相続税の申告書は、どこの税務署に出せばよいのでしょうか。台東区にお住まいだった方が亡くなったとき、実は区内で提出先が二つに分かれます。「上野税務署でいいのだろうか」「浅草に住んでいたから浅草税務署かな」と迷ったまま、期限が近づいてしまう方は少なくありません。
しかも台東区では、令和元年7月から相続税を担当する部門の体制が変わり、地区によって「申告書を出す税務署」と「相続の相談に行く税務署」が一致しません。この記事では、台東区の相続税申告の宛先と相談先を国税庁の公表情報にもとづいて整理します。
- 相続税の申告先は「亡くなった方の住所地」で決まること
- 台東区が下谷地区(東京上野税務署)と浅草地区(浅草税務署)に分かれること
- 自分の町名がどちらの管轄かを確認する方法
- 令和元年7月からの資産課税の広域運営で、相続の相談先がどうなるか
- 申告書の郵送先・提出方法・相談の事前予約の仕方
この記事の見出し
📍 相続税の申告先は「亡くなった方の住所地」の税務署
まず押さえていただきたいのは、相続税の申告書を出す先は相続人(残された家族)の住所地ではなく、被相続人(亡くなった方)の住所地を所轄する税務署だという点です。国税庁のタックスアンサーNo.4205でも、被相続人の死亡の時における住所が日本国内にある場合の提出先は被相続人の住所地を所轄する税務署であり、相続人の住所地を所轄する税務署ではない、と明記されています(相法27条、附則3項)。
たとえば台東区入谷にお住まいだったお父様が亡くなり、子どもが埼玉県に住んでいても、申告書は台東区を管轄する税務署に提出します。相続人が何人いても、全国に散らばっていても、提出先は一つです。
※ 被相続人が海外に住所を有していた場合など、例外的な取扱いがあります。判断に迷うときは税務署または税理士にご確認ください。
図1:相続税の申告先が決まるまでの流れ(No.4205・相法27条にもとづき作成)
申告と納付の期限は「10か月」
相続税の申告と納税の期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内です(相法27条1項・33条、No.4205)。たとえば1月6日に亡くなった場合は、その年の11月6日が期限となります。期限が土曜日・日曜日・祝日などにあたるときは、その翌日が期限とみなされます。
なお、相続税がかかるかどうかの入口は「基礎控除額を超えるかどうか」です。基礎控除の考え方は、連載の第11回「相続税はいくらから?基礎控除3,600万円の壁をやさしく解説」で詳しく取り上げています。手続き全体の流れは、親が亡くなったらやることは?相続手続きの流れと期限一覧もあわせてご覧ください。
🗒️ 台東区は「下谷地区」と「浅草地区」の2つに分かれる
台東区は、一つの区でありながら二つの税務署が管轄しています。国税庁の管轄区域一覧によると、台東区のうち下谷地区は東京上野税務署、浅草地区は浅草税務署の管轄です。区役所は一つでも税務署は二つ、という点が、台東区の相続で最初につまずきやすいところです。
| 項目 | 東京上野税務署 | 浅草税務署 |
|---|---|---|
| 管轄区域 | 台東区のうち下谷地区 | 台東区のうち浅草地区 |
| 所在地 | 〒110-8607 台東区池之端1丁目2番22号 上野合同庁舎 | 〒111-8602 台東区蔵前2丁目8番12号 |
| 代表電話 | 03-3821-9001(自動音声案内) | 03-3862-7111(自動音声案内) |
| 主なアクセス | 東京メトロ千代田線「湯島駅」徒歩3分/京成線「京成上野駅」徒歩10分/JR「上野駅」徒歩12分 | 都営浅草線「蔵前駅」徒歩3分/都営大江戸線「蔵前駅」徒歩7分/東京メトロ銀座線「浅草駅」徒歩17分 |
| 相続税など資産課税の担当 | あり(浅草地区分もあわせて広域運営) | 令和元年7月に資産課税部門を廃止 |
出典:国税庁「東京上野税務署」「浅草税務署」「東京都文京区・台東区(管轄区域)」の各ページ(2026年9月時点)。開庁時間は8時30分から17時までです。
町名で見る管轄一覧
