新株予約権の発行手続|募集事項の決定から割当契約まで

ストックオプションを出そうとすると、新株予約権の発行手続に入ります。募集株式の発行と似た構造ですが、条文は別に置かれており、決めるべきことが二層になっています。

ひとつは新株予約権そのものの内容、もうひとつは今回の募集の条件です。この二層を混同すると議案が組めません。この記事では、会社法236条から246条までを順にたどりながら、どこで何を決め、いつ権利者になるのかを整理します。

この記事でわかること

  • 新株予約権の内容(236条1項)と募集事項(238条1項)の違い
  • 無償で発行することが特に有利な条件に当たる場合があること
  • 割当日に新株予約権者となること(245条1項)
  • 公開会社に課される割当日の2週間前の通知(240条2項)

まず、新株予約権の内容を決める

会社法236条1項は、新株予約権を発行するときに内容としなければならない事項を列挙しています。目的である株式の数またはその算定方法、行使に際して出資される財産の価額またはその算定方法、金銭以外の財産を出資の目的とするときはその内容と価額、行使することができる期間、行使により株式を発行する場合の増加する資本金および資本準備金に関する事項、譲渡による取得について会社の承認を要することとするときはその旨、一定の事由が生じたことを条件として会社が取得できることとするときはその事項などです。

2号の行使に際して出資される財産の価額が、いわゆる行使価額です。4号の行使することができる期間が、権利行使期間です。この2つは後から変えられませんので、設計の中心になります。

6号の譲渡制限は、実務ではほぼ必ず付けます。付けないと、割り当てた相手が自由に第三者へ譲渡できてしまうためです。7号の取得条項は、退職した場合などに会社が無償で取得できるようにしておくための定めです。

次に、今回の募集の条件を決める

会社法238条1項が募集事項です。募集新株予約権の内容および数、引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合はその旨、そうでない場合は払込金額またはその算定方法、割り当てる日すなわち割当日、引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときはその期日、新株予約権付社債に関する事項などが並びます。

1号が236条1項の内容を取り込む形になっている点に注意してください。内容を決めなければ募集事項が決まりません。議案としては、内容と数を一体で示すことになります。

2号と3号が対になっています。ストックオプションでは、新株予約権そのものは無償で交付し、行使のときに行使価額を払い込む形が一般的です。その場合は2号に該当し、金銭の払込みを要しない旨を定めます。

誰が決めるのか

会社法238条2項は、募集事項の決定は株主総会の決議によらなければならないとしています。この決議は309条2項6号により特別決議です。

会社法240条1項は、238条3項各号に掲げる場合を除き、公開会社では238条2項の株主総会を取締役会と読み替えるとしています。公開会社であれば取締役会の決議で足りるが、有利発行に当たる場合は株主総会に戻る、という構造です。募集株式における201条1項と同じ形です。

その有利発行が238条3項です。1号は、金銭の払込みを要しないこととすることが引受人に特に有利な条件であるとき。2号は、払込金額が引受人に特に有利な金額であるときです。いずれの場合も、取締役は株主総会でその条件または金額で募集をすることを必要とする理由を説明しなければなりません。

無償発行がつねに有利な条件になるわけではありません。行使価額が発行時の株式の価値に見合っていれば、新株予約権そのものの価値と釣り合うと考えられるからです。ここは評価の問題ですので、算定の前提を残してください。

会社法239条1項は、募集事項の決定を取締役会に委任できるとしています。この場合は、募集新株予約権の内容および数の上限、無償とする場合はその旨、そうでない場合は払込金額の下限を定めます。同条2項により、その内容や下限が有利であるときは、委任の株主総会で理由を説明します。

決定から新株予約権者になるまで1 内容と募集事項の決定非公開会社は株主総会の特別決議。公開会社は取締役会(有利な条件を除く)2 株主への通知または公告公開会社のみ。割当日の2週間前まで(240条2項・3項)3 申込みと割当て、または総数引受契約割当ての通知は割当日の前日まで(243条3項)。総数引受契約なら不要4 割当日に新株予約権者となる245条1項。登記は本店で2週間以内(915条1項)

株主となる時期が払込みで決まる募集株式と違い、割当日で決まります

公開会社の2週間前の通知

会社法240条2項は、公開会社が取締役会の決議で募集事項を定めた場合には、割当日の2週間前までに株主に対して募集事項を通知しなければならないと定めています。同条3項により公告に代えることができ、同条4項により、割当日の2週間前までに金融商品取引法4条1項から3項までの届出をしている場合などは適用されません。

基準が割当日であることに注意してください。募集株式では払込期日を基準に2週間前でしたが、新株予約権では割当日です。日程を組むときに取り違えやすい箇所です。

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割当てと総数引受契約

会社法243条1項は、申込者の中から割当てを受ける者と割り当てる数を定めるとしています。同条2項により、募集新株予約権の目的である株式の全部または一部が譲渡制限株式である場合と、募集新株予約権が譲渡制限新株予約権である場合には、この決定は株主総会、取締役会設置会社では取締役会の決議によらなければなりません。定款に別段の定めがある場合を除きます。

