境内の会館や集会所を貸して使用料を受け取る。この収入が収益事業かどうかは、席貸業の判定になります。
席貸業は2つに分かれています。娯楽や遊興や慰安の用に供するための席貸しには除外がありません。それ以外の席貸しには4つの除外があり、宗教法人が使えるのは会員等向けで実費の範囲を超えないものという1つだけです。
この記事では、席貸業の判定を条文と通達にそって整理し、実費の範囲の考え方まで説明します。
- 席貸業がイとロに分かれている理由
- 展覧会や興行のための席貸しがイに当たること
- ロの4つの除外と宗教法人が使えるもの
- 会員その他これに準ずる者の範囲
- 実費の範囲を超えないかの判定方法
この記事の見出し
📌 席貸業は2つに分かれている
境内の会館や集会所を檀信徒や地域の団体に貸して使用料を受け取る。この収入が収益事業かどうかは、席貸業の判定になります。
法人税法施行令5条1項14号は、席貸業を2つに分けています。イは、不特定または多数の者の娯楽、遊興または慰安の用に供するための席貸業。ロは、イに掲げる席貸業以外の席貸業で、4つの場合を除いたものです。
この構造が大切です。イに当たる席貸しには除外がありません。ロに当たる席貸しにだけ、除外を検討する余地があります。
📌 イに当たるのはどんな席貸しか
法人税基本通達15-1-38は、イに規定する不特定または多数の者の娯楽、遊興または慰安の用に供するための席貸業には、興行を目的として集会場、野球場、テニスコート、体育館等を利用する者に対してその貸付けを行う事業が含まれることに留意する、としています。不動産貸付業に該当するものは除かれます。
同通達の注は、展覧会等のための席貸しは、同号イの娯楽、遊興または慰安の用に供するための席貸しに該当する、としています。展示会や発表会のために会館を貸すのであれば、イに当たると考えるのが自然です。
コンサート、演芸、展示即売会。こうした催しのために境内の会館を貸すのであれば、除外の余地がないまま収益事業になります。
📌 ロの席貸しには4つの除外がある
イ以外の席貸業、たとえば会議や研修や講演のための席貸しは、ロの判定になります。ロで除かれるのは次の4つです。
1つ目は、国または地方公共団体の用に供するための席貸業。2つ目は、社会福祉法2条1項に規定する社会福祉事業として行われる席貸業。3つ目は、学校法人もしくは私立学校法152条5項の規定により設立された法人または職業訓練法人がその主たる目的とする業務に関連して行う席貸業。4つ目は、法人がその主たる目的とする業務に関連して行う席貸業で、その法人の会員その他これに準ずる者の用に供するためのもののうち、その利用の対価の額が実費の範囲を超えないものです。
宗教法人が使えるのは、実際には4つ目だけです。要件は3つに分解できます。主たる目的とする業務に関連していること、会員その他これに準ずる者の用に供するためのものであること、利用の対価の額が実費の範囲を超えないことです。
14号ロ(4)の除外に当たるかどうかの判定。要件をすべて満たす必要があります。
📌 会員その他これに準ずる者とは
2つ目の要件にある会員その他これに準ずる者について、法人税基本通達15-1-38の2が範囲を示しています。
同通達は、この会員その他これに準ずる者には、公益法人等の正会員のほか、準会員、賛助会員等としてその公益法人等の業務運営に参画し、その業務運営のための費用の一部を負担している者、その公益法人等が複数の団体を構成員とする組織である場合のその間接の構成員等が含まれるものとする、としています。
ここで注目したいのは、業務運営に参画し、費用の一部を負担しているという説明です。名簿に載っているだけの人ではなく、法人の運営に関わっている人が想定されています。檀信徒や氏子がこれに当たるかどうかは、規則上の位置づけと実際の関わり方から検討することになります。
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📌 実費の範囲を超えないかの判定
3つ目の要件について、法人税基本通達15-1-38の3が判定の方法を示しています。
同通達は、公益法人等の行う席貸業が実費の範囲を超えないものに該当するかどうかは、既往の実績等に照らし、その事業年度における会員その他これに準ずる者に対する席貸しに係る収益の額と費用の額とがおおむね均衡すると認められるような利用料金が設定されているかどうかにより判定する、としています。
つまり、1回ごとの計算ではなく、年間を通じて収支がおおむね均衡する料金設定になっているかを見ます。光熱費と清掃費と建物の減価償却費の相当額を積み上げて料金を決め、その計算根拠を残しておくことが実務の備えになります。
