株式交換と株式移転|持株会社をつくるときの手続と日程

持株会社をつくる方法は2つあります。既存の会社を完全親会社にする株式交換と、新しく会社を設立して完全親会社にする株式移転です。上場準備でグループを整理する場面や、上場後に持株会社体制へ移行する場面で使われます。

どちらも組織再編ですので、事前の備置き、株主総会の承認、反対株主の買取請求、債権者の異議という段取りを踏みます。ただし、期限の数え方が両者で違います。この記事では、その違いを軸に日程を整理します。

この記事でわかること

  • 株式交換は契約、株式移転は計画で進むこと(会社法767条・772条)
  • 事前開示書類の備置きがいつから始まるのか(782条2項・803条)
  • 買取請求の期間が株式交換と株式移転で異なること(785条・806条)
  • 株式移転の設立登記の起算日(925条)

2つの違いは、親会社が既にあるかどうか

会社法767条は、株式会社は株式交換をすることができるとしたうえで、その発行済株式の全部を取得する会社との間で株式交換契約を締結しなければならないと定めています。既にある会社が完全親会社になるので、契約です。

会社法772条1項は、1または2以上の株式会社は株式移転をすることができるとしたうえで、株式移転計画を作成しなければならないとしています。完全親会社はこれから設立されるので、相手方がいません。だから契約ではなく計画です。同条2項により、2以上の会社が共同して株式移転をする場合には、共同して計画を作成します。

持株会社をつくるときは、通常は株式移転を使います。既存の事業会社の上に新しい会社を設立し、事業会社の株主が新会社の株主になる形です。株式交換は、既にあるグループ会社を完全子会社化するときに使われます。

事前開示書類の備置き

会社法782条1項は、株式交換完全子会社は、備置開始日から効力発生日後6か月を経過する日までの間、株式交換契約の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面等を本店に備え置かなければならないと定めています。

その備置開始日が同条2項です。株主総会の決議によって承認を受けなければならないときは、その株主総会の日の2週間前の日。反対株主への通知を受けるべき株主があるときは、その通知の日または公告の日のいずれか早い日。新株予約権者への通知があるときも同様。債権者保護手続をしなければならないときは、公告の日または催告の日のいずれか早い日。これらに当たらない場合は、契約の締結の日から2週間を経過した日です。いずれか早い日が備置開始日になります。

株式移転については会社法803条が同じ構造の規定を置いています。備置きの終期は、株式移転設立完全親会社の成立の日後6か月を経過する日までです。

株主総会の承認は特別決議

会社法783条1項は、株式交換完全子会社は効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって株式交換契約の承認を受けなければならないと定めています。株式移転については804条1項が、株主総会の決議によって株式移転計画の承認を受けなければならないとしています。

この決議は309条2項12号により特別決議です。同号は、第五編の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会を挙げています。第五編が組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転および株式交付を定める編です。

株式交換の完全親会社の側にも承認が要ります。会社法795条1項です。ただし796条2項に簡易の例外があり、交付する株式の数に1株当たり純資産額を乗じた額などの合計額が、存続株式会社等の純資産額の5分の1を超えない場合には、承認が不要になります。定款でこれを下回る割合を定めることもできます。同条3項により、法務省令で定める数の株式を有する株主が、通知または公告の日から2週間以内に反対する旨を通知したときは、効力発生日の前日までに株主総会の決議による承認が必要になります。

会社法784条1項と796条1項には略式の規定もあります。相手方が特別支配会社である場合には、承認の決議を要しません。グループ内の完全子会社化ではこの規定が使えることがあります。

買取請求の期間が両者で違う株式交換効力発生日を契約で定める通知は効力発生日の20日前まで請求は20日前の日から前日まで承認は効力発生日の前日まで783条1項・785条3項・5項株式移転設立登記の日に効力が生じる通知は総会決議の日から2週間以内請求は通知または公告から20日以内承認の期限は条文に定めなし804条1項・806条3項・5項

同じ20日でも、起算点がまったく違います。日程表を作るときの要注意点です

反対株主の買取請求 期間の数え方が違う

株式交換では、会社法785条3項が、効力発生日の20日前までに株主に対して株式交換をする旨などを通知しなければならないとしています。同条4項により、公開会社である場合や株主総会の決議によって承認を受けた場合は公告に代えることができます。同条5項により、株式買取請求は効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間にしなければなりません。

株式移転では違います。会社法806条3項が、804条1項の株主総会の決議の日から2週間以内に、株主に対して株式移転をする旨などを通知しなければならないとしています。同条4項により公告に代えられます。そして同条5項により、株式買取請求は通知または公告をした日から20日以内にしなければなりません。

株式交換が効力発生日から逆算するのに対し、株式移転は総会決議の日から前に進む形です。株式移転には契約で定める効力発生日がなく、設立登記の日に効力が生じるためです。

債権者の異議

株式交換では、債権者保護手続が必要になる場面が限られます。会社法799条1項3号は、株式交換をする場合において、完全子会社の株主に交付する金銭等が完全親株式会社の株式その他これに準ずるもののみである場合以外の場合などに、完全親株式会社の債権者が異議を述べることができるとしています。対価が親会社株式だけであれば、原則として手続が不要ということです。

