IPOコンサルティング(上場準備支援)の費用と依頼範囲|ショートレビューから申請まで、外部に頼むべき業務

結論 IPOコンサルティング(上場準備支援)は、「どの業務を・どの時期に・成果物まで作るか助言だけか」で費用が決まります。全部を外部に任せるのではなく、社内に残す業務を先に決めてから見積りを取ると、費用も準備期間もぶれにくくなります。

  • 外部に頼まれやすいのは、ショートレビュー(課題抽出)、社内規程、J-SOX文書化、予算・月次決算の仕組み、Ⅰの部・Ⅱの部などの申請書類、内部監査の立ち上げです。
  • 当事務所の目安(税別)は、プレショートレビュー40万〜60万円(2〜3週間)、ショートレビュー70万〜100万円(6〜8週間)、社内諸規程の整備40万〜80万円、J-SOX3点セット50万〜100万円、そのほかの継続支援は月額5万〜50万円程度です。
  • 監査を受ける予定の監査法人は、独立性の制約から改善支援に深く関われない場合があります。監査とアドバイザーを分けるかどうかを早めに決めます。
  • 見積りでは「成果物」「月額の稼働の上限」「担当者」「引き継ぎ」の4点を書面で確認します。

IPO(新規上場)の準備では、監査法人と主幹事証券会社のほかに、上場準備を手伝う外部の専門家に業務を頼む会社が少なくありません。ただ、「IPOコンサルにいくらかかるのか」「どこまで頼めばよいのか」は、公的な統計や定価がなく、比べにくい分野です。

IPO全体にかかる費用(東証の料金、監査報酬、主幹事証券の手数料)はIPOにかかる費用はいくらかで、ショートレビューの中身はショートレビューとはでそれぞれ解説しています。本記事はそれらと分けて、外部の支援者に何を・いくらで頼み、どう選ぶかに絞って説明します。

IPOコンサルに頼めることと、頼めないこと

日本公認会計士協会の「IPOのための事前準備ガイドブック」は、IPO支援の経験がある公認会計士やその法人を「アドバイザー」と呼び、監査法人・主幹事証券会社と並ぶ相談先として挙げています。一般に「IPOコンサル」と呼ばれるのは、このアドバイザーの役割です。

アドバイザーに頼めるのは、上場審査に耐える管理体制をつくる作業です。課題の洗い出し、規程や業務フローの作成、会計処理の見直し、申請書類の作成補助などがこれに当たります。

一方で、次のことは外部に頼めません。

  • 監査証明:申請直前2期間の財務諸表には監査法人の監査証明が必要です(日本取引所グループ「上場スケジュール」)。これはアドバイザーではなく監査法人の業務です。
  • 引受審査・上場審査の合否:主幹事証券会社と取引所が判断します。アドバイザーは回答書づくりを手伝えますが、結果を約束することはできません。
  • 経営判断と運用:規程や仕組みを「動かす」のは会社自身です。審査では書類があるかだけでなく、実際に運用されているかが見られます。

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時期別:外部に頼まれやすい業務と費用の目安

上場準備は、申請期をN期として、N-3期以前(準備期間)、N-2期(直前々期)、N-1期(直前期)、N期(申請期)と数えるのが一般的です。日本公認会計士協会のガイドブックでは、N-3期以前にショートレビューで課題を抽出して管理体制をつくり始め、N-2期から監査対象期間に入るという流れが示されています。

当事務所の料金ページに載せている目安を、時期ごとに並べると次のとおりです(すべて税別。会社規模・拠点数・依頼範囲で変わります)。

時期 業務 期間の目安 料金の目安(税別)
N-3期以前 プレショートレビュー(簡易予備調査) 2〜3週間 40万〜60万円
N-3期以前 ショートレビュー(短期調査) 6〜8週間 70万〜100万円
N-3期以前 監査法人との契約締結支援 3〜6か月 月額10万〜50万円
N-3期以前〜 利益計画の策定・予実分析 初回2〜3か月、以後継続 月額5万〜30万円
N-3期以前〜 月次決算の早期化 3〜6か月 月額5万〜30万円
N-2期 会計制度の適正化 3〜6か月 月額10万〜50万円
N-2期 社内諸規程の整備 3〜6か月 40万〜80万円
N-2期 業務プロセスの内部統制構築 6〜12か月 月額5万〜30万円
N-2期 内部監査制度の整備 初期2〜3か月、以後継続 月額5万〜30万円
N-2期〜 Ⅰの部の作成 初版4〜6か月、以後継続 月額10万〜50万円
N-2期〜 Ⅱの部・各種説明資料の作成 初版3〜5か月、以後継続 月額10万〜50万円
N-1期 J-SOX3点セットの作成 6〜12か月 50万〜100万円
N-1期 決算開示体制の構築 6〜12か月 月額5万〜30万円
N-1期 主幹事証券会社の審査対応 3〜6か月 月額10万〜50万円
N期 証券取引所の審査対応 2〜4か月 月額10万〜50万円

