流通株式時価総額とは
流通株式時価総額とは、流通株式数(上場株式数から役員・特別利害関係者・自己株式・10%以上を持つ株主などの株式を除いた株数)に株価を掛けた金額です。上場維持基準の判定では、事業年度末以前3か月間の日々の最終価格の平均値を株価に使います。必要な額はプライム100億円以上、スタンダード10億円以上、グロース5億円以上です。
- 時価総額(上場株式数×株価)とは、掛ける株式数が違う
- 新規上場の形式要件と上場維持基準で金額は同じ。判定は事業年度末日の状況で年1回
- 上場会社の数値は会社の開示で確かめ、有価証券報告書から概算もできる
2026年10月12日更新
流通株式時価総額はいくら必要か。プライムで100億円、スタンダードで10億円、グロースで5億円です。
計算式そのものは単純で、流通株式数に株価を掛けるだけです。つまずくのは掛ける相手のほうです。上場株式数ではなく流通株式数を使います。
そして上場維持基準では、株価は事業年度末前3か月間の日々の最終価格の平均値を使います。期末の1日の株価ではありません。
- 3市場それぞれの基準額
- 流通株式数に何を掛けるのか
- 時価総額との違い
- 上場前に見積もるときの手順
- 新規上場の要件と上場維持基準の関係
図 流通株式時価総額の確認
流通株式数、流通株式時価総額、流通株式比率の3つは連動しています。計算手順と3市場の基準、上場前の見積り方、基準に届かないときの打ち手までを1本にまとめた流通株式時価総額と比率の記事もあわせてご覧ください。
📌 結論 流通株式数に3か月平均の株価を掛ける
掛ける相手は流通株式数です。上場株式数ではありません。ここを取り違えると、実際より大きな金額が出ます。
流通株式時価総額は、流通株式数に株価を掛けた金額です。東京証券取引所は、上場維持基準における流通株式時価総額について、流通株式数に事業年度末前3か月間の日々の最終価格の平均値を乗じて算出するとしています。
掛ける相手は流通株式数です。上場株式数ではありません。役員が持つ株式、特別利害関係者が持つ株式、上場会社の関係会社が持つ株式、自己株式などを除いたあとの株数です。
流通株式の定義そのものは、有価証券上場規程施行規則第8条に置かれています。何が除かれるかは流通株式数の数え方のほうで詳しく整理しています。
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🧭 3市場でいくら必要か
新規上場のときも上場したあとも、求められる金額は同じです。上場して数年たってから届かなくなる会社があるのは、この基準が続くからです。
プライムは100億円以上、スタンダードは10億円以上、グロースは5億円以上です。新規上場の形式要件と上場維持基準で、金額は同じです。
ここが見落とされがちです。上場審査を通ることだけを考えて設計すると、上場した数年後に基準を割ります。上場維持基準に適合しない状態が続くと、改善期間を経て上場廃止に向かう仕組みになっています。
グロースの5億円は、上場時の規模から見れば低い水準に見えます。ただし流通株式比率25パーセントとあわせて満たす必要があるため、創業者や投資家の持分が厚い会社では、公募と売出しの量を先に決められません。
流通株式の3つの基準は連動しています。1つを追いかけると別の基準が落ちるため、株主構成の分解から市場選択まで通して見る必要があります。公認会計士が資本政策の初期設計からお手伝いします。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
🧾 時価総額との違い
時価総額の基準を満たしていても、流通株式時価総額で落ちることがあります。創業者や親会社の持分が大きい会社ほど差が開きます。
時価総額と流通株式時価総額は別の指標です。時価総額は上場株式数に株価を掛けたもの、流通株式時価総額は流通株式数に株価を掛けたものです。
プライムでは時価総額250億円以上という形式要件が別に置かれています。両方を満たす必要があります。
創業家や親会社の持分が大きい会社では、この2つの差が大きく開きます。時価総額は十分でも流通株式時価総額で届かない、という状態が起きます。差を詰めるには、持分を放出するか、公募を増やすかのどちらかです。
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🔍 流通株式時価総額の調べ方と計算例
上場会社の数値を調べる
上場会社の流通株式時価総額は、東京証券取引所が事業年度末日の状況について、株券等の分布状況表と有価証券報告書をもとに判定しています。分布状況表は公表されていないため、外部から東証と同じ数字を再現することはできません。
確実なのは、会社自身の開示を見ることです。上場維持基準に適合しない状態になった会社は、適合に向けた取組と実施時期を記載した計画を開示します。その後の進捗や、基準に適合したことを知らせる開示には、東証が把握している分布状況をもとに算出した流通株式数・流通株式時価総額・流通株式比率が、基準の数値と並べて載っていることがあります。会社のIR情報や適時開示情報閲覧サービスで、表題に「上場維持基準」とある開示を探してください。
