境内の一部や門前の土地を貸している宗教法人は多く、地代や更新料の扱いは毎年の決算で必ず出てくる論点です。
不動産貸付業は原則として収益事業です。除かれるのは、墳墓地の貸付け、国等への直接の貸付け、住宅用地の低廉な貸付けに限られます。更新料は不動産貸付業の収入として扱われます。
この記事では、宗教法人の不動産貸付けを条文と通達と質疑応答事例にそって整理します。
- 不動産貸付業から除かれる3つの場合
- 国等への貸付けが直接であることを求められる理由
- 住宅用地の低廉貸付けの2つの要件
- 更新料が不動産貸付業の収入になる根拠
- ケース貸しや看板の掲出料の扱い
この記事の見出し
📌 不動産貸付業は原則として収益事業
宗教法人が所有する土地や建物を他人に貸すと、原則として不動産貸付業として収益事業に当たります(法人税法施行令5条1項5号)。境内の一部を貸している、門前の土地を貸している、旧庫裡を貸しているといった形は、いずれもこの判定に入ります。
この号には、除かれるものがイからリまで並んでいます。宗教法人に関係しうるのは、ニの墳墓地の貸付業、ホの国または地方公共団体に対し直接貸し付けられる不動産の貸付業、ヘの主として住宅の用に供される土地の低廉な貸付業です。
それ以外の貸付けは収益事業になります。相手が檀信徒であっても、宗教活動に関係する用途であっても、この結論は変わりません。
| 宗教法人に関係する除外 | 内容 |
|---|---|
| 5号ニ | 宗教法人法4条2項に規定する宗教法人が行う墳墓地の貸付業 |
| 5号ホ | 国または地方公共団体に対し直接貸し付けられる不動産の貸付業 |
| 5号ヘ | 主として住宅の用に供される土地の貸付業で、対価の額が低廉であるなど財務省令の要件を満たすもの |
📌 国等への貸付けは直接であることが必要
5号ホの除外は、貸し付ける相手が国または地方公共団体であればよい、というものではありません。
法人税基本通達15-1-19は、この除外に当たる貸付けは、国等によって直接使用されることを目的としてその国等に対して直接貸し付けられるものに限られるとしています。したがって、公益法人等が国等に対して不動産の貸付けを行った場合であっても、その不動産が国等以外の者に転貸されているときは、この除外に該当しません。
自治体を通じて第三者に使わせる形になっているのであれば、除外は使えないということです。契約の相手方だけでなく、実際に誰が使っているかを確認してください。
📌 住宅用地の低廉貸付けは2つの要件で見る
5号ヘの住宅用地の除外は、要件が2段構えになっています。
1つ目は土地の性質です。法人税基本通達15-1-20は、主として住宅の用に供される土地とは、その床面積の2分の1以上が居住の用に供される家屋の敷地として使用されている土地のうち、その面積がその家屋の床面積の10倍に相当する面積以下であるものをいう、としています。居住の用には貸家住宅の用を含み、別荘の用を除きます。
2つ目は対価の水準です。法人税法施行規則4条は、その事業年度の貸付期間に係る収入金額の合計額が、その貸付けに係る土地に課される固定資産税額および都市計画税額でその貸付期間に係るものの合計額に3を乗じて計算した金額以下であることを要件としています。
住宅用地の貸付けが収益事業から外れるかどうかの判定。2つの要件をどちらも満たす必要があります。
この判定について、法人税基本通達15-1-21は3点を示しています。第1に、要件に該当するかどうかはそれぞれの貸付けごとに判定します。第2に、貸付期間に係る収入金額は、その期間につき経常的に収受する地代の額によるものとし、契約の締結、更新または更改に伴って収受する権利金その他の一時金の額はこれに含めません。第3に、固定資産税および都市計画税の額は、その土地に係る税が特別に減免されている場合であっても、その減免がされなかったとした場合における税額によります。
📌 更新料は不動産貸付業の収入になる
契約の更新のときに受け取る更新料の扱いは、国税庁の質疑応答事例が答えています。
宗教法人が所有土地を駐車場および住宅用として賃貸し、契約期間の経過時に更新料を借主から受け取った場合、この更新料収入は収益事業である不動産貸付業に係る収入金額として取り扱われる、というのが回答です。関係法令通達として、法人税法施行令5条1項5号と法人税基本通達15-2-11が挙げられています。
法人税基本通達15-2-11(2)は、土地または建物の貸付けに際して収受する権利金その他の一時金で(1)に該当しないものの額、および土地もしくは建物の貸付けに係る契約の更新または更改により収受するいわゆる更新料等の額は、不動産の貸付けに係る収益の額とする、としています。
なお、15-1-21が権利金や一時金を低廉判定の収入金額から除いているのは、あくまで5号ヘの要件判定の場面です。収益事業の収入金額として計上するかどうかとは別の話ですので、混同しないでください。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。