「下谷地区」「浅草地区」といわれてもピンとこない方が多いはずです。国税庁が公表している町名の一覧は次のとおりです。丁目や番地まで指定されている町名(千束2丁目、日本堤2丁目、松が谷3丁目)があるため、この3つの町にお住まいの場合は特に注意してください。
| 管轄 | 台東区内の町名 |
|---|---|
| 東京上野税務署 (下谷地区) |
秋葉原、池之端1〜4丁目、入谷1・2丁目、上野1〜7丁目、上野公園、上野桜木1・2丁目、北上野1・2丁目、下谷1〜3丁目、千束2丁目(33番〜36番)、台東1〜4丁目、日本堤2丁目(36番〜39番)、根岸1〜5丁目、東上野1〜5丁目、松が谷3丁目(10番〜23番)、松が谷4丁目、三ノ輪1・2丁目、谷中1〜7丁目、竜泉1〜3丁目 |
| 浅草税務署 (浅草地区) |
浅草1〜7丁目、浅草橋1〜5丁目、今戸1・2丁目、雷門1・2丁目、清川1・2丁目、蔵前1〜4丁目、小島1・2丁目、寿1〜4丁目、駒形1・2丁目、千束1丁目、千束2丁目(33番〜36番を除く)、千束3・4丁目、鳥越1・2丁目、西浅草1〜3丁目、日本堤1丁目、日本堤2丁目(36番〜39番を除く)、橋場1・2丁目、花川戸1・2丁目、東浅草1・2丁目、東上野6丁目、松が谷1・2丁目、松が谷3丁目(10番〜23番を除く)、三筋1・2丁目、元浅草1〜4丁目、柳橋1・2丁目 |
出典:国税庁「東京都文京区・台東区」管轄区域一覧(2026年9月時点)。町名の変更等があり得るため、実際の提出前に国税庁ホームページで最新の一覧をご確認ください。
📍 どこで 被相続人の最後の住所地を所轄する税務署(台東区なら東京上野税務署または浅草税務署)
⏰ いつまでに 相続開始を知った日の翌日から10か月以内
🧾 何を持って 相続税の申告書一式(本人確認書類の写し、戸籍関係書類、財産の評価資料などを添付)
⚖️ 令和元年7月から、資産課税は東京上野税務署で広域運営
ここが台東区特有の、いちばん間違えやすいポイントです。国税庁の浅草税務署のページには、「令和元年7月以降、浅草税務署の資産課税部門を廃止し、東京上野税務署で広域運営を実施しております」と記載されています。資産課税部門とは、相続税・贈与税など財産に関する税金を担当する部署のことです。
つまり浅草地区にお住まいだった方の相続であっても、相続税の実務を担当する職員は東京上野税務署に在籍しています。書面の提出そのものは所轄署(浅草税務署)あてに行いますが、相続税について具体的な相談をしたい、面接相談を予約したいという場合の窓口は、東京上野税務署が広域で受け持つ形になります。詳しい取扱いは国税庁が公表しているPDF「浅草税務署の資産税事務の取り扱いについて」で確認できます。
図2:台東区の2地区で異なる点と共通する点(国税庁の各税務署ページにもとづき作成)
申告書の郵送先は「業務センター」
もう一つ、近年変わった点があります。税務署の内部事務のセンター化にともない、申告書等を郵送で提出する場合の送付先は、2署のいずれの管内であっても「東京国税局東京上野業務センター」(〒110-8655 台東区池之端1丁目2番22号 上野合同庁舎)です。浅草税務署管内の方は、あて名に「東京国税局東京上野業務センター(浅草税務署)」と署名を添えて送付します。
また令和7年1月からは、書面提出の際は申告書等の「提出用」のみを送付する取扱いに変わりました。控えへの収受日付印の押なつが終了しているため、控えを同封しても返送されません。提出の記録を残したい場合は、e-Taxの受信通知を保存する、郵送の記録が残る方法を使うといった対応を検討してください。
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📅 提出方法は3通り、期限に間に合わせる段取り
相続税の申告書の提出方法は、国税庁のタックスアンサーNo.4205によると次の3通りです。
- e-Tax(電子申告)で送信する
- 郵便または信書便で送付する(送付先は東京上野業務センター)
- 税務署の時間外収受箱へ投函する
窓口に持参する方法もありますが、開庁時間は平日8時30分から17時までで、土曜日・日曜日・祝日は受付を行っていません。閉庁日でも、送付または時間外収受箱への投函により提出できます。
