令和8年8月5日の閣議決定で、令和9年4月1日から2年間、軽減税率の対象となっている飲食料品に係る消費税率を1%とする方針が示されました。
ただし、これは政府の基本方針の段階です。法律案の内容も、総額表示の特例も、予約販売などの経過措置も、2026年9月の時点では公表されていません。
この記事では、いま公表されている事実と、まだ決まっていないことを区別したうえで、事業者がいま準備できることを整理します。
- 閣議決定で示された内容(令和9年4月から2年間、税率1%)
- 0%ではなく1%とされた理由(システム改修の期間)
- 総額表示の特例と経過措置がまだ検討段階であること
- いまのうちに確かめておくべきシステムと価格表示の範囲
図 消費税率の引下げに向けて何を準備するか
📌 決まったことと決まっていないこと
まず区別しておきたいのは、何が決まっていて何がこれからなのかです。
決まっているのは、政府の基本方針です。令和8年8月5日に閣議決定された給付付き税額控除の制度導入の基本方針において、令和9年4月1日から2年間、軽減税率の対象となっている飲食料品に係る消費税率を1%とすることが示されました。
決まっていないのは、法律の中身です。基本方針には法制上の措置を可及的速やかに講ずるとの記載があるにとどまり、具体的な法律案の内容や国会への提出の時期は示されていません。総額表示の特例も、予約販売などの経過措置も、公表された資料では確認できていません。
表 内閣官房および首相官邸の公表資料をもとに作成(2026年9月時点)
📌 なぜ0%ではなく1%なのか
令和8年7月30日の会見では、1%であれば0%とするよりも事業者のシステム改修の期間を短縮できるという説明がされています。
税率をゼロにすると、免税や不課税との区別を含めてシステムの作りを変える必要が出てきます。1%であれば税率の数値を変えるだけで済む場合が多く、改修の範囲が狭くなるという考え方です。
期間の終了後については、令和11年度から本格導入される所得に連動した給付にあわせて、飲食料品の消費税率を元の8%に戻すとされています。給付付き税額控除は令和11年4月に本格導入され、令和9年6月以降に所得連動の給付が先行して導入される予定です。
📌 総額表示の義務と特例の議論
消費税法第63条は、事業者が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合に、消費税額を含めた税込価格を表示することを義務づけています。値札、広告、カタログ、ホームページの価格表示が対象です。
税率が変わると、この税込価格をすべて書き換えることになります。品目数の多い小売業では、値札の貼り替えだけで相当な作業量になります。しかも2年後には元の税率に戻る方針ですから、同じ作業が2回発生します。
こうした事業者の負担を踏まえて、総額表示について特例を設ける検討が行われていると報じられています。ただし2026年9月の時点で、財務省や国税庁の公表資料に特例の具体的な内容は示されていません。税抜表示を認めるのか、旧税込価格の据置きを認めるのか、期間をどうするのかは、いずれもこれからです。
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📌 いま準備できること
図 いまのうちに確かめておくこと
この段階でできるのは、影響を受ける範囲を把握しておくことです。とくに、システムのどこで税率を持っているかを確かめておくと、改修の見積りが早く出せます。税率をプログラムの中に直接書いている場合と、設定値として外に出している場合とでは、改修の手間がまったく違います。
適格請求書の様式も確かめてください。適格請求書には税率ごとに区分した対価の額と消費税額等を記載します。税率の区分が増えれば、様式と集計の仕組みの両方に影響します。
予約販売や長期の契約については、経過措置の内容が示されるまで待つことになります。過去の税率改定では、一定の日より前に締結した契約について旧税率を適用する経過措置が置かれてきました。今回も同様の措置が置かれるかどうかは、法律案が公表されないと分かりません。
📌 混同しやすい2つの話
1つ目は、野党が国会に提出している法律案です。飲食料品に係る消費税の税率を零とする内容の議員立法が提出され、継続審査となっています。税率も適用の期間も政府の基本方針とは異なります。報道でどちらを指しているのかを確かめて読む必要があります。
2つ目は、輸出物品販売場制度の見直しです。訪日外国人旅行者向けの免税制度が、販売時に免税する方式から、税込みで販売して出国時に返金するリファンド方式に変わります。施行は令和8年11月1日で、免税店の許可の申請は令和8年10月1日から受付が始まります。こちらは飲食料品の税率の引下げとはまったく別の制度改正です。
税率の変更はシステムと価格表示の両方に及びます。影響範囲の洗い出しと、改修の見積りの前提づくりから対応できます。上場準備会社の会計と税務の実務に携わっている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。
❓ よくある質問
A. 政府の基本方針として閣議決定されています。ただし法律案の内容と国会への提出の時期は公表されていません。実際に適用されるには法律の成立が必要です。
A. 特例の検討が行われていると報じられていますが、具体的な内容は公表されていません。現行の消費税法第63条では税込価格の表示が義務づけられていますので、特例の内容が示されるまでは現在の取扱いが続きます。
A. 過去の税率改定では一定の日より前の契約に旧税率を適用する経過措置が置かれてきましたが、今回については公表された資料で確認できていません。法律案の公表を待つことになります。
A. 関係ありません。輸出物品販売場制度の見直しは訪日外国人旅行者向けの免税制度の話で、令和8年11月1日の施行です。飲食料品の税率の引下げとは別の制度改正です。
📄 まとめ
令和9年4月1日から2年間、飲食料品に係る消費税率を1%とする方針が閣議決定されました。期間の終了後は元の8%に戻すとされています。
法律案の内容、総額表示の特例、予約販売などの経過措置は、いずれもまだ公表されていません。決まった前提で準備を進めると、後で作り直しになる可能性があります。
いまできるのは影響範囲の把握です。軽減税率の対象品目の洗い出し、システムのどこで税率を持っているかの確認、価格表示の箇所の棚卸し。この3つを進めておけば、法案が公表された段階ですぐに動けます。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。