最新見込(着地見込)はどう作る?実績と見込をつなぐ方法

※本記事は2026年10月6日時点の公表資料に基づきます。

「累計では計画を上回っているので、今期は大丈夫だと思います」。この報告が、下期になって覆った経験はないでしょうか。累計の予実だけでは、年度末にどこへ着地するかは分かりません。

結論からいえば、最新見込(着地見込)は、確定した月の実績を優先し、残りの月を根拠のある見込で補って年度の着地を示すものです。本記事では、見込の三つの作り方と選び方、部門からの集め方、前提の記録、見込精度の検証までを、架空の会社の例で解説します。

最新見込とは何か

最新見込とは、確定した月の実績に、残りの月の見込を足して作る年度の着地予想です。「着地見込」「フォーキャスト」とも呼ばれます。たとえば3月決算の会社で9月までの実績が確定していれば、4〜9月は実績、10〜3月は見込で埋めた数字が最新見込になります。

最新見込=確定した実績+残り月の見込実績見込計画456789101112123実績(6か月)見込(6か月)

図1 架空の例です。9月までは実績、10月以降は見込で埋め、年度の着地を示します(単位:百万円)。

予実管理で最新見込が重要なのは、経営陣が本当に知りたいのが「年度末に計画をどれだけ達成できそうか」だからです。累計の予実差だけを見ていると、下期に大きな案件や費用が集中している場合に、着地の見通しを誤ります。最新見込を毎月更新し、計画と比べることで、早い段階で打ち手を考えられます。

ダッシュボードの中では、最新見込は実績と計画と並ぶ三つ目の系列です。画面全体の構成は「予実管理ダッシュボードの作り方」で解説しています。

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実績を優先し、残り月を見込で補う

最新見込を作るときの大原則は、確定した月は必ず実績を使うことです。実績が確定しているのに見込の数字を残しておくと、着地の数字に古い前提が混ざってしまいます。月次決算が確定したら、その月の見込を実績に置き換え、残りの月の見込を見直します。

実績がまだそろっていない月がある場合、たとえば一部の部門の締めが遅れている場合には、その期間の合計を「実績」として表示しないことも大切です。中途半端な実績を合計すると、実態よりも小さく見えてしまいます。画面上では「—」と表示し、確定後に更新する運用が安全です。

残り月の見込を作る三つの方法

残りの月の見込を作る方法は、大きく三つあります。一つ目は、残りの月を計画のまま据え置く方法です。手間はかかりませんが、計画の前提が崩れていても着地に反映されません。二つ目は、直近の実績の傾向から延長する方法です。三つ目は、受注残や契約、人員計画などから積み上げる方法です。

残り月の見込を作る三つの方法計画据え置き残り月は計画のままトレンド直近の実績から延長して見込む積み上げ受注・案件・人員から組み立てる右に行くほど手間はかかるが、根拠は確かになる

図2 事業の特性や見通しの確かさに応じて使い分けます。

方法 向いている項目 注意点
計画据え置き 金額が小さく、変動の少ない費用 前提が崩れていても反映されない
トレンド 継続的な取引の売上、変動費 季節変動や一時的要因を補正する
積み上げ 受注生産の売上、人件費、大型投資 根拠資料の更新を毎月行う

どの方法を使うかは、項目ごとに決めて構いません。受注や契約で先の数字が見えるなら積み上げ、見えにくいならトレンドで見込み、前提の変化を調整します。金額の小さい費用は計画据え置きでも大きな問題はありません。大切なのは、項目ごとにどの方法を使ったかを記録しておくことです。

見込方法の選び方見込を作る項目を決める受注や契約で先の数字が見えるか積み上げで見込む(受注残・契約・人員計画)トレンドで見込み前提の変化を調整見える見えにくい

図3 同じ会社でも、売上と費用、事業ごとに方法を変えて構いません。

部門から見込を集める

売上や部門費の見込は、現場を知る各部門に作ってもらうのが一般的です。その際、経営企画部門が共通の前提、たとえば為替レートや価格改定の時期、採用の予定などを先に配布しておくことが大切です。前提がそろっていないと、部門ごとの見込を合計した数字に意味がなくなります。

部門から見込を集める流れ共通の前提を配布部門が見込と根拠を作成経営企画が集計・確認経営会議で承認

図4 前提をそろえて配り、根拠と一緒に回収することがポイントです。

回収する際には、数字だけでなく根拠も一緒に提出してもらいます。根拠は長い文章である必要はありません。「大型案件Aを12月に計上」「採用2名を11月から反映」といった一行のメモで十分です。この記録があれば、見込が外れたときに原因を特定でき、次の見込の精度を上げることにつながります。

記録する項目 記載例 使い方
見込の方法 積み上げ(受注残) 方法の妥当性を検証
主な前提 為替1ドル=○円、価格改定は1月 前提の変化を追跡
主な案件・費用 大型案件Aを12月に計上 外れた原因の特定
前月からの変化 案件Bの失注で−30 見込の変化を説明

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ダッシュボードでの見せ方

最新見込は、計画との差と達成率を一枚のカードにまとめると、全体の見通しが一目で伝わります。年度の着地見込、計画、差額、達成率に加え、そのうち実績がいくらで見込がいくらかを示しておくと、見込に依存している度合いも分かります。

予算達成の見通しを示すカード(架空例)予算達成の見通し(売上)年度着地見込13,250百万円計画 12,580+670達成率 105.3%うち実績 6,240(4〜9月)+見込 7,010(10〜3月)

図5 年度着地見込と計画、達成率を一枚にまとめると、全体の見通しが一目で伝わります。

推移のグラフでは、実績と見込の棒の色を変え、見込の期間が分かるようにします。年度着地の利益の差を要因に分解するブリッジ図も、最新見込を前提にした重要な図です。作り方は「利益の予実差異分析はどう見せる?」で解説しています。

