税務調査で必ず見られる資料一覧|事前に揃えておくもの

調査の日程が決まったあと、何をどこまで揃えればよいのかで手が止まります。顧問税理士からは「いつもの資料を出しておいてください」と言われたものの、いつもの資料が何を指すのかが人によって違う。経理担当者が2人しかいない会社では、この確認だけで数日が過ぎます。

実は、当日に見られる資料の骨組みは法令に書かれています。法人が備え付けて保存しなければならない帳簿書類は法人税法と同法施行規則が定めており、消費税には消費税法の定めが重なります。そこに、取引の経緯が分かる資料と、当日の説明のための資料が乗る、という構造です。

この記事では、法令が保存を求めている帳簿書類を出発点に、税目ごとに増えるもの、人に関する資料、電子データの出し方、そして提示・提出と留置きの扱いまでを順に整理します。

🧭 用意するものは3つの層に分かれる

準備を「一覧」で考えると抜けが出ます。層で考えると、どこから手を付けるかが決まります。

当日までに用意するものの3つの層1法令が備付けと保存を求める帳簿書類(法人税法施行規則第59条ほか)2取引の経緯や判断の理由が分かる資料(契約書、議事録、稟議)3当日の質問に答えるための説明資料(集計表や経緯のメモ)第1層が欠けていると、第2層より先の説明が届きにくくなります

図1 一覧ではなく層で考えると、どこから手を付けるかが決まります。

第1層は、法令が求めているものです。青色申告の承認を受けている法人については、法人税法第126条第1項が、財務省令で定めるところにより帳簿書類を備え付けてこれに取引を記録し、かつ当該帳簿書類を保存しなければならないと定めています。青色申告の承認を受けていない普通法人等については、法人税法第150条の2第1項が、財務省令で定める簡易な方法により取引を記録し、その帳簿を保存しなければならないと定め、第2項で、当該職員は法人税に関する調査に際してはこの帳簿を検査するものとする(当該帳簿の検査を困難とする事情があるときを除く)としています。調査で帳簿が見られるのは、この建て付けによります。

📚 法令が挙げている帳簿書類

青色申告法人が保存すべき帳簿書類は、法人税法施行規則第59条第1項が3つの号に分けて挙げています。

挙げられている帳簿書類
第1号 第54条に規定する帳簿、および資産、負債、資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿
第2号 棚卸表、貸借対照表、損益計算書、その他決算に関して作成された書類
第3号 取引に関して相手方から受け取った注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類、および自己が作成したこれらの書類で写しのあるものはその写し

第1号にある第54条は、青色申告法人は、すべての取引を借方および貸方に仕訳する帳簿(仕訳帳)、すべての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿(総勘定元帳)その他必要な帳簿を備え、別表24に定めるところにより取引に関する事項を記載しなければならない、と定めています。仕訳帳と総勘定元帳が最初に出てくるのは、条文の順序どおりということです。

第3号は見落とされやすい部分です。相手方から受け取った書類だけでなく、自分が作成した注文書や請求書の控えも保存の対象に入っています。当日に「控えがない」となると、売上の計上時期の説明が一段やりにくくなります。

保存の期間は起算日から7年間

どこまで遡って出すのか、という問いは、保存期間の定めから考えると整理しやすくなります。法人税法施行規則第59条第1項は、青色申告法人は前述の帳簿書類を整理し、起算日から7年間、これを納税地(第3号の書類については当該納税地または取引に係る国内の事務所等の所在地)に保存しなければならない、と定めています。

この起算日は、日常の感覚とずれます。同条第2項は、帳簿についてはその閉鎖の日の属する事業年度終了の日の翌日から2月を経過した日、書類についてはその作成または受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から2月を経過した日を起算日とする、としています。決算日から7年ではありません。

帳簿書類の保存期間の数え方決算日2月を経過7年事業年度終了の日翌日から2月を経過した日これが起算日起算日から7年間納税地に保存する申告期限の延長がある事業年度は、延長に係る月数に2を加えた月数で数えます

図2 法人税法施行規則第59条第1項および第2項にもとづく数え方。

第2項は、確定申告書の提出期限が延長されている事業年度については、その延長に係る月数に2を加えた月数とする、清算中の内国法人の残余財産の確定の日の属する事業年度については1月とする、という読み替えも置いています。3月決算で1か月の申告期限の延長を受けている会社であれば、3か月を経過した日が起算日になります。

調査で通知される対象期間が3事業年度分であっても、その前後の資料を求められることはあります。国税庁のFAQは、例えばX年度の減価償却費の計上額が正しいかどうかを確認するため取得年度の帳簿書類等を検査する必要がある場合のように、X年度の申告内容を確認するために必要があると判断したときにはX年度以外の帳簿書類等の提示等をお願いすることがあり、これはあくまでX年度の調査である、と説明しています。手続通達5-5も同じ趣旨です。

