減価償却費・前払費用・引当金の月割り計上|2次締めで月次損益を平準化する

※本記事は2026年10月7日時点の公表資料に基づきます。

月次決算で売上や仕入をきちんと計上しても、毎月の利益がなぜか大きく上下して、前年同月や予算と比べても意味のある説明ができない。そんな悩みの原因の多くは、減価償却費・保険料・賞与のように「年に1回や2回しか動かない費用」を、動いた月にまとめて計上していることにあります。

結論からいえば、年1回の費用は「2次締め」として毎月の月割り計上に組み込み、減価償却費は年間見込額の12分の1か実額計算、前払費用は資産計上して経過分を毎月費用化、賞与と退職給付は年間見込を12等分して繰り入れるのが基本です。本記事では架空のA社(3月決算)の数値を使い、それぞれの計算と仕訳、貸倒引当金を月次で計上しない理由、税務との違いまで順に解説します。

2次締めの目的:年1回の費用を月に割って損益を平準化する

月次決算の締めは、大きく2段階に分けると整理しやすくなります。1段目(1次締め)は、売上・仕入・経費など、その月に実際に起きた取引を漏れなく計上する作業です。2段目(2次締め)は、取引としては年1回しか発生しないものの、効果や負担が1年間にわたる費用を、各月に割り当てる作業です。ここでいう「平準化」とは、費用を発生の実態に合わせて毎月に均等に配ることを指します。

月次決算の締めの流れと2次締めの位置1次締め取引の計上2次締め月割り・見積りチェック残高・税区分分析・報告前年・予算比較

図1 取引を計上する1次締めのあと、年1回の費用を月に割り当てる2次締めを行い、チェックと分析に進む

2次締めの対象は、減価償却費、前払費用の振替、賞与引当金・退職給付引当金の繰入、固定資産税などの税金です。いずれも、年1回の計上だと特定の月だけ費用が膨らみ、その月の利益が実態以上に悪く見えます。逆に、それ以外の月は利益が実態より良く見えます。これでは、毎月の推移を見て業績の流れや先行きを判断するという月次決算の目的が果たせません。

月次決算の全体像は月次決算とは何か 全体像と進め方|年度決算との違い・目的・成功の条件を整理で、給与まわりの未払計上は人件費の月次計上|締め日後の未払給与・社会保険料・労働保険料の処理で解説しています。本記事は、そのうち「見積りと月割り」を担う2次締めの部分を扱います。

2次締めで扱う主な処理処理年1回だけ計上すると月次での計上方法減価償却費決算月だけ費用が急増年間見込額の12分の1か実額計算前払費用支払月だけ費用が急増資産計上し経過分を毎月費用化賞与・退職給付支給月だけ利益が落ち込む年間見込を12等分して繰入固定資産税など納付月に費用が偏る年税額を12等分して計上

図2 どれも「年1回の計上だと特定の月に費用が偏る」項目。月割りにすると毎月の損益が比べやすくなる

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減価償却費:年間見込額の12分の1か、毎月の実額計算か

減価償却費とは、建物や機械のように何年も使う資産の取得額を、使う期間に配分して費用にしていく手続です。法人税の計算は年度の決算で行うため、税金の計算だけを考えれば年1回の計上でも足ります。しかし、架空のA社のように年間3,600万円の償却費を3月だけで計上すると、3月の利益は3,600万円も押し下げられ、4月から2月までは償却費ゼロの「かさ上げされた利益」が並ぶことになります。

減価償却費は過去に投資した額から計上されることがほぼ確実な費用です。だからこそ、見込みで毎月計上しても大きく外れることはなく、月次決算で月割り計上する意味が大きい項目です。

減価償却費の計上月の違い(架空のA社、万円)01,0002,0003,0004,0004月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月決算月に一括計上毎月300万円を計上

