相続税の税理士費用の相場は?選び方と依頼のタイミングを解説

「相続税の申告を税理士に頼むと、いくらかかるのだろう」「どの事務所に頼んでも同じではないのか」——初めて相続を経験する方から、いちばん多くいただくご質問です。

ホームページを見ても料金の書き方はバラバラで、比べようがないと感じるかもしれません。じつは相続税の税理士費用には公的に決められた基準がなく、事務所ごとに自由に決めてよいことになっています。

この記事では、費用がどのような仕組みで決まるのか、見積書のどこを見ればよいのか、そして「相続税に強い税理士」をどう見極めるのかを、税金の知識がゼロの方にもわかるように整理します。

この記事でわかること

  • 相続税の税理士費用の相場と、その金額が決まる仕組み
  • 見積書で必ず確認したい5つのチェックポイント
  • 相続税に強い税理士を見極める4つの視点(実績・土地評価・書面添付・二次相続)
  • 依頼するタイミングと、費用を抑えるための工夫

💰 相続税の税理士費用に「公定価格」はありません

まず前提として知っておきたいのは、税理士の報酬額に法律上の基準はないということです。かつては税理士会の会則で報酬の最高限度額が定められていましたが、この規定は平成14年3月31日をもって廃止され、平成14年4月1日以後は各税理士・各事務所が自由に報酬を決められるようになりました(税理士法の改正による)。

そのため、同じ内容の申告でも事務所によって金額が変わります。「相場より高い=ぼったくり」「安い=良心的」と単純には言えません。大切なのは、その金額に何の作業が含まれているかを確認することです。

よく言われる目安は「遺産総額の0.5〜1%程度」

公的な統計はありませんが、実務上は遺産総額(相続財産の合計額)の0.5〜1%程度を一つの目安として説明する事務所が多く見られます。遺産総額が1億円なら50万円〜100万円というイメージです。ただしこれはあくまで慣行上の目安であり、公的に保証された数字ではない点にご注意ください。

報酬は「基本報酬+加算報酬」の二階建てが一般的

多くの事務所では、遺産総額に応じた基本報酬に、手間のかかる事情に応じた加算報酬を上乗せする形をとっています。見積書の総額だけを見て比べると、後から加算されて逆転することがあります。

相続税の税理士報酬は「基本報酬+加算報酬」で決まる基本報酬遺産総額に応じて決まる部分目安 0.5〜1%程度加算報酬相続人が多い/土地の数が多い/非上場株式がある申告期限までが短い/書面添付を付ける など事情ごとに上乗せされる= 見積書に書かれる総額基本報酬だけを比べても、実際の総額はわからない注意:報酬の上限規定は平成14年3月31日で廃止(平成14年4月1日以後は自由)同じ内容でも事務所ごとに金額が異なります

図1 相続税の税理士報酬の構成。基本報酬に加算報酬が上乗せされる二階建てが一般的です。

加算報酬の対象になりやすい事情

加算されやすい事情 なぜ手間が増えるのか
相続人が多い 戸籍の収集範囲が広がり、遺産分割の調整や書類への署名押印の取りまとめにも時間がかかります。
土地の数(筆数)が多い 土地は1筆ごとに現地確認・測量図の確認・評価計算が必要です。評価額の差が税額に直結します。
非上場株式がある 会社の決算書から株価を評価する作業が別途必要になり、専門性も工数も高くなります。
申告期限までが短い 相続税の申告期限は原則10か月です(相続税法27条1項)。残り期間が短いほど短期集中の対応になります。
書面添付を付ける 税理士法33条の2の書面を作成するには、確認した資料と判断の過程を具体的に記載する作業が加わります。

※ 上記はあくまで加算の対象になりやすい代表例です。どの事情でいくら加算するかは事務所ごとに異なります。

🧾 見積書で必ず確認したい5つのこと

金額の大小より先に、「その金額で、どこまでやってくれるのか」を確認してください。次の5点を質問すれば、事務所ごとの違いがはっきりします。

  • 基本報酬に含まれる作業の範囲(戸籍収集・財産の残高証明の取得・遺産分割協議書の作成は含まれるか)
  • 加算報酬が発生する条件と、その金額の計算方法
  • 税理士法33条の2の書面(書面添付)を付けるかどうか、付ける場合の追加費用
  • 二次相続(残された配偶者が亡くなったときの相続)まで見た分割案の提案があるか
  • 申告後に税務調査があった場合の対応費用(報酬に含まれるか、別料金か)
ポイント

