税務調査の連絡が来たら最初にやる5つのこと

税務署から電話が入り、実地の調査を行いたいと言われる。その瞬間に頭に浮かぶのは、何を見られるのか、何日かかるのか、何かまずいことがあったのか、といった不安だと思います。

ただ、最初の電話で決まってしまうことがいくつかあります。日程、対象の税目と期間、そして加算税の扱いです。ここを押さえずに「わかりました」と答えてしまうと、あとから取り返しがつかない部分が出てきます。

この記事では、連絡を受けてから最初の数日でやっておきたいことを5つに絞って整理します。根拠はすべて国税通則法と国税庁が公表している事務運営指針・FAQです。

連絡を受けてから最初にやる5つのこと1どちらか確かめる調査か行政指導か2書き取る通知された11項目3日程を確かめる変更は申し出られる4税理士に連絡立会いと通知の宛先5見直しを判断加算税の分かれ目最初の電話で、日程・対象・加算税の扱いの3つが動きます

順番を守るほど、あとで判断に迷う場面が減ります。

🧭 1つめ:その連絡は「調査」か「行政指導」か

税務署からの連絡が、すべて税務調査とは限りません。国税庁は事務運営指針で、納税義務者等に対し調査または行政指導に当たる行為を行う際は、対面・電話・書面などの態様を問わず、いずれの事務として行うかを明示した上で、それぞれの行為を法令等に基づき適正に行うとしています。

ここでいう調査とは、特定の納税義務者の課税標準等または税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で当該職員が行う一連の行為をいい、証拠資料の収集、要件事実の認定、法令の解釈適用などを含むとされています。これに対して行政指導は、申告書に計算誤りや転記誤り、記載漏れ、法令の適用誤りなどがあるのではないかと思われる場合に、自発的な見直しを要請するものです。

この違いは、後で効いてきます。国税庁のFAQは、行政指導に基づいて納税者が自主的に修正申告書を提出した場合には、延滞税は納付することがあるものの、過少申告加算税は賦課されないと説明しています。だからこそ、電話を受けたその場で「これは調査でしょうか、行政指導でしょうか」と確かめる価値があります。

区分 内容
調査 課税標準等または税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で、当該職員が行う一連の行為(事務運営指針)
行政指導 計算誤り・転記誤り・記載漏れ・法令の適用誤り等が疑われる場合に、自発的な見直しと、必要に応じて修正申告書の自発的な提出を要請するもの(国税庁FAQ)
明示のルール 態様を問わず、いずれの事務として行うかを明示したうえで行う(事務運営指針)
加算税の違い 行政指導に基づく自主的な修正申告なら過少申告加算税は賦課されない(国税庁FAQ)

📝 2つめ:通知された11項目を、その場で書き取る

実地の調査を行う場合、税務署長等は、あらかじめ納税義務者に対し、その旨と一定の事項を通知するものとされています(国税通則法第74条の9第1項)。条文が掲げるのは6つの事項と政令で定める事項で、その政令である国税通則法施行令第30条の4第1項がさらに4つを定めています。実地の調査を行う旨と合わせて11の事項です。

注意したいのは、この通知が書面では来ないことです。国税庁は、事前通知の方法は法令上規定されておらず、原則として電話により口頭で行うとしたうえで、納税者からの要望に応じて事前通知の内容を記載した書面を交付することはないと明記しています。つまり、電話を切った時点で手元に残るのは自分のメモだけです。

電話を切る前に、手元に書き取っておく項目法第74条の9第1項が掲げるもの実地の調査で質問検査等を行う旨開始する日時調査を行う場所目的、対象となる税目、対象となる期間対象となる帳簿書類その他の物件ここまでで7つ施行令第30条の4第1項が掲げるもの納税義務者の氏名と住所または居所調査を行う職員の氏名と所属官署日時または場所の変更に関する事項法第74条の9第4項の規定の趣旨合わせて11の事項になる書面での交付は行われない

口頭で伝えられるため、聞き取った内容がそのまま記録になります。

書き取るときは、聞いた内容だけでなく、いつ、誰から、どの番号にかかってきたのかも残しておいてください。あとで調査通知の時点が問題になったときに、社内で共有できる記録はこのメモしかありません。

複数の調査担当者が来る場合には、代表する者の氏名と所属官署に加えて、臨場予定人数も併せて連絡することとされています。何人が何日来るのかは、会議室や立会者の手配に直結しますので、必ず確認してください。ただし、調査に要する時間や日数については、調査開始後の状況により異なるため、事前通知の時点で示すことは困難であると国税庁は説明しています。