図3 年間3,600万円の償却費を決算月に一括計上すると3月だけ費用が跳ね上がる。月割りなら毎月300万円で平らになる

月割りの金額を出す前提として、資産ごとにどの償却方法を使っているかを把握しておく必要があります。定額法は毎年同じ額を、定率法は期首の帳簿価額に一定の率を掛けた額を償却する方法で、定率法は使い始めの年ほど償却費が大きくなります。税務上、選べる方法は資産の区分ごとに決まっています。

資産の区分 選べる償却方法(税務) 月次での注意
建物 定額法(1998年4月以後の取得分) 金額が大きいので台帳の月額をそのまま使う
建物附属設備・構築物 定額法(2016年4月以後の取得分) 内装工事など期中の追加に注意
機械装置・車両・器具備品 定額法か定率法(届出がなければ定率法) 定率法は期首帳簿価額で年額が決まる
ソフトウェアなど無形固定資産 定額法 リリース月から償却を始める
所有権移転外のリース資産 リース期間定額法 新リース会計基準で会計上の対象が広がる(税務の扱いは別)

さらに、税務上の償却方法は何度も改正されてきたため、同じ定率法でも取得した時期によって計算式が違います。古い資産と新しい資産が混在する会社では、固定資産台帳(資産ごとの取得日・取得価額・償却方法・耐用年数を記録した帳簿)にこれらを正しく登録しておくことが、月次の償却費を正しく出す前提になります。

取得時期で変わる税務上の償却方法償却方法取得時期年間償却額の計算償却の終わり旧定額法2007年3月31日以前取得価額×0.9×償却率残り5%を5年で償却旧定率法2007年3月31日以前期首帳簿価額×償却率残り5%を5年で償却定額法2007年4月1日以後取得価額×償却率備忘価額1円まで定率法(250%)2007年4月〜2012年3月期首帳簿価額×償却率備忘価額1円まで定率法(200%)2012年4月1日以後期首帳簿価額×償却率備忘価額1円まで

図4 取得した時期によって計算式が異なるため、固定資産台帳には資産ごとの償却方法を登録しておく

月次の計上額を決める方式は2つあります。1つは、期首に年間の償却費を見積り、その12分の1を毎月計上する方式です。もう1つは、固定資産システムで毎月の取得・除却を反映した実額を計算して計上する方式です。前者は手間が少ない反面、期中に資産が動くと年度の実額とずれます。後者は精度が高い反面、毎月の登録作業が欠かせません。

月次の償却費を決める2つの方式観点年間見込額の12分の1毎月の実額計算毎月の手間少ない(期首に1回計算)多い(取得・除却のたび)精度取得・除却で年度とずれる年度の償却費とほぼ一致向く会社資産の動きが少ない会社設備投資が多い会社決算月の調整実額との差をまとめて調整調整はほぼ不要

図5 資産の動きが少ない会社は12分の1方式、設備投資が多い会社は実額計算が向く

12分の1方式を採る場合でも、多額の取得や除却があった月には年間見込額を引き直します。A社が9月に1,200万円の機械(耐用年数10年、定額法の償却率0.100)を取得してすぐ使い始めたとすると、当期の償却費は年120万円の7か月分で70万円です。9月以降は毎月10万円を上乗せし、月額を310万円に変えます。見直しをしないと、決算月にまとめて70万円の差額が出て、平準化の効果が薄れます。耐用年数そのものを見直す場合の考え方は耐用年数の変更はどう処理する?会計上の見積りの変更と将来にわたる処理で解説しています。

多額の取得・除却があった月の見直し当月に多額の取得・除却があったか年間見込の12分の1を計上年間見込額を再計算(取得月以降の分を加算)翌月以降は新しい月額で計上例:9月に1,200万円の機械を取得(耐用年数10年・定額法)年120万円×7/12=70万円を加算し、9月から月10万円ずつ上乗せいいえはい

図6 12分の1方式でも、大きな取得や除却があれば年間見込額を引き直す。例は9月取得・使用開始の機械

新リース会計基準で月次の償却費が増える

2024年9月に公表された企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は、2027年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用されます(2025年4月1日以後開始の事業年度から早期適用も可能)。借手は、短期リースや少額リースなどの例外を除き、オフィスや店舗の賃借も含めて使用権資産とリース負債を計上します。対象となる会社では、これまで「地代家賃」として毎月同額を計上していた支払が、使用権資産の減価償却費とリース負債の支払利息に分かれます。

