新リース会計基準の貸手の注記とは?適用初年度の注記も解説

「借手の注記は準備を始めたが、貸手側は現行どおりでよいのか」「移行の年だけ求められる注記は何を集めればよいのか」。リース資産を賃貸している事業会社や、設備リース子会社を持つIPO準備会社の経理・管理部門から、よくいただくご相談です。

公認会計士・税理士として監査対応と決算支援に携わる立場から、貸手の注記事項と適用初年度に固有の注記を、条項に沿って整理します。前回の借手の注記と対になる回です。

貸手の注記に何を書くか貸手としての情報を集めるファイナンス・リースの債権があるか満期の分析を開示するはいいいえオペレーティング・リースの収益があるか受取額の期間別の情報を開示するはいいいえ適用の初年度に当たるか経過措置に対応した注記を確かめるはいいいえ借手の注記と様式をそろえる

図 貸手の注記に必要な情報

結論:貸手の注記は2区分、適用初年度は借手に固有の注記がある

貸手の注記は、「リース特有の取引に関する情報」と「当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報」の2つです(基準55項(2))。借手にある「会計方針に関する情報」の区分は置かれていません(基準55項(1)、(2))。

これに対し適用初年度は、累積的影響額を期首の利益剰余金に加減する方法を選ぶ借手に限り、通常の会計方針の変更の注記に代えて、追加借入利子率の加重平均と差額の説明を注記します(指針125項)。「毎期の注記」と「移行の年だけの注記」を分けて考えるのが出発点です。

本会計基準は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用し、2025年4月1日以後開始する事業年度等の期首から適用することもできます(基準58項)。適用指針の適用時期も同様です(指針112項)。

まず「表示」と「注記」の関係を押さえる

貸手は本表で区分表示していれば注記が不要になる項目が多く、表示方針を先に決めるほど作業が軽くなります。

項目 取扱い 根拠
リース債権及びリース投資資産 貸借対照表においてそれぞれ区分して表示する、又はそれぞれが含まれる科目及び金額を注記する。リース債権の期末残高が両者の合計額に占める割合に重要性が乏しい場合は合算して表示又は注記することができる 基準52項
ファイナンス・リースに係る販売損益 損益計算書において区分して表示する、又は含まれる科目及び金額を注記する(売上高から売上原価を控除した純額) 基準53項(1)
リース債権及びリース投資資産に対する受取利息相当額 損益計算書において区分して表示する、又は含まれる科目及び金額を注記する 基準53項(2)
オペレーティング・リースに係る収益 損益計算書において区分して表示する、又は含まれる科目及び金額を注記する(貸手のリース料に含まれるもののみ) 基準53項(3)

貸手の注記事項の一覧

注記の中身は、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースで分かれます。全体像は次のとおりです。

区分 注記事項 根拠
ファイナンス・リース①リース特有の取引に関する情報 貸借対照表において区分して表示していない場合、リース投資資産のリース料債権部分及び見積残存価額部分の金額並びに受取利息相当額、リース債権のリース料債権部分の金額及び受取利息相当額(債権部分は利息相当額控除前) 指針103項、104項
同上 リース債権及びリース投資資産に含まれない将来の業績等により変動する使用料に係る収益を損益計算書において区分して表示していない場合、含まれる科目及び金額 指針105項
ファイナンス・リース②当期及び翌期以降の金額を理解するための情報 リース債権及びリース投資資産の残高に重要な変動がある場合のその内容 指針106項(1)(2)
同上 リース料債権部分について、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの回収予定額及び5年超の回収予定額(利息相当額控除前) 指針106項(3)(4)
オペレーティング・リース①リース特有の取引に関する情報 貸手のリース料に含まれない将来の業績等により変動する使用料に係る収益を損益計算書において区分して表示していない場合、含まれる科目及び金額 指針108項
オペレーティング・リース②当期及び翌期以降の金額を理解するための情報 貸手のリース料について、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの受取予定額及び5年超の受取予定額 指針109項

