流通株式比率とは(計算式)
流通株式比率とは、上場株式数のうち流通株式(役員・特別利害関係者・関係会社・10%以上を持つ株主などが持つ株式と自己株式を除いた株式)が占める割合で、「流通株式数÷上場株式数×100」で計算します。分母の上場株式数には自己株式も含みます。基準はプライム35%以上、スタンダードとグロース25%以上で、上場後も上場維持基準として続きます。
- 上場維持基準の判定は、各事業年度末日の状況で年1回
- 自己株式は分子から除かれ分母に残るため、多く持つほど比率は下がる
- 上場会社の比率は会社の開示で確かめ、有価証券報告書から概算もできる
2026年10月12日更新
流通株式比率は、流通株式数を上場株式数で割った割合です。プライムで35パーセント以上、スタンダードとグロースで25パーセント以上が求められます。
計算式は単純ですが、分母を間違える例をよく見ます。分母は上場株式数です。自己株式も含めた発行済株式の総数で割ります。
そしてこの比率は、上場審査のときだけの話ではありません。上場したあとも同じ水準が上場維持基準として続きます。
- 計算式と、分母に何を置くか
- 3市場それぞれの基準
- 比率を上げる打ち手と、その副作用
- 上場したあとも同じ比率が続くこと
- 自社の比率をどう調べるか
図 流通株式比率の確認
流通株式数、流通株式時価総額、流通株式比率の3つは連動しています。計算手順と3市場の基準、上場前の見積り方、基準に届かないときの打ち手までを1本にまとめた流通株式時価総額と比率の記事もあわせてご覧ください。

流通株式 3指標の試算シート
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📌 結論 流通株式数を上場株式数で割る
分母は上場株式数です。流通株式数を分母にしてしまう誤りをときどき見かけます。
東京証券取引所は、流通株式比率を、流通株式数を上場株式数で除して100を乗じた割合としています。
分子は流通株式数です。役員が持つ株式、特別利害関係者が持つ株式、上場会社の関係会社が持つ株式、自己株式などを除いたあとの株数になります。流通株式の定義は有価証券上場規程施行規則第8条に置かれています。
分母は上場株式数です。ここに自己株式が含まれる点に注意してください。自己株式は分子から除かれ、分母には残ります。自己株式を多く持つ会社ほど、比率は下がります。
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🧭 3市場でどれだけ必要か
比率だけを満たしても上場はできません。3つを同時に満たす必要があります。
プライムは35パーセント以上、スタンダードとグロースは25パーセント以上です。
比率だけを満たしても足りません。流通株式数と流通株式時価総額も同時に満たす必要があります。3つが連動しているため、1つを追いかけると別の基準が落ちます。
たとえば比率を上げるために創業者が持分を放出すると、需給が緩んで株価が下がり、流通株式時価総額のほうが落ちることがあります。順番を決めて動かす必要があります。
流通株式比率は、株主構成をどう作るかでほぼ決まります。上場直前に慌てて動かすと、経営の安定性の説明が難しくなります。公認会計士が株主名簿の分解から市場選択まで通してお手伝いします。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
🔍 流通株式比率の調べ方と計算例
上場会社の比率を調べる
上場会社の流通株式比率は、東京証券取引所が事業年度末日の状況について、株券等の分布状況表と有価証券報告書をもとに判定しています。分布状況表は公表されていないため、外部から東証と同じ数字を正確に出すことはできません。
確実なのは会社自身の開示です。上場維持基準に適合しない状態になった会社は、適合に向けた取組と実施時期を記載した計画を開示します。その後の進捗や基準に適合したことを知らせる開示には、東証が把握している分布状況をもとに算出した流通株式比率が、基準の数値と並べて載っていることがあります。会社のIR情報や適時開示情報閲覧サービスで、表題に「上場維持基準」とある開示を探してください。
開示がない会社は、有価証券報告書で目安を出します。「株式等の状況」の発行済株式総数を分母にし、「大株主の状況」「役員の状況」「議決権の状況」から、10%以上を持つ株主、役員と役員の資産管理会社、自己株式の株数を拾って分子から差し引きます。役員の親族や関係会社の持株までは拾いきれないので、実際の比率はこれより低くなることがあります。
上場準備中の会社が調べる
上場前の会社は、株主名簿を1行ずつ分解して出します。役員、特別利害関係者、関係会社、10%以上を持つ株主、自己株式に印を付けて除き、公募と売出しで動く株数を足し引きした上場時点の見込みで計算します。どの株主を除くかの線引きは、流通株式数の数え方を扱った別の記事で整理しています。