月次決算への影響は2つです。1つは、償却費の月次計上の対象が増えることです。もう1つは、支払利息が残高に応じて毎月少しずつ減るため、費用の合計額が月ごとに変わることです。適用前に、リース契約の一覧から月次の償却額と利息の計算表を作っておくと、締めが遅れずに済みます。

新リース会計基準での月次の仕訳(例、万円)事務所を5年間賃借(月額50万円)→使用権資産・リース負債を約2,850万円で計上①毎月の償却減価償却費 47.5/使用権資産 47.5②毎月の支払(初月)リース負債45.2・利息4.8/現金預金 50従来の賃貸借処理地代家賃 50/現金預金 50初月の費用合計は約52.3(償却47.5+利息4.8)。利息は残高の減少とともに小さくなる

図7 借手は使用権資産とリース負債を計上し、毎月の費用は償却費と支払利息に分かれる。数値は割引率年2%の概算

前払費用:支出時資産計上か、支出時費用・期末修正か

前払費用とは、保険料や賃借料、保証料のように、一定の契約に基づき継続してサービスを受ける費用を前もって支払ったもので、まだサービスを受けていない部分を指します。サービスの提供はほとんどの場合、時間の経過とともに進むため、経過した月の分だけ費用にしていくのが原則です。

主な前払費用 支払のパターン 月次での扱い
火災保険料・損害保険料 年払い・複数年払い 経過月数で毎月費用化
事務所・倉庫の賃借料 翌月分を当月に前払い 当月分のみ費用、翌月分は前払費用
借入の保証料 借入時に期間分を一括 借入期間の月数で按分
システム利用料(年契約) 年額を契約時に一括 契約期間の月数で按分

月次の処理には2つの方法があります。方法①は、支払ったときに「前払費用」という資産に計上し、毎月の締めで経過した1か月分を費用に振り替える方法です。方法②は、支払ったときに全額を費用にしておき、決算月に未経過の分だけを資産に戻す方法です。架空の例として、10月に1年分の保険料120万円を支払った場合で比べてみます。

前払費用の2つの処理方法(年払保険料120万円・10月払い)方法①:支払時に資産計上方法②:支払時に費用、期末に修正10月 支払時前払費用 120/現金預金 12010月〜翌9月 毎月保険料 10/前払費用 103月末修正不要(残り60は前払費用)10月 支払時保険料 120/現金預金 12011月〜2月仕訳なし3月末 未経過6か月分を戻す前払費用 60/保険料 60

図8 方法①は毎月10万円ずつ費用になる。方法②は支払月に全額費用になり、決算月に未経過分を戻す

方法①なら毎月10万円ずつ保険料が計上され、どの月の損益も同じ条件で比べられます。方法②では10月に120万円が一度に費用となり、3月に未経過の6か月分60万円を戻すため、10月の利益は大きく下がり、3月は戻した分だけ利益が増えます。月次の推移を分析に使うなら方法①が望ましいといえます。ただ、金額が小さく件数も多い前払費用まで毎月振り替えるのは手間なので、重要性の低いものに限り方法②を採ることも実務上は許容されます。

保険料の累計額の推移(万円)0501001502004月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月方法①(毎月費用化)方法②(期首戻し・期末修正)

図9 方法②では10月に累計が跳ね上がり、3月の戻しで下がる。年度の合計120万円はどちらも同じ

なお法人税では、支払った日から1年以内に提供を受けるサービスの前払費用で、毎期継続して支払時に費用処理しているものは、支払時の損金算入が認められています(法人税基本通達2-2-14、短期前払費用)。ただし、借り入れたお金を預金や有価証券で運用している場合の支払利息のように、収益と対応させる必要があるものは対象外です。月次で方法①を採っていても、税務ではこの取扱いを使えるかどうかを別に判断することになります。