💴 消費税で重ねて見られるもの

通知された税目に消費税が入っていれば、見られる資料が重なります。消費税法第58条は、事業者(免税事業者を除きます)または特例申告者は、政令で定めるところにより帳簿を備え付けてこれにその行った資産の譲渡等または課税仕入れ等に関する事項を記録し、かつ当該帳簿を保存しなければならないと定めています。

さらに大きいのは、仕入税額控除の要件です。消費税法第30条第7項は、課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿および請求書等(請求書等の交付を受けることが困難である場合その他の政令で定める場合は帳簿)を保存しない場合には、その保存がない課税仕入れ等の税額については仕入税額控除の規定を適用しない、と定めています。ただし書として、災害その他やむを得ない事情により保存できなかったことを事業者が証明した場合は、この限りでないとされています。

帳簿と請求書等の保存は、仕入税額控除の要件そのものです。書類が出てこないことが、そのまま税額の増加につながる場面があります。

第8項が帳簿の記載事項を、第9項が請求書等の範囲を定めています。適格請求書発行事業者からの交付を受けた書類かどうかも、ここに関わります。

税目 重ねて確認される資料
法人税 仕訳帳、総勘定元帳、棚卸表、決算書類、契約書や請求書などの証憑(法人税法施行規則第54条、第59条)
消費税 課税仕入れ等に関する事項を記録した帳簿と、請求書等(消費税法第58条、第30条第7項から第9項)
源泉所得税 給与の支払と源泉徴収税額の計算の過程が分かる資料、外部への支払のうち源泉徴収の要否が問題になるもの

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

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👥 人に関する資料

法人税の調査でも、人に払ったお金は必ず論点になります。給与か外注費か、役員給与として損金になるか、源泉徴収が漏れていないか。いずれも、支払の記録と、決めた手続の記録の両方が要ります。

資料 位置づけと見られ方
賃金台帳 労働基準法第108条は、使用者は各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項および賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を、賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならないと定めています
役員給与を決めた手続の記録 支給額をいつ、どの機関で決めたのかが分かるもの。改定した事業年度は特に確認されます
外部への支払の契約書と請求書 給与か外注費かの区分、源泉徴収の要否が問われる場面で根拠になります
旅費や交際費の精算資料 規程と精算書。相手方や目的が記録されているかどうかが分かれ目になります

役員給与については、改定した時期そのものが損金算入の可否に直結します。定期同額給与の改定時期の考え方は定期同額給与とは?改定できる時期と3か月ルールをわかりやすく解説で扱っていますので、対象期間に改定があった場合は、議事録と支給実績を並べて確認しておくと安全です。

💻 電子データの出し方と、提示・提出・留置き

会計も請求書も電子で扱っている会社が増えました。国税庁のFAQは、帳簿書類等の物件が電磁的記録である場合の出し方を説明しています。

場面 説明されている取扱い
提示 その内容をディスプレイの画面上で調査担当者が確認し得る状態にして示す
提出 確認し得る状態でプリントアウトしたものを渡す、調査担当者が持参した電磁的記録媒体への記録の保存を行う、またはe-Tax、オンラインストレージサービスやメールを利用して提出する
提出を求める際の説明 電磁的記録の提出を求める際は、税務当局における電磁的記録の取扱いを説明することとされている
私物との線引き 法人税の調査において代表者名義の個人預金の事業関連性が疑われる場合に、その通帳の提示・提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれると考えられる、と説明されている

紙でも電子でも、提示・提出・留置きの3つは意味が違います。混ぜて考えると、返してもらえるはずのものを渡したままにしてしまいます。

提示・提出・留置きは別のこと1提示 現物や画面を、その場で確認し得る状態にして示す2提出 写しの交付や記録媒体への保存など、渡して確認してもらう3留置き 提出された物件を預かる。承諾を得て行い、預り証が交付される

図3 留置きは、提出のうち預かって持ち帰るものを指します。

留置きの根拠は国税通則法第74条の7です。国税庁の事務運営指針は、留め置く必要性を説明し、帳簿書類等を提出した者の理解と協力の下、その承諾を得て実施するとしたうえで、預り証を交付すること、留め置く必要がなくなったときは遅滞なく預り証と引換えに返還することを定めています。返還の求めがあったときは、特段の支障がない限り速やかに返還することにも留意するとされています。

なお、調査の過程で調査担当者に提出するために新たに作成した写しの提出は、留置きには当たらないとされています。一方で、自社が事業に使うために保有している書類の写しを預ける場合は、返還を予定しないものとはいえないため、留置きの手続で預かることになる、とFAQは説明しています。

