税務調査の終盤に、調査官から重加算税だと言われる。この場で認めれば早く終わる、と促される。ここで押さえておきたいのは、重加算税には条文上の要件があり、それを満たさなければ課されないということです。
要件は「隠蔽し、又は仮装し」たことです。単に金額が間違っていた、期がずれていた、というだけでは足りません。国税庁の事務運営指針は、該当する場合と該当しない場合の両方を具体的に挙げています。
この記事では、条文の構造と、事務運営指針が挙げる例示を確認します。そのうえで、意見が分かれたときにどの手続が使えるのかを整理します。
- 国税通則法第68条は第4項までで、第5項がないこと
- 第1項は35パーセント、第2項は40パーセント、第3項は不納付加算税に代わる35パーセントであること
- 条文の表記は「隠蔽」であること
- 第4項の第二号は第2項にしか適用されないこと
- 事務運営指針が該当しない3つの場合を挙げていること
- 不服申立ての期限(第77条)
📌 まず条文の構造を押さえる
第68条は第4項までです。第5項はありません。第3項は不納付加算税に代わるもので、無申告に代わる40パーセントは第2項です。ここを取り違えている解説をよく見かけます。
国税通則法の第68条が重加算税の根拠です。項ごとに、何に代えて課されるのかが違います。
第1項が過少申告加算税に代えて100分の35、第2項が無申告加算税に代えて100分の40、第3項が不納付加算税に代えて100分の35です。第3項だけは「徴収する」という動詞が使われ、主体は税務署長または税関長です。
第68条は第4項で終わります。第5項はありません。また、第3項を「無申告加算税に代わるもの」と説明している資料がありますが、誤りです。無申告に代わる40パーセントは第2項です。
条文の表記は「隠蔽」です。ひらがな交じりの「隠ぺい」ではありません。社内文書や意見書で条文を引くときは、表記も合わせてください。
賦課の要件は、課税標準等または税額等の計算の基礎となるべき事実の全部または一部を隠蔽し、または仮装し、その隠蔽し、または仮装したところに基づき申告書を提出していたこと、です。
条文の表記は「隠蔽」です。ひらがなを交ぜた「隠ぺい」という表記を見かけますが、現行の条文は漢字です。
また、いずれの項にも、基礎となるべき税額から、隠蔽し、または仮装されていない事実に基づくことが明らかである部分の税額を控除する旨の括弧書きがあります。指摘された金額の全部が重加算税の対象になるとは限りません。この点は最初に確認してください。
➕ 加重措置は号によって対象が違う
第4項の本文が、第1項または第3項に該当する場合は第一号に限ると定めています。過少申告分の重加算税に第二号は適用されません。
第4項が加重措置で、前3項に該当する場合に、重加算税の額に基礎となるべき税額の100分の10を乗じた金額を加算します。
ただし本文に限定があります。第1項または第3項の規定に該当する場合にあっては第一号、とされています。つまり第二号は第2項、すなわち無申告に代わる重加算税にしか適用されません。
第一号は過去5年以内に同一税目について無申告加算税等を課され、または徴収されたことがある場合。第二号は前年および前々年に課税期間が開始した同一税目について特定無申告加算税等を課されたことがある場合です。
重加算税だと言われたが納得できない、指摘された金額のうちどこまでが対象なのか整理したい、修正申告と更正のどちらを選ぶか迷っている。会社側の立場で論点を整理し、税務署への説明資料を作成します。上場準備中の会社の調査対応にも対応します。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
📋 事務運営指針が挙げているもの
隠蔽・仮装の行為は、特段の事情がない限り、納税者本人だけでなく配偶者その他の親族等が行った場合も本人が行ったものとして取り扱う旨が明記されています。
国税庁は、重加算税の取扱いについて事務運営指針を出しています。ここで引用するのは「申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」です。文書番号は課所4-15、課資3-4、課料3-8、査察1-24、発出は平成12年7月3日で、平成24年10月19日、平成28年12月12日、令和5年6月23日の改正を経ています。
構成は、第1 賦課基準(1 隠蔽又は仮装に該当する場合、2 帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合)、第2 重加算税を課す場合の留意事項、第3 重加算税の計算です。
第1の1が不正事実の例示で、8つが挙げられています。二重帳簿の作成、帳簿書類の隠匿・虚偽記載等、本人以外または架空名義での取引、所得の源泉となる資産の他人名義所有、秘匿した売上代金による資産取得、虚偽の証明書の作成、源泉徴収票等の改ざん、調査での虚偽答弁です。
なお、法人税についても別に事務運営指針がありますが、この記事の作成時点で本文を一次情報として確認できませんでした。上に挙げた例示は申告所得税及び復興特別所得税版のものです。法人の調査で引用する場合は、法人税版の原典を確認してください。
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🛡️ 該当しないとされる場合
いずれも期ずれの類型です。ただし前提があります。相手方との通謀による虚偽もしくは架空の契約書等の作成、帳簿書類の破棄、隠匿、改ざん、偽造、変造等によるものでないときに限られます。
反論を組み立てるうえで重要なのが、第1の2です。ここには、隠匿や虚偽記載等に該当しない場合として3つの類型が挙げられています。
いずれも期ずれです。過少計上した収入金額を翌年分に繰り越して計上している場合、売上げに計上すべき収入金額を仮受金や前受金等で経理して翌年分の収入金額に計上している場合、翌年分以後の必要経費に算入すべき費用を当年分の必要経費として経理し、その費用が翌年分以後の必要経費に算入されていない場合です。
ただし前提があります。相手方との通謀による虚偽もしくは架空の契約書等の作成、帳簿書類の破棄、隠匿、改ざん、偽造、変造等によるものでないとき、という条件です。
反論の組み立て方