長期前払費用と税務上の繰延資産の月次展開表

長期前払費用には2つの種類があります。1つは、複数年分の保険料や保証料のように、1年を超えてサービスを受ける前払いです。もう1つは、借家の権利金のように、会計上の繰延資産(創立費・開業費・開発費・株式交付費・社債発行費)には当たらないものの、税務上は支出の効果が複数年に及ぶとして繰延資産とされるものです。後者は、便宜上「長期前払費用」の科目で処理するのが一般的です。

管理の方法は、固定資産システムに登録して償却させるか、Excelなどの表計算ソフトで管理するかのどちらかです。表計算ソフトで管理する場合は、項目ごとに支払額・対象月数・月額を並べた「月次展開表」を作り、毎月の振替額を一覧で確かめられるようにしておくと締めが速くなります。

長期前払費用の月次展開表(例、万円)項目支払額対象月数月額当期費用期末残高保証料(5年分)6006010120480火災保険(3年分)21636672144借家の権利金30060560240合計1,116—21252864

図10 4月に支払った3件を月数で割り、月額を毎月振り替える。1年以内に費用になる分は決算で前払費用に振り替える

展開表の月額を合計した21万円が、毎月の振替仕訳(支払保険料・支払手数料など/長期前払費用)の金額です。月額の合計が試算表の当月の費用と一致しているかを確かめれば、振替漏れや二重計上にすぐ気づけます。決算では、残高のうち翌期の1年以内に費用になる部分を、流動資産の前払費用に振り替えます。

長期前払費用の決算時の振替(例、万円)長期前払費用の残高864前払費用(流動資産)翌期に費用化する252長期前払費用(固定資産)翌々期以降の612

図11 残高864万円のうち、翌期1年以内に費用になる252万円を流動資産の前払費用に振り替える

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引当金のうち月次で計上すべきもの(賞与・退職給付)

引当金とは、将来の支出や損失のうち、当期までの出来事が原因になっているものを、前もって当期の費用として見積り計上するものです。計上するのは、①将来の特定の費用・損失であること、②その原因が当期以前の事象にあること、③発生の可能性が高いこと、④金額を合理的に見積れること、の4つをすべて満たす場合です。

引当金を計上するかの判定将来の特定の費用・損失か原因が当期以前の事象か発生の可能性が高いか金額を合理的に見積れるか「いいえ」が1つでもあれば計上しない(発生時に費用処理)引当金を計上するはいはいはいはいいいえ

図12 4つの条件をすべて満たすときに引当金を計上する。1つでも欠ければ発生した月に費用処理する

代表的な引当金としては、賞与引当金、退職給付引当金、貸倒引当金、受注損失引当金が挙げられます。このうち月次決算で毎月繰り入れるべきなのは、賞与引当金と退職給付引当金です。どちらも従業員が働いた期間に応じて負担が積み上がっていく性質があり、毎月の人件費として配るのが実態に合うからです。賞与引当金と未払費用・未払金の使い分けは賞与引当金はいつからいくら積むか|未払費用・未払金との使い分けで詳しく解説しています。

主な引当金と月次計上の要否引当金月次での計上理由・方法賞与引当金計上する年間支給見込を12等分して毎月繰入退職給付引当金計上する期末と前期末の要支給額の差を12等分貸倒引当金一般に計上しない期末の債権残高が月次では読めない受注損失引当金個別に判断損失が見込まれた月に見積り計上

図13 月次で毎月繰り入れるのは賞与引当金と退職給付引当金。貸倒引当金は一般に決算時に計上する

賞与引当金・退職給付引当金の月次の計算例

賞与は年2回の支給が一般的です。支給した月に全額を費用にすると、その月だけ人件費が膨らみ、利益が大きく落ち込みます。A社の年間賞与見込が2,400万円(夏冬各1,200万円)なら、予算段階で年額を決めておき、12等分した200万円を毎月「賞与引当金繰入額」として計上します。支給月には、積み上がった引当金を取り崩して支払に充て、不足や超過があればその月に調整します。