有価証券報告書から概算する
開示がない会社は、有価証券報告書で目安を出します。「株式等の状況」の発行済株式総数を出発点にして、「大株主の状況」から上場株式数の10%以上を持つ株主と役員の資産管理会社の持株を、「役員の状況」から各役員の所有株式数を、「議決権の状況」から自己株式数を拾って差し引きます。残った株数に直近3か月の終値の平均を掛ければ、おおよその流通株式時価総額になります。
ただし、役員の親族や関係会社の持株、流通株式に含める例外の取扱いまでは有価証券報告書から拾いきれません。あくまで目安として使ってください。
計算例(架空の会社)
| 項目 | 株式数・金額 |
|---|---|
| 上場株式数(自己株式を含む) | 10,000,000株 |
| 除く:役員・役員持株会の持株 | 2,000,000株 |
| 除く:役員の資産管理会社の持株(特別利害関係者) | 2,500,000株 |
| 除く:上場株式数の10%以上を持つ事業会社の持株 | 1,200,000株 |
| 除く:自己株式 | 300,000株 |
| 流通株式数 | 4,000,000株(単元株式数100株なら4万単位) |
| 事業年度末以前3か月間の日々の最終価格の平均値 | 1,500円 |
| 流通株式時価総額 | 4,000,000株×1,500円=60億円 |
| (参考)時価総額 | 10,000,000株×1,500円=150億円 |
| (参考)流通株式比率 | 4,000,000株÷10,000,000株=40% |
この会社は、スタンダード(10億円)とグロース(5億円)の流通株式時価総額の基準を満たしますが、プライムの100億円には届きません。株価が1,500円のままなら、100億円に届くには流通株式数が約667万株(100億円÷1,500円)必要で、いまより約267万株を流通株式に回すことになります。時価総額も、プライムの新規上場の形式要件である250億円には届いていません。
同じ会社でも、上場株式数に株価を掛けた時価総額は150億円と大きく見えます。基準に届くかどうかは、必ず流通株式数で計算してください。
📅 上場前はどう見積もるか
3つの基準は連動しています。1つだけを追いかけると、別の基準が落ちます。
上場前は株価が決まっていません。ですから幅を持たせて置くことになります。類似会社の指標や直近の資金調達の価額を出発点にして、公募価格の想定レンジを作ります。
大事なのは、株価より先に流通株式数を固めることです。株価は市場が決めますが、流通株式数は株主構成の設計で動かせます。
そして、流通株式数、流通株式時価総額、流通株式比率の3つを同時に見てください。比率を上げるために創業者が売れば、株価が下がることもあります。1つだけを追いかけると別の基準が落ちるのは、このためです。
上場維持基準の判定は、各事業年度末日の状況について年1回行われます。上場後は、期末に向けて数字を見ておく運用が必要になります。
❓ よくある質問
A. 会社が開示する上場維持基準の適合状況や、適合に向けた計画の開示で確かめるのが確実です。開示がなければ、有価証券報告書の大株主の状況・役員の状況・議決権の状況から流通株式数を概算し、直近3か月の株価の平均を掛けて目安を出します。
A. 流通株式数に株価を掛けます。上場維持基準では、事業年度末前3か月間の日々の最終価格の平均値を使います。
A. 100億円以上です。あわせて時価総額250億円以上、流通株式比率35パーセント以上、流通株式数2万単位以上が必要です。
A. 5億円以上です。流通株式比率は25パーセント以上、流通株式数は1000単位以上です。
A. 掛ける株式数が違います。時価総額は上場株式数、流通株式時価総額は流通株式数です。
A. 同じ金額が上場維持基準として続きます。判定は各事業年度末日の状況について年1回です。
A. 3か月間の平均値を使うため、1日の値動きでは決まりません。ただし下落が続けば平均値も下がります。
A. 株主名簿を分解して流通株式数を仮置きし、公募価格のレンジを置いて幅で見ます。
A. 自己株式は流通株式から除かれます。ただし自己株式の処分を決議した場合の取扱いが定められています。
📄 まとめ
流通株式時価総額は、流通株式数に株価を掛けた金額です。上場株式数ではありません。
プライム100億円、スタンダード10億円、グロース5億円。新規上場でも上場後でも同じ金額が求められます。
上場維持基準では、株価は事業年度末前3か月間の日々の最終価格の平均値を使い、判定は年1回です。
いま上場を検討しているなら、株価より先に株主名簿を分解してください。流通株式数は設計で動かせる数字です。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の判断にあたっては、主幹事証券会社および監査法人にご確認ください。
このテーマの全体像は上場準備の資本政策|株式の要件と手を打つ順番にまとめています。
📚 参考(公的な一次情報)
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