官報に決算公告を出すたびに費用がかかる。この負担を抑える方法として電子公告への切り替えがあります。自社のウェブサイトに載せる方法ですので、掲載自体の費用はかかりません。
ただし、無条件に安くなるわけではありません。会社法941条は、電子公告をしようとする会社に対し、法務大臣の登録を受けた調査機関への調査の求めを義務づけています。この費用が別に発生します。
この記事では、公告方法を電子公告に変える手続を、定款変更、登記、調査機関との契約の3つに分けて整理します。決算公告だけは調査がいらないという例外も見ていきます。
- 会社法が用意している公告方法の3つの選択肢
- 電子公告を選んだときに必要になる公告期間の管理
- 調査機関への調査の求めが義務であること
- 決算公告が調査の対象から外れていること
- 定款変更から登記までの手続
この記事の見出し
📌 公告方法は3つから選ぶ
会社法939条1項は、会社は公告方法として、官報に掲載する方法、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法、電子公告のいずれかを定款で定めることができるとしています。定款に定めがない会社は官報に掲載する方法によることになります。
同条3項は、電子公告を公告方法とする旨を定める場合には、電子公告を公告方法とする旨を定めれば足りるとしています。ウェブサイトのアドレスまで定款に書く必要はありません。あわせて、事故その他やむを得ない事由によって電子公告ができない場合の予備的な公告方法を定めることができるとされており、実務では官報を予備として定めるのが一般的です。
| 方法 | 掲載先 | 調査機関 |
|---|---|---|
| 官報 | 官報 | 不要 |
| 日刊新聞紙 | 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙 | 不要 |
| 電子公告 | 自社が定めるウェブサイト | 必要(決算公告を除く) |
📌 電子公告には公告期間の定めがある
紙の公告は掲載された時点で終わりますが、電子公告は一定の期間、継続して掲載し続ける必要があります。会社法940条1項が公告の区分ごとに期間を定めています。
1号は、法律の規定により特定の日の一定の期間前に公告しなければならない場合について、その特定の日までとしています。基準日の公告であれば基準日まで、ということです。2号は、440条1項による公告、つまり決算公告について、定時株主総会の終結の日後5年を経過する日までとしています。3号は、公告に定める期間内に異議を述べることができる旨の公告について、その期間を経過する日までです。債権者保護手続の公告がこれに当たります。
決算公告の5年は長く感じますが、貸借対照表を5年間ウェブサイトに掲載し続けることになります。サイトのリニューアルでページが消える、ドメインを変えるといった場面で、うっかり公告が途切れないよう管理が要ります。
紙と違い、電子公告は掲載し続ける義務です。サイトの改修でページが消えないよう管理が要ります。
📌 調査機関への調査の求めが義務
会社法941条は、電子公告によりしようとする会社は、公告期間中、公告の内容である情報が不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置かれているかどうかについて、法務大臣の登録を受けた調査機関に対し、調査を行うことを求めなければならないと定めています。
自社が掲載していると主張するだけでは足りず、第三者が確認する仕組みです。調査機関は法務省が公表しており、複数の事業者が登録されています。公告のたびに調査を求めることになりますので、公告の頻度が費用を左右します。
ここが重要なのですが、同条は括弧書きで440条1項の規定による公告を除くとしています。つまり決算公告は調査の対象外です。決算公告の費用を下げるために電子公告へ切り替えるという判断が成り立つのは、この例外があるからです。
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📌 決算公告だけなら電子公告以外の道もある
決算公告の負担を下げたいだけであれば、公告方法そのものを電子公告に変えなくても済む場合があります。会社法440条3項は、公告方法として官報または日刊新聞紙を定めている会社について、貸借対照表の内容である情報を電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができるとしています。いわゆる決算公告の電磁的開示です。
この措置をとる場合、そのウェブサイトのアドレスは登記事項になります。公告方法を変えるのではなく、決算公告の開示方法だけを電子化する選択です。どちらが自社に合うかは、決算公告以外の公告をどれくらい出すかで決まります。
組織再編や資本金の額の減少を予定している会社では、債権者保護手続の各別の催告を省略できるかどうかも判断材料になります。会社法449条3項は、公告を官報のほか定款で定めた日刊新聞紙または電子公告によってもするときは各別の催告を要しないとしています。官報だけでは足りず、二重に公告することが条件です。組織再編についても789条3項に同じ仕組みがあります。
📌 手続は定款変更と登記
公告方法は定款の記載事項ですので、変更するには会社法466条により株主総会の決議が必要です。決議要件は309条2項11号の特別決議です。
公告方法は登記事項でもあります。会社法915条1項により、変更が生じたときは本店の所在地において2週間以内に変更の登記をしなければなりません。電子公告を定めた場合は、公告を掲載するウェブサイトのアドレスも登記します。
順番としては、株主総会で定款を変更し、掲載するページを用意し、調査機関と契約を結び、登記を申請する流れになります。ウェブサイトのアドレスが登記されますので、サイトの構成を変えるときは登記の変更も必要になる点に注意してください。
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❓ よくある質問
A. 掲載自体の費用はかかりません。会社法941条の括弧書きにより決算公告は調査の対象外ですので、調査費用も発生しません。ただし5年間掲載し続ける必要がありますので、サイトの維持管理は必要です。
A. 決算公告を除くすべての公告に調査の求めが必要です。基準日の公告、債権者保護手続の公告、株券提出の公告などが対象になります。公告の回数が多い会社ほど費用がかさみます。
A. 会社法939条3項は定めることができるとしており、義務ではありません。ただし、サーバーの障害などで電子公告ができない場合に備えて、官報を予備として定めておくのが一般的です。
A. 公告を掲載するアドレスは登記事項ですので、変更の登記が必要です。サイトのリニューアルでページの構成を変えるときは、登記と公告の継続の両方に影響します。事前に確認してください。
A. 上場の要件として電子公告が求められているわけではありません。ただし、上場会社は適時開示をはじめ情報をウェブサイトで出すことが前提になりますので、公告も電子で統一する会社が多く見られます。判断は公告の頻度と費用で決めてください。
📄 まとめ
公告方法は官報、日刊新聞紙、電子公告の3つから選びます。定款に定めがなければ官報です。
電子公告には公告期間の定めがあり、決算公告は定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで掲載し続けます。
電子公告には調査機関への調査の求めが義務づけられています。ただし決算公告は対象外です。
手続は株主総会の特別決議による定款変更と、2週間以内の変更登記です。掲載するウェブサイトのアドレスも登記されます。
⚖ 本記事の根拠
- 会社法939条1項・3項(公告方法は官報、日刊新聞紙、電子公告のいずれか)
- 会社法940条1項(電子公告の公告期間)
- 会社法941条
- 会社法440条(決算公告)
- 会社法466条・309条2項11号(定款変更は特別決議)、同915条1項(変更の登記は2週間以内)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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