賞与を支給月に計上した場合と毎月繰り入れた場合(万円)03507001,0501,4004月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月支給月に計上毎月200万円を繰入

図14 年間2,400万円(夏冬各1,200万円)の賞与。毎月200万円を繰り入れれば、6月と12月の落ち込みが消える

年度決算では、支給対象期間(賞与の計算の基礎になる勤務期間)のうち当期に属する部分を引当金として計上します。A社の夏季賞与の対象期間が12月から5月、支給が6月だとすると、3月末時点では12月から3月の4か月分、つまり見込額1,200万円の6分の4にあたる800万円が当期の負担です。12月から毎月200万円ずつ繰り入れていれば、3月末の残高はちょうど800万円になり、月次と年度の数字がそろいます。賞与にかかる社会保険料の会社負担分も、同じ考え方で見積り計上します。

賞与の支給対象期間と3月決算の関係冬季賞与の対象期間:6月〜11月夏季賞与の対象期間:12月〜5月12月に支給(当期中に支払済)期末の引当は不要経過した4か月分(12月〜3月)残り2か月翌期分3月末の賞与引当金=夏季賞与見込1,200万円×4/6=800万円(毎月200万円×4か月の繰入額と一致)

図15 冬季賞与は期中に支払済み。夏季賞与は対象期間6か月のうち12月〜3月の4か月分が当期の負担になる

退職給付引当金は、将来支払う退職金のうち、当期までの勤務に対応する部分を計上するものです。中小企業では、退職一時金制度であれば、期末に全員が自己都合で退職したと仮定した場合の支給額(自己都合要支給額)をもとに引当金を計上する簡便な方法が認められています。この場合、年度の繰入額は「当期末の要支給額−(前期末の要支給額−当期の退職金支払額)」で求めます。

退職給付引当金の繰入額の考え方(自己都合要支給額による例、万円)前期末残高8,000退職金支払-240当期繰入+600当期末見込8,360繰入額=8,360−(8,000−240)=600万円月次は600÷12=月50万円

図16 当期末の見込残高から、前期末残高と当期の支払見込を逆算して繰入額600万円を出し、12で割って月50万円とする

月次では、期首の予算段階で当期末の要支給額を見込み、前期末からの増加分を12で割って毎月繰り入れます。A社の例では、前期末8,000万円、当期の支払見込240万円、当期末見込8,360万円なので、繰入額は600万円、月額は50万円です。実際に退職者が出て支払が発生した月は、引当金を取り崩して処理し、見込と大きく違えば残りの月の繰入額を見直します。

項目 年間の見込額 月次の繰入額 計算の根拠
減価償却費 3,600万円(9月以降は3,670万円) 300万円(9月以降310万円) 固定資産台帳の年間見込
賞与引当金 2,400万円 200万円 賞与予算÷12
退職給付引当金 600万円 50万円 要支給額の増加見込÷12
長期前払費用 252万円 21万円 月次展開表の月額合計

貸倒引当金を月次で計上しない理由と税務との違い

貸倒引当金は、売掛金などの債権が回収できなくなる場合に備えるもので、期末の債権残高に過去の貸倒実績率を掛けた額と、回収が危ぶまれる個別の債権の見込額を計上します。期末の債権残高は月次の時点では読めないことが多く、実績率による計算は決算時にまとめて行う会社が一般的です。ただし、取引先の倒産など個別の回収不能が明らかになった月には、その時点で計上を検討すべきです。

引当金の多くは、税務上は損金として認められません。賞与引当金や退職給付引当金を計上しても、法人税の申告では加算して、実際に支払った事業年度に損金となります。貸倒引当金も、損金算入が認められるのは中小法人等や銀行・保険会社などに限られ、法定の限度額の範囲内です。つまり引当金の計上は、節税ではなく、損益を正しく示すための手続です。月次では会計の考え方で計上し、税務の調整は年度決算でまとめて行えば足ります。

