相続した実家や土地について、「いくらの財産として申告すればいいのか」がわからず、手が止まっていませんか。売った場合の値段なのか、固定資産税の通知書の金額なのか、判断がつかないという声はとても多く聞かれます。
相続税では、不動産の値段は売買価格ではなく、国税庁が定めたものさしで計算します。土地は路線価、家屋は固定資産税評価額が出発点です。この記事では、路線価の調べ方から貸している不動産の減額、分譲マンションの新しい補正まで順番に整理します。
- 土地は路線価方式または倍率方式、家屋は固定資産税評価額で評価すること
- 国税庁「財産評価基準書」で路線価を調べる4つのステップと、路線価図の読み方
- 貸している土地・建物は評価額が下がるしくみ(貸家・貸家建付地)
- 分譲マンションの評価に令和6年1月1日から加わった「区分所有補正率」
この記事の見出し
🏠 不動産の相続税評価は「売買価格」では決まらない
相続税や贈与税を計算するときは、取得した土地や家屋を評価する必要があります。国税庁の解説(タックスアンサーNo.4602「土地家屋の評価」)によれば、土地は原則として宅地・田・畑・山林などの地目ごとに評価し、その評価方法には路線価方式と倍率方式の2つがあります。家屋は、固定資産税評価額に1.0を乗じて計算した金額、つまり固定資産税評価額と同じ額で評価します。
「地目」とは土地の使われ方の区分です。登記簿の地目ではなく、課税時期(相続の場合は被相続人が亡くなった日)の現況で判定します。土地の地積(面積)も登記簿上の面積ではなく、課税時期における実際の面積で評価します(No.4602 Q1・Q2、評価通達1・7・8)。
土地は路線価方式か倍率方式、家屋は固定資産税評価額。分譲マンションには補正のルールが加わります。
| 不動産の種類 | 相続税評価の原則的な方法 |
|---|---|
| 土地(路線価地域) | 路線価 × 奥行価格補正率などの各種補正率 × 地積(面積) |
| 土地(倍率地域) | 固定資産税評価額 × 評価倍率表に定められた倍率 |
| 家屋(自宅など) | 固定資産税評価額 × 1.0(=固定資産税評価額と同額) |
| 貸家 | 固定資産税評価額 - 固定資産税評価額 × 借家権割合 × 賃貸割合 |
| 貸家建付地 | 自用地としての価額 - 自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合 |
| 分譲マンション | 敷地利用権(土地部分)と区分所有権(家屋部分)の合計。令和6年1月1日以後の取得分は区分所有補正率を乗じる場合あり |
出典:国税庁タックスアンサーNo.4602・No.4606・No.4614・No.4667(いずれも令和8年4月1日現在法令等)。
📍 路線価の調べ方は4ステップ
路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことで、路線価図には千円単位で表示されています。路線価図と評価倍率表は、国税庁ホームページの「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で誰でも無料で閲覧できます。全国の税務署でも、パソコンにより無料で閲覧できます(No.4604 Q5)。
財産評価基準書は国税庁ホームページで公開されており、税務署でも無料で閲覧できます。
📍 どこで:国税庁ホームページ「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」、または全国の税務署(パソコンで無料閲覧)。
⏰ いつの年分か:課税時期(相続・遺贈の場合は亡くなった日)が属する年分の路線価図・評価倍率表を使います。その年分がまだ公開されていない場合は、公開されてから評価します(No.4604 Q6)。
🧾 何を見るか:路線価図(千円単位の数字とA〜Gの記号)と、路線価がない地域では評価倍率表。固定資産税評価額は都税事務所や市(区)役所・町村役場で確認します。
令和8年分の財産評価基準(路線価図・評価倍率表)は国税庁ホームページで公開されており、令和8年1月1日から令和8年12月31日までの間に相続・遺贈または贈与により取得した財産の評価に適用されます。
路線価図の数字と記号の読み方
路線価図では、道路の上に「215D」のように数字とアルファベットが並んでいます。国税庁「路線価図の説明」によれば、この例は1平方メートル当たりの路線価が215,000円で、借地権割合が60%であることを表します。記号は、A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%に対応します。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。
初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら
🧾 路線価方式の計算のしかた
路線価方式による土地の価額は、路線価をその土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。国税庁が示している計算例では、正面路線価300千円 × 奥行価格補正率1.00 × 面積180平方メートル = 評価額54,000千円(5,400万円)となります(No.4602)。
土地の形や道路との接し方によって金額は上下します。角地のように2つ以上の道路に接している場合は側方路線影響加算や二方路線影響加算で加算され、反対に、間口が狭い土地・奥行が長すぎる土地・いびつな形の土地(不整形地)は、それぞれの補正率表の率で減額されます(No.4604)。調整率表は国税庁ホームページに掲載されています。
正面路線は、原則として、その宅地の接する路線価に奥行価格補正率を乗じて計算した金額の高い方の路線とされています(No.4604)。
路線価がない地域は「倍率方式」
倍率方式は、路線価が定められていない地域の土地の評価方法です。その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算した金額で評価します。倍率は「評価倍率表」で確認でき、固定資産税評価額は都税事務所や市(区)役所または町村役場で確認できます(No.4606、評価通達21・21-2)。
形がいびつな土地、賃貸物件、分譲マンションなど、評価の判断が分かれる不動産は少なくありません。台東区(上野・浅草・入谷)で相続税のご相談は当事務所へ。お問い合わせフォームからご連絡ください。
