100パーセント子会社に資金を入れたり、逆に子会社から資金を吸い上げたりすると、寄附金の問題が出てきます。グループ法人税制のもとでは、支出側は全額が損金不算入、受領側は全額が益金不算入になり、グループ全体の所得は動きません。
ここで終わりではありません。株主である法人のところで、子法人株式の税務上の帳簿価額を修正する処理が生じます。寄附修正です。会計上は何も起きないため、気づかれないまま別表五(一)に残り続けることがあります。
この記事では、寄附修正がなぜ必要なのか、金額をどう計算するのか、そして株式を売るときに何が起きるのかを、条文と国税庁の設例にもとづいて整理します。
- 100%グループ内の寄附が損金不算入・益金不算入になること
- この取扱いが法人による完全支配関係に限られること
- 寄附修正が株主である法人のところで生じること
- 会計仕訳がなく、別表五(一)だけに残ること
- 従業員持株会やストックオプションと完全支配関係の関係

寄附修正 別表五(一)の残高管理シート
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この記事の見出し
📌 グループ内の寄附は、税務では消える
法人税法第37条第2項は、内国法人が、完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額は、所得の金額の計算上、損金の額に算入しないと定めています。第25条の2第1項は、その裏返しとして、受けた受贈益の額は益金の額に算入しないと定めています。
受贈益の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってされるかを問わず、金銭その他の資産または経済的な利益の贈与または無償の供与を受けた場合の価額です。低額で譲り受けた場合の差額のうち、実質的に贈与を受けたと認められる金額も含まれます。
図 支出側で損金にならず、受領側で益金にもならない。グループ全体で見ると、所得は動きません。
📌 ただし、法人によるものに限られる
見落としやすいのが、条文の括弧書きです。第37条第2項も第25条の2第1項も、完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)と書かれています。
親会社が法人であれば、その法人の株式をオーナー個人が100パーセント持っていても適用があります。一方、オーナー個人が2社を直接100パーセント持っているだけの兄弟会社の間では、この取扱いは使えません。通常の寄附金の損金算入限度額の計算になり、受贈益は全額が益金になります。
図 オーナー個人が直接2社を持っている形では、この取扱いは使えません。間に法人が入っているかどうかで結論が変わります。
国税庁の質疑応答事例では、グループ法人税制の各制度を並べた比較が示されています。譲渡損益の調整、現物分配、受取配当、自己株式の譲渡には法人によるという限定がなく、寄附金と受贈益だけに限定がかかっています。
📌 動くのは、株主のところ
ここからが寄附修正です。法人税法施行令第9条第7号は、完全支配関係がある子法人の株式について寄附修正事由が生ずる場合の金額を、利益積立金額の計算要素として定めています。寄附修正事由とは、子法人が受贈益で益金不算入の適用があるものを受けたこと、または子法人が寄附金で損金不算入の適用があるものを支出したことです。
処理をするのは、寄附をした法人でも受けた法人でもありません。その子法人の株主である法人です。子法人に資金が入れば株式の価値は上がり、出ていけば下がる。その動きを税務上の帳簿価額に反映させる、という考え方です。
図 子法人が寄附を受けたり出したりすると、その株主のところで簿価と利益積立金額が動きます。
金額は、受贈益の額に持分割合を乗じた金額から、寄附金の額に持分割合を乗じた金額を控除して計算します。持分割合は、寄附修正事由が生じた時の直前の発行済株式(自己株式を除く)の総数に対する保有割合です。株式を持ち合っている場合は、各株主がそれぞれの持分割合に応じて修正します。
図 子法人が受贈益を受けたときは増え、寄附金を出したときは減ります。同じ金額だけ利益積立金額も動きます。
📌 会計仕訳はない
寄附修正で動くのは、税務上の帳簿価額と利益積立金額だけです。会計上は、子会社株式の帳簿価額を動かす根拠がありません。仕訳は1本も起きません。
そのため、会計上の簿価と税務上の簿価に差額が生まれます。この差額は、子法人株式を売却するか、評価減するか、清算するまで解消しません。
図 会計の側では何も起きないため、決算の作業のなかで気づく機会がありません。税務の側だけで差額が積み上がります。
| 何が起きるか | 根拠 |
|---|---|
| 支出側の寄附金が全額損金不算入 | 法人税法第37条第2項 |
| 受領側の受贈益が全額益金不算入 | 法人税法第25条の2第1項 |
| 株主の利益積立金額の増減 | 法人税法施行令第9条第7号 |
| 子法人株式の税務上の帳簿価額の修正(移動平均法) | 法人税法施行令第119条の3第9項 |
| 同(総平均法) | 法人税法施行令第119条の4第1項 |
| 完全支配関係の判定 | 法人税法第2条第12号の7の6、施行令第4条の2第2項 |
表 寄附と寄附修正に関する主な根拠条文。
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📌 別表五(一)に残り続ける