したがって、確認すべきことははっきりしています。指摘された事実が期ずれなのか、それとも所得そのものを隠したものなのか。翌期に計上されているのか、されていないのか。契約書や帳簿に手を加えた形跡があるのか、ないのか。
翌期にきちんと計上されている期ずれであれば、第1の2の類型に当たり得ます。この場合、事実関係を時系列で示し、翌期の帳簿と申告書でそれが計上されていることを資料で示すことになります。
なお、単なる計算誤りや法令解釈の誤りが重加算税の対象にならないことについて、事務運営指針に明文があるかは確認できませんでした。第1の2は期ずれの3類型のみを掲げています。断定的な説明は避け、隠蔽・仮装の事実がないことを個別に主張することになります。
💰 加算税と延滞税
重加算税でない場合の加算税も確認しておきます。
過少申告加算税は第65条です。第1項が100分の10、ただし修正申告書の提出が更正の予知によらないときは100分の5。第2項が、納付すべき税額が期限内申告税額に相当する金額と50万円のいずれか多い金額を超えるとき、その超える部分に100分の5を加算。第4項が帳簿の提示・提出を求められて提示等をしなかった場合等の加重で100分の10または100分の5。第6項が、更正の予知によらず、かつ調査通知前に行われた修正申告には第1項を適用しない旨です。
無申告加算税は第66条です。第1項が100分の15、決定等の予知によらないときは100分の10。第2項が50万円超の部分に100分の5を加算。第3項が累積納付税額300万円超の場合の加重。第5項が帳簿の不提示等の加重。第8項が調査通知前の自主的な期限後申告について100分の5。第9項が、期限内申告の意思があったと認められる一定の場合で、法定申告期限から1月を経過する日までにされた期限後申告には第1項を適用しない旨です。
延滞税
延滞税は第60条第2項が原則を定め、年14.6パーセント、ただし納期限までの期間および納期限の翌日から2月を経過する日までの期間は年7.3パーセントとしています。実際の割合は租税特別措置法第94条の特例により決まります。
国税庁が公表している割合では、令和8年1月1日から令和8年12月31日までの期間は、2月を経過する日までが年2.8パーセント、それ以降が年9.1パーセントです。
⏳ 期間制限と不服申立て
更正・決定の期間制限は第70条です。第1項が原則5年、第2項が法人税に係る純損失等の金額を増減させる更正について10年、第5項が、偽りその他不正の行為により税額を免れ、または還付を受けた国税についての更正決定等について7年です。
ここで注意したいのは、第5項の要件が「偽りその他不正の行為」であって、重加算税が課されたことそのものではない点です。重加算税が課されれば自動的に7年になる、という説明は正確ではありません。
不服申立て
第75条第1項が、処分をした税務署長、国税局長または税関長に対する再調査の請求と、国税不服審判所長に対する審査請求のいずれかを選択できるとしています。第75条第3項が、再調査の請求の決定を経た後の処分になお不服がある場合の審査請求、第75条第4項が、再調査の請求から3月を経過しても決定がない場合等に決定を経ずに審査請求ができる旨です。
期限は第77条です。第1項が、処分があったことを知った日の翌日から起算して3月。第2項が、第75条第3項による審査請求について、再調査決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して1月。第3項が、処分があった日の翌日から起算して1年です。
第2項の1月を見落としやすいので注意してください。すべてが3月ではありません。
修正申告と更正のどちらを選ぶかによって、この不服申立ての道が残るかどうかが変わります。手続の違いは税務調査で過年度の売上計上漏れを指摘されたときで扱っています。
❓ よくある質問
A. 過少申告加算税に代えて課される場合が100分の35(第1項)、無申告加算税に代えて課される場合が100分の40(第2項)、不納付加算税に代えて徴収される場合が100分の35(第3項)です。
A. 第68条は第4項までで、第5項はありません。
A. 現行の第68条は「隠蔽し、又は仮装し」です。漢字表記です。
A. されません。第4項本文により、第1項または第3項に該当する場合は第一号(過去5年)のみが適用対象です。第二号は第2項にのみ適用されます。
A. 事務運営指針の第1の2は、翌年分に繰り越して計上している場合など3つの類型を、該当しない場合として挙げています。ただし通謀による虚偽の契約書作成や帳簿書類の破棄等によるものでないことが前提です。
A. 各項の括弧書きが、隠蔽し、または仮装されていない事実に基づくことが明らかである部分の税額を控除するとしています。範囲は確認してください。
A. 事務運営指針は、特段の事情がない限り、配偶者その他の親族等が行った場合も本人が行ったものとして取り扱う旨を明記しています。
A. 第70条第5項の要件は「偽りその他不正の行為」であり、重加算税の賦課そのものが要件ではありません。
A. 処分があったことを知った日の翌日から3月です(第77条第1項)。再調査の請求を経た後の審査請求は、再調査決定書の謄本の送達があった日の翌日から1月です(同条第2項)。
A. 2月を経過する日までが年2.8パーセント、それ以降が年9.1パーセントです。
📄 まとめ
重加算税の要件は、課税標準等または税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽し、または仮装し、それに基づいて申告書を提出していたことです。金額が間違っていた、というだけでは足りません。
第68条は第4項までで、第1項が35パーセント、第2項が40パーセント、第3項が不納付加算税に代わる35パーセントです。第4項の加重措置は、第二号が第2項にしか適用されません。
事務運営指針は、該当する場合を8つ、該当しない場合を3つ挙げています。該当しない3つはいずれも期ずれで、契約書の偽造や帳簿の破棄等によるものでないことが前提です。
意見が分かれたときは、修正申告に応じるか、更正を受けて不服申立てを残すかの判断になります。不服申立ての期限は、処分を知った日の翌日から3月です。
📚 参考(公的な一次情報)
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