もう一つ、11項目の最後にある「法第74条の9第4項の規定の趣旨」の中身も押さえておきましょう。同項は、調査の過程で通知した目的・税目・期間・帳簿書類以外の事項について非違が疑われることとなった場合に、その事項に関して質問検査等を行うことを妨げるものではないと定めています。通知された範囲が調査の上限になるわけではない、ということです。

📅 3つめ:日程は動かせる。動かす理由を用意する

税務署長等は、通知を受けた納税義務者から合理的な理由を付して調査開始日時または調査開始場所の変更を求められた場合には、当該事項について協議するよう努めるものとされています(国税通則法第74条の9第2項)。

国税庁は、事前通知に際してあらかじめ都合を尋ねることとしており、通知後であっても、一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情が生じた場合などには、申し出れば変更を協議するとしています。例示以外でも、理由が合理的と考えられれば変更を協議するとされています。申出の方法は法令で定められていないため、口頭で差し支えないとされており、書面の提出は求められていません。

そもそも事前通知が何日前に行われるかについては、法令に特段の規定がありません。国税庁は、何日程度前に通知するかを一律に示すことは困難としたうえで、調査開始日までに納税者が調査を受ける準備等をできるよう、相当の時間的余裕を置いて行うこととしていると説明しています。「準備が間に合わない」というのは、それ自体として説明のできる事情です。

反対に、日程を先に押さえてしまうと、資料の整理も、社内で誰に事実関係を確かめるかも、限られた日数の中で進めることになります。準備の見通しが立たないうちに確答しないほうが、結果として調査は落ち着いて進みます。

確かめること 根拠と取扱い
変更を求められるか 合理的な理由を付して求めれば、協議するよう努めるものとされている(法第74条の9第2項)
申出の方法 法令で定められていないため、口頭による申出で差し支えない(国税庁FAQ)
理由の例 一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情。例示以外でも合理的と考えられれば協議(国税庁FAQ)
人数と日数 複数が臨場する場合は臨場予定人数も連絡される。所要日数は事前には示されない(国税庁FAQ)

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📞 4つめ:税理士に連絡し、立会いと通知の宛先を決める

納税義務者について税務代理人がある場合において、納税義務者の同意がある場合として財務省令で定める場合に該当するときは、納税義務者への事前通知は税務代理人に対してすれば足りるとされています(国税通則法第74条の9第5項)。税務代理人が数人あるときに代表する税務代理人を定めた場合も同様です(同条第6項)。

国税庁は、この同意を税務代理権限証書に記載しておく必要があると説明しており、同意の記載がない場合には納税者と税務代理人の双方に事前通知が行われるとしています。誰にどう届くのかは、証書の書きぶりで決まっているということです。連絡を受けたら、まず顧問税理士に共有し、今回の税目について税務代理権限証書が提出されているかを確認してください。

あわせて、当日どこまで立ち会ってもらうのか、社長が同席する時間はどこか、資料の受け渡しは誰が窓口になるのかを決めておくと、当日の進行が安定します。調査担当者は身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときはこれを提示しなければならないとされていますので(同法第74条の13)、入口での確認も段取りに入れておきましょう。

役員給与は法人税の調査で確認されることの多い論点です。事前の点検は役員給与の税務 完全ガイドを参考にしてください。

🔎 5つめ:自主的な見直しは、加算税の分かれ目を意識して

申告に誤りがあることに心当たりがあるとき、調査の前に自分で直しておきたいと考えるのは自然なことです。ただ、加算税の扱いは、いつ修正申告書を出したかで変わります。

国税通則法第65条第1項は、修正申告または更正があったときに納付すべき税額に100分の10の割合を乗じた過少申告加算税を課すとしたうえで、括弧書きで、修正申告書の提出が、調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでないときは100分の5とすると定めています。さらに同条第6項は、その修正申告が予知してされたものでなく、かつ調査通知がある前に行われたものであるときは、第1項を適用しないとしています。

ここで問題になるのが、調査通知がいつ行われるのかです。事務運営指針は、事前通知に先立って納税義務者の都合を聴取する際に、法第65条第6項に規定する調査通知を併せて行うとしています。つまり、日程を相談する最初の電話の時点で、すでに調査通知は済んでいることになります。

修正申告をいつ出したかで、過少申告加算税が変わる修正申告書を提出する調査通知の前予知してされたものでない課されない法第65条第6項調査通知の後予知してされたものでない100分の5法第65条第1項の括弧書き予知した後加重される部分もある100分の10法第65条第1項・第2項