リース債権の期末残高の割合に重要性が乏しい場合は、構成要素の注記も回収予定額の注記も合算できます(指針104項、106項)。リース債権についても構成要素の開示が求められた点は企業会計基準第13号からの変更点で、リース投資資産とは性質の異なるリース債権について区分した情報が有用であることが理由とされています(指針BC155項)。

実務で見落としやすいのは、変動使用料の対象範囲が分類で異なる点です。ファイナンス・リースは「リース債権及びリース投資資産に含まれないもの」、オペレーティング・リースは「貸手のリース料に含まれないもの」が対象です(指針105項、108項)。歩合賃料や稼働連動の使用料がある契約では、この違いを踏まえて抽出条件を定義しないと注記金額がずれます。監査でも、定義書と実際の抽出条件の一致は確認されやすい箇所です。

残高の変動の例としては、企業結合による変動、見積残存価額の変動、貸手のリース期間の終了による見積残存価額の減少、残価保証額の変動、中途解約による減少、新規契約による増加が挙げられています(指針107項(1)から(6))。この注記に必ずしも定量的情報を含める必要はありません(指針107項)。

貸手の注記の全体像(基準55項(2)) 開示目的:リースが貸手の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに 与える影響を評価するための基礎となる情報を開示する(基準54項) ファイナンス・リースの貸手 オペレーティング・リースの貸手 ①リース特有の取引に関する情報 ・リース料債権部分、見積残存価額  部分及び受取利息相当額(指針104項) ・変動する使用料の収益(指針105項) ①リース特有の取引に関する情報 ・貸手のリース料に含まれない変動  する使用料の収益(指針108項) ②当期・翌期以降の金額を理解する情報 ・残高に重要な変動がある場合の内容  (指針106項(1)(2)) ・回収予定額(指針106項(3)(4)) ②当期・翌期以降の金額を理解する情報 ・貸手のリース料の受取予定額  (指針109項)

貸手の注記は2区分。分類ごとに求められる情報が異なります。

数値例:回収予定額の注記を組み立てる

当事務所で設計した数値例で確認します(実在の企業を想定したものではありません)。B社は3月決算の設備リース会社で、リース債権とリース投資資産を貸借対照表に区分表示していないものとします。

期末残高(利息相当額控除前)は、リース投資資産のリース料債権部分240,000千円・見積残存価額部分18,000千円・受取利息相当額22,500千円、リース債権のリース料債権部分62,000千円・受取利息相当額4,700千円です。リース債権の期末残高57,300千円が、リース投資資産の期末残高235,500千円との合計292,800千円に占める割合は約19.6%で、重要性が乏しいとは言えないと判断し、合算せずに区分して注記します。

回収予定期間 リース投資資産に係るリース料債権部分 リース債権に係るリース料債権部分
1年以内 68,000千円 18,000千円
1年超2年以内 60,000千円 15,000千円
2年超3年以内 48,000千円 12,000千円
3年超4年以内 36,000千円 9,000千円
4年超5年以内 20,000千円 6,000千円
5年超 8,000千円 2,000千円
合計 240,000千円 62,000千円

作成時の勘所は3つです。合計欄が構成要素の注記のリース料債権部分と一致すること、金額は利息相当額控除前で貸借対照表計上額とは一致しないこと、見積残存価額部分は回収予定額の表に含めないこと。監査の現場では、この3点の突合表を求められることが多いという印象があります。

なお、連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表では、基準55項及び適用指針94項から109項の定めにかかわらず、①及び②を注記しないことができます(指針110項)。貸手の注記は①②の両方が対象に含まれます。

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

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適用初年度の注記

ここからは移行の年に固有の論点です。会計基準の適用初年度は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用します(指針118項)。ただし、適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することもできます(指針118項ただし書き)。