初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら
📌 権利金が土地の譲渡とみなされる場合
一時金のうち、金額が大きいものには別の扱いがあります。
法人税基本通達15-2-11(1)は、その土地の貸付けにより法人税法施行令138条1項の規定に該当することとなった場合における、その貸付けにより収受する権利金その他の一時金の額は、土地の譲渡による収益の額として取り扱うとしています。同条は、借地権の設定等により地価が著しく低下する場合に土地等の帳簿価額の一部を損金に算入する規定です。
借地権を設定して多額の権利金を受け取るときは、単純な賃貸収入として処理してよいのかを先に確認してください。処理を誤ると、所得の金額が大きく変わります。
📌 ケース貸しや看板も不動産貸付業
不動産貸付業の範囲は、思っているより広く取られています。
法人税基本通達15-1-17は、不動産貸付業には、店舗の一画を他の者に継続的に使用させるいわゆるケース貸し、および広告等のために建物その他の建造物の屋上、壁面等を他の者に使用させる行為が含まれる、としています。塀に看板を出させて掲出料を受け取っているのであれば、不動産貸付業の判定に入ります。
一方、同通達の注は、他の者に不動産を使用させる行為であっても、倉庫業、席貸業、遊技所業または駐車場業に掲げる事業のいずれかに該当するものは不動産貸付業に含まれないとしています。駐車の場所として貸しているのであれば駐車場業になり、5号の除外は関係なくなります。
収益事業に当たる貸付けがある場合は、収益事業とそれ以外で経理を区分し(法人税法施行令6条)、開始した日以後2か月以内に届出書を提出してください(法人税法150条1項)。
貸付けごとに除外に当たるかを確認すれば、課税される範囲は整理できます。契約書の見直しから区分経理の設計まで、実務の手順からご一緒できます。宗教法人の税務と会計に対応している公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。宗教法人の税務顧問と会計体制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
❓ よくある質問
A. 相手が誰かで結論は変わりません。除かれるのは、墳墓地の貸付け、国等に対し直接貸し付けられる不動産の貸付け、住宅用地の低廉な貸付けに限られます(法人税法施行令5条1項5号ニ、ホ、ヘ)。
A. 住宅用地の場合に限り、対価の水準による除外があります。その事業年度の貸付期間に係る収入金額が、固定資産税額および都市計画税額の合計額に3を乗じた金額以下であることが要件です(法人税法施行規則4条)。住宅用地以外にはこの除外はありません。
A. 減免がされなかったとした場合における税額によって判定します(法人税基本通達15-1-21(3))。実際に納めた税額ではありません。
A. 含めます。国税庁の質疑応答事例は、宗教法人が受け取る更新料収入は不動産貸付業の収入金額として取り扱われるとしています。法人税基本通達15-2-11(2)も同じ扱いを示しています。
A. 法人税基本通達15-1-17は、広告等のために建物その他の建造物の屋上、壁面等を他の者に使用させる行為を不動産貸付業に含めています。収益事業の判定に入ります。
📄 まとめ
宗教法人が行う不動産の貸付けは、原則として不動産貸付業として収益事業に当たります(法人税法施行令5条1項5号)。
除かれるのは、墳墓地の貸付業(ニ)、国等に対し直接貸し付けられる不動産の貸付業(ホ)、主として住宅の用に供される土地の低廉な貸付業(ヘ)です。
住宅用地の除外には2つの要件があります。床面積の2分の1以上が居住の用に供される家屋の敷地で面積が床面積の10倍以下であること、そして地代が固定資産税額と都市計画税額の合計額の3倍以下であることです。
更新料は不動産貸付業の収入金額として扱われます。ケース貸しや看板の掲出も不動産貸付業に含まれます。
⚖ 本記事の根拠法令
- 法人税法施行令5条1項5号(不動産貸付業)
- 法人税法施行規則4条(住宅用土地の貸付業で収益事業に該当しないものの要件)
- 法人税基本通達15-1-17(不動産貸付業の範囲)
- 法人税基本通達15-1-18(永代使用料を徴して行う墳墓地の貸付けも収益事業とされない)
- 法人税基本通達15-1-19
- 法人税基本通達15-1-20(主として住宅の用に供される土地の意義)
- 法人税基本通達15-1-21(低廉貸付けの判定)
- 法人税基本通達15-2-11(借地権利金等)
- 国税庁質疑応答事例 宗教法人の貸付土地の更新料収入(不動産貸付業の収入金額として取り扱われる)
- 法人税法施行令6条(収益事業を行う法人の経理の区分)、法人税法150条1項(収益事業開始の届出)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
このテーマの全体像は宗教法人の税務|収益事業の判定と区分経理の実務にまとめています。