最初の電話をどう位置づけるかで、この図のどこに立つかが変わります。

なお、100分の10の場合には加重があります。納付すべき税額が、その国税に係る期限内申告税額に相当する金額と50万円とのいずれか多い金額を超えるときは、その超える部分に100分の5を乗じた金額が加算されます(同条第2項)。隠蔽または仮装があったときは、過少申告加算税に代えて100分の35の重加算税が課されます(同法第68条第1項)。

修正申告を出した時点 過少申告加算税
調査通知の前で、更正があるべきことを予知する前 課されない(法第65条第6項)
調査通知の後で、更正があるべきことを予知する前 100分の5(同条第1項の括弧書き)
更正があるべきことを予知した後 100分の10。期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分には100分の5を加算(同条第1項・第2項)
隠蔽または仮装があった場合 過少申告加算税に代えて重加算税100分の35(法第68条第1項)

「まだ通知は来ていないから間に合う」と考えて急いで修正申告を出しても、日程を相談した電話の時点で調査通知が済んでいれば、第6項の適用はありません。誤りに気づいたときは、まず何をいつ言われたのかを日付とともに記録し、そのうえで税理士と扱いを確認してください。

時点 やること
電話を受けたその場 調査か行政指導かを確かめ、11の通知事項と担当者の氏名・所属官署・臨場予定人数を書き取る
その日のうち 顧問税理士に共有し、今回の税目について税務代理権限証書が提出されているかを確認する
2日から3日のうち 日程に無理があれば、理由を添えて変更を申し出る。申出は口頭で差し支えないとされている
調査開始日まで 通知された税目・期間・帳簿書類その他の物件をそろえ、当日に誰が説明するかを決める
税務調査の連絡が来たら、まずご相談ください

事前準備から当日の立会い、指摘への反論、修正申告の要否判断まで対応します。顧問契約とは別に、調査だけのスポット依頼も承ります。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。法人の税務顧問と申告業務、新しい会計基準の導入支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

電話で言われた内容を、書面でもらえますか

国税庁は、事前通知の方法は法令上規定されておらず、原則として電話により口頭で行うとしています。電話による事前通知が困難と認められる場合に税務当局の判断で書面によることはあるものの、納税者からの要望に応じて事前通知内容を記載した書面を交付することはないと明記しています。

調査を断ることはできますか

日時や場所については、合理的な理由を付して変更を求めることができます(国税通則法第74条の9第2項)。一方、質問検査等そのものについては、正当な理由なく帳簿書類等の提示・提出の求めに応じない場合には罰則の定めがあります。国税庁は、罰則があることをもって強権的に権限を行使することは考えておらず、趣旨を説明して承諾を得て行うとしています。

事前の連絡がなく、いきなり来ることはありますか

申告もしくは過去の調査結果の内容、営む事業内容に関する情報などに鑑み、違法または不当な行為を容易にし、正確な課税標準等または税額等の把握を困難にするおそれ、その他調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、事前通知を要しないとされています(同法第74条の10)。この場合でも国税庁は、運用上、臨場後速やかに税目・期間・目的などを説明するとしています。

なぜ自社が選ばれたのかを教えてもらえますか

国税庁は、調査の目的は事前通知すべき事項とされている一方で、実地の調査を行う理由は法令上の事前通知事項ではないため、これを説明することはないとしています。

顧問税理士に全部任せてしまってよいですか

事前通知については、税務代理権限証書に同意の記載があれば税務代理人に対してすれば足りるとされています(同法第74条の9第5項)。ただし、事実関係を知っているのは会社です。誰がどの資料を持っているか、どの取引がどういう経緯だったかは、社内で整理しておく必要があります。

📄 まとめ

最初の電話でやることは多くありません。調査か行政指導かを確かめ、通知された11項目を書き取り、日程を確かめ、税理士に共有し、自主的な見直しの要否を判断する。この5つです。

とくに大事なのは、通知が口頭で行われ、書面では交付されないという点と、日程を相談したその時点で調査通知が済んでいるとされている点です。この二つを知っているかどうかで、最初の1週間の動き方が変わります。落ち着いて、日付とともに記録を残すところから始めてください。

🔗 参考(公的な一次情報)

本記事は公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所・東京都台東区)が、法令・通達および国税庁の公表資料に基づいて作成しています。本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度は改正される可能性があり、個別の事実関係により結論が異なります。実際の判断にあたっては、専門家にご確認ください。

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