流通株式時価総額はいくら必要か。プライムで100億円、スタンダードで10億円、グロースで5億円です。
計算式そのものは単純で、流通株式数に株価を掛けるだけです。つまずくのは掛ける相手のほうです。上場株式数ではなく流通株式数を使います。
そして上場維持基準では、株価は事業年度末前3か月間の日々の最終価格の平均値を使います。期末の1日の株価ではありません。
- 3市場それぞれの基準額
- 流通株式数に何を掛けるのか
- 時価総額との違い
- 上場前に見積もるときの手順
- 新規上場の要件と上場維持基準の関係
📌 結論 流通株式数に3か月平均の株価を掛ける
掛ける相手は流通株式数です。上場株式数ではありません。ここを取り違えると、実際より大きな金額が出ます。
流通株式時価総額は、流通株式数に株価を掛けた金額です。東京証券取引所は、上場維持基準における流通株式時価総額について、流通株式数に事業年度末前3か月間の日々の最終価格の平均値を乗じて算出するとしています。
掛ける相手は流通株式数です。上場株式数ではありません。役員が持つ株式、特別利害関係者が持つ株式、上場会社の関係会社が持つ株式、自己株式などを除いたあとの株数です。
流通株式の定義そのものは、有価証券上場規程施行規則第8条に置かれています。何が除かれるかは流通株式数の数え方のほうで詳しく整理しています。
🧭 3市場でいくら必要か
新規上場のときも上場したあとも、求められる金額は同じです。上場して数年たってから届かなくなる会社があるのは、この基準が続くからです。
プライムは100億円以上、スタンダードは10億円以上、グロースは5億円以上です。新規上場の形式要件と上場維持基準で、金額は同じです。
ここが見落とされがちです。上場審査を通ることだけを考えて設計すると、上場した数年後に基準を割ります。上場維持基準に適合しない状態が続くと、改善期間を経て上場廃止に向かう仕組みになっています。
グロースの5億円は、上場時の規模から見れば低い水準に見えます。ただし流通株式比率25パーセントとあわせて満たす必要があるため、創業者や投資家の持分が厚い会社では、公募と売出しの量を先に決められません。
流通株式の3つの基準は連動しています。1つを追いかけると別の基準が落ちるため、株主構成の分解から市場選択まで通して見る必要があります。公認会計士が資本政策の初期設計からお手伝いします。初回のご相談は無料です。
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🧾 時価総額との違い
時価総額の基準を満たしていても、流通株式時価総額で落ちることがあります。創業者や親会社の持分が大きい会社ほど差が開きます。
時価総額と流通株式時価総額は別の指標です。時価総額は上場株式数に株価を掛けたもの、流通株式時価総額は流通株式数に株価を掛けたものです。
プライムでは時価総額250億円以上という形式要件が別に置かれています。両方を満たす必要があります。
創業家や親会社の持分が大きい会社では、この2つの差が大きく開きます。時価総額は十分でも流通株式時価総額で届かない、という状態が起きます。差を詰めるには、持分を放出するか、公募を増やすかのどちらかです。
📅 上場前はどう見積もるか
3つの基準は連動しています。1つだけを追いかけると、別の基準が落ちます。
上場前は株価が決まっていません。ですから幅を持たせて置くことになります。類似会社の指標や直近の資金調達の価額を出発点にして、公募価格の想定レンジを作ります。
大事なのは、株価より先に流通株式数を固めることです。株価は市場が決めますが、流通株式数は株主構成の設計で動かせます。
そして、流通株式数、流通株式時価総額、流通株式比率の3つを同時に見てください。比率を上げるために創業者が売れば、株価が下がることもあります。1つだけを追いかけると別の基準が落ちるのは、このためです。
上場維持基準の判定は、各事業年度末日の状況について年1回行われます。上場後は、期末に向けて数字を見ておく運用が必要になります。
❓ よくある質問
A. 流通株式数に株価を掛けます。上場維持基準では、事業年度末前3か月間の日々の最終価格の平均値を使います。
A. 100億円以上です。あわせて時価総額250億円以上、流通株式比率35パーセント以上、流通株式数2万単位以上が必要です。
A. 5億円以上です。流通株式比率は25パーセント以上、流通株式数は1000単位以上です。
A. 掛ける株式数が違います。時価総額は上場株式数、流通株式時価総額は流通株式数です。
A. 同じ金額が上場維持基準として続きます。判定は各事業年度末日の状況について年1回です。
A. 3か月間の平均値を使うため、1日の値動きでは決まりません。ただし下落が続けば平均値も下がります。
A. 株主名簿を分解して流通株式数を仮置きし、公募価格のレンジを置いて幅で見ます。
A. 自己株式は流通株式から除かれます。ただし自己株式の処分を決議した場合の取扱いが定められています。
📄 まとめ
流通株式時価総額は、流通株式数に株価を掛けた金額です。上場株式数ではありません。
プライム100億円、スタンダード10億円、グロース5億円。新規上場でも上場後でも同じ金額が求められます。
上場維持基準では、株価は事業年度末前3か月間の日々の最終価格の平均値を使い、判定は年1回です。
いま上場を検討しているなら、株価より先に株主名簿を分解してください。流通株式数は設計で動かせる数字です。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の判断にあたっては、主幹事証券会社および監査法人にご確認ください。