流通株式比率は、流通株式数を上場株式数で割った割合です。プライムで35パーセント以上、スタンダードとグロースで25パーセント以上が求められます。
計算式は単純ですが、分母を間違える例をよく見ます。分母は上場株式数です。自己株式も含めた発行済株式の総数で割ります。
そしてこの比率は、上場審査のときだけの話ではありません。上場したあとも同じ水準が上場維持基準として続きます。
- 計算式と、分母に何を置くか
- 3市場それぞれの基準
- 比率を上げる打ち手と、その副作用
- 上場したあとも同じ比率が続くこと
- 自社の比率をどう調べるか
📌 結論 流通株式数を上場株式数で割る
分母は上場株式数です。流通株式数を分母にしてしまう誤りをときどき見かけます。
東京証券取引所は、流通株式比率を、流通株式数を上場株式数で除して100を乗じた割合としています。
分子は流通株式数です。役員が持つ株式、特別利害関係者が持つ株式、上場会社の関係会社が持つ株式、自己株式などを除いたあとの株数になります。流通株式の定義は有価証券上場規程施行規則第8条に置かれています。
分母は上場株式数です。ここに自己株式が含まれる点に注意してください。自己株式は分子から除かれ、分母には残ります。自己株式を多く持つ会社ほど、比率は下がります。
🧭 3市場でどれだけ必要か
比率だけを満たしても上場はできません。3つを同時に満たす必要があります。
プライムは35パーセント以上、スタンダードとグロースは25パーセント以上です。
比率だけを満たしても足りません。流通株式数と流通株式時価総額も同時に満たす必要があります。3つが連動しているため、1つを追いかけると別の基準が落ちます。
たとえば比率を上げるために創業者が持分を放出すると、需給が緩んで株価が下がり、流通株式時価総額のほうが落ちることがあります。順番を決めて動かす必要があります。
流通株式比率は、株主構成をどう作るかでほぼ決まります。上場直前に慌てて動かすと、経営の安定性の説明が難しくなります。公認会計士が株主名簿の分解から市場選択まで通してお手伝いします。初回のご相談は無料です。
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🧾 比率を上げる打ち手
どの打ち手にも副作用があります。主幹事証券会社と早い段階から並べて検討してください。
比率を上げる方法は、分子を増やすか分母を減らすかの2つしかありません。
分子を増やすのは、公募を増やす、創業者や役員が売出しに出す、関係会社や取引先の持分を減らす、といった打ち手です。分母を減らすのは自己株式の消却などになりますが、上場前の会社では現実的でないことが多いでしょう。
どの打ち手にも副作用があります。創業者が大量に売り出せば経営の安定性を問われますし、公募を増やせば1株当たり利益が薄まります。取引先に持ってもらっている株を減らせば、取引関係そのものに影響します。
主幹事証券会社と早い段階から、副作用を含めて並べて検討してください。
📅 上場したあとも同じ比率が続く
上場したあとも同じ比率が続きます。上場審査を通ることだけを考えた設計は、数年後に効いてきます。
新規上場の形式要件と上場維持基準で、求められる比率は同じです。上場審査を通ることだけを考えた設計は、数年後に効いてきます。
上場維持基準の判定は、各事業年度末日の状況について年1回行われます。基準に適合しない状態が続くと、改善期間を経て上場廃止に向かう仕組みです。
上場後にロックアップが外れて創業者が売却すれば比率は上がりますが、逆に第三者割当や株式交換で特定の株主の持分が増えれば比率は下がります。資本を動かすたびに、この数字を確かめる運用が要ります。
❓ よくある質問
A. 流通株式数を上場株式数で割り、100を乗じます。
A. 違います。分母は上場株式数です。自己株式も分母に含まれます。
A. 35パーセント以上です。
A. どちらも25パーセント以上です。
A. 流通株式からは除かれます。自己株式の処分を決議した場合の取扱いが別に定められています。
A. 公募を増やす、既存株主が売出しに出す、関係会社の持分を減らす、といった方法です。それぞれ副作用があります。
A. 上場維持基準として同じ比率が続きます。判定は各事業年度末日の状況について年1回です。
A. 株主名簿を分解して、役員、特別利害関係者、関係会社、10パーセント以上を持つ株主の分を仕分けます。
📄 まとめ
流通株式比率は、流通株式数を上場株式数で割った割合です。分母は上場株式数で、自己株式を含みます。
プライムは35パーセント以上、スタンダードとグロースは25パーセント以上です。
比率を上げる打ち手には必ず副作用があります。株価や経営の安定性への影響とあわせて見てください。
上場したあとも同じ比率が続きます。いま資本政策を作っているなら、上場の翌年ではなく5年後の株主構成まで引いて考えてください。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の判断にあたっては、主幹事証券会社および監査法人にご確認ください。