ストックオプションでは、目的である株式が譲渡制限株式であることが通常ですし、新株予約権自体にも譲渡制限を付けます。したがって、この決議はほぼ必ず必要になります。同条3項により、割当日の前日までに申込者へ割り当てる数を通知します。

会社法244条1項は、引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には、申込みと割当ての規定を適用しないとしています。同条3項により、目的である株式が譲渡制限株式である場合や、譲渡制限新株予約権である場合には、契約の承認を株主総会または取締役会の決議で受けなければなりません。

付与の対象者が多い場合、全員を当事者とする総数引受契約を1通で作る運用と、個別に割当契約を結ぶ運用があります。総数引受契約にするなら、対象者全員が同じ契約に加わる必要があります。

いつ新株予約権者になるか

会社法245条1項は、申込者は会社の割り当てた募集新株予約権について、総数引受契約により総数を引き受けた者はその引き受けた募集新株予約権について、割当日に新株予約権者となると定めています。

払込みが効力の条件ではありません。募集株式では出資の履行をした者が株主となりますが、新株予約権では割当日に権利者となります。無償で発行する場合は、そもそも払込みがありません。

払込金額を定めた場合の払込みについては、会社法246条1項が、行使期間の初日の前日まで、払込期日を定めたときはその期日までに払い込まなければならないとしています。同条2項により、会社の承諾を得て、金銭以外の財産の給付や会社に対する債権との相殺によることもできます。募集株式の208条3項が相殺を禁じているのと逆ですので、混同しないでください。

項目 募集株式 募集新株予約権
決議 特別決議(309条2項5号) 特別決議(309条2項6号)
2週間前の通知 払込期日の2週間前(201条3項) 割当日の2週間前(240条2項)
権利者となる時期 払込期日または履行の日(209条1項) 割当日(245条1項)
相殺 できない(208条3項) 会社の承諾があればできる(246条2項)

行使条件は契約に、登記は2週間以内に

在籍していることを行使の条件にする、上場を条件にする、行使できる個数を年ごとに区切る。こうした条件は、新株予約権の内容として定めるか、割当契約に書くかの選択があります。内容として定めれば登記事項に反映され、対外的にも明確になりますが、変更に手続が要ります。契約に書けば柔軟ですが、当事者間の効力にとどまります。設計の段階で、どちらに置くかを整理してください。

新株予約権は登記事項です。会社法911条3項12号に掲げられており、発行したときは915条1項により本店の所在地において2週間以内に変更の登記をします。行使されて株式が発行されたときも、発行済株式の総数と資本金の額が変わりますので、あらためて登記が必要です。

なお、税制上の優遇を受けるストックオプションには、行使価額、権利行使期間、年間の権利行使価額の上限など、税法が定める要件があります。会社法の手続とは別の枠組みですので、設計の前にそれぞれの専門家に確認してください。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 無償で発行すると必ず有利発行になりますか。

A. なりません。会社法238条3項1号は、金銭の払込みを要しないこととすることが特に有利な条件であるときと定めています。行使価額が発行時の株式の価値に見合っていれば、有利な条件に当たらないと考えられます。算定の前提を残してください。

Q. 2週間前の通知は何を基準に数えますか。

A. 会社法240条2項は割当日の2週間前までとしています。募集株式の201条3項が払込期日を基準にしているのと異なりますので、注意してください。

Q. 退職したら権利を失わせるにはどうしますか。

A. 新株予約権の内容として236条1項7号の取得条項を定める方法と、割当契約に行使条件として書く方法があります。前者は登記に反映され、後者は当事者間の効力にとどまります。

📄 まとめ

新株予約権の発行は、236条1項の内容と238条1項の募集事項という二層で決めます。非公開会社では株主総会の特別決議、公開会社では取締役会ですが、無償発行や払込金額が特に有利な条件に当たるときは株主総会に戻ります。

目的である株式が譲渡制限株式であれば、割当ての決定または総数引受契約の承認が必要です。権利者になるのは割当日で、払込みの日ではありません。登記は本店で2週間以内に行います。

⚖ 本記事の根拠

記載内容の根拠

  • 会社法236条1項(新株予約権の内容として定める事項)
  • 会社法238条1項(募集事項)、同条2項(株主総会の決議)、309条2項6号(特別決議)
  • 会社法238条3項1号・2号(特に有利な条件または金額である場合の説明義務)
  • 会社法239条1項・2項(募集事項の決定の委任と、上限および下限)
  • 会社法240条1項(公開会社の特則)、同条2項から4項(割当日の2週間前の通知)
  • 会社法243条1項から3項、244条1項・3項(割当ての決定と総数引受契約の承認)
  • 会社法245条1項(割当日に新株予約権者となること)、246条1項・2項(払込みと相殺)
  • 会社法911条3項12号(新株予約権の登記)、915条1項(2週間以内の変更登記)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

このテーマの全体像は上場準備の会社法|定款・機関・株主総会・株式の手続にまとめています。

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