引当金・償却の会計と税務の違い項目会計(月次・年度)税務(法人税)賞与引当金繰入額を費用計上損金不算入(支給時に損金)退職給付引当金繰入額を費用計上損金不算入(支払時に損金)貸倒引当金決算で見積り計上中小法人等・銀行等に限り限度内で損金短期前払費用経過分を費用化1年以内・継続適用なら支払時に損金可

図17 税務上は多くの引当金が損金にならず、申告で加算する。月次では会計の考え方で計上し、税務調整は決算でまとめて行う

2次締めの作業は、毎月同じ順番で進めることで漏れを防げます。固定資産台帳を更新してから償却費を出し、前払費用と引当金の振替を済ませ、最後に試算表で月額と残高を確かめます。税金の月割り計上は税金の月次計上|固定資産税は年額を月割り、法人税等は実効税率で見込むで、月割りした費用が資金繰りにどう影響するかは月次の資金繰り管理|資金繰り表の作り方・更新とキャッシュ・フローの見方で解説しています。

毎月の2次締めの作業手順固定資産台帳に当月の取得・除却を登録減価償却費を計上(12分の1か実額)前払費用・長期前払費用を振り替える賞与・退職給付引当金を繰り入れる試算表で月額と残高を確かめる

図18 固定資産台帳の更新から試算表の確認まで、毎月同じ順番で進めると漏れが減る

  • 減価償却費を毎月計上し、12分の1方式か実額計算かを決めているか
  • 多額の取得・除却があった月に年間見込額を見直しているか
  • 固定資産台帳に資産ごとの償却方法・耐用年数が正しく登録されているか
  • 前払費用・長期前払費用の振替額が月次展開表の月額合計と一致しているか
  • 賞与・退職給付の年間見込を予算化し、12等分した額を毎月繰り入れているか
  • 新リース会計基準の適用に向けて、リース契約の一覧と月次の償却・利息の計算表を準備しているか

よくある質問

Q1. 12分の1方式で計上した償却費と年度の実額がずれたら、どう処理しますか。

決算月にまとめて差額を調整します。差額が大きくなるのを防ぐため、多額の取得や除却があった月に年間見込額を引き直し、残りの月の月額を変えておくのが実務的です。

Q2. 少額の前払費用まで毎月振り替える必要がありますか。

重要性の低いものは、支払時に費用処理し決算で未経過分を資産に戻す方法でも差し支えありません。金額基準(例えば1件30万円以上は月次で振り替える)を社内で決めておくと判断がぶれません。

Q3. 賞与の支給額が決まっていなくても毎月繰り入れるべきですか。

予算で年間の支給見込額を決め、その12分の1を繰り入れます。業績連動で支給額が変わる場合は、四半期ごとなどに見込額を見直し、残りの月の繰入額を調整します。

Q4. 引当金を計上すると税金が減りますか。

減りません。賞与引当金や退職給付引当金は税務上は損金不算入で、申告書で加算します。損金になるのは実際に支払った事業年度です。

最初の一歩は、年1回の費用を洗い出して月額の一覧表を作ることです

まず前期の総勘定元帳から、特定の月に偏って計上されている費用(減価償却費、保険料、保証料、賞与、退職金、税金など)を拾い出してください。次に、それぞれの年間見込額と12で割った月額を一覧表にまとめ、2次締めの仕訳として毎月入力する体制を作ります。この一覧表がそのまま月次決算の手順書と、試算表を確かめるときの基準になります。

まとめ

減価償却費・前払費用・引当金は、年1回の計上のままでは月次の損益をゆがめます。2次締めとして、減価償却費は年間見込額の12分の1か実額計算で、前払費用は資産計上して経過分を毎月費用化し、賞与と退職給付は年間見込を12等分して繰り入れます。貸倒引当金は一般に決算時に計上し、税務との違いは年度決算でまとめて調整します。月次の数字が平らになれば、前年同月や予算との比較で本当の変化が見えるようになります。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事の根拠

免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

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