🗂 資料が揃わないときの動き方

すべてが揃う会社はまれです。揃わないことよりも、揃わない理由を説明できないことのほうが響きます。

状況 動き方
原本が見つからない 相手方に再発行を依頼する。間に合わない場合は、探した範囲と経緯を記録し、代わりに示せる資料を用意する
災害等で滅失・毀損した 国税庁は、災害等により滅失・毀損するなどして直ちに提示・提出することが物理的に困難な場合を、正当な理由に該当し得る例として挙げています。事実関係が分かる資料を残しておきます
保存期間を過ぎている 起算日から7年を過ぎた帳簿書類は、施行規則第59条第1項が求める保存の範囲外です。いつ廃棄したのかを説明できるようにしておきます
電子データしかない 画面で示すのか、出力して渡すのかを事前に決めておきます。出力に時間がかかるものは、当日までに準備します

❓ よくある質問

通知された期間より前の資料を求められました。応じる必要がありますか

求められる場面があります。手続通達5-5は、事前通知した課税期間の調査について必要があるときは、通知した課税期間以外の課税期間(進行年分を含む)に係る帳簿書類その他の物件も質問検査等の対象となる、としています。国税庁のFAQも、減価償却費の計上額を確認するために取得年度の帳簿書類等を検査する必要がある場合を例に挙げ、これはあくまで通知した年度の調査であって、それ以外の年度の調査を行っているわけではないと説明しています。

社長個人の通帳を見せてほしいと言われました

FAQは、法人税の調査において、その法人の代表者名義の個人預金について事業関連性が疑われる場合にその通帳の提示・提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものと考えられる、としています。あわせて、提示・提出が必要とされる趣旨を説明し理解を得られるよう努めることとしている、とも書かれています。まず、なぜ必要なのかの説明を求めてください。

資料の提示を断ると罰則がありますか

国税通則法第128条は、質問に答弁しない、検査を拒む、正当な理由なく物件の提示・提出の要求に応じないなどの行為について、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と定めています。正当な理由について国税庁は、個々の事案に即して判断され最終的には裁判所が判断するとしたうえで、災害等により滅失・毀損して直ちに提示・提出することが物理的に困難な場合などが該当すると考えられる、と説明しています。

帳簿は紙に出しておくべきですか

すべてを印刷する必要はありません。電磁的記録の提示は、内容をディスプレイの画面上で調査担当者が確認し得る状態にして示すこととされています。ただし、提出を求められたときに出力や記録媒体への保存に時間がかかるものは、当日までに手順を確かめておいたほうが進みます。

資料が税理士事務所にあるのですが、どこで調査を受けることになりますか

調査を行う場所は、事前通知の第2号として通知されます(国税通則法第74条の9第1項第2号)。通知された場所に合理的な理由があって変更を求めるときは、同条第2項により協議を求めることができます。資料の所在だけで場所が決まるという定めはありませんので、通知を受けた段階で相談してください。

税務調査の連絡が来たら、まずご相談ください

事前準備から当日の立会い、指摘への反論、修正申告の要否の判断まで対応します。顧問税理士がいらっしゃる場合も、この調査だけのスポットのご依頼を承ります。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。法人の税務顧問と申告業務、新しい会計基準の導入支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

📄 まとめ

当日に見られる資料の骨組みは法令にあります。青色申告法人であれば、法人税法施行規則第59条第1項が、第54条の帳簿とその他の帳簿、棚卸表・貸借対照表・損益計算書その他の決算関係書類、そして注文書・契約書・送り状・領収書・見積書などの証憑(自己が作成したものの写しを含みます)を挙げています。保存の期間は起算日から7年間で、起算日は事業年度終了の日の翌日から2月を経過した日です。

税目が増えれば、見られるものも重なります。消費税では帳簿の保存(第58条)に加えて、仕入税額控除の要件としての帳簿および請求書等の保存(第30条第7項)が効いてきます。人に払ったお金については、賃金台帳や契約書に加えて、金額を決めた手続の記録が要ります。

電子データは、画面で示す提示と、渡す提出とで扱いが違い、預けたままにする留置きはさらに別の手続です。留置きは承諾を得て行われ、預り証が交付され、必要がなくなれば返還されます。揃わないものが出たときは、隠さずに、探した範囲と経緯を説明できるようにしておくのが最短の道です。

🔗 参考(公的な一次情報)

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所・東京都台東区)が、法令・通達および国税庁の公表資料に基づいて作成しています。本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度は改正される可能性があり、個別の事実関係により結論が異なります。実際の判断にあたっては、専門家にご確認ください。

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