「見積書を書面で出してもらう」こと自体が重要な確認になります。口頭の概算だけで進めると、後から加算報酬が積み上がって想定を大きく超えることがあります。金額は、契約前に書面で確認しましょう。

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

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🔍 相続税に強い税理士を見極める4つの視点

税理士は税務の専門家ですが、日々の業務は事務所によって大きく異なります。法人の顧問業務や所得税の確定申告を中心とする事務所もあれば、相続税を専門に扱う事務所もあります。

国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によれば、令和6年に亡くなった方のうち相続税の申告が必要となった方の割合(課税割合)は10.4%でした。裏を返せば約9割の方には相続税がかからないということであり、相続税の申告そのものが、税理士にとっても日常的とは限らない業務だということです。だからこそ、次の4点を確認する意味があります。

① 相続税申告の取扱件数

「これまで何件の相続税申告を扱ってきたか」「年間で何件くらいか」を、遠慮せず聞いてよい質問です。件数そのものより、数字を具体的に答えられるかどうかが判断材料になります。

② 土地の評価に踏み込めるか

相続財産のなかで、金額のブレがいちばん大きいのが土地です。同じ土地でも、形状・接道・利用状況をどう評価に反映するかで評価額は変わります。「現地を見に行きますか」と質問し、机上の計算だけで終わらせない姿勢があるかを確認しましょう。

③ 書面添付制度(税理士法33条の2)を活用しているか

書面添付制度とは、申告書を作成した税理士が、どの資料に基づいて何をどう確認・計算したかを記載した書面(計算事項等を記載した書面)を申告書に添付する制度です(税理士法33条の2)。

この書面が添付され、かつ税務代理権限証書(税理士法30条)が提出されている場合、税務署は納税者に調査の日時場所を通知する前に、その税理士に意見を述べる機会を与えなければならないとされています(税理士法35条1項)。これを意見聴取といいます。

国税庁のQ&Aは、意見聴取の段階で疑義が解消し、結果として調査の必要がないと認められた場合には、納税者の事務所等に臨場して行う帳簿書類の調査に至らないこともあり得るとしています。ただし同じQ&Aは、この制度は調査の省略を前提としたものではないとも明記しています。「書面添付を付ければ税務調査が来ない」と説明する事務所があれば、その説明は正確ではありません。

書面添付制度と意見聴取のしくみ(税理士法33条の2・35条1項)申告書に「計算事項等を記載した書面」を添付税理士法33条の2/あわせて税務代理権限証書(30条)を提出税務署が納税者に調査を通知する前に「意見聴取」税理士法35条1項/税理士に意見を述べる機会が与えられる疑義が解消した場合帳簿書類の調査に至らないこともあり得る解消しない場合通常どおり調査の通知が行われ実地の調査に進む注意:この制度は「調査の省略」を前提とするものではありません(国税庁Q&A)

図2 書面添付から意見聴取までの流れ。書面を付ければ必ず調査がなくなる、というものではありません。

④ 二次相続まで見た提案があるか

配偶者の税額軽減を最大限に使えば、一次相続(今回の相続)の税額はゼロに近づきます。しかし配偶者に財産を寄せすぎると、その配偶者が亡くなる二次相続で、子が重い相続税を負担することがあります。

一次と二次を通算して見る提案ができるかどうかは、経験の差が出やすいところです。この点は、本連載の「第15回 配偶者の税額軽減とは?1億6,000万円まで無税でも二次相続に注意」で詳しく解説します。

そもそも「税理士」であることの確認も

税理士でない者が税理士業務を行うことは禁止されています(税理士法52条)。相手が税理士登録をしているかどうかは、日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで誰でも確認できます。国税庁も、税理士証票のほか、日本税理士会連合会への電話照会や同サイトでの検索により確認できると案内しています。

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⏰ 依頼のタイミングは「早いほど選択肢が多い」

相続税の申告と納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条1項・33条)。この10か月のなかで、財産を調べ、相続人を確定し、分け方を決め、評価し、申告書を作るという工程をすべて終える必要があります。

依頼が遅くなるほど、できることは減ります。とくに小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は、原則として申告期限までに遺産分割が終わっていることが要件です。分割協議が長引きそうな段階で相談していれば、期限内に間に合わせる進め方や、期限までに分割が終わらない場合の手続きを含めて設計できます。