10か月という期限は、初めての方が思うほど長くありません。戸籍を遡って集め、残高証明書を取り寄せ、不動産を評価し、相続人全員で分割を話し合う一連の作業に半年前後かかることは珍しくないためです。亡くなった年の所得税の準確定申告(4か月以内)も並行して必要になることがあります(準確定申告とは?期限4か月・必要な人と不要な人をやさしく解説)。
図3:相続開始から申告・納付までの主な期限(所法124・125条、相法27条・33条)
⏰ 相談したいときは「事前予約」が必要
税務署で相続税について具体的に相談したい場合、押さえておきたいのが相談窓口の使い分けです。国税庁の各税務署ページによると、次のように案内されています。
- 一般的な税の質問は「電話相談センター」へ。0570-00-5901(ナビダイヤル)。つながらない場合は税務署の代表電話にかけ、音声ガイダンスで「1」を選択します
- 面接相談の予約、税務署から届いた文書の問合せ、納付の相談などは税務署の代表番号へ。音声ガイダンスで「2」を選択します
- 面接相談には税務署での事前予約が必要です。予約なしで訪ねても、その場で担当者が対応できるとは限りません
連休明けや月曜日は大変混み合うと案内されています。相続の相談は財産の内訳や戸籍の状況を伝える必要があり短時間では終わりにくいため、余裕のある日を選んで予約しておくと安心です。
注意 税務署は、法令や手続の一般的な説明はしてくれますが、「どの遺産分割にすれば税金が最も少なくなるか」といった有利・不利の選択までは提案しません。小規模宅地等の特例の適用の仕方や二次相続まで見据えた分割の検討は、税理士に相談する領域です。
❓ よくある質問
台東区の税務署です。相続税の申告書の提出先は被相続人(お父様)の住所地を所轄する税務署であり、相続人の住所地ではありません(No.4205)。お父様の住所の町名によって、東京上野税務署か浅草税務署かが決まります。
相続税など資産課税の相談は、令和元年7月以降、東京上野税務署が広域で運営しています。面接相談は事前予約制ですので、まずは電話で予約し、どの庁舎に伺えばよいかを確認してください。
被相続人が死亡した時における住所で判断します(No.4205)。住民票の異動と実際の生活の本拠が食い違う場合は判断が難しくなるため、税務署または税理士にご確認ください。
🗒️ まとめ
- 相続税の申告先は、亡くなった方の住所地を所轄する税務署(相続人の住所地ではない)
- 台東区は下谷地区=東京上野税務署、浅草地区=浅草税務署の2つに分かれる
- 千束2丁目・日本堤2丁目・松が谷3丁目は番地で管轄が分かれるため要注意
- 令和元年7月以降、浅草税務署の資産課税部門は廃止され、東京上野税務署が広域運営
- 書面提出の郵送先は、いずれの管内も東京国税局東京上野業務センター
- 申告・納付の期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内、面接相談は事前予約制
連載の全体像は相続税 完全ガイド|初めての相続を全30回でやさしく解説【台東区対応】にまとめています。次回は「【台東区】上野・浅草・入谷の路線価と自宅の相続税」を取り上げます。
📄 参考
- 国税庁タックスアンサー No.4205 相続税の申告と納税
- 国税庁 税務署の管轄区域(東京都文京区・台東区)
- 国税庁 東京上野税務署
- 国税庁 浅草税務署(資産課税部門の広域運営の案内)
- 国税庁 B1-2 相続税の申告手続
- e-Gov法令検索 相続税法
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公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。相続税の申告と事業承継の支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
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