このただし書きの方法を選択する借手は、企業会計基準第24号第10項(5)の注記に代えて、適用初年度の期首の貸借対照表に計上されているリース負債に適用している借手の追加借入利子率の加重平均(指針125項(1))と、前事業年度末に企業会計基準第13号を適用して開示したオペレーティング・リースの未経過リース料(当該利子率で割引後)と期首に計上したリース負債との差額の説明(指針125項(2))を注記します。

適用初年度の移行方法と借手の注記(指針118項・125項) 会計基準の適用初年度は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として 取り扱う(指針118項) 原則:全期間に遡及適用 ただし書き:期首の利益剰余金で調整 ・新たな会計方針を過去の期間の  すべてに遡及適用(指針118項) ・累積的影響額を適用初年度の期首  の利益剰余金に加減(指針118項) 注記 企業会計基準第24号に定める会計 方針の変更に関する注記によること になると考えられます 注記(指針125項) 第24号第10項(5)の注記に代えて (1)期首のリース負債に適用した追加  借入利子率の加重平均 (2)第13号の未経過リース料と期首の  リース負債との差額の説明

移行方法の選択が、適用初年度の注記の内容を決めます。

差額の説明をどう書くか

実務で最も手が止まるのが、指針125項(2)の「差額の説明」です。差額を示すだけでなく、なぜ差が生じたのかの説明が求められます(指針125項(2))。数値例で考えてみます。

C社(3月決算・借手)の前事業年度末に開示した企業会計基準第13号のオペレーティング・リースの未経過リース料は1,800,000千円で、これを追加借入利子率の加重平均1.2%で割り引くと約1,750,000千円となります。一方、適用初年度の期首に計上したリース負債は1,943,000千円で、差額は193,000千円です。内訳は、新たにリースとして識別した契約による増加120,000千円、延長オプションを含めてリース期間を見直したことによる増加105,000千円、期首から12か月以内に終了するリースへの簡便的な取扱いの適用による減少32,000千円です。

この3つの要因は、いずれも経過措置の選択と直結しています。適用初年度の期首時点で存在する企業会計基準第13号を適用していない契約について当該時点の事実及び状況に基づき判断すること(指針119項(2))、オプションが含まれる場合にリース開始日より後に入手した情報を使用すること(指針124項(4))、期首から12か月以内に借手のリース期間が終了するリースについて適用指針20項の方法で会計処理を行うこと(指針124項(2))です。どれを選んだかを記録していないと、差額の説明そのものが書けなくなります。

企業会計基準第13号より前から続くリース

古いリースの注記も見落とされがちです。リース取引開始日が企業会計基準第13号の適用初年度開始前で、同基準に基づき所有権移転外ファイナンス・リース取引と判定されたものについて、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っている場合、会計基準適用後も当該会計処理を継続できます(借手は指針114項、貸手は指針116項)。この場合、当該会計処理を適用している旨及び1993年リース取引会計基準で必要とされていた事項を注記します(指針114項、116項)。リース取引を主たる事業としている企業は、貸手についてのこの取扱いを適用できません(指針117項)。

自社だけで対応すると負担が大きいところ

貸手の注記も適用初年度の注記も、難易度を決めるのは「会計処理の結論」より「データの持ち方」です。

作業 負担が大きくなる理由
回収予定額の年度別集計 5年以内は1年ごと、5年超は一括という区分(指針106項(3)(4)、109項)で、利息相当額控除前の金額を契約単位から積み上げる。既存システムが元利合計や利息控除後でしか出力できないと、集計ロジックの追加開発が生じる
変動使用料の抽出 ファイナンス・リースとオペレーティング・リースで対象範囲の定義が異なる(指針105項、108項)ため、契約条項レベルで変動部分を切り出す必要がある
残高変動の要因分析 企業結合・見積残存価額の変動・中途解約など複数要因(指針107項)を、重要性を判断できる粒度で把握する必要がある
追加借入利子率の加重平均 契約ごとの割引率とリース負債残高を突合して算定する(指針125項(1))。適用した取扱いの記録がないと再現できない
差額の説明 前期末の未経過リース料と期首リース負債の橋渡し(指針125項(2))を、要因別に説明できる形で残す必要がある