一括の金額になっているのは、成果物の範囲を決めやすい業務(ショートレビュー、規程、J-SOX3点セット)です。月額の業務は、稼働した工数に応じて月ごとに精算します。どの業務も、全部を頼む必要はありません。たとえば「規程とJ-SOXだけ」「Ⅰの部の作成補助だけ」という頼み方もできます。

なお、ここに挙げたのはアドバイザーへの支払いだけです。監査報酬や主幹事証券会社の手数料、東証の料金は別にかかります。上場までの総額の組み立て方はIPOにかかる費用の記事を参照してください。

外部に任せず、自社で持つべき業務

費用を抑えるうえでも、上場後に困らないためにも、次の業務は社内に残すことをおすすめします。

  • 事業計画と予算の数字:作り方の型はアドバイザーが用意できますが、数字の根拠を説明するのは経営陣です。審査でも計画の前提を問われます。
  • 日々の経理と月次決算の実行:早期化の仕組みは外部と一緒につくれても、毎月締めるのは社内の担当者です。
  • 規程の運用:規程どおりに稟議・承認が回っている記録が残っていることが大切です。
  • 内部監査の実施責任:立ち上げや手続書づくりは外部の支援を受けられますが、内部監査の担当者と計画は会社として決めます。
  • 審査での受け答え:回答書の下書きは外部が手伝えても、ヒアリングに答えるのは経営者と管理部門です。

目安として、管理部門の責任者(CFOや管理部長)が社内にいて、アドバイザーは「型をつくり、作り方を渡す」役割に置くと、上場後に外部支援を減らしやすくなります。

依頼先の種類と違い

上場準備の支援を頼める先は、主に次の4つです。

依頼先 主な役割 注意点
監査法人(監査を受ける予定の法人) ショートレビュー、その後の監査 監査契約に進める見込みが分かる一方、独立性の制約から改善作業には深く関われない場合がある
公認会計士事務所(監査を担当しない立場) 課題抽出から規程・会計・J-SOX・申請書類の作成支援まで 監査を引き受けるかは監査法人が別に判断する。担当者の経験分野を確認する
コンサルティング会社 プロジェクト管理、管理部門の体制づくり、人材の補強 会計処理や監査対応を誰が担当するか(公認会計士が関わるか)を確認する
主幹事証券会社 資本政策・上場スケジュールの助言、引受審査 実務の作業代行ではなく、助言と審査が中心

監査法人の独立性の制約

依頼先を選ぶうえで一番間違えやすいのが、監査法人の独立性です。公認会計士法第24条の2は、公認会計士が「大会社等」から一定の非監査業務で継続的な報酬を受けている場合、その会社の財務書類の監査証明業務を行ってはならないと定めています(監査法人には第34条の11の2が同じ趣旨を定めています)。「大会社等」には、金融商品取引法により監査証明を受けなければならない会社(上場会社など)や、一定規模以上の会計監査人設置会社が含まれます。対象となる非監査業務は公認会計士法施行規則第5条に列挙されており、会計帳簿の記帳代行など財務書類の調製、財務・会計の情報システムの整備・管理、内部監査の外部委託などが挙がっています。

上場準備中の会社がこの「大会社等」に当たるかどうかは会社によりますが、日本公認会計士協会のガイドブックも、監査を依頼する予定の監査法人がショートレビューやその後のアドバイザリーを行う場合には独立性の制約がありうること、監査契約を結ぶとアドバイザリー業務の提供に一定の制限があり、別のアドバイザーの起用も検討すべきことを説明しています。

実務では、「監査法人には監査を、アドバイザーには改善作業を」と分けて頼むことがよくあります。外部のアドバイザーと課題を直してから、監査法人のショートレビューを受ける順番もあります。監査法人を決める時期については監査法人はいつまでに決めるか、上場準備に関わる関係者全体についてはIPOの外部関係者とはで解説しています。

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。

初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら / IPO支援を見る

費用が変わる要因

同じ「規程の整備」でも、見積りは会社によって大きく変わります。主な要因は次のとおりです。

  • 会社の規模と拠点・子会社の数:業務プロセスや内部統制の文書化は、拠点や子会社の数に比例して作業が増えます。
  • 準備の進み具合:月次決算が締まっていない、規程がほとんどない、といった出発点では、整備にかかる月数が延びます。
  • 成果物を作るか、助言だけか:外部が規程案や文書を作る場合と、社内が作ったものをレビューする場合とでは工数が違います。
  • 会計上の論点:収益認識、原価計算、工事進行、リース、ストック・オプションなど、監査法人と協議が必要な論点が多いと、影響額の試算や説明資料の作成が増えます。
  • 社内の人員:管理部門の担当者が少ないと、外部が手を動かす範囲が広がります。
  • スケジュール:監査対象期間が迫っているなど、短期間で仕上げる必要がある場合は、月あたりの稼働が増えます。