見込の精度を振り返る

最新見込は、作って終わりではなく、その精度を振り返ることで改善していきます。簡単な方法は、たとえば3か月前に作った見込と、その後に確定した実績を並べて比べることです。毎月のように見込が実績を上回っているなら、見込が楽観に偏っている可能性があります。

見込の精度を振り返る(架空例)実績3か月前の見込789101112見込が毎月、実績を上回っている=楽観に偏っている可能性

図6 3か月前に作った見込と、その後の実績を比べると、見込の癖が見えてきます。

精度の振り返りでは、外れた金額だけでなく、外れた理由を前提の記録と照らして確認します。案件の時期がずれたのか、単価の前提が違ったのか、費用の見込が漏れていたのか。理由が分かれば、次の見込の作り方を改善できます。部門ごとに精度を確認すると、偏りのある部門も見えてきます。

見込は時点ごとに保存する

毎月の見込を上書きしてしまうと、見込がいつ、なぜ変わったのかを後から追えません。見込は「何月時点の見込か」が分かる形で保存し、前月の見込との差を確認できるようにしておきます。変化のたびに、何が変わったかを一行で記録しておくと、経営会議での説明もしやすくなります。

見込は「いつ時点のものか」を残す7月時点の見込12,9008月時点の見込13,1009月時点の見込13,250変化のたびに「何が変わったか」を一行で記録する

図7 毎月の見込を上書きせず、時点ごとに保存しておくと、変化の理由を後から追えます。

計画の版やケースの管理と同じ考え方です。計画と見込の版の管理については「計画のバージョンとケースをどう管理する?」で取り上げています。

見込の偏りに気づく

見込は、作る人の立場によって偏りやすいものです。計画未達を言い出しにくい雰囲気があれば楽観に、評価が達成率で決まる仕組みであれば保守に偏ります。偏った見込は、経営判断を誤らせるだけでなく、予実管理そのものへの信頼を損ないます。

見込の偏りに気づくための視点楽観に偏りやすい場面保守に偏りやすい場面計画未達を言い出しにくい下期の大型案件に期待費用の見込が漏れる評価が達成率で決まる余裕を残しておきたい新規案件を入れない

図8 見込は作る人の立場によって、楽観にも保守にも偏りやすいものです。

偏りを防ぐには、見込と評価を切り離すことが有効です。見込の精度そのものを評価の対象にする、見込の根拠を経営企画が確認する、といった仕組みが考えられます。経営陣が「早く悪い見込を出したこと」を評価する姿勢を示すことも、正直な見込を引き出すうえで大切です。

よくある見込の失敗 起きること 防ぎ方
確定月を見込のまま残す 着地に古い前提が混ざる 締め後すぐに実績へ置き換える
前提が部門でばらばら 合計に意味がなくなる 共通の前提を先に配布する
毎月上書きする 変化の理由を追えない 時点ごとに保存し一行で記録

毎月の更新サイクル

最新見込は、月次決算の確定に合わせて毎月更新します。当月の実績が確定したら残り月の見込を更新し、前月の見込との差を確認して、経営会議で年度の着地を議論します。この流れを毎月同じ日程で回すことで、見込が経営の共通言語になります。

最新見込の月次サイクル当月の実績が確定残り月の見込を更新前月見込との差を確認経営会議で着地を議論毎月更新

図9 実績が確定するたびに、残り月の見込を更新します。

上場会社では、最新見込が公表している業績予想と大きく乖離する場合に、業績予想の修正の開示が必要になることがあります。最新見込の管理は、適時開示の判断材料としても重要です。開示基準は「業績予想の修正はどこから開示が要るか|売上高10%と利益30%」をご覧ください。

  • 確定した月は必ず実績に置き換えているか
  • 項目ごとに見込の方法を決め、記録しているか
  • 部門に共通の前提を配り、根拠と一緒に見込を回収しているか
  • 見込を時点ごとに保存し、前月との差を説明できるか
  • 過去の見込と実績を比べ、偏りを確認しているか

よくある質問

Q1. 見込は毎月作り直す必要がありますか。

実績が確定するたびに残り月を見直すのが基本です。ただし、変化のない項目まで作り直す必要はなく、前提が変わった項目を中心に更新します。

Q2. 計画据え置きの見込でも問題ありませんか。

金額が小さく変動の少ない費用であれば実務上問題は小さいですが、売上や主要な費用は、トレンドや積み上げで見直すことをお勧めします。

Q3. 見込が外れたら担当者の責任ですか。

見込の精度を上げることは大切ですが、外れたこと自体を責めると見込が保守的に偏ります。外れた理由を前提の記録から確認し、改善につなげる姿勢が重要です。

Q4. 四半期ごとの見込でもよいですか。

事業の変化が小さい会社では四半期ごとでも運用できますが、月次決算に合わせて毎月更新するほうが、早く打ち手を考えられます。

最初の一歩は、主要な三項目だけ見込を作ること

最初からすべての科目の見込を作る必要はありません。売上、人件費、主要な変動費など、年度着地に大きく影響する三項目だけを選び、残り月の見込を根拠と一緒に作ってみることをお勧めします。それだけでも、累計の予実だけでは見えなかった着地の見通しが見えてきます。

まとめ

最新見込は、確定した実績を優先し、残り月を根拠のある見込で補って年度の着地を示すものです。項目ごとに見込の方法を決め、部門から前提をそろえて集め、時点ごとに保存して精度を振り返る。この仕組みを毎月回すことで、予実管理は過去の説明から、着地を見据えた経営判断の道具に変わります。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

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免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

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