計算例(架空の会社)
| 項目 | 株式数・比率 |
|---|---|
| 上場株式数(自己株式を含む)=分母 | 10,000,000株 |
| 除く:役員・役員持株会の持株 | 3,000,000株 |
| 除く:役員の資産管理会社の持株(特別利害関係者) | 2,500,000株 |
| 除く:上場株式数の10%以上を持つ事業会社の持株 | 1,200,000株 |
| 除く:自己株式 | 1,000,000株 |
| 流通株式数=分子 | 2,300,000株 |
| 流通株式比率 | 2,300,000株÷10,000,000株×100=23%(25%に届かない) |
| 自己株式100万株を消却した場合 | 2,300,000株÷9,000,000株×100=約25.6% |
| 役員が30万株を売り出した場合 | 2,600,000株÷10,000,000株×100=26% |
この会社は、自己株式を100万株持っているために分母だけが大きく、スタンダードとグロースの25%に届きません。自己株式を消却すれば分母が減って25%を超えますし、役員が売出しに出せば分子が増えて25%を超えます。どちらの打ち手にも副作用があるので、次の節で整理します。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。
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🧾 比率を上げる打ち手
どの打ち手にも副作用があります。主幹事証券会社と早い段階から並べて検討してください。
比率を上げる方法は、分子を増やすか分母を減らすかの2つしかありません。
分子を増やすのは、公募を増やす、創業者や役員が売出しに出す、関係会社や取引先の持分を減らす、といった打ち手です。分母を減らすのは自己株式の消却などになりますが、上場前の会社では現実的でないことが多いでしょう。
どの打ち手にも副作用があります。創業者が大量に売り出せば経営の安定性を問われますし、公募を増やせば1株当たり利益が薄まります。取引先に持ってもらっている株を減らせば、取引関係そのものに影響します。
主幹事証券会社と早い段階から、副作用を含めて並べて検討してください。
📅 上場したあとも同じ比率が続く
上場したあとも同じ比率が続きます。上場審査を通ることだけを考えた設計は、数年後に効いてきます。
新規上場の形式要件と上場維持基準で、求められる比率は同じです。上場審査を通ることだけを考えた設計は、数年後に効いてきます。
上場維持基準の判定は、各事業年度末日の状況について年1回行われます。基準に適合しない状態が続くと、改善期間を経て上場廃止に向かう仕組みです。
上場後にロックアップが外れて創業者が売却すれば比率は上がりますが、逆に第三者割当や株式交換で特定の株主の持分が増えれば比率は下がります。資本を動かすたびに、この数字を確かめる運用が要ります。
❓ よくある質問
A. 会社が開示する上場維持基準の適合状況や、適合に向けた計画の開示で確かめるのが確実です。開示がなければ、有価証券報告書の大株主の状況・役員の状況・議決権の状況から概算できますが、役員の親族などの持株までは拾えないため目安にとどまります。
A. 流通株式数を上場株式数で割り、100を乗じます。
A. 違います。分母は上場株式数です。自己株式も分母に含まれます。
A. 35パーセント以上です。
A. どちらも25パーセント以上です。
A. 流通株式からは除かれます。自己株式の処分を決議した場合の取扱いが別に定められています。
A. 公募を増やす、既存株主が売出しに出す、関係会社の持分を減らす、といった方法です。それぞれ副作用があります。
A. 上場維持基準として同じ比率が続きます。判定は各事業年度末日の状況について年1回です。
A. 株主名簿を分解して、役員、特別利害関係者、関係会社、10パーセント以上を持つ株主の分を仕分けます。
📄 まとめ
流通株式比率は、流通株式数を上場株式数で割った割合です。分母は上場株式数で、自己株式を含みます。
プライムは35パーセント以上、スタンダードとグロースは25パーセント以上です。
比率を上げる打ち手には必ず副作用があります。株価や経営の安定性への影響とあわせて見てください。
上場したあとも同じ比率が続きます。いま資本政策を作っているなら、上場の翌年ではなく5年後の株主構成まで引いて考えてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の判断にあたっては、主幹事証券会社および監査法人にご確認ください。
このテーマの全体像は上場準備の資本政策|株式の要件と手を打つ順番にまとめています。