当事務所の料金の幅(例:規程整備40万〜80万円)は、これらの要因を反映したものです。初回の面談で状況を伺ったうえで、範囲と金額を書面でお示しします。

見積り・面談で確認すること

複数の依頼先を比べるときは、金額だけでなく次の項目をそろえて確認すると、比較しやすくなります。

確認項目 聞き方の例 なぜ確認するか
成果物 「規程は何本、どの形式で納品されますか」 一括料金の範囲がはっきりし、追加費用の発生を防げる
月額の稼働 「月額の上限と、上限を超えるときの連絡方法は」 月次精算の業務で、想定外の請求を防げる
担当者 「面談した方が実務も担当しますか。資格と経験分野は」 提案者と作業者が違うと、品質と引き継ぎに差が出やすい
監査法人との関係 「監査法人への説明や協議にも同席しますか」 会計論点の協議は準備期間を左右する
引き継ぎ 「作成方法の説明や、社内で更新するための資料はありますか」 上場後に外部支援なしで運用できるかが決まる
途中解約・範囲変更 「範囲を減らす・増やすときの手続きは」 準備の進み具合に合わせて調整できる

面談の前に、直近の決算書、組織図、現在ある規程の一覧、上場を目指す市場と時期の案を用意しておくと、見積りの精度が上がります。

よくある失敗例

上場準備の支援でつまずきやすいパターンを、一般的な形で挙げます。

  • 規程や文書を外部に丸投げし、運用が追いつかない:書類はそろっても、承認記録や運用の証跡が残っておらず、審査で説明できないことがあります。
  • 監査を頼む予定の監査法人に、改善作業まで期待してしまう:独立性の制約で手伝ってもらえず、課題が残ったまま監査対象期間に入ることがあります。
  • 監査法人が決まらないまま期が進む:直前2期間の監査証明が必要なため、監査法人の選定が遅れると上場時期そのものがずれます。
  • 月額契約の範囲があいまいなまま始める:何をどこまでやるかが決まっておらず、費用と成果が見合わないと感じる原因になります。
  • J-SOXの文書が実態とずれる:ひな形に合わせて書いた業務記述書が実際の業務と違い、評価の段階で作り直しになることがあります。

いずれも、依頼の前に「社内に残す業務」と「外部に頼む成果物」を書面で分けておくことで、防ぎやすくなります。上場準備の全体の流れはIPO準備の全体像もあわせてご覧ください。

よくある質問

IPOコンサルには、いつ頃から頼むのがよいですか。

監査対象期間(N-2期)に入る前、N-3期以前に課題抽出を受けておくと、監査法人の選定や体制づくりに時間を使えます。日本公認会計士協会のガイドブックも、早めに相談することが効率的だと説明しています。すでにN-2期以降に入っている場合でも、不足している部分だけを頼むことはできます。

ショートレビューは監査法人とアドバイザーのどちらに頼むべきですか。

監査法人に頼むと監査契約に進めるかの見通しが立ちやすい一方、独立性の制約で改善作業には深く関われない場合があります。アドバイザーに頼むと改善まで一緒に進められます。詳しくはショートレビューとはで比較しています。

月額の支援は、毎月同じ金額がかかりますか。

当事務所の月額の業務は、稼働した工数に応じて月ごとに精算します。作業が少ない月は金額も下がります。見積りの段階で、業務の範囲と月額の目安をお示しします。

他社に支援を受けていますが、一部だけ頼めますか。

はい。当事務所は、着手が遅れている場合や、他社の支援で足りない部分だけのご依頼にも対応しています。たとえば会計論点の整理や監査法人への説明資料だけ、といったご依頼も可能です。

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IPO準備 N-3期〜申請期 タスクチェックリスト(Excel・73項目)

上場準備で何をいつまでに終えるかを、N-3期から申請期まで73項目で点検できます。記入すると区分ごとの要対応の数が自動で集計されます。

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鈴木佑也公認会計士税理士事務所では、ショートレビューから申請書類の作成、審査対応まで、必要な業務だけを選んでご依頼いただけます。ご提案した公認会計士が実務を担当し、作成物とあわせて作り方もお渡しして、貴社だけで運用できる状態を目指します。

  • 初回のご相談は無料です。業務の範囲と金額を書面でお示しするお見積りも無料です。
  • 料金の目安は料金の目安、支援の内容はIPO支援業務、ご契約までの手順はご契約の流れをご覧ください。
  • ご相談はお問い合わせフォーム、またはお電話(03-6820-0406)で承ります。お問い合わせには2営業日以内にご返信します。

本記事の根拠

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