相続開始から10か月 依頼が早いほど打てる手が多い相続開始3か月4か月10か月死亡の日相続放棄準確定申告相続税の申告・納付〜3か月ごろに相談した場合分割案の比較・特例の使い方まで設計できる8か月を過ぎてから相談した場合資料集めと申告書作成で手一杯になりやすい小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減は原則として申告期限までに遺産分割が終わっていることが要件です

図3 相続開始から申告期限までの10か月。相談が早いほど、分割案と特例の選択肢が残ります。

※ 3か月は相続放棄・限定承認の熟慮期間(民法915条1項)、4か月は準確定申告の期限(所得税法124条・125条)です。詳しくは親が亡くなったらやることは?相続手続きの流れと期限一覧をご覧ください。

📉 費用を抑えるための3つの視点

① 自分で集められる資料は自分で集める

戸籍謄本、住民票の除票、固定資産税の課税明細書、預金の残高証明書などは、相続人ご自身でも取得できます。事務所によっては、これらの代行を別料金としているため、自分で集めれば費用を抑えられる場合があります。どの財産を調べればよいかは相続財産の調べ方は?預貯金・不動産・株・借金の調査と財産目録にまとめています。

② 複数の事務所から書面で見積りを取る

報酬が自由化されている以上、比較には意味があります。ただし比べるべきは総額ではなく、同じ作業範囲でいくらかです。前掲の5つの確認事項をそろえて聞くと、比較できる形になります。

③ 払いすぎた相続税は「更正の請求」で取り戻せる場合がある

申告した税額が多すぎたことに後から気づいた場合、税務署に減額を求める手続きを更正の請求といいます。原則として法定申告期限から5年以内に行う必要があります(国税通則法23条1項)。

また相続税には固有の規定があり、未分割だった財産が分割されたなど一定の事由が生じた場合には、その事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求ができます(相続税法32条1項)。土地の評価を見直して還付につながることもあるため、申告後であってもセカンドオピニオンを取る意味はあります。

❓ よくある質問

Q. 相続税の申告は税理士に頼まず自分でできますか。

制度上、ご自身で申告することは可能です。財産が預貯金のみで相続人も少ないケースでは、自力での申告も選択肢になります。一方、土地が複数ある、非上場株式がある、特例の適用判断が必要といったケースでは、評価の誤りが税額に直結します。判断基準は、本連載の「第19回 相続税申告は自分でできる?税理士に頼む判断基準と申告の流れ」で詳しく解説します。

Q. 税理士費用は相続税の計算上、遺産から差し引けますか。

相続税の計算で遺産総額から差し引ける債務は、原則として被相続人が亡くなった時点で存在していた債務です。相続開始後に相続人が依頼した相続税申告の税理士報酬は、被相続人の債務ではないため、債務控除の対象にはならないと整理されるのが一般的です。個別の事情によって扱いが異なる可能性があるため、契約前に担当税理士へご確認ください。

Q. 「書面添付を付ければ税務調査は来ない」と説明されましたが本当ですか。

正確ではありません。国税庁のQ&Aは、意見聴取で疑義が解消すれば実地の調査に至らないこともあり得るとしつつ、この制度は調査の省略を前提としたものではないと明記しています。断定的な説明をする事務所には、その根拠を確認したほうがよいでしょう。

📝 まとめ

  • 税理士報酬の上限規定は平成14年3月31日で廃止され、平成14年4月1日以後は各事務所が自由に決めている
  • 実務上の目安は遺産総額の0.5〜1%程度と言われるが、公的な基準ではない
  • 報酬は「基本報酬+加算報酬」の二階建て。総額ではなく作業範囲で比べる
  • 見極めの視点は、取扱件数・土地評価への踏み込み・書面添付(税理士法33条の2)・二次相続まで見た提案
  • 申告期限は10か月(相続税法27条1項)。特例は原則として期限までの分割が要件のため、相談は早いほど選択肢が多い
  • 払いすぎた場合は法定申告期限から5年以内の更正の請求(国税通則法23条1項)という道もある

相続税の申告は、一生に何度も経験するものではありません。だからこそ、金額の安さだけでなく「何をどこまでやってくれるのか」を、契約前に書面で確認しておくことが、結果としていちばんの節約になります。

相続の全体像は相続税 完全ガイド(連載の目次)にまとめています。あわせてご覧ください。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。相続税の申告と事業承継の支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

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