宗教法人が駐車場の貸付けや物品の販売を始めたとき、最初にやるべき手続きが収益事業開始届出書の提出です。
期限は、収益事業を開始した日以後2か月以内。事業年度の終わりではなく、開始の日から数えます。添付書類は貸借対照表と規則の写しの2つです。
この記事では、届出の内容と期限、あわせて必要になる青色申告の承認申請や自治体への届出を整理します。
- 収益事業開始届出書の期限と記載事項
- 添付する貸借対照表と定款等の写し
- いつが収益事業を開始した日になるか
- 青色申告の承認申請の期限が違う理由
- 都道府県と市区町村への届出
この記事の見出し
📌 期限は開始した日以後2か月以内
宗教法人が新たに収益事業を開始した場合には、その開始した日以後2か月以内に、届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません(法人税法150条1項)。この期限は事業年度の末日ではなく、開始の日を起点に数えます。
届出書に記載する事項は4つです。納税地、事業の目的、収益事業の種類、収益事業を開始した日。用紙は国税庁の様式で、収益事業開始届出書と呼ばれています。
この届出は義務であって、選択ではありません。所得が出るかどうか、規模が大きいかどうかにかかわらず、収益事業に当たる事業を始めた時点で提出の義務が生じます。
収益事業を開始したあとに続く手続きの流れ。届出と青色申告の申請は期限が異なります。
📌 添付するのは2つの書類
届出書には、開始した時における収益事業に係る貸借対照表と、定款等の写しを添付します(法人税法施行規則65条1項)。宗教法人の場合、定款等の写しとは規則の写しにあたります。
収益事業に係る貸借対照表は、収益事業に属する資産と負債を切り出したものです。開始の時点で、収益事業の用に供する建物や設備、預金、借入金がいくらあるのかを整理してください。
ここで作った貸借対照表が、その後の区分経理の出発点になります。収益事業以外の事業の用に供していた固定資産を収益事業の用に供することにした場合は、その時における帳簿価額で区分経理を行います(法人税基本通達15-2-2)。あらかじめ評価換えをして帳簿価額を増額しても、その増額はなかったものとされます。
📌 いつが開始した日になるか
開始した日の判断は、契約や工事の日ではなく、収益事業としての活動が始まった日で考えます。駐車場であれば区画の貸付けを始めた日、物品販売であれば販売を始めた日です。
迷いやすいのは、以前から続けていた活動が収益事業に当たると後から気づいた場合です。この場合の開始した日は、気づいた日ではなく、その活動を始めた日になります。過去にさかのぼって申告が必要になることもありますので、早めに整理してください。
また、収益事業に当たるかどうかの判断そのものが難しい場面もあります。34業種のどれに当たるのか、継続して事業場を設けて行われているといえるのか。判断がつかないときは、所轄の税務署に相談したうえで届出の要否を決めてください。
📌 青色申告の承認申請は期限が違う
届出書と一緒に検討したいのが、青色申告の承認申請です。欠損金の繰越しや各種の特例を使うには、青色申告の承認を受けている必要があります。
新たに収益事業を開始した日の属する事業年度から青色申告をするには、その開始した日以後3か月を経過した日と、その事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日までに申請書を提出します(法人税法122条2項2号)。
届出の2か月と申請の3か月は起点が同じでも期限が異なりますので、別々に管理してください。事業年度の終わりが近い時期に収益事業を始めた場合は、3か月より事業年度終了の日のほうが早く来ますので、実際の期限はさらに短くなります。
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📌 税務署だけでは終わらない
収益事業を行う宗教法人には、法人住民税の均等割が課されます(地方税法25条1項2号ただし書き、296条1項2号ただし書き)。したがって、都道府県と市区町村にも法人設立等の届出が必要です。様式と期限は自治体ごとに定められていますので、所在地の窓口で確認してください。
収益事業の売上規模によっては、消費税の課税事業者になることもあります。基準期間の課税売上高や特定期間の判定を確認し、必要な届出を検討してください。
職員に給与を支払うのであれば、給与支払事務所等の開設届出書も必要になります。収益事業の開始をきっかけに人を雇う場合は、源泉徴収の事務もあわせて設計してください。
📌 出し忘れに気づいたら
届出書を出していなかったことに気づいたら、期限後であってもすみやかに提出してください。届出書の提出自体に罰則の定めはありませんが、届出をしていないと申告もしていないことがほとんどですので、無申告加算税や延滞税の問題が先に来ます。
自主的に申告した場合と、税務署の調査で指摘された場合とでは、加算税の扱いが変わります。過去の年度をさかのぼって整理する必要があるかどうかも含めて、早い段階で相談してください。
青色申告の承認申請は、期限を過ぎるとその事業年度についてはさかのぼって受けることができません。欠損金の繰越しができない年度が生じますので、届出の遅れは税額にも影響します。
届出の要否は、その事業が34業種に当たるかの判定から決まります。開始時の貸借対照表の作り方と区分経理の設計まで、最初の設計からご一緒できます。宗教法人の税務と会計に対応している公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。宗教法人の税務顧問と会計体制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
❓ よくある質問
A. 必要です。法人税法150条1項は、新たに収益事業を開始した場合の届出を義務としており、所得の有無や規模を条件にしていません。
A. 受け付けてもらえます。届出書の提出自体に罰則の定めはありません。ただし、届出をしていない期間は申告もしていないことが多く、無申告加算税や延滞税の問題が生じます。気づいた時点ですみやかに提出してください。
A. 収益事業に係る貸借対照表です(法人税法施行規則65条1項1号)。収益事業に属する資産と負債を切り出して作成します。
A. 新たに収益事業を開始した日以後3か月を経過した日と、その事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日までです(法人税法122条2項2号)。届出書の2か月とは期限が異なります。
A. 収益事業を廃止した場合も、その旨を所轄税務署に知らせる必要があります。用いる様式や添付書類は状況によって異なりますので、最後の申告の時期とあわせて所轄の税務署にご確認ください。
📄 まとめ
宗教法人が新たに収益事業を開始した場合、その開始した日以後2か月以内に、納税地の所轄税務署長へ収益事業開始届出書を提出します(法人税法150条1項)。
記載事項は、納税地、事業の目的、収益事業の種類、収益事業を開始した日の4つ。添付するのは、開始した時における収益事業に係る貸借対照表と定款等の写しです(法人税法施行規則65条1項)。
青色申告の承認申請は、開始の日以後3か月を経過した日と事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日が期限です(法人税法122条2項2号)。届出とは期限が違います。
収益事業を行うと法人住民税の均等割が課されますので、都道府県と市区町村への届出も必要です。
⚖ 本記事の根拠法令
- 法人税法150条1項
- 法人税法施行規則65条1項
- 法人税法122条2項2号
- 法人税法施行令6条(収益事業を行う法人の経理の区分)
- 法人税基本通達15-2-2
- 地方税法25条1項2号および296条1項2号(宗教法人には均等割を課することができない)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
このテーマの全体像は宗教法人の税務|収益事業の判定と区分経理の実務にまとめています。