特に後半の2つは、移行作業が終わってから遡って作ろうとすると、契約単位の中間データが失われていて再計算に時間がかかります。移行プロジェクトの設計段階で、注記に必要な項目を出力仕様に織り込んでおくのが確実です。

チェックリスト

  • リース債権とリース投資資産を本表で区分表示するか、注記で開示するかを決めているか
  • リース債権の期末残高の割合を計算し、合算の可否を判断した記録が残っているか
  • リース料債権部分・見積残存価額部分・受取利息相当額を利息相当額控除前で集計しているか
  • 変動使用料の集計範囲を、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースで区別して定義しているか
  • 回収予定額の合計が、構成要素の注記のリース料債権部分と一致しているか
  • 連結を作成している場合、個別財務諸表での簡素化を適用するか方針を決めているか
  • 移行方法(原則法か、期首の利益剰余金で調整する方法か)を選択し、社内で承認しているか
  • 適用した経過措置を契約単位で記録し、差額の説明に紐づけられる状態にしているか

よくある質問

Q. 貸手には「会計方針に関する情報」の注記は不要ですか。

借手は①会計方針に関する情報、②リース特有の取引に関する情報、③当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報の3区分であるのに対し、貸手は①リース特有の取引に関する情報と②当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報の2区分です(基準55項(1)、(2))。なお、示された区分に従って記載する必要はありません(基準56項)。

Q. 重要性が乏しい場合は省略できますか。

各注記事項のうち、開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる注記事項は、記載しないことができるとされています(基準55項)。開示目的は、本表で提供される情報と併せて、リースが財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに与える影響を評価するための基礎を与える情報を開示することにあります(基準54項)。省略の判断はこの目的に照らして行うことになります。

Q. 適用初年度の注記は貸手にもありますか。

指針125項の注記は、期首の利益剰余金で調整する方法を選択する「借手」に対する定めです(指針125項)。貸手には、ファイナンス・リースに分類していたリースの帳簿価額の引継ぎ(指針131項)や、オペレーティング・リースに分類していたリース等を適用初年度の期首に締結された新たなリースとして扱う取扱い(指針132項)などの経過措置が置かれています。

まとめ

貸手の注記は2区分で、ファイナンス・リースでは構成要素と回収予定額(指針104項、106項)、オペレーティング・リースでは変動使用料の収益と受取予定額(指針108項、109項)が中心です。適用初年度は、期首の利益剰余金で調整する方法を選ぶ借手について、追加借入利子率の加重平均と差額の説明が求められます(指針125項)。

関連回として、貸手の会計処理(分類と売上高の計上)と借手の注記の作り方もあわせてご覧ください。連載全体の目次は新リース会計基準の連載目次にまとめています。次回は「経過措置と移行プロジェクトの進め方」を取り上げ、本記事で触れた経過措置の選択を含むスケジュール設計を解説する予定です。

注記の設計は、移行プロジェクトの初期に決めるのが近道です

回収予定額の集計仕様、変動使用料の抽出条件、差額の説明に必要な中間データ。どれも後から作り直すと負担が大きくなります。導入対応でお困りの場合はご相談ください。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の会計処理や開示の判断は、契約内容・重要性の判断・監査人との協議によって異なります。最終的な会計処理及び開示の判断にあたっては、専門家にご相談ください。

参考

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」52項、53項、54項、55項、56項、58項/企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」20項、94項、103項、104項、105項、106項、107項、108項、109項、110項、112項、114項、116項、117項、118項、119項、124項、125項、131項、132項、BC155項、BC158項

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