利用料が明らかに費用を上回っているのであれば、この除外は使えません。
📌 不動産貸付業や旅館業との切り分け
建物を貸すという点で不動産貸付業と紛らわしいのですが、法人税基本通達15-1-17の注が切り分けを示しています。他の者に不動産を使用させる行為であっても、倉庫業、席貸業、遊技所業または駐車場業に掲げる事業のいずれかに該当するものは、不動産貸付業に含まれません。
一方、宿坊を運営していて、その旅館等において会議等のための席貸しを行う場合は、旅館業の付随行為として整理されます(法人税基本通達15-1-6(3))。席貸業として別に判定するのではなく、旅館業の収益事業に取り込まれます。
また、披露宴の用に供するための席貸しは、法人税基本通達15-1-72が収益事業として明示しています。結婚式を扱う場合は、この定めが優先します。
📌 実務で整えておくこと
第1に、貸す相手と用途を記録してください。イに当たるのかロに当たるのか、会員その他これに準ずる者なのかは、記録がなければ後から説明できません。
第2に、料金の算定根拠を残してください。実費の範囲を超えないという主張は、費用の積み上げの資料があって初めて通ります。
第3に、収益事業に当たるものが出てきた場合は、収益事業とそれ以外で経理を区分し(法人税法施行令6条)、開始した日以後2か月以内に届出書を提出してください(法人税法150条1項)。会館の減価償却費は共通費になりますので、合理的な基準で継続的に配賦します(法人税基本通達15-2-5)。
貸す相手と用途と料金の3点を整理すれば、課税される範囲は見えてきます。料金の算定根拠の作り方から区分経理まで、実務の手順からご一緒できます。宗教法人の税務と会計に対応している公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
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❓ よくある質問
A. 主たる目的とする業務に関連して行う席貸しで、会員その他これに準ずる者の用に供するためのものであり、利用の対価の額が実費の範囲を超えないのであれば、収益事業から除かれます(法人税法施行令5条1項14号ロ(4))。3つの要件をすべて満たす必要があります。
A. 法人税基本通達15-1-38の注は、展覧会等のための席貸しは娯楽、遊興または慰安の用に供するための席貸しに該当するとしています。イに当たりますので、除外の余地なく収益事業になります。
A. 既往の実績等に照らし、その事業年度における会員等に対する席貸しに係る収益の額と費用の額とがおおむね均衡すると認められるような利用料金が設定されているかどうかで判定します(法人税基本通達15-1-38の3)。
A. 法人税基本通達15-1-38の2は、正会員のほか、準会員や賛助会員等として業務運営に参画し、その費用の一部を負担している者を挙げています。規則上の位置づけと実際の関わり方から検討してください。
A. 旅館業を行っている場合、その旅館等において行う会議等のための席貸しは付随行為として旅館業に取り込まれます(法人税基本通達15-1-6(3))。
📄 まとめ
席貸業は、イの娯楽、遊興または慰安の用に供するための席貸業と、ロのそれ以外の席貸業に分かれます(法人税法施行令5条1項14号)。
イには除外がありません。興行や展覧会等のための席貸しはイに当たります(法人税基本通達15-1-38)。
ロの除外のうち宗教法人が使えるのは(4)です。主たる目的とする業務に関連していること、会員その他これに準ずる者の用に供するためのものであること、利用の対価の額が実費の範囲を超えないことの3つを満たす必要があります。
実費の範囲を超えないかは、年間の収益の額と費用の額がおおむね均衡する料金設定かで判定します(法人税基本通達15-1-38の3)。料金の算定根拠を残してください。
⚖ 本記事の根拠法令
- 法人税法施行令5条1項14号(席貸業)
- 法人税基本通達15-1-38(席貸業の範囲)
- 法人税基本通達15-1-38の2(会員に準ずる者の範囲)
- 法人税基本通達15-1-38の3(実費の範囲を超えないものの判定)
- 法人税基本通達15-1-17の注
- 法人税基本通達15-1-6(3)
- 法人税基本通達15-1-72(披露宴の用に供するための席貸しの事業は収益事業に該当する)
- 法人税法施行令6条(収益事業を行う法人の経理の区分)、法人税法150条1項(収益事業開始の届出)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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