繰越欠損金は組織再編でどこまで使えるか|引継ぎと2つの制限

組織再編で繰越欠損金がどこまで使えるか。法人税法第57条は、3つの層に分かれています。

第2項が引継ぎ、第3項が引き継いだものの制限、第4項が合併法人等自身の欠損金の制限です。この3つを混ぜて読むと、どこで止まっているのかが分かりません。

そして制限を外す鍵が、みなし共同事業要件です。施行令第112条第3項は、第一号から第四号までに掲げる要件、または第一号及び第五号に掲げる要件、という2つのルートを用意しています。

この記事でわかること

  • 第57条の項ごとの役割
  • 引継制限と使用制限の違い
  • みなし共同事業要件の2つのルート
  • 特定役員ルートなら規模要件が問われないこと
  • 繰越期間が10年になった時期
  • 控除限度額の50パーセント

📌 結論 引継ぎと2つの制限を分けて読む

図1 法人税法第57条の構造内容第1項各事業年度開始の日前十年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額を損金の額に算入する。ただし書きで、所得の金額の百分の五十に相当する金額が限度第2項適格合併が行われた場合、または完全支配関係がある内国法人の残余財産が確定した場合に、被合併法人等の未処理欠損金額を引き継ぐ第3項引継制限。最後に支配関係を有することとなつた日、五年前の日、共同で事業を行うための合併として政令で定めるものに該当する場合の除外第4項使用制限。適格組織再編成等が共同で事業を行うための適格組織再編成等として政令で定めるものに該当しないときの、合併法人等自身の欠損金額の制限第11項中小法人等について、第1項ただし書きの百分の五十を所得の金額と読み替える

引き継ぐのが第2項、引き継いだものを制限するのが第3項、自分のものを制限するのが第4項です。3つを分けて読んでください。

第2項は、適格合併が行われた場合、または完全支配関係がある内国法人の残余財産が確定した場合に、被合併法人等の未処理欠損金額を引き継ぐという規定です。

第3項が引継制限です。最後に支配関係を有することとなつた日、五年前の日という語が条文に出てきます。そして、共同で事業を行うための合併として政令で定めるものに該当する場合が除外されます。

第4項が使用制限です。適格組織再編成等が共同で事業を行うための適格組織再編成等として政令で定めるものに該当しないときは、という書き方で、合併法人等自身が持っている欠損金額を制限します。

買った会社の欠損金だけが制限されるのではありません。買った側の欠損金も制限されます。ここが見落とされがちです。

🧭 みなし共同事業要件には2つのルートがある

図2 みなし共同事業要件(法人税法施行令第112条第3項)論点内容構造第一号から第四号までに掲げる要件、または第一号及び第五号に掲げる要件に該当するもの第1号被合併事業と合併事業の相互関連性第2号事業規模の割合がおおむね五倍を超えないこと第3号被合併事業の継続と規模の変動に関する要件第4号合併事業の継続と規模の変動に関する要件第5号特定役員の引継ぎ

1号から4号までをすべて満たすか、1号と5号を満たすか。この2つのルートがあります。5号の特定役員ルートなら規模要件は問われません。

施行令第112条第3項の冒頭は、法第五十七条第三項に規定する政令で定めるものは、適格合併のうち、第一号から第四号までに掲げる要件又は第一号及び第五号に掲げる要件に該当するもの、です。

1号から4号までをすべて満たすルートと、1号と5号を満たすルートの2つがあります。

第1号が事業の相互関連性、第2号が事業規模の割合がおおむね五倍を超えないこと、第3号が被合併事業の継続と規模の変動、第4号が合併事業の継続と規模の変動、第5号が特定役員の引継ぎです。

規模が5倍を超えていても、特定役員が引き継がれれば1号と5号のルートで満たせます。規模要件だけを見て諦めないでください。

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🧾 繰越期間と控除限度額

図3 繰越期間対象繰越期間原則各事業年度開始の日前十年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額(法人税法第57条第1項)平成30年4月1日前に開始した事業年度に生じた欠損金額九年控除限度額(原則)所得の金額の百分の五十に相当する金額控除限度額(中小法人等)所得の金額(第57条第11項の読み替え)

10年になったのは平成30年4月1日以後に開始する事業年度に生じた分からです。古い欠損金は9年のままです。

第57条第1項の文言は、各事業年度開始の日前十年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額、です。

国税庁のタックスアンサーによれば、平成30年4月1日前に開始した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は9年です。古い欠損金は9年のままです。

控除限度額は第1項ただし書きで、所得の金額の百分の五十に相当する金額です。中小法人等については第11項が読み替えを置き、所得の金額、つまり全額になります。

📅 支配関係が生じた日

図4 確認の順番支配関係がいつ生じたかを確定するその日が合併事業年度開始の日の5年前の日より前かを確認する5年以内なら、みなし共同事業要件(施行令第112条第3項)を確認する1号から4号までのルートか、1号と5号のルートかを決める引き継ぐ欠損金(第2項)と自分の欠損金(第4項)を分けて計算する控除限度額(50パーセントか全額か)を確認する

支配関係が生じた日をいつと見るか。ここを間違えると、全部が崩れます。株式の取得の記録を先に固めてください。

第3項の判定の起点は、最後に支配関係を有することとなつた日です。この日がいつかで、制限がかかるかどうかが決まります。

株式を段階的に取得している場合、どの時点で50パーセントを超えたのかを確定させる必要があります。株主名簿、株式譲渡契約書、払込みの記録を先に固めてください。

繰越控除の基本は欠損金の繰越控除とはにまとめています。

❓ よくある質問

Q. 繰越期間は何年ですか。

A. 第57条第1項の文言は十年以内です。平成30年4月1日前に開始した事業年度に生じた分は9年です。

Q. 引継制限と使用制限の違いは。

A. 第3項が引き継いだ欠損金の制限、第4項が合併法人等自身の欠損金の制限です。

Q. 買った側の欠損金も制限されますか。

A. されます。第4項の対象です。

Q. 5年を超えていれば制限はありませんか。

A. 第3項に五年前の日という語があります。支配関係が生じた日との関係で判定します。

Q. みなし共同事業要件は全部満たす必要がありますか。

A. 1号から4号までのルートと、1号と5号のルートがあります。どちらかです。

Q. 規模が5倍を超えたら使えませんか。

A. 1号と5号のルートがあります。特定役員の引継ぎで満たせる場合があります。

Q. 控除限度額は。

A. 所得の金額の百分の五十です。中小法人等は第11項の読み替えで全額です。

Q. 残余財産が確定した子会社の欠損金は。

A. 完全支配関係がある内国法人の残余財産が確定した場合として、第2項の対象になります。

📄 まとめ

第2項が引継ぎ、第3項が引継制限、第4項が使用制限です。3つを分けて読んでください。

みなし共同事業要件は2ルート。規模が5倍を超えても特定役員ルートがあります。

繰越期間は10年。ただし平成30年4月1日前に開始した事業年度の分は9年です。

支配関係が生じた日を先に確定させてください。この1点が、判定の全体を決めます。

📚 参考(公的な一次情報)

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