額の根拠 社宅規程、役員との取決め、賃貸料相当額の計算過程を残した書面
実際に徴収していること 給与天引きの記録、賃料の入金記録
見直しの記録 課税標準額の改訂通知と、改訂後に再計算した記録

計算の基礎が動いたときの扱いは、所得税基本通達36-42と36-43に定めがあります。主なものを整理します。

場面 通達が示している取扱い
固定資産税の課税標準額が改訂された 改訂後の課税標準額に係る固定資産税の第1期の納期限の属する月の翌月分から、改訂後の課税標準額を基として計算する
年の中途で新築された家屋などで課税標準額が定められていない 状況の類似する住宅等に係る固定資産税の課税標準額に比準する価額を基として計算する
月の中途で役員が居住を始めた 居住の用に供された日の属する月の翌月分から計算する
公的使用に充てられる部分がある住宅等(36-43) 使用の状況を考慮して通常の賃貸料の額を定める。算式で計算した額の70パーセント以上に相当する金額を徴収しているときは、その徴収額を通常の賃貸料の額として差し支えないとされている

借上げ社宅では、賃貸借契約の名義が会社であることが前提です。役員個人が契約している物件の家賃を会社が負担しているだけであれば、社宅の貸与とは認められず、負担額がそのまま給与として課税されます。現金で支給される住宅手当も同じ扱いです。

❓ よくある質問

役員から賃貸料相当額の50パーセントを受け取っていれば大丈夫ですか

いいえ。50パーセント以上で課税されないという扱いが通達に定められているのは、使用人に貸した社宅です。役員については、賃貸料相当額との差額が給与として課税されます。役員社宅で50パーセントという数字が出てくるのは、小規模な住宅に当たらない借上げ物件で、支払家賃の50パーセントと算式額のいずれか多い金額を取るという場面だけです。

会社が家主に払っている家賃の半分を受け取れば足りますか

小規模な住宅であれば、支払家賃との比較は行いません。課税標準額から計算した額を受け取ります。小規模でない借上げ物件であれば、支払家賃の50パーセントと算式額を比べて多いほうになりますので、支払家賃の半分では足りないこともあります。

固定資産税の課税標準額はどうやって調べますか

自社所有であれば固定資産税の納税通知書や課税台帳で確認できます。借上げの場合は、算式に課税標準額を使う以上、貸主等から確認する必要があります。国税庁も使用人の社宅について、他から借り受けて貸与する場合には貸主等から固定資産税の課税標準額などを確認することが必要であるとしています。

家賃を取り忘れていた期間があります。どうなりますか

賃貸料相当額の全額が、その期間の毎月の給与として扱われます。役員の側では給与所得が増え、会社の側では源泉徴収漏れになります。気づいた時点で計算し直し、遡って是正するかどうかを含めて早めに方針を決めたほうが、金額の膨らみを抑えられます。

複数の役員に社宅を貸しています。1人ずつ判定しますか

所得税基本通達36-44は、住宅等を貸与した全ての役員から、その貸与した住宅等の状況に応じてバランスのとれた賃貸料を徴収している場合において、その徴収している賃貸料の額の合計額が、役員に貸与した全ての住宅等につき計算した通常の賃貸料の額の合計額以上であるときは、これらの全ての役員につき住宅等の貸与による経済的利益はないものとするとしています。バランスがとれていることが前提ですので、1人だけ極端に低いという状態を合計額でならすことはできません。

役員報酬を下げて社宅に振り替えると定期同額給与の問題になりますか

報酬の額そのものを期中に改定すれば、改定時期の制約がかかります。詳しくは定期同額給与とは?改定できる時期と3か月ルールをわかりやすく解説をご覧ください。社宅への振替えを考えるなら、期首から3か月以内の改定に合わせて設計するのが基本です。

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📄 まとめ

役員社宅の家賃は、豪華社宅かどうか、小規模な住宅かどうか、自社所有か借上げかという3つの分岐で決まります。使うのは固定資産税の課税標準額であって支払家賃ではなく、使用人に認められている50パーセントの扱いは役員にはありません。

計算自体は難しくありませんが、床面積の確認、課税標準額の入手、改訂時の再計算、徴収の記録という運用が続かないと、数年分の差額がまとめて指摘されます。導入時に算定根拠を書面に残してください。

🔗 参考(公的な一次情報)

本記事は公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所・東京都台東区)が、法令・通達および国税庁の公表資料に基づいて作成しています。本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度は改正される可能性があり、個別の事実関係により結論が異なります。実際の判断にあたっては、専門家にご確認ください。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

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