監査役監査、内部監査、会計監査。上場準備に入ると、この3つを回すことになります。三様監査と呼ばれます。
混乱しやすいのは、それぞれ何を見るのかがはっきりしないまま体制だけ作ってしまうことです。3つとも監査という名前がついていますが、根拠も対象も違います。
この記事では、それぞれの根拠条文と対象を確認したうえで、連携をどう作るかを整理します。
- 監査役監査の根拠が会社法第381条第1項にあること
- 会計監査人監査の根拠が会社法第396条第1項と金商法第193条の2第1項にあること
- 内部監査に会社法上の根拠条文が見当たらないこと
- 見る対象がそれぞれ違うこと
- 監査役が会計監査人の監査の相当性を判断すること
- 連携は記録に残ってはじめて意味を持つこと
📌 結論 根拠も対象も違う3つ
3つのうち、会社法に明文の根拠があるのは監査役監査と会計監査人監査です。内部監査は会社の中の仕組みとして置かれるもので、会社法に設置を義務づける条文は見当たりません。
会社法の第381条第1項は、監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する、としています。対象は取締役の職務の執行です。
会計監査人については、会社法第396条第1項が、会計監査人は、次章の定めるところにより、株式会社の計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに連結計算書類を監査する、としています。金融商品取引法の第193条の2第1項は、財務計算に関する書類について、特別の利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明を受けなければならない、としています。
一方、内部監査については、会社法にその設置や権限を定めた条文が見当たりませんでした。内部統制の枠組みの中で、経営者が置く仕組みとして位置づけられます。
ここが3つ目の性格の違いです。監査役と会計監査人は法律が置いている機関ですが、内部監査は会社が自ら置く部門です。
🔍 見る対象が違う
監査役は取締役を見る。会計監査人は数字を見る。内部監査は業務を見る。見る対象がそもそも違います。
監査役は取締役を見ます。取締役の職務の執行が適法に行われているか。これが対象です。
会計監査人は数字を見ます。計算書類等が適正に表示されているかどうかです。
内部監査は業務を見ます。各部門の業務が、定められた手続どおりに行われているか。そして、そうでない場合に改善を提案します。
監査役が会計監査人を見るという関係
もうひとつ押さえておきたいのが、監査役は会計監査人の監査の方法および結果の相当性を判断する立場にある、という点です。会計監査人がいるから監査役は数字を見なくてよい、という関係ではありません。
そのためには、監査役の側にも会計がわかる人が要ります。この論点は監査役に会計の知識は必要かで扱っています。
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🔗 連携をどう作るか
定例会があるという形だけでは足りません。何を話したかが記録に残っているか。上場審査で見られるのはそこです。
三様監査の連携という言葉はよく聞きますが、実際に何をするのかは会社によってばらばらです。
最低限やることは決まっています。三者が定期的に集まること。内部監査の計画と結果を共有すること。会計監査人が把握したリスクを内部監査の計画に反映すること。そして、その記録を残すことです。
監査役の役割は、両者をつなぐところにあります。会計監査人が気づいたことを内部監査が知らない、あるいはその逆、という状態が続くと、連携しているとはいえません。
記録については、日時と出席者だけの議事録では足りません。何が報告され、それに対して誰が何を言い、次に何をするのか。ここまで書いてください。
🏢 IPO準備でよくある状態
審査で見られるのは、体制の図ではなく、実際に回っているかどうかです。1年分の記録を作るには1年かかります。
いちばん多いのが、内部監査が実質的に機能していないケースです。管理部門の担当者が兼務していて、しかも自分の部署も監査対象になっている。これでは独立性がありません。
専任にするのが原則です。人数の都合で当面難しい場合でも、監査対象部門との兼務は避けてください。
報告経路も見られます。社長にだけ報告して終わり、という状態では、社長が関与する問題を扱えません。監査役会への報告経路をあわせて作ってください。詳しくは内部監査の報告先は社長だけでよいのかにまとめています。
❓ よくある質問
A. 会社法第381条第1項です。取締役の職務の執行を監査する、とされています。
A. 会社法第396条第1項と、金融商品取引法第193条の2第1項です。
A. 会社法に設置や権限を定めた条文は見当たりませんでした。内部統制の枠組みの中で経営者が置く仕組みです。
A. 監査役は取締役を、会計監査人は数字を、内部監査は業務を見ます。
A. いいえ。監査役は会計監査人の監査の方法および結果の相当性を判断する立場です。
A. 四半期に1回以上が実務的です。会計監査人の往査の時期に合わせると回しやすくなります。
A. 専任が原則です。少なくとも監査対象部門との兼務は避けてください。
A. N-2期です。1年分の記録を作るには1年かかります。
📄 まとめ
三様監査は、根拠も対象も違う3つの監査です。監査役監査は会社法第381条第1項、会計監査人監査は会社法第396条第1項と金商法第193条の2第1項に根拠があります。内部監査については会社法に条文が見当たりません。
監査役は取締役を、会計監査人は数字を、内部監査は業務を見ます。ここを混ぜると体制が曖昧になります。
連携は、定例会と情報共有、そして記録です。何を話したかが残っていないと、連携していることを示せません。
そして、内部監査の独立性と報告経路。この2つは審査で必ず見られます。
📚 参考(公的な一次情報)
- 会社法 第381条、第396条
- 金融商品取引法 第193条の2
- 会社法施行規則 第121条
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