株式移転で持株会社をつくる|適格要件と株主の課税繰延べ

株式移転は、新しく親会社を設立して、既存の会社の発行済株式の全部をそこに集める手続です。

会社法第774条第1項が、株式移転設立完全親会社は、その成立の日に、株式移転完全子会社の発行済株式の全部を取得する、としています。

1社だけで行う単独株式移転もできます。第772条第1項は、一又は二以上の株式会社は、株式移転をすることができる、としています。

この記事でわかること

  • 株式移転の会社法上の条文
  • 単独でもできること
  • 適格株式移転の号番号
  • 完全支配関係と支配関係の定義
  • 株主の課税の根拠条文
  • よく引かれる誤った条文

📌 結論 成立の日に全部を取得する

図1 株式移転の会社法の条文内容第772条第1項一又は二以上の株式会社は、株式移転をすることができる。この場合においては、株式移転計画を作成しなければならない第772条第2項二以上の株式会社が共同して株式移転をする場合には、共同して株式移転計画を作成しなければならない第773条第1項株式移転計画の法定記載事項(設立完全親会社の目的・商号・本店の所在地・発行可能株式総数、定款事項、設立時取締役等、交付する株式の数と算定方法、資本金・準備金、割当てに関する事項、社債等、新株予約権)第774条第1項株式移転設立完全親会社は、その成立の日に、株式移転完全子会社の発行済株式の全部を取得する

成立の日に全部を取得します。既存の会社が親会社になるのではなく、新しく親会社を設立する手続です。

第772条が株式移転計画の作成、第773条第1項がその記載事項、第774条第1項が効力の発生を定めています。

第773条第1項の記載事項には、設立完全親会社の目的、商号、本店の所在地、発行可能株式総数、定款で定める事項、設立時取締役等、交付する株式の数とその算定方法、資本金および準備金の額、割当てに関する事項、社債等、新株予約権が含まれます。

既存の会社を親会社にするのではありません。新しく設立します。既存の会社を親会社にしたい場合は株式交換です。

🧭 適格になる場合

図2 法人税法の定義内容第2条第12号の18(適格株式移転)株式移転完全子法人の株主に株式移転完全親法人の株式以外の資産が交付されないもの。イは同一の者による完全支配関係等の場合、または一の法人のみが株式移転完全子法人となる株式移転で政令で定めるもの。ロは支配関係の場合で要件の全てに該当するもの第2条第12号の7の6(完全支配関係)一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係、または一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係第2条第12号の7の5(支配関係)発行済株式等の総数若しくは総額の百分の五十を超える数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有する関係

1社だけで持株会社を作る単独株式移転は、イの後半、一の法人のみが株式移転完全子法人となる株式移転で政令で定めるもの、に当たります。

適格株式移転は法人税法第2条第12号の18です。柱書は、株式移転完全子法人の株主に株式移転完全親法人の株式以外の資産が交付されないもの、としています。

イが、同一の者による完全支配関係その他の政令で定める関係がある場合の当該株式移転、または一の法人のみがその株式移転完全子法人となる株式移転で政令で定めるもの、です。

単独株式移転は後半に当たります。1社だけで持株会社を作る場合、株主構成は変わらないため、原則として適格になります。

ロは、いずれか一方の法人による支配関係その他の政令で定める関係がある場合で、要件の全てに該当するものです。ロの各要件の具体的な内容は、今回条文で確認できていません。

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🧾 株主にどう課税されるか

図3 株主の課税はどうなるか株主根拠内容個人所得税法第57条の4第2項株式移転により旧株を譲渡した場合、当該旧株の譲渡がなかつたものとみなす個人(株式交換)同 第1項これらの旧株の譲渡又は贈与がなかつたものとみなす法人法人税法第61条の2有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入。組織再編に係る特例が各項に置かれている

租税特別措置法第37条の14の3は、合併等により外国親法人株式等の交付を受ける場合の課税の特例です。株式移転一般の根拠条文ではありません。

個人株主については所得税法第57条の4です。見出しは株式交換等に係る譲渡所得等の特例。第1項が株式交換、第2項が株式移転を扱っています。

第2項の文言は、当該旧株の譲渡がなかつたものとみなす、です。譲渡がなかったものとみなされるため、譲渡所得は生じません。

法人株主については法人税法第61条の2です。見出しは有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入で、組織再編に係る特例が各項に置かれています。

なお、租税特別措置法第37条の14の3を株式移転の根拠として挙げる説明を見かけますが、この条文の見出しは合併等により外国親法人株式等の交付を受ける場合の課税の特例です。株式移転一般の根拠ではありません。

📅 持株会社を作れば何が変わるか

図4 持株会社を作る順番何のために持株会社を作るのかを決める(承継、資本政策、グループ再編)単独株式移転か共同株式移転かを決める株式移転計画を作成し、第773条第1項の記載事項をそろえる適格株式移転の要件(第2条第12号の18)を確認する株主の課税(個人は所得税法第57条の4)を確認する株主総会の承認を経て、設立の登記を行う

持株会社を作れば繰越欠損金が使えるようになる、ということはありません。第57条の制限は別に働きます。

持株会社を作ると、完全支配関係ができます。グループ法人税制が適用され、寄附金と受贈益、譲渡損益調整資産の取扱いが変わります。

ただし、繰越欠損金が自由に使えるようになるわけではありません。第57条の引継制限と使用制限は別に働きます。

連結財務諸表の作成が必要になる点も見落とせません。開始仕訳の考え方は連結の開始仕訳とは何かにまとめています。

❓ よくある質問

Q. 1社だけで株式移転できますか。

A. できます。第772条第1項は、一又は二以上の株式会社は、としています。

Q. いつ株式が移りますか。

A. 第774条第1項により、設立完全親会社の成立の日です。

Q. 適格株式移転の号番号は。

A. 法人税法第2条第12号の18です。

Q. 完全支配関係の定義はどこですか。

A. 第2条第12号の7の6です。支配関係は第12号の7の5で、百分の五十を超える関係です。

Q. 個人株主に課税されますか。

A. 所得税法第57条の4第2項が、当該旧株の譲渡がなかつたものとみなす、としています。

Q. 措置法第37条の14の3が根拠ですか。

A. 違います。合併等により外国親法人株式等の交付を受ける場合の課税の特例です。

Q. 既存の会社を親会社にできますか。

A. 株式移転では新しく設立します。既存の会社を親会社にするなら株式交換です。

Q. 欠損金が使いやすくなりますか。

A. なりません。第57条の引継制限と使用制限は別に働きます。

📄 まとめ

株式移転は新しく親会社を設立し、成立の日に発行済株式の全部を取得する手続です。

1社だけでもできます。単独株式移転は適格になりやすい形です。

個人株主の課税は所得税法第57条の4第2項。措置法第37条の14の3ではありません。

持株会社を作る目的を先に決めてください。作ること自体が目的になると、連結の作成負担だけが残ります。

📚 参考(公的な一次情報)

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