手続が必要になる場合は、同条2項により、官報に公告し、かつ知れている債権者には各別に催告します。異議を述べることができる期間は1か月を下ることができません。同条3項により、官報のほかに定款所定の公告方法によっても公告すれば、各別の催告を省略できます。

この1か月が日程に効いてきます。手続が必要な設計にするのであれば、効力発生日から1か月以上さかのぼった時点で公告を出す必要があります。

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効力の発生と登記

株式交換の効力発生日は、株式交換契約で定めた日です。その日に完全親会社が完全子会社の発行済株式の全部を取得します。完全親会社が対価として株式を発行すれば、発行済株式の総数と資本金の額が変わりますので、会社法915条1項により本店の所在地において2週間以内に変更の登記をします。

株式移転は、設立の登記によって効力が生じます。会社法925条は、次に掲げる日のいずれか遅い日から2週間以内に、本店の所在地において株式移転設立完全親会社の設立の登記をしなければならないと定めています。株式移転計画の承認の株主総会の決議の日、種類株主総会の決議を要する場合はその決議の日、反対株主の株式買取請求に係る通知または公告の日から20日を経過した日、新株予約権買取請求に係る通知または公告の日から20日を経過した日などです。

いずれか遅い日、という書き方に注意してください。買取請求の期間が終わるまで登記ができないということです。総会の決議さえ済めばすぐに設立できる、とはなりません。

項目 株式交換 株式移転
書面 株式交換契約(767条) 株式移転計画(772条)
承認 効力発生日の前日まで(783条1項) 株主総会の決議(804条1項)
買取請求 効力発生日の20日前の日から前日まで 通知または公告の日から20日以内
効力の発生 契約で定めた効力発生日 設立の登記の日

無効を争える期間

会社法828条1項11号は株式交換について、同項12号は株式移転について、効力が生じた日から6か月以内に訴えをもってのみ無効を主張することができると定めています。募集株式の発行のように非公開会社を1年とする定めはなく、いずれも6か月です。

上場準備での位置づけ

持株会社体制で上場する場合、株式移転で新会社をつくり、その新会社が申請会社になります。会社法の手続としてはここまでの流れですが、上場審査では、持株会社をいつ設立したか、グループの実態がどう変わったか、連続性のある業績を示せるかといった点が問われます。会社法の手続が終われば上場の準備が整う、という関係ではありません。

実務の日程としては、債権者保護手続が必要かどうか、買取請求の期間をどう置くかで全体の長さが決まります。株式移転では設立登記の起算日が最も遅い日に引っ張られますので、そこから逆算して総会の日を決めてください。取締役会での計画の承認、事前開示書類の作成、公告と通知の手配を、それぞれ誰がいつまでに行うかを一覧にしておくと漏れがありません。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 持株会社をつくるなら株式交換と株式移転のどちらですか。

A. 新しく親会社を設立するなら株式移転です。既にある会社を親会社にするなら株式交換です。会社法772条が株式移転を計画の作成、767条が株式交換を契約の締結としているのは、相手方がいるかどうかの違いによります。

Q. 株式交換に債権者保護手続は必要ですか。

A. 会社法799条1項3号により、完全子会社の株主に交付する金銭等が完全親株式会社の株式などのみである場合には、原則として不要です。対価に現金を含める場合などは必要になります。

Q. 株式移転の効力はいつ生じますか。

A. 設立の登記の日です。会社法925条により、株主総会の決議の日や買取請求に係る通知の日から20日を経過した日などのいずれか遅い日から2週間以内に登記をします。

📄 まとめ

株式交換は既存の会社を完全親会社にする契約、株式移転は新会社を設立して完全親会社にする計画です。どちらも事前の備置き、株主総会の特別決議、反対株主の買取請求という段取りを踏みます。

期限の数え方が違う点が実務の要注意点です。株式交換は効力発生日から逆算し、株式移転は総会決議の日から進みます。株式移転の設立登記は、買取請求の期間が終わるまでできませんので、そこから逆算して日程を組んでください。

⚖ 本記事の根拠

記載内容の根拠

  • 会社法767条(株式交換契約の締結)、772条1項・2項(株式移転計画の作成)
  • 会社法782条1項・2項(事前開示書類の備置きと備置開始日)、803条(株式移転の場合)
  • 会社法783条1項、804条1項(株主総会の承認)、309条2項12号(特別決議)
  • 会社法784条1項、795条1項、796条1項から3項(略式および簡易の例外と、5分の1の基準)
  • 会社法785条3項・4項・5項(株式交換における通知と買取請求の期間)
  • 会社法806条3項・4項・5項(株式移転における通知と買取請求の期間)
  • 会社法799条1項3号・2項・3項(債権者の異議と1か月の期間)
  • 会社法925条(株式移転設立完全親会社の設立の登記)、915条1項(変更の登記)
  • 会社法828条1項11号・12号(無効の訴えの6か月)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

このテーマの全体像は上場準備の会社法|定款・機関・株主総会・株式の手続にまとめています。

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