⚖️ 貸している土地・建物は評価額が下がる
賃貸されている土地や家屋は、権利関係に応じて評価額が調整されます(No.4602)。借りている人の権利がある分、所有者にとっての価値が下がると考えるためです。
貸家は、固定資産税評価額から、固定資産税評価額に借家権割合と賃貸割合を乗じた金額を差し引いて評価します。国税庁は、固定資産税評価額1,000万円・借家権割合30%・賃貸割合100%の場合に700万円となる例を示しています(No.4602 Q3、評価通達93ほか)。
貸家建付地とは、その宅地を所有する方が建築したアパートやビルなどを他に貸し付けている場合の、その敷地である宅地をいいます(No.4614、評価通達26)。
土地1億円・借地権割合70%の例は当事務所が設定した仮の数値です。建物の例は国税庁No.4602 Q3によります。
一般的に借地借家法の適用がないとされている「社宅」の敷地は、貸家建付地の評価は行わず、自用地としての価額で評価することになります(No.4614)。
🏢 分譲マンションは令和6年1月から新しいルール
マンションは、敷地利用権(土地部分)と区分所有権(家屋部分)の価額の合計額で評価します。土地部分は敷地全体の価額に敷地権の割合を乗じて計算し、家屋部分は固定資産税評価額により計算するのが基本です(No.4602)。
これに加えて、令和6年1月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得した「居住用の区分所有財産」(いわゆる分譲マンション)は、法令解釈通達により、それぞれの価額に区分所有補正率を乗じて評価する場合があります(No.4667)。
区分所有補正率は、築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度の4つの要素から「評価乖離率」を求め、その逆数である「評価水準」を計算したうえで、次の区分に当てはめて求めます。国税庁の「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」により簡便に計算できます。
| 評価水準(=1÷評価乖離率) | 区分所有補正率 |
|---|---|
| 0.6 未満 | 評価乖離率 × 0.6(=評価額が上がる方向の補正) |
| 0.6 以上 1 以下 | 補正はありません(本通達適用前の評価方法により評価します) |
| 1 超 | 評価乖離率(=評価額が下がる方向の補正) |
出典:国税庁タックスアンサーNo.4667(令和8年4月1日現在法令等)。根拠法令等は相法22、令5課評2-74。
国税庁の計算例では、築年数27年・総階数11階・所在階3階・専有部分60.00平方メートル・敷地利用権の面積21.00平方メートルのマンションについて、評価乖離率2.043、評価水準0.4894…(0.6未満)、区分所有補正率1.2258と計算されています。この結果、家屋部分は400万円 × 1.2258 = 490万3,200円、土地部分は1,050万円 × 1.2258 = 1,287万900円となります(No.4667)。
- 構造上、主として居住の用途に供することができるもの以外のもの(事業用のテナント物件など)
- 区分建物の登記がされていないもの(一棟所有の賃貸マンションなど)
- 地階を除く総階数が2以下のもの(総階数2以下の低層の集合住宅など)
- 居住用の専有部分一室の数が3以下で、そのすべてを区分所有者またはその親族の居住の用に供するもの(いわゆる二世帯住宅など)
- たな卸商品等に該当するもの
なお、分譲マンションが貸家・貸家建付地である場合の評価や小規模宅地等の特例の適用は、この算式で計算した価額を基に行うこととなります(No.4667)。
❓ よくある質問
路線価が定められた地域の土地は路線価方式で評価します。固定資産税評価額を使うのは、路線価がない地域の土地(倍率方式)と家屋の評価です(No.4602・No.4606)。
亡くなった日が属する年分の路線価図・評価倍率表を使い、まだ公開されていない場合は公開されてから評価してくださいとされています(No.4604 Q6)。申告期限は10か月ですので、公開時期を見込んだ準備が必要です。
賃貸割合は課税時期に賃貸されている各独立部分の床面積の割合で計算しますが、継続的に賃貸されてきた部屋で、退去後速やかに募集が行われ、空室が課税時期の前後の例えば1か月程度など一時的と認められる場合は、賃貸されていたものとして取り扱って差し支えないとされています(No.4614)。
📄 まとめ
- 土地は路線価方式か倍率方式、家屋は固定資産税評価額 × 1.0 で評価する
- 路線価図・評価倍率表は国税庁ホームページと税務署で無料閲覧できる
- 使う年分は、亡くなった日が属する年分。未公開なら公開後に評価する
- 貸家・貸家建付地は借家権割合・借地権割合・賃貸割合の分だけ減額される
- 令和6年1月1日以後に取得した分譲マンションは区分所有補正率を乗じる場合がある
不動産は相続財産のなかでも金額が大きく、評価の仕方で税額が変わります。財産の洗い出しの手順は第7回「相続財産の調べ方は?」、手続きの全体像は第1回「親が亡くなったらやることは?」で解説しています。連載の全体像は相続税 完全ガイドからご覧ください。次回は「名義預金・直前引き出し・タンス預金:税務署はここを見る」を取り上げます。
国税庁タックスアンサー No.4602 土地家屋の評価/No.4604 路線価方式による宅地の評価/No.4606 倍率方式による土地の評価/No.4614 貸家建付地の評価/No.4667 居住用の区分所有財産の評価/財産評価基準書 路線価図・評価倍率表/路線価図の説明
不動産の評価は、資料の集め方と現地の状況の確認で結論が変わることがあります。相続税申告のご相談は、お問い合わせフォームからご連絡ください。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。相続税の申告と事業承継の支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷1丁目)。上場準備支援・会計監査の経験を活かし、相続税申告や生前対策のご相談に対応しています。
優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は令和8年9月時点の法令等に基づく一般的な情報です。個別の判断は税理士等の専門家にご相談ください。