申告書で書く場所は別表五(一)です。国税庁の法人税申告書の記載の手引には、法人が有する完全支配関係がある法人の株式等について寄附修正事由が生ずる場合には、区分に○○株式(寄附修正)などと表示した上で、令第9条第7号に規定する金額を減②または増③に記載します、と書かれています。
寄附修正専用の別表はありません。別表一覧を見ても、名称に受贈益や寄附修正を含む別表は置かれていません。区分欄に自分で名前を書いて立てる、という運用になります。
図 立てた年度は別表四には出てきません。税務上の簿価として別表五(一)に積まれるだけです。
国税庁の質疑応答事例には、寄附修正をした株式をあとで売却した場合の設例が載っています。会計上と税務上で株式の帳簿価額が違うため売却益の金額がずれ、別表四でその差を調整し、別表五(一)の寄附修正の残高を落とす、という流れです。
図 残高は数年にわたって繰り越されます。担当者の交代やシステムの入れ替えで落ちやすいのは、ここです。
📌 完全支配関係が崩れる場面
上場準備の会社で気をつけたいのが、完全支配関係の判定です。法人税法施行令第4条の2第2項は、発行済株式等の全部を保有する場合、としたうえで、判定から除ける株式を二つ挙げています。
ひとつは、従業員持株会がその目的に従って取得した株式。もうひとつは、役員または使用人に付与された新株予約権の行使によって取得された株式で、その役員等が持っているものです。ただし、これらの合計が発行済株式の総数の5パーセント未満である場合に限られます。
図 持株会とストックオプションを入れていくと、この5パーセントの線に近づきます。超えるとグループ法人税制が使えなくなります。
もうひとつ、グループ通算制度を適用している場合です。施行令第9条第7号は、完全支配関係から通算完全支配関係を除いた子法人を対象としています。通算グループ内の子法人株式は寄附修正の対象ではなく、投資簿価修正という別の制度で扱われます。
図 同じ100パーセント子会社でも、通算グループに入れているかどうかで、株式の簿価を動かす仕組みが変わります。
完全支配関係の判定、寄附修正の計算、別表五(一)の残高の引き継ぎまで支援しています。上場準備で持株会やストックオプションを検討している場合のご相談にも対応できます。上場準備会社の会計と税務の実務に携わっている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
❓ よくある質問
A. 使えません。法人税法第37条第2項と第25条の2第1項は、いずれも法人による完全支配関係に限ると定めています。間に法人が入っていない兄弟会社の間では、通常の寄附金の計算になります。
A. 寄附をした法人でも受けた法人でもなく、その子法人の株主である法人です。持ち合いの場合は、各株主がそれぞれの持分割合に応じて修正します。
A. 動かしません。寄附修正は税務上の帳簿価額と利益積立金額を動かすだけで、会計仕訳は生じません。その結果、会計と税務に差額が残ります。
A. 子法人株式を売却、評価減、清算などで処分したときです。それまでは別表五(一)に残り続けます。売却年度に別表四で調整し、別表五(一)の残高を落とすことになります。
A. 合理的な再建計画に基づく債権放棄など、そもそも寄附金に該当しない経済的利益の供与については、法人税法第37条第2項の適用がなく損金に算入されます。国税庁の質疑応答事例で示されています。
📄 まとめ
100パーセントグループ内の寄附は、支出側で全額が損金不算入、受領側で全額が益金不算入になります。ただし、この取扱いは法人による完全支配関係に限られ、オーナー個人が直接持っているだけの兄弟会社の間では使えません。
そのうえで、子法人の株主である法人のところで寄附修正が生じます。金額は、受贈益の額に持分割合を乗じた金額から寄附金の額に持分割合を乗じた金額を控除したもので、子法人株式の税務上の帳簿価額と利益積立金額が同じだけ動きます。
会計仕訳はありません。別表五(一)の区分欄に○○株式(寄附修正)と書いて金額を立てるだけです。専用の別表はなく、別表四にも出てきません。だからこそ、翌期以降へ確実に引き継ぐ必要があります。
上場準備の会社では、従業員持株会とストックオプションを入れていくと完全支配関係の5パーセントの線に近づきます。グループ通算を適用している場合は、寄附修正ではなく投資簿価修正の世界になります。資本政策を動かす前に、税務の前提が変わらないかを確かめておくことをおすすめします。
⚖ 本記事の根拠
- 法人税法第37条第2項(寄附金の損金不算入)、第25条の2(受贈益)、第2条第12号の7の6(完全支配関係)
- 法人税法施行令第9条第7号(利益積立金額)、第119条の3第9項、第119条の4第1項、第4条の2第2項
- 法人税基本通達9-4-2の5 完全支配関係がある他の内国法人に対する寄附金
- 国税庁「平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例(グループ法人税制関係)」問5・問7
- 国税庁「平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例(グループ法人税制その他関係)」問4
- 国税庁「法人税申告書の記載の手引」 別表五(一)
- 国税庁「グループ通算制度に関するQ&A」問60(投資簿価修正)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の会計処理および税務上の判断は、監